子供の困った「わがまま」にどう向き合って対処すればいい?

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純粋無垢で目に入れても痛くないと思っていた我が子が、成長と共にわがままを言うようになり、気が付いたら目くじらを立てて怒っている自分がいた、ということは決して珍しくありません。
親たちを困らせ、疲れさせてしまう、そんな子供のわがままにどのように付き合っていけばよいのでしょうか。

目次

  1. わがままとは?
    • わがままってどんなこと?
    • ぐずぐず、駄々に隠された真実
  2. わがままにどう対処する?
    • 発達段階で対処の仕方が変わる
    • 子供との関わり方、親の考え方を変える
  3. わがままな子にさせないために
    • 根気よく教えていく3つこと
    • 家庭内だけではダメ、地域との繋がりも大切
  4. 子供にしてはいけない親の行動
    • 親がとるNG行動が悪循環になってしまう
  5. まとめ

わがままとは?

わがままってどんなこと?

「わがまま」を辞書で引いてみると、他人のことを考えず、「自分の都合だけを考えて行動すること」、「身勝手」、「自分勝手」となっています。
幼い子供は感情的にも未発達な部分が多く、相手の気持ちや状況などを考えることが難しい、感情のコントロールや気持ちの表現が上手にできないという特徴があります。
何とかしてママやパパに自分の気持ちや考えを伝えようと、一方的な感情表現となり、駄々をこねたり、ぐずったりします。
常に自分のそばにいる親との世界から、少しずつ外の世界へ出始めたばかりですから、当然コミュニケーション能力も未熟です。
つまり子供からするとわがままを言っている感覚はなく、私(僕)の言いたいことをわかってよという気持ちで行動します。
しかし大人の視点では自己中心的な単なるわがままにみえてしまうのです。※1、2

 

ぐずぐず、駄々に隠された真実

言うことを聞いてくれない、あまのじゃく、不機嫌など、子供の駄々こねは、本当に疲れます。
では、子供はどんな時にぐずぐずしたり駄々をこねたりするのでしょうか。
お子さんの様子を思い浮かべながらみてみましょう。
買い物中に「歩けなーい」といきなり座り込んだり、帰る時間になっても「まだ遊びたい!」と駄々をこねたり、お風呂に入るよと言っても「ヤダ」と逃げ回ったり、いろいろな場面があるでしょう。
これらは大抵、朝のバタバタしている時や夕方の忙しい時間帯に起きることが多く、それは子供に目が向いていない時なのです。
また、夕方は「お腹が空いた」「眠い」「疲れた」など、子供自身も不満感を抱えている状態になるのでなおさら、ぐずりや駄々がひどくなります。
幼い子供は小さいながらも、ママのせかせかした忙しいオーラを感じ取っています。
そして、自分の相手をしてもらえないことの悲しさや寂しさがこみ上げてくるのです。
しかし、上手に気持ちを伝えることができないので、どうにかしてママを振り向かせるために、親としては困ることを連発します。
この時の子供の気持ちは「ママに甘えたい」「今の気持ちをわかってほしい」という純粋な想いなのです。
体調が悪い時も、いつもよりぐずりがひどくなります。
大人でも体調が悪い時は気分も沈み、誰かに甘えたくなります。
子供の場合、気分の悪さや身体のだるさを上手く表現できないというジレンマが重なり、イライラがエスカレートしてしまいます
頭ごなしに「もう!いい加減にしなさい!」と叱るのではなく、子供がどんな状態でどの様な気持ちでいるのか、子供の心の中をのぞけるよう意識してみましょう。※1

 

※2  Weblio辞書 三省堂 大辞林 第三版 わがまま / 2019年11月29日閲覧
https://www.weblio.jp/content/%E3%82%8F%E3%81%8C%E3%81%BE%E3%81%BE?dictCode=SSDJJ
※1 篠 真希著 2017年4月発行 子育てのイライラ・怒りにもう振り回されない本――お母さんのためのアンガーマネジメント入門 株式会社すばる舎

わがままにどう対処する?

発達段階で対処の仕方が変わる

では、子供のわがままにはどう対処していけばいいのでしょうか。
ポイントは、発達段階に合わせた対応をしていくことです。

 

【1歳半頃から魔の2歳児と言われるイヤイヤ期】
大人の言うことなすことほぼ全てに対し反抗するイヤイヤ期。
しかし、この時期のぐずりや駄々は、子供の自我が芽生え、「自分」という存在を自らが意識し始める、とても重要な成長過程でもあります。
「私(僕)を認めて欲しい」という気持ちの表れですから、感情的に叱ったり、適当にあしらったりせず、一歩ひいた視点で子供の要求に応えてあげることがベストです。
しかし、公共の場や大切な話をしている最中など、時として子供の要求に応えてあげられない場合もあります。
そのような時は、子供の気持ちを受け止めた上で、ダメと一貫して大人側の意見を通し我慢させることも必要です。
また、この頃から子供は、楽しい、うれしい、くやしいなど自分の中に沸き起こってくる感情と、その時に親からかけられる「楽しいね」「悲しいよね」という言葉を結び付ける学習をしていきます。
感情とそれを表す言葉を結び付け人に伝えるというプロセスを、感情の社会化と言います。
感情の社会化には子供の中にある想いをくみ取り、それを言語化してあげるコミュニケーションが必要です。
ぐずったり、駄々をこねたりした時に、その不快な感情を共有し、抱っこをしながら「悲しいね」「悔しいよね」と言葉にしてあげると、子供は大好きなママの腕の中で「不快な感情を言葉として表現できるんだ」と安心感に包まれ、落ち着いてきます。
自分でやり遂げたいけど上手くいかないじれったさ、かまってもらえない寂しさ、などの不安感を安心感に変えてあげることが大切です。

