食育で子供に伝える、食の大切さと楽しさ

公開日:2019.01.09

「食育」という言葉、聞いたことがある人も多いと思います。
食育とは文字通り、食により人を育てることを意味しています。
でも、一体何を育てるのでしょうか。
単に、子供の身体を育てるだけなら、わざわざ「食育」という言葉を使わなくても、お腹いっぱい食べればよいはずです。
でも「食」が育てるのは、それだけではありません。
幼児に対する食育が、一体どのような変化をもたらすのか、本当の意味の食育についてお伝えします。

目次

  1. 「食育」について、どこまで知っていますか?
    • <食育とは?>
    • <食育という言葉の語源は>
    • <日本で食育が必要となった理由>
  2. 幼児への食育の実際
    • <保育園や幼稚園での食育>
    • <食育は家庭でも必要?>
  3. 食育がもたらすであろう、子供たちの未来
    • <近い未来の変化-子供たちが親になる頃->
    • <遠い未来の変化-子供たちが中年から高齢者になる頃->
  4. まとめ

「食育」について、どこまで知っていますか?

<食育とは?>

平成17年6月17日に成立した法律「食育基本法」は、平成17年7月15日から施行実施されました。
この食育基本法は、食育という考え方に基本理念を定め、法的根拠を付与したものです。 ※1、※2
法律で決められた食育とは、一体どのようなものなのでしょう。

政府の広報オンラインでは、食育とは、いろいろな経験を通じて、「食」に関する知識と、バランスのよい「食」を選択する力を身に付け、健全な食生活を実践できる力を育てること、とあります。
つまり、食育は単にバランスのとれたご飯を食べることではなく、食を通して、生きていく力を身につけていこうという大きな意味合いを含んでいるのです。
成長期の子供に対しての食育では、その子が生涯に渡って健やかに生きていくことができるよう、生きるための基礎を作る目的で行われています。
平成18年に制定された食育推進基本計画では、教育の場でもある学校や保育所などでも、子供たちが「食に対する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けていけるよう、食育を積極的に入れていくこと」の重要性が述べられています。 ※1、※2、※3

「食育」は、農林水産省、厚生労働省、文部科学省の3省が中心となって進められており、毎年6月は食育月間、毎月19日は食育の日とされています。
国や地方公共団体などいろいろな関係団体が協力して食育を国民へ浸透させていくための働き掛けも盛んに行われるようになり、各地では食育関連のイベントも実施されています。 ※1、※2、※3

<食育という言葉の語源は>

食育という言葉は、近年耳にするようになったため、新しいものと思われがちです。
しかし、その起源は明治時代にまで遡ります。
石塚左玄により明治31年(1898年)に初版された食物養生法では「子供を持つ親たちは、体育、智育、才育はすべて食育だと考えましょう、それほどまでに食は重要なことなのです。」と述べています。
栄養学がまだ学問として確立されていない時代にも関わらず、彼は医食同源としての食養と食育を提唱していたのです。

その後、明治36年(1903年)には当時の人気作家だった村井弦斎が、報知新聞に連載された小説、食道楽の中で「子供には徳育よりも、智育よりも、体育よりも、食育が先、体育、徳育の根源も食育にある。」と記述しています。 ※3、※4 

