幼児教育・保育無償化とは?その制度から対象までを説明

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2019年10月より実施されると言われている「幼児教育・保育無償化」。
対象年齢のお子様を持つ家庭では関心が高いのではないでしょうか。
無償化と名前がつけられていますが、実は無償になるものとならないもの、さらに上限があるものなどもあり、自分の家庭の場合はどうなるのか、気になるところです。
今回は、2018年11月の状況をもとに、「幼児教育・保育無償化」の制度について解説します。

幼児教育・保育無償化の背景

2019年10月からスタートするとされている「幼児教育・保育無償化」制度。
保育園や幼稚園の保育料が無償になるという制度ですが、保育園か幼稚園か、またその他の認証保育やインターナショナルスクールなどが対象となります。

それぞれの園の種類により、無償の対象が異なります


2018年11月現在、2019年10月からの実施を目指し具体的な手続き等の検討が進められている段階です。
幼児教育・保育無償化は、「すべての子が質の高い幼児教育を受けられることを目指す」ことを目的として導入される制度です。※1
この制度の背景には、子どもの教育費に対する不安が少子化の一因となっているという調査結果や、教育費に対する補助を望む声があります。

 

さらに幼児教育が将来の所得向上へ効果があるという研究結果から、幼児期の教育がその後の人格形成や基礎力を培うために重要だと考えられており、幼児教育・保育の無償化という制度が検討されているとされています。※2

本来は2020年4月の開始を目標にするとされていましたが、2019年10月から消費税が10%に増税されるのに備え、前倒しされています。※1

 

子育ての費用についての全貌は、こちらの記事でもご紹介しています。

不安のある方は要チェックです。

・子育て費用、実際にかかる費用は?無理のない貯め方は?

 

※1 幼児教育の無償化に関する住民・事業者向け説明資料2/2018年 11月20日/内閣府
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/pdf/free_ed-setsumei2.pdf
※2 幼児教育、高等教育の無償化・負担軽減参考資料/平成29年10月/内閣官房人生100年時代構想推進室
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/dai2/siryou1.pdf

認可保育園は無償、幼稚園や認可外は制限あり

無償化の対象は、幼稚園、保育所、認定こども園等に通う3歳~5歳の子どもとされています。

保育園も幼稚園も認定こども園も対象とされています。

お受験 幼稚園から? 公立と私立の違いと面接について

の記事でもご紹介しているように、幼稚園には公立と私立があり、それぞれの幼稚園で条件があります。

そして、認可外保育園はどうなのでしょうか?個別に見てみましょう。

 

保育園

保育園の場合は、3~5歳児は無償の対象となります。
0~2歳児については、住民税が非課税の世帯のみが無償の対象とされています。※2
住民税非課税世帯とは、生活保護を受けていたり合計所得金額が決められた計算方法で算出された基準よりも低い世帯です。
計算方法は、35万円×(控除対象配偶者+扶養親族数+1)+21万円とされており、夫婦と子ども1人の場合は128万円となります。※3
この計算式で算出した金額以下の世帯が住民税非課税世帯であり、保育園に通う0~2歳児についても無償化の対象となっています。

 

幼稚園

幼稚園の場合は、子ども・子育て支援新制度の対象ではない幼稚園は月額上限25,700円までが対象とされています。※2
保育園が全額無償なのに対し、幼稚園には条件が付いています。
子ども・子育て支援新制度の対象ではない幼稚園とは、平成27年にスタートした子ども・子育て支援新制度に移行をしていない私立幼稚園を指します。
現状では、新制度に移行していない幼稚園は、保育料は各園ごとに決められており、幼稚園就園奨励費という補助金が支払われています。※4

 

認定こども園

認定こども園の場合は、保育園と同じく3~5歳児が無償、0~2歳児は住民税非課税世帯のみ無償の対象とされています。
認定こども園は、平成27年の子ども・子育て支援新制度で新たに設けられたもので、文部科学省管轄の幼稚園と、厚生労働省管轄の保育園の両方の機能を併せ持つ園のみが認定されています。

 

地域型保育園

地域型保育園と呼ばれる、小規模な保育園や認定された保育者が自宅などで保育をする家庭的保育事業、企業内にある事業所内保育についても、通常の保育園と同じく無償化の対象とされています。※2
3~5歳児は全て無償、0~2歳児は住民税非課税世帯のみと保育園と同じ条件となります。

 

認可外保育園

認可外保育園の場合は、3~5歳児を対象として月額37,000円までの利用料を無償化、0~2歳児については、住民税非課税世帯の場合は上限42,000円までが対象とされています。
この金額は、認可保育所の全国平均保育料から算出されているようです。
認可外保育園には、認証保育園やベビーホテル、ベビーシッター、認可外の事業所内保育園だけでなく、ファミリーサポートや一時預かりも対象です。※2
ただし、すべての認可外保育園が対象というわけではありません