 

【3歳頃~】
この頃から子供は、待つことを理解し、我慢ができるようになってきます
少しずつ子供の負担にならない程度に「待つ」ことを覚えさせ、我慢することに繋げていきます。
いつも上手くいくとは限りませんが、根気強く子供の様子を観察しながら働きかけていきましょう。
そして、子供が我慢できた時は「待っててくれてありがとう、ママは助かったよ」というように褒めてあげます。
前より少しでも進歩したなと感じたら、進歩したところを褒めてあげましょう。※3、4、5

 

子供との関わり方、親の考え方を変える

いつも穏やかなママというわけにはいかないのが現実です。
ママの体調不良やストレスの溜まり具合により、マニュアル通りにはならない日もあります。
そんな時は、子供との関わり方や親自身の考え方を変えてみましょう。
わがままをいっている時の子供の心の中は、イライラや不快な気持ちが生じていることがほとんどです。
そして、他人のイライラは伝染しやすいですが、子供のぐずりや駄々も同じです。
感情をむき出しにして騒ぐ子供の怒りで、ママも感情的になってしまいがちですが、この感情は子供のものでありママのものではありません
怒りの感情に支配され、お互いに大騒ぎすることで疲弊します。
その時は一呼吸おいて「この子は今、葛藤しながら成長している」、「今はまだこの表現方法しか知らない」と、わがままの裏にある感情に目を向けてみましょう。
忙しい時にいわれるわがままも、ママの怒りを増幅させます。
自分をかまってくれないママに対して、子供は「こっちに来て」と洋服を引っ張りだすこともあります。
「かまっている暇なんてないのに」と思うかもしれませんが、忙しくてもあえて一旦手を止め、話を聞き、一緒に座り、抱っこをするなど、ほんの少しの時間、子供の要求を聞いて向き合うことで、その後のぐずりを長引かせずに済みます。
それでも「まだ○○したい!」というような時は、「ママは今忙しいから、あと5分だけね」と約束して、相手をしてあげましょう。
ママにも都合があるということを子供にも伝え、要求をきけるときはママも頑張るよという姿勢を示していけば、子供の方も「私(僕)自身が否定されているわけではないんだ」と、少しずつ理解し、お互いの信頼関係も強くなっていくでしょう


また、子供の個性に合わせた言葉かけをしていくこともポイントです。
大人同士の付き合いでも、その人の特徴や個性に合わせて会話や説得をしますよね。
子供も同じで、姉妹兄弟であっても個性はさまざまです
ママの想いを考えられる子もいれば、順序立てて考えた結果論の方が響きやすい子もいます。
どのような言葉かけをすればこの子は耳を傾けてくれるのかを気にしながら、その子に合ったベストな対処法を考えていきましょう。※1、3

※4 厚生労働 お母さんとお子どもためのコミュニケーションのために -0~3歳までのお子さんのお母さんへのヒント集- / 2019年11月29日閲覧   http://rhino.med.yamanashi.ac.jp/sukoyaka/pdf/mama_communi.pdf
※5  東京学芸大学 乳幼児の「ぐずぐず」と感情のコントロール 東京学芸大学教授 大河原美以 / 2019年11月29日閲覧   http://www.u-gakugei.ac.jp/~ohkawara/genkieidel.pdf
※1 篠 真希著 子育てのイライラ・怒りにもう振り回されない本――お母さんのためのアンガーマネジメント入門 2017年4月発行 株式会社すばる舎  
※3 内田 伸子著 2017年5月25日 子どもの見ている世界 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」 2017年5月発行 株式会社春秋社

わがままな子にさせないために

根気よく教えていく3つこと

できるだけ子供の要求に応えてあげることは大切なのですが、その一方で何でもかんでも子供の思い通りにさせるのは良くありません
我慢する、譲る、思いやることを教えていくこともわがままな子に育てないために必要です。

 

●我慢する
遊具やおもちゃは順番に使う、食事のときは皆がそろうまで席に座って待つなど、少しずつ我慢ができるように促していきましょう。
我慢できたときは「きちんと待てたね、よく我慢したね」と褒めてあげましょう。

 

●譲る
例えば、外出から帰宅して手洗いを行うときに「先に手を洗わせて」など順番を譲ってもらう機会を作ります。
そして譲ってもらえたときには「ありがとう、優しいね」と言ってあげましょう。
譲ることでお互いが良い気分になれることを学びます