<日本で食育が必要となった理由>

戦後の日本は、急速な経済発展を遂げ、生活水準が大きく向上しました。
その一方で食生活は乱れ、朝食の欠食、野菜の摂取不足、塩分や糖分、脂質の過剰摂取などが目立つようになり、現在でいうところの「生活習慣病」にかかる人が増加してしまいました。
今やこの生活習慣病は大人だけではなく、子供にも身近なものとなりました。
小児肥満は増加し、糖尿病や高血圧などといった生活習慣病になる子供たちが増加しているのです。
また、ライフスタイルの多様化から家族で集まって食事をする機会が減ってきました。
家庭での活動時間のズレなどから、同じ空間(家)の中にいても一人で食事を摂ること=「孤食」が増えてしまったのです。
本来、食事は楽しいもののはずですが、一人で摂る食事は皿の料理をただ口へ運ものとなってしまいます。
食事は物を食べるというだけの行為ではなく、同じ食卓を囲みながら会話やその場の温かな雰囲気なども感じるものです。
孤食で育った子供は、一人で黙々と食べるためコミュニケーション能力が育たず、嫌いなものを残してもその場で注意をされる事が少なく、好きなものしか食べなくなったり、食の楽しみを感じることが出来ないため小食になってしまう恐れもあります。
さらに、子供が喜ぶジャンクフードは、十分な野菜を摂取することが出来ません。
手軽に美味しく食べられるジャンクフードを口にする機会が増えたということは、その分バランスの取れた食事を口にする機会が減ったということになるのです。

以上のように、不適切さが目立つようになった子供の食習慣を是正していくため、「食育」が推進されるようになりました。  ※2、※4、※5、※6、※7

※1 農林水産省 食育基本法
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/pdf/kihonho_28.pdf
※2 政府広報オンライン 「食べる力」=「生きる力」を育む 食育 実践の環(わ)を広げよう
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201605/3.html
※3 厚生労働省 食育の推進
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000129394.html
※4 近畿農政局 食育実践者向け手引き書 
http://www.maff.go.jp/kinki/syouhi/seikatu/syokuiku/pdf/tebikisyo_all.pdf
※5 農林水産省 子供の食育
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/learn/
※6 文部科学省 学校における食育の推進・学校給食の充実
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/index.htm
※7 中村学園大学短期大学部「幼花」論文集  食育推進~食育は心まで育てる~
http://www.nakamura-u.ac.jp/~hashimot/members/papers/Vol2/Vol2-4.pdf

幼児への食育の実際

<保育園や幼稚園での食育>

食育推進基本計画により、保育や教育の場において、食育が盛んに行われるようになりました。
地域や園の方針によって食育の活動内容はさまざまですが、保育園や幼稚園では園内で野菜を作り、収穫をする活動も行われています。
園によっては、定期的に畑へ行き、種や苗を植え収穫をします。
収穫された野菜は園での給食やオヤツとして提供されることもあれば、自宅へ持ち帰り、食材として家庭の食卓へ並ぶこともあります。
子供たちは自分で育てた野菜には興味を示し、嫌いな野菜の克服へ繋がるきっかけとなっています。
また、日々育っていく野菜の姿を目の当たりにすることで、天候により食材が根腐れを起こすことや、枯れること、虫に食われることを知ります。
野菜を育てることは、食への感謝の気持ちをも育てることにつながっています。

ところで、園児のバランスのよい食事とはどのようなものなのかご存知でしょうか。
一日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかを表している「食事バランスガイド」というものがあります。
これは、健康で豊かな食生活の実現を目的として策定された「食生活指針(平成12年3月)」を、具体的な行動に結び付けられるよう、平成17年6月に厚生労働省と農林水産省が合同で作成したものです。
実際の「食事バランスガイド」は、コマのイラストになっていて、「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の5つのグループに分かれています。
それぞれのグループに対し、上から量をしっかりと「コマの形」になるように食べると、バランスが整った食事になる、ということを表しています。
日本人が昔から食べてきたご飯を主食にしっかり食べ、魚や肉、野菜・果物、海藻、豆類などを使った一汁二菜という食べ方はバランスのよい食事に近いものです。
毎日の食事メニューの参考にしてみると良いでしょう。

また、園によっては食育活動の1つに「食育コーナー」があります。
このコーナーでは、地域の食育プランなどに基づき食育情報を紹介しています。
給食で人気のあったメニューのレシピや季節ごとのレシピ、園で育てている野菜の発育状況など掲示物は園により特色があり、どの園も明るく楽しい食育コーナーを手掛け、子供たちに食の素晴らしさを伝えようとしています。 ※5、※6