 

インターナショナルプリスクールなどの認可外保育園

インターナショナルプリスクールは、無償化の対象外となる園もあります。
無償化の対象となる認可外保育園は、自治体に届出をし国が定めた基準を満たしているところとされており、プリスクールは自治体に届出をしていない園もあります。
対象になるかどうか気になる場合は、園に確認をしてみましょう。

※2 幼児教育の無償化に関する住民・事業者向け説明資料2/2018年 11月20日/内閣府
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/pdf/free_ed-setsumei2.pdf
※3 <税金の種類><個人住民税> | 東京都主税局
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/kojin_ju.html#gaiyo_04
※4 子ども・子育て支援新制度について/平成30年5月/内閣府子ども・子育て本部
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/pdf/setsumei.pdf

問題になっている「給食費」について

保育無償化といわれますが、保育園や幼稚園の通園にかかる全ての費用が無償になるというわけではありません。
通園にかかる送迎費や給食の食材費、また行事の費用などの実費と言われるものは無償化の対象外となります。※5

 

ここで大きく問題になっているのが給食の食材費です。
現状、給食費は幼稚園と保育園で負担額がことなります。
幼稚園の場合は全額実費なのに対し、保育園は一部もしくは全額が保育料に組み込まれているのです。
保育園の場合は、0~2歳児は全額、3~5歳児は副食(おかず等)の部分が保育料に含まれているため、この制度のまま無償化されると、幼稚園の場合は給食費が全額自己負担なのに対し、保育園は全額(0~2歳児)もしくは一部(3~5歳児)が無償となるため、統一すべきではないかと問題となっているのです。※6
2018年11月現在まだ最終決定はされていませんが、内閣府は3~5歳児の給食費を無償化の対象としない方針を固めているとされています。※7
認可保育園の食材費は、主食(ごはんなど)費が月3,000円、副食費(おかずなど)が月4,500円とされています。
つまり、保育園の場合は園児一人当たり月7,500円の負担で計算されています。

 

一方、幼稚園の現在の給食費の平均を見ると、公立幼稚園で月1,679円、私立幼稚園で2,494円となっています。※8
幼稚園は園により給食の回数が異なるため、平均よりも多い園・少ない園、園ごとに様々かと思います。

通っている園や、通おうかと考えている園があれば、確認してみてもよいでしょう。

※5 幼児教育の無償化に関する住民・事業者向け説明資料2/2018年 11月20日/内閣府
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/pdf/free_ed-setsumei2.pdf
※6 幼保無償化 給食のおかずは? このままだと…保育所無料、幼稚園実費/東京新聞/2018年10月15日 朝刊
※7 幼保無償化、給食費は除外 19年10月から実費徴収/日本経済新聞/2018年11月9日 朝刊
※8 平成28年度子供の学習費調査/2 学年(年齢)別,所在市町村の人口規模(学科)別の学習費(幼稚園)/政府統計
https://goo.gl/bYV2vC

幼稚園の延長保育(預かり保育)は認定が必要

実費には含まれないものの、注意したいのが、幼稚園の延長保育や預かり保育の費用です。
園が終了した後の時間に保育をしてもらう延長保育、夏休みなどに幼稚園で保育をしてもらう預かり保育は、条件付きで無償化の対象となります。
無償となるには、保育の必要性があると認定を受けていることが条件です。
認定を受ければ、月11,300円までの幼稚園の預かり保育利用料が無償化の対象になるとされています。※9
延長保育の利用料は園により様々ですが、1日あたり1,000円前後のところが多いようです。
1日当たりの預かり保育利用料が800円の場合なら14日間分となります。

※9 幼児教育の無償化に関する住民・事業者向け説明資料2/2018年 11月20日/内閣府
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/pdf/free_ed-setsumei2.pdf

子どもの人数(第2子や第3子)や所得による差はない(3~5歳の場合)

現行の保育園の保育料の負担は、第1子の全額負担に対し、第2子の場合は半額、第3子の場合は無料、さらに世帯所得に応じて保育料が決められています。
しかし、無償化については、子どもの人数による制限はありません
所得についても、3~5歳児の場合は住民税負担がいくらであっても無償化の条件は同じです。
保育園は無償、幼稚園は上限ありの章でもご紹介しましたが、保育園の0~2歳の場合のみ、住民税非課税世帯が対象とされています。
保育園の現制度では、高所得世帯ほど保育料の負担が大きかったのですが、無償化により3~5歳児は一律無償となることで、高所得世帯の方が手厚い補償を受けることになるとも言われています。