 

●思いやる
おやつを食べるときに、いつもよりも多めに取り分け、「ママにも一つちょうだい」と言ってみます。
もらったら「ありがとう、ママ嬉しい」と感謝の気持ちを伝えます。
人のためになることは相手が嬉しくなるということを体験させてあげましょう。※4

 

家庭内だけではダメ、地域との繋がりも大切

近年は核家族化が進み、地域や親戚との関わりが減り、相談する相手や頼れる人がいないため、子育てに不安を抱える、自信がもてない親が増えてきています。
すると子供に対して過保護・過干渉に陥りやすくなり、子供のいいなりになってしまうことがあります。
子供が嫌な気持ちになり泣いてぐずることに過敏になり、ぐずらせないような工夫を過度に行い、泣かせないための配慮ばかりしていると、子供は少しの不快を感じただけで駄々こねをするようになります。
家族がいるときは良い子でも、園や学校ではかんしゃくばかり起こしてしまう可能性もあるのです。
このようにならないためにも、近所付き合いや地域の行事を日頃から大切にすることが大切です。
人は、顔見知りの困りごとには手を貸しますが、知らない人の困りごとには容易に手を出しません。
地域に顔見知りの人がいれば、親は相談相手や困ったときに手助けを頼める人ができますし、子供は沢山の人と関わることで社会性を学べる環境が増えます。※5、6

※4 厚生労働 お母さんとお子どもためのコミュニケーションのために -0~3歳までのお子さんのお母さんへのヒント集- / 2019年11月29日閲覧   http://rhino.med.yamanashi.ac.jp/sukoyaka/pdf/mama_communi.pdf
※5  東京学芸大学 乳幼児の「ぐずぐず」と感情のコントロール 東京学芸大学教授 大河原美以    / 2019年11月29日閲覧    http://www.u-gakugei.ac.jp/~ohkawara/genkieidel.pdf
※6 東京都市長会 活動内容 提言 次世代を担う子どもたちの育成 ~多摩子ども体験塾への招待状~ 平 成 1 7 年 1 0 月 / 2019年11月29日閲覧   https://www.tokyo-mayors.jp/katsudo/pdf/teigen200510.pdf

子供にしてはいけない親の行動

親がとるNG行動が悪循環になってしまう

わがままに対する親のNG行動は、悪循環という負のサイクルを生んでしまいます。
以下のことに気をつけてみましょう。


●子供の感情を無視して押さえ込まない
おもちゃを持って行かれた子供が大泣きをした時は、「譲る」を覚えることも大切ですが、「こっちのおもちゃを使いなさい」「もう泣かないの」などと、子供の感情を無理に押さえ込むのはよくありません。
「悔しかったね」と気持ちを受け止めてから落ち着かせてあげましょう

 

●感情的に叱らない
感情的に一方的に叱ることは、火に油を注ぐ行為です。
子供もどんどん意地になりわがままな要求が増えていくこともあります。

 

●放置(無視)をしない
駄々をこねて大泣きされると、ママのイライラも頂点に達します。
しかし、騒ぐ子供を無視する、放置することは、子供の保護を放棄したことになります
しばらくすれば子供は疲れて大人しくなりますが、将来、人に対して暴力的になる危険性があります。

 

●冷たく接する
放置や無視をしないように心がけていても、ママの心のコントロールが上手くいかない時、「何?一人でやりなさい」など子供に優しくできず冷たく接してしまうこともあります。
けれども子供にはママの冷たい態度が耐えられず、どうにか振り向いてもらうと「ねぇ抱っこして」「絵本読んで」など要求が増えてきてしまいますし、悲しい気持ちを抱くことになります。


子供のぐずりや駄々といった不快な行動は、親から与えられる安心感によって制御され、コントロールしていくことを学習していきます。
しかしNG行動は子供が安心感を得られないこととなり、気持ちのコントロールを習得する妨げとなりうるのです。
親も人間ですから間違いをしてしまうこともありますが、NG行動が常とならないように意識してみましょう。※1、5

 

※5  東京学芸大学 乳幼児の「ぐずぐず」と感情のコントロール 東京学芸大学教授 大河原美以 / 2019年11月29日閲覧   http://www.u-gakugei.ac.jp/~ohkawara/genkieidel.pdf
※1 篠 真希著 2017年4月発行 子育てのイライラ・怒りにもう振り回されない本――お母さんのためのアンガーマネジメント入門 株式会社すばる舎

まとめ

ほとんどの子供のわがままには、何かしらの理由が隠されています。
それを見極め、言動を受け止めてあげることが、子育てには大切です。
しかし時には、子供の感情がおさまらずに大変な思いをすることもあるでしょう。
また、親自身の体調不良などでイライラしてしまうことや、上手に対処できない時もあります。
1人で悩まずに周りの人の手や知を借りながら、少しずつコツコツと子供のわがままに上手に対処できる親を目指しましょう。

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