子供の嘘は、必ずしも悪い事ばかりでは無い?嘘の理由と子供の心理を考えよう

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世の中に、嘘をついたことがこれまで一度もないという人は恐らくいないと思います。
そして嘘は子供でもつきます。
では、人は何歳ごろから、どのような嘘をつくようになってくるのでしょうか。
嘘をついてしまう時の心理状態と併せて、みてみましょう。

目次

  1. 嘘をつく子供の心理
    • どのような心理がはたらいて「嘘」をついてしまうのか
  2. 発達段階ごとの嘘の種類
    • 3歳~6歳頃
    • 小学校低学年~小学校中学年
    • 小学校高学年~中学生
  3. 嘘をつく子供は親にも原因がある?
    • 言葉かけや接し方に原因がある
    • 虐待がもたらす虚言癖
  4. 子供の嘘に対して、親が注意すべきこと
    • 子供を理解すること
    • 親自身の行動を今一度見直す
  5. まとめ

嘘をつく子供の心理

どのような心理がはたらいて「嘘」をついてしまうのか

子供はある程度の年齢になると、ちょっとしたことで嘘をつくようになります。
例えば、幼稚園で「○○君との競争に勝った!」と言っても実は逆だったり、「○人でサッカーしたら自分が一番多く点を入れた!」と言っても実は一番ではなかったりします。
今までも、我が子が自分でいうほど「出来た!」という状況を見ていない親からすれば、「またこの子は嘘をついて!」と、怒りたくなってしまいます。
子供が嘘をつくときには、何らしかの理由があります。
嘘をつくときの子供の心理を知っていれば冷静に対処できることが多くなりますので、まずは「嘘」をつく子供のさまざまな心理をみてみましょう。※1、2


1、そもそも嘘をついているという意識がない
北海道大学の仲真紀子教授などの研究では、3歳位までの幼児は大人が意図的に子供に嘘をついても、子供は嘘をつかれた(だまされた)ということが理解できず、単に大人の言っていることが間違っていたと理解する傾向にあるようです。
これと同じように、幼い子には「嘘」という認識があまりないため、自分が嘘をついているという意識がない、あるいは勘違いをしているだけという可能性があります。※3


2、想像力から起こる嘘
これは自分が作ったお話や「こうしたい」「こうなりたい」という願望が実生活と重なり混ざり合ってついてしまう嘘です。
本当は買ってもらってないのに「この前ママに○○を買ってもらったんだよ!」とお友達に話してしまう、などが挙げられます。※1


3、思いやりの嘘、建前上の嘘
誰かを守るために、思いやりからつく嘘や、特に欲しいと思わないプレゼントを貰った時、「ありがとう、これ欲しかったんだ」と建前上つく嘘も、大人になってからではなく、子供の頃から使うようになります。
「相手に対する思いやり」から生まれているのですが、これも嘘(自分の気持ちを偽る言葉)と言えます。 ※1


4、人の気を引くために嘘をつく
妹や弟のお世話で忙しく上の子に我慢をさせてばかりいると、子供は孤独を感じたり、愛情不足になってしまい「私(僕)を見て」という気持ちから嘘をついて気を引こうとします。
また、親や皆に褒められたい、自分自身を大きくみせて注目されたいという想いから嘘をついてしまいます。 ※2


5、上手に説明ができず嘘をついてしまう
本人にとって正当な理由があるにもかかわらず、叱られてしまうような事をした場合は、その理由を上手に説明して伝えられない自分がいることに気付いています。
しかし、叱られたくないとその場をしのごうとして、嘘でごまかしてしまうのです。 ※1、2


6、思春期の嘘
思春期になると親の干渉を煙たがるようになり、自分のプライバシーやプライドを守るために嘘をつくようになります。
また、多感なこの時期の嘘には、人間関係のトラブルも背景にあるのが特徴です。 ※2