<食育は家庭でも必要?>

幼少期に染みついた生活習慣というものは大人になったらからといって、簡単に変えられるものではありません。
親である大人たちも食育をきちんと理解し、子供によい食習慣をつけ、健康な身体で生涯を過ごせるように導いていく必要があるのです。

子供の生活習慣は食生活も含め、家庭や社会の影響を受けやすくなっています。
まずは、子供が外で見聞きした食育にしっかりと耳を傾けるようにしましょう。
子供が外で知った食育はどのようなものなのか、子供がママに伝えようとしている食育はどのようなものなのかを、しっかり見聞きできる目と耳を持ち、子供とコミュニケーションをとるようにしましょう。
ママが真剣にお話を聞いてくれたことで、子供はより「食への興味」を示していくことでしょう。

子供を育てる中で、家族で食事をすることは、とても大切な時間です。
そして、子供にとっての食事は、日常生活の中でもっとも楽しい時間であるべきなのです。しかし、現実の食卓での風景はどうでしょうか。
子供がテレビを見ながら食べ物を黙々と口に運ぶ、会話もなく急かされながら流し込む、そんな時間になってしまってはいませんか?
急に手の込んだおかずを毎日食卓に並べるのは難しいでしょう。
しかし「いただきます」、「ごちそうさま」と、笑顔で挨拶をすることは、今日からでもできることではないでしょうか。
食育は、栄養バランスもさることながら、「楽しく食事をする」ということも重要なのです。今まず見直すべきは、楽しい食事、笑顔の食事という、食事の時間なのです。

では、楽しい食事や笑顔の食事の為に大切なことは何でしょうか。
それは食べることに感謝をすることと、空腹感から満腹感への変化を感じることです。
「食べる」ということは、他の生命を奪っていることでもあります。
これをしっかりと理解していれば、食への感謝の気持ちは自然と子供へも伝わっていきます。
現代ではスーパーへ行けば肉も魚も切り売りされ、生き物であるという概念が希薄になっています。
店頭に置かれている野菜や果物を見ただけでは、どれだけの手間と時間をかけてそこに並べられているのか、分からないのです。
しかし食への感謝があれば、自分の食卓に並んでくれてありがとう、自分に食べられてくれてありがとうという気持ちになることができ、食べ物を粗末にすることはなくなるのではないでしょうか。
また、空腹感を感じる事は、食べたいという欲求の現れです。
この欲求は食への意識を高め、楽しい食事により満腹感を得ることができれば、次回の食への期待、食への感謝につながります。

このように、食を通して、体の健康を保つこと、季節や命を感じる豊かな感性を得ること、さらには食に対する感謝の気持ちを養う為には、子供の頃から愛情ある食事に触れておくことが大切です。
子供に最も影響を与える親も、食に対しての意識を持ち、親子で食育について考え、食の大切さを知る機会として、家庭の食生活を見直してみましょう。
もちろん、栄養バランスのとれた食事はとても素晴らしいものです。
だからといって、無理をして毎日何時間もキッチンに立つのは難しいものです。
まずは副菜を1品増やしてみる、嫌いな食材でも子供が食べやすいように工夫する、給食レシピを参考に週末には子供と料理を作ってみるなど、できることから始めていきましょう。 ※7

※5 農林水産省 子供の食育
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/learn/
※6 文部科学省 学校における食育の推進・学校給食の充実
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/index.htm
※7 中村学園大学短期大学部「幼花」論文集  食育推進~食育は心まで育てる~
http://www.nakamura-u.ac.jp/~hashimot/members/papers/Vol2/Vol2-4.pdf

食育がもたらすであろう、子供たちの未来

<近い未来の変化-子供たちが親になる頃->

政府は食育をすすめるため、平成28年4月から5年間を期間とした第三次食育推進基本計画を作成し、5つの方針を掲げています。

1.若い世代を中心とした食育の推進
2.多様な暮らしに対応した食育の推進
3.健康寿命の延伸につながる食育の推進
4.食の循環や環境を意識した食育の推進
5.食文化の継承に向けた食育の推進

