子離れができない親の心理と子離れの必要性を解説!

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親にとって、我が子は愛おしく大切な存在です。
親自身の犠牲を払ってでも守ってあげたいと思うのが親心です。
しかし、親が子供を「守ってあげたい」という気持ちも度が過ぎてしまうと「子離れ」がスムーズにできなくなってしまいます。
子供は、いつか親の手を離れていくもの。
いつまでも親の庇護の中だけでは生きていけません。
子離れの必要性と子離れできない親の特徴を知り、来るべき時期に備えていきましょう。

目次

  1. ●子離れできない親の特徴
    • こんな方は要注意
  2. ●子離れできない親が子供に与える影響
    • 親のエゴから生まれる影響
    • 過剰な母性が生み出す影響
  3. ●子離れできない親を子供はどう感じているか
    • 親の行動から感じる子供の心理
    • 親から発せられる言葉から感じる子供の心理
  4. ●子離れを上手にしていくための心得
    • 成長に合わせた子離れ
    • 親の考え方、意識を変えていく
  5. まとめ

●子離れできない親の特徴

こんな方は要注意

自分はきちんと子離れができるのか、あるいはできているのだろうかと悩む方も、多いのではないでしょうか。
子離れがなかなか出来ない親には、次のような特徴があります。
こうした考え方を持つ場合、子離れができずに悩んだり、無意識のうちに子供に依存をしている可能性があります。
子供を自分の所有物だと勘違いしている
大変な日々を乗り越えて産んだ私の子。
だから最高の愛情と環境で、子供をプロデュースしようとします。
必要以上に習い事をさせ、流行に遅れないように何でも買い与え、自分の思い通りに成長させようとします。
そして、我が子が褒められるとプロデュースした自分自身も嬉しくなり、さらに高みを目指して子供を自分の思うままに従わせようとしてしまいます。※1
親自身の価値観を押し付けている
子供を産んで育てているのは私。
という考えが強すぎる親は、あなたのためを思いながら育ててあげているという気持ちが強く、結果的に親の価値観を子供に押し付けています。
人生経験は豊富なので、子供に「こうしなさい」や「ママの言うことを聞いていればこんな事態にはならかった」などと言ってしまいがちです。※1
子供に過度な期待感を持っている
親が果たせなかった夢や理想を子供に投影して、子供の習い事や進学のことまでの一切を親のシナリオ通りにさせ、高い結果を求めます
この傾向は、子供は教育次第で、将来高い水準の職業につけると信じている親も当てはまります。
また、器用な我が子に対してできて当然なのだと思い込み、当たり前のように家事や手伝い、兄弟の面倒などを任せてしまいます。※1、2、3
干渉しすぎて子供を信じきれていない
子供の行動や学力、友達関係などが心配でどうしようもなく気になり、根掘り葉掘り聞いて親自身の不安を取り除こうとします。
また、子供が起こしたトラブルに対していちいち介入し、手助けをしてしまいます。※1
子育てが生きがい・過保護
核家族で日常的に子供と密接に過ごす時間が多くなると、親自身にとって子供が全てとなり子育てが生きがいとなってしまいます。
我が子が困らないように、親が何でもしてあげるのが当たり前。
また、子供に嫌な思いをさせたくないという気持ちが強く、子供のいうことを何でも聞いてしまいがちです。※1
全体を通して見えてきた特徴として、愛おしい我が子のために良かれと思ってしていることが、実は親自身の不安を無くすことや満足に繋がっているといえるでしょう。
※1、2、3

※3 文京学院大学 母親と子どもの関係性からみる 支援のあり方に関する研究 ~学童期に至るまでの関係性に着目して~ 猪野塚 容子・綿 祐二
https://www.u-bunkyo.ac.jp/center/library/image/kyukiyo11_15%20213-232.pdf  
2019年1月31日閲覧
※1 木元教子(著) 1991年3月発行 子離れ親離れのすすめ 海竜社
※2 教育と医学の会 編 2019年3月発行 教育と医学 第67巻第3号通巻第789号 慶応義塾大学出版

●子離れできない親が子供に与える影響

子離れが上手にできずにいることは、子供に悪影響を与え将来的に親子共々大変な苦労をすることになるといわれています。
実際には、どのような影響を与えてしまうのでしょうか。

親のエゴから生まれる影響

子供はいずれ、自我をもちはじめ親の意見に反抗し自分の意思を強く表示するときがきます。
いわゆる反抗期です。
しかし、子離れができない親は「これはあなたのためなのよ」と、親の思い描く人生や、困難を回避する道を進むことを強要します。
反抗するたびにこのようなことが繰り返されると、子供は自分の考えや主張がねじ伏せられているという想いがつのります。
そしてその想いが爆発して、非行や家庭内暴力へと発展する可能性が高くなるのです。※1
一方で、自己主張を諦めた子供は、親の言う通りにしていればいいんだと思うようになり、自分の力で人生を歩まなくなり、物事の結果は指示を出している親の責任だと考えるようになります。
結果的に、責任感が無い、感情が乏しい、熱意が欠如するといった人格になる可能性も高くなります
※1、2

過剰な母性が生み出す影響

親(特に母親)は、出産直後から子供のお世話をつきっきりでしています。
ですから自然と「私がいなくなったら、この子は生きていけない」とう感情が沸き起こります。
しかし、感情の度が過ぎてしまうと、可哀そうな経験をさせたくないという気持ちも強くなってきます。
すると、子供が大きくなってからも身の回りの世話や学校の準備の手伝いなどをしてあげるという行動をとります。
さらには、叱られて恥ずかしい思いや挫折で辛い思いをしないようにと先回りをして困難や壁という障害物の除去にも努めようとします
親が全てを用意してくれる環境で育つ子供は、状況に応じて考える力が弱くなり、状況判断ができない指示待ち人間や、困ったら親がどうにかしてくれると依存するようになるのです。
親の方も「やっぱりこの子は私がいないとダメなんだ」と、自分の存在意義を子供に向け、子育てが生きがいとなり、いつまでも自分の側においておきたいと思うようになります。
こうしてお互いに依存し合う共依存に陥ってしまうのです。 ※1、2

※1 木元教子 著 1991年3月発行 子離れ親離れのすすめ