7、自分自身を守るための嘘
この嘘には数種類の心理があります。
1つ目は怒られるのを避けるために使う嘘です。
2つ目は「良い子と思われたい」「親の期待に応えたい」と親に心配をかけたくない気持ちや自分のプライドを守るために使う嘘です。
3つ目は相手をだまして勝利を手に入れたい、信頼を得たいという動機からついてしまう嘘です。※1、2
このような心理が働いて子供は嘘をついてしまうようです。
嘘を見抜いたとしても「嘘をついたわね」とその行為を責め立てるのではなく、どうして嘘をついてしまったのかを考えてその後の対処をすることが大切です。 ※1、2

 

※2 大阪市 子育て家庭を応援する「親力アップサイト」 【第9号】「子供の嘘~どう対応する?」 / 2019年10月31日閲覧
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000121167.html
※3 J-STAGE 幼児による嘘と真実の概念理解と嘘をつく行為 / 2019年10月31日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdp/20/4/20_KJ00005931566/_pdf/-char/ja
※1 松井智子 著 2013年6月発行 子どものうそ、大人の皮肉 岩波書店

発達段階ごとの嘘の種類

子供の成長に伴い嘘の種類も変化していきます。
幼い頃から変わらずにつく嘘もありますが、発達と共に嘘のつき方や考え方も変化していきます。
どの発達段階であっても、まずは子供の話を聴いてあげることが先決です。
それから問題に対応していくように心がけましょう。

 

3歳~6歳頃

早い子は2歳半頃から嘘をつくようになります。
しかしこの頃の嘘は、現実と非現実(空想や願望)の区別が難しく、嘘をついているという意識がないことがほとんどです。
例えば、「遊園地に行きたい」とお願いをしていた子がお友達から「昨日、遊園地で観覧車に乗ったよ」と楽しかった話を聞き、つい自分も行ったような気分になり「私(僕)もこの前メリーゴーランドに乗ったよ」などと言ってしまうことがあります。
3歳頃になると意図的に嘘をつけるようになってきます。
「箱の中を見ないでね」と言われたのに見てしまい、怒られることを回避するために「見てない」と言います。
けれどもこの時期の子供はその後の会話のつじつまを合わせることができず、「何が入っていた?」と聞くと「お菓子」と正直に答えてしまいます。
7歳辺りで「見てないから分からない」と嘘がばれないように、さらに取り繕う嘘をつくようになってきます。
そして、4歳頃から、誰かを守るため(嫌な思いをさせないため)の嘘をつくようになります。 ※1、2、4

 

小学校低学年~小学校中学年

小学生になると自己防衛のための意図的な嘘が多くなります。
嘘をついた後の話のつじつまはまだ完璧ではないけれど、何とか合わせようとします。
そして自己防衛のための嘘の中には子供からのSOSサインが出されていることもあります。
例えば、いじめられているけど本当の事を話したら、さらにいじめが酷くなるかもしれないし、親に心配をかけたくないから、友達と上手く関係が築けているようにしておこう、という類の嘘です。
また、人の気を引くための嘘や上手に説明ができず嘘をついてしまうこともあります。
そして、親や周囲の人の期待に応えたい、プライドを傷つけられたくないという気持ちから出る嘘もあります。 ※2、5

 

小学校高学年~中学生

この時期も、自分を守るための嘘、叱られることを回避するための嘘、人の気を引くための嘘があります。
けれども年齢が上がるにつれ、他人の迷惑になるような嘘や責任逃れのための嘘も比較的多く出るようになりますが、より巧妙になってきますのですぐに見破るのは難しくなってくるでしょう。※2
誰かを守るための嘘では、突発的に嘘をつくのではなく、かばう相手との関係性、自分を取り巻く環境や状況に応じて、嘘をついてまでかばう相手であるかどうかをよく考慮してから嘘をつくようになります。※5
そして思春期に入りさまざまなことに対し多感な時期となると、仲間同士のトラブルや教師との関係、親との距離感など、人間関係の悩みから嘘をつくようになるようです。※2、5
そしてこの時期は親よりも友達の影響がとても強く仲間意識も固く結ばれていきます。
それ故に親には知られたくないことも増えてくるので、それらを守るために嘘をつくのです。※2
また、自分自身のアイデンティティを守るために嘘をつき親を遠ざけようとします。 ※5

 

※2 大阪市 子育て家庭を応援する「親力アップサイト」 【第9号】「子供の嘘~どう対応する?」  / 2019年10月31日閲覧               
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000121167.html
※1 松井智子 著 2013年6月発行 子供のうそ、大人の皮肉 岩波書店 
※4 今井和子 著 2016年8月発行 0歳児から5歳児 行動の意味とその対応 小学館 
※5 ポール・エクマン 著 2009年7月発行 子どもはなぜ嘘をつくのか 河出書房新社

嘘をつく子供は親にも原因がある?

言葉かけや接し方に原因がある

子供が嘘をついた時、頭ごなしに叱って子供を追い込んでしまうことは逆効果です
なぜ嘘をついてしまったのか「嘘をついた行動」の理由を考えもせず厳しく叱り続けていると、怒られないようにするためにさらに嘘をついて自分を守ろうとします。※2
思春期では、「うるさいなぁ」「面倒臭い」という気持ちが強くなり、一刻も早く自分から親を遠ざけるために嘘を重ねてしまうことも増えてきます。※2
また、親自身が子供や他人に対して頻繁に嘘をつくような家庭で育つと、子供も多く嘘をつくようになります
例えば駐車違反で警察に注意をされた時にありもしない理由でその場を免れようとする、仕事をずる休みする、朝寝坊の言い訳をごまかす、というようなことを日常的に子供の前で平然ともしくは無意識に行っていると、子供も同じように嘘を学んでしまいます。※5
それから、家庭環境が良くない場合も嘘をつく子供が多い傾向にあるようです。
夫婦仲が悪く親同士の問題ばかりで悩みを抱え家族として機能していなかったり、片親で仕事や家事で手一杯だったりした場合、子供への監督が行き届いていないことがあります。
子供ときちんと向き合えていない家庭の子供は、孤独や不安を感じやすくなり、親の気を引くために嘘をつくようになります。※5、6
また、思春期では親よりも仲間に感化されやすくなるので道を踏み外しやすくなり、悪さを隠すために嘘をついてしまいます。 ※2、5

 

虐待がもたらす虚言癖

奈良県児童虐待等調査対策委員会の報告書によると、身体的虐待、心理的虐待を受けていた子供は、虚言癖になる可能性が高いということが示されています。
特に身体的虐待を受けてきた子供の方が、より虚言癖になる割合が高くなるようです。※6
身体的虐待では日々繰り返される暴力、心理的虐待では罵倒や拒否されることなど、辛い生活から現実逃避をするために嘘をついてしまうようです。※6
また、親からの愛情を受けることができないので、家族以外の人から自分を認めてもらおうと承認欲求が働き、承認欲求を満たすために人の関心が自分に向かう嘘をついてしまうのでしょう。
この行為が「生きる術」となり、常に嘘をつくことが生活の一部になってしまうと考えられます。※6、7
そして、自分が虐待を受けていることを周囲の人達に悟られないために嘘をつくこともあります。※6
このような虚言癖の子供たちは、将来的に反社会的な犯罪行為に手を染めてしまう可能性を秘めています。
幼少時代の後期から虚言癖が見受けられる子供は、成人になってから問題行動を犯してしまいがちになるようです。※7
我が子が頻繁に嘘をつくようになっていると感じたら、深刻に受け止め親自身の子供に対する接し方を冷静に見つめ直すことが大切なのです。 ※5、6

※2 大阪市 子育て家庭を応援する「親力アップサイト」 【第9号】「子供の嘘~どう対応する?」  / 2019年10月31日閲覧
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000121167.html
※6 公益社団法人日本心理学会 臨床心理学からみた「うそ」の理解  / 2019年10月31日閲覧
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/10/71-17-20.pdf
※7 奈良県児童虐待等調査対策委員会報告書 2.調査 (2)虐待発生・関連項目状況 / 2019年10月31日閲覧
http://www.pref.nara.jp/secure/92090/h20.12_18-40.pdf
※5 ポール・エクマン 著 2009年7月発行 子供はなぜ嘘をつくのか 河出書房新社

子供の嘘に対して、親が注意すべきこと

では、子供の嘘にどのように接していけばよいのかを考えてみましょう。

 

子供を理解すること

●3歳~6歳頃
現実と空想や願望が入り混じってついてしまった嘘は問題視する必要はありません。
子供の話を受け止め「○○したかったのね」「○○になりたいんだね」というように答えてあげましょう。
自分を守るための嘘も程度が軽ければ発達段階の1つと捉えそれ程気にしなくてもよいですが、してしまった行為は注意しましょう。
嘘の程度が深刻であったり、頻繁であったりする場合は、子供の気持ちや言い分をよく聴いてあげることが必要です。※2


●小学校低学年~中学年
この時期は意図的な嘘がほとんどですが、その背景にはSOSサインが隠されていることもあります。
子供の生活に注意を向け、普段からできるだけ会話をすることを心がけましょう。
何気ない雑談の中に、子供の悩みや嘘のヒントが見つかるかもしれません
親が仕事や弟妹にかかりっきりになっていないかなど、親自身の行動も思い返して、上の子を優先する時間を作れるようにしてみましょう。※2


●小学校高学年~中学生
思春期に入ると、人間関係による悩みから嘘をつくことが増えますので、仲間やクラスメイトとのいじめや金銭トラブルが無いかを確認しましょう。
親子関係では、両親の不仲や離婚問題、あるいは自己を築いていくために親を遠ざけようとする行為などがあるようです。
このような時は、無理に言わせるのではなく、子供から自分で言えるよう導くことが大切です。※1、2
しかし、子供によっては全く会話をしようとしない子もいますが、仲の良いお友達から情報収集できることもあります。
スクールカウンセラーや地域の相談窓口で状況を説明してアドバイスをもらうというのも、一つの解決策です。※2
「嘘をついている?」と感じたら、まずは子供の話をよく聴き、子供の状況を把握してください
大人側の勝手な判断で、子供の言葉をと決めつけてしまわないようにしましょう。※1

 

親自身の行動を今一度見直す

親として、今までのしつけを見直すこともまた必要かもしれません。
厳しすぎや放任過ぎるなど、極端なしつけも子供が嘘をついてしまう引き金となります。※5
厳しすぎるしつけの場合、子供は叱られる恐怖から自分を守ろうと嘘をつきますし、親の前ではいい子でも親の目が無いところでは羽目をはずし、周囲の人に嘘をつくこともあります。
また、放任過ぎて子供と向き合わずにいると、子供は物事の善悪の区別を学ぶことができず、嘘をつくことに関して罪悪感を抱かなくなったり、親の気を引くための嘘をつくようになったりします。※5
親子の信頼関係がしっかり築けていれば、たとえ子供が嘘をついてしまっても、親は気づくのではないでしょうか。
その後の対応次第で、嘘はいけないことなのだと学び、子供も反省しやすくなります。※2、5

※2 大阪市 子育て家庭を応援する「親力アップサイト」 【第9号】「子供の嘘~どう対応する?」  / 2019年10月31日閲覧
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000121167.html
※1 松井智子 著 2013年6月発行 子供のうそ、大人の皮肉 岩波書店 
※5 ポール・エクマン 著 2009年7月発行 子供はなぜ嘘をつくのか 河出書房新社

まとめ

子供のつく嘘は、必ずしも悪いことだとは限らない、時には自分の身を守るためのものでもあります。
嘘の種類と、子供が嘘をついてしまう時の心理をきちんと理解してあげることで、上手に子供との嘘につき合っていけるのではないでしょうか。
それでも、日常の会話の中に余りにも嘘が多く、「このままで大丈夫かしら?」と不安に思うようであれば、専門家や児童相談所などに相談をしてみましょう。

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