知っておきたい保育園と幼稚園の違い

幼児教育・保育無償化についてその対象や内容をご紹介いたしましたが、このようにみると保育園と幼稚園の制度の違いが、無償化の対象に影響していることがわかります。
ここで、一般的な認可保育園と公立・私立幼稚園の違いについて費用に関わる制度の違いを見てみましょう。

 

給食

問題になっている「給食費」についての章でもご紹介いたしましたが、保育園と幼稚園では給食に大きな違いがあります。
保育園の場合は、園での給食の提供が義務付けられていますが、幼稚園の場合は特に規定はありません。※10
一般的に保育園では、お昼の給食と夕方の補食の2回の食事が毎日提供されるのに対し、幼稚園は給食がない日が設定されている園もあります
幼稚園の場合は、半日保育の日は給食がないですし、通常保育の日も週に決められた日はお弁当持参という園もあり、保育園とは大きく異なる点の1つです。

 

また、幼児向けの食育が今注目されています。

食育については、こちらの記事でご紹介しています。

・食育で子供に伝える、食の大切さと楽しさ

保育時間

幼稚園の教育に関わる教育時間は1日標準4時間と決められているのに対し、保育園の1日の標準保育時間は8時間とされています。※10
子ども・子育て支援制度が始まり、幼稚園でも通常の教育時間以降に預かり保育を実施している園も増えていますが、必要な子が必要な場合に利用し、毎月の保育料とは別に利用料を支払うことになります。
保育園の場合は、仕事の都合でお迎えが1時間遅くなるというような場合でも保育料は変わりありません。

制服や文具・日用品

保育園は、認可保育園の場合は基本的に制服はなく、カバンや上履きや靴なども自分で好きなものを用意します。
安全面などからフード付きの服はNGなどのような規定がある園もありますが、それさえ守れば好きな服装で登園し、お着替えも好きなものを持参します。


一方、幼稚園の場合は制服やカバン、靴、上履きなど園の指定のものを用意する必要がある場合が多く、一定の費用が掛かります。
文具などの日用品についても違いがあり、幼稚園は自分で使うものは基本的に自分で用意しますが、保育園は基本的に園で用意されているものを使います
幼稚園の場合は、お道具箱やその中身となる文房具、お箸セットなどは入園の際や進級の際に準備が必要です。
保育園の場合は、園のものをみんなで使うところが多く、お道具箱や文房具の準備は必要ありません。
この制服や文具・日用品などは、すべて実費のため、一般的には幼稚園の方が負担すべき費用が高いと言えます。
保育園が乳幼児の保育をする場所なのに対し、幼稚園は幼児を対象とした教育の場所です。
さらに、幼稚園は公立か私立かで内容が異なり、それぞれで費用負担の違いが出ているのが現状です。
既にお子様が通園されている家庭については、無償化になると何が対象になるのか、不明な場合は園に確認してみましょう。


これから保育園や幼稚園に入園される方は、無償化の対象がどこまでになるのか、結果実費負担がいくらくらいになるのかは、園により異なるということを理解し、説明会の際などに確認してみてもよいかもしれません。

 

保育園・幼稚園で必要なものは、こちらの記事でもご紹介しています。

・保育園と幼稚園でこれだけ違う!入園までのスケジュールと準備するもの

※10 現行の保育所・幼稚園・認定こども園の基準について/2018年 11月20日/福岡県
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/12073.pdf

まとめ

2019年10月から開始予定とされている「幼児教育・保育無償化」について、2018年11月時点の情報をご紹介いたしました。
まだ最終決定されていない部分もありますが、保育園と幼稚園で、無償化の対象が異なります。
認可保育園の場合は、3~5歳児であれば、給食費が実費負担になった場合は月7500円の負担、認証保育などの認可外保育園の場合は、月37,000円を超える部分の保育料と給食費が負担となります。
しかし、幼稚園の場合は、毎月の保育料が25,700円を超える場合にはその超過分と、預かり保育を利用する場合には11,300円を超える部分の利用料、さらに給食費などの実費が自己負担となります。
2019年10月には消費税が10%に増税され、家計への負担が増えるとされており、幼児教育・保育無償化は、対象年齢の子どもがいらっしゃるご家庭にはとてもありがたい制度です。


一方で、無償化になることで、保育の質が低下しないかという懸念や、財源をどこから確保するかなどの問題もあり、今後の動きに注目が集まっています。
近年では、乳幼児の習い事も増加傾向にあり、保育園や幼稚園の保育料以外にも学習費がかかる傾向にあります。
保育料が無償化されれば、その分習い事にも費用をかけやすくなるとも考えられます。
英語教育の義務化やプログラミング教育のスタートなど、教育制度も大きな変革を迎える中で、習い事の種類も多様化しています。
子どもにとって、有意義なお金の使い方や選択ができるとよいですね。

 

 

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