これらによって、変わっていくであろう子供たちの未来とは、どのようなものなのでしょうか。
近い未来に想像される変化を見てみましょう。

食育を受けながら育つ今の子供たちが、20歳代、30歳代になり、親世代となった時、自分の健康を守ると共に、次世代(自分の子供たち)へ食の知識や体験を伝えていくでしょう。
親と子が食に興味を持つことで、家庭での食事の時間は楽しむものとなり、笑顔の食卓は健康な身体だけではなく、豊かな心をも育んでいきます。
例えば、今では地元の人でも日常的に口にすることが少なくなった郷土料理。
この伝統的な食事が、現在では学校給食の献立として提供されています。
郷土料理を給食で食べることにより、子供たちは地域の自然や文化、産業などへの理解を深めていきます。
やがて自分が親となった時、自分が子供の頃に食べた郷土料理を、さらにその子供に作って食べさせるといった、次の世代への継承がなされるようになるでしょう。
「おばあちゃん世代しか知らない郷土料理」が、日常的に食卓にのぼるようになる日が来るでしょう。

一方で、家族で食卓を囲むことが難しい子供たちも出てくるかもしれません。
しかし「食育」が浸透している時代になれば、地域や職場などのコミュニティを利用しながら、いろいろな人との食卓を囲む機会が自然と増えてくるでしょう。
すると、栄養のある食事、温かな食卓を囲むことが、日常的になってきます。
実は現在でもすでに、家族での食卓を囲むことが難しい子供に「楽しい食卓」を経験する場として、こども食堂という取り組みが全国で始まっています。
このような温かな食卓を囲んだ子供たちは、自分が親になった時、この経験を生かすことができるようになっていくのではないでしょうか。 ※1、※2、※4

<遠い未来の変化-子供たちが中年から高齢者になる頃->

では、食育による遠い未来の変化を考えてみます。
食育が浸透することによって食生活が整ってくると、生活も健康的なものになっていき、健康的な生活は、健康な身体を作ります。
健康な身体で大人になった子供は、生活習慣病の発症や重症化を予防できるようになり、将来的には健康寿命の延伸につながるでしょう。
平均寿命と健康寿命の差がどんどん縮まっていく、そんな未来を築く可能性も、食育にはあるのです。
さらに、食に対する感謝が深まることで、個人による食品ロスの削減や、環境への配慮までもできるようになるでしょう。
残された資源を大切にしていくことで、地球への影響も変わっていくと考えられています。

食育には食べるだけではない、いくつもの思いが詰まっています。
世界的にみれば、綺麗な地球に子供たちがいつまでも住めるようにという願いも込められています。
食育活動は今や、日本だけではなく、世界中の国々で推進されている、地球にとっての一大プロジェクトでもあるのです。 ※1、※3、※7、※8

※1 農林水産省 食育基本法
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/pdf/kihonho_28.pdf
※2 政府広報オンライン 「食べる力」=「生きる力」を育む 食育 実践の環(わ)を広げよう
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201605/3.html
※3 厚生労働省 食育の推進
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000129394.html
※4 近畿農政局 食育実践者向け手引き書 
http://www.maff.go.jp/kinki/syouhi/seikatu/syokuiku/pdf/tebikisyo_all.pdf
※7 中村学園大学短期大学部「幼花」論文集  食育推進~食育は心まで育てる~
http://www.nakamura-u.ac.jp/~hashimot/members/papers/Vol2/Vol2-4.pdf
※8 国立国会図書館 欧米の食育事情
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/issue/0450.pdf

まとめ

ここ数年、幼稚園や保育園などでは、子供たちへの「食育」に力を入れているところが増えているようです。
特に保育園は、基本的に給食が提供されているため、今日の給食は何か、今日の給食で使われた食材は何かなどが、保護者に対して分かりやすく提示されています。
子供たちは、食に対して何を知り、何を考え、これから先どうやって食と関わっていくべきなのか、幼稚園や保育園の食育活動を参考にしながら、家庭でも食について考えてみてはいかがでしょうか。

 

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公開日:2019.01.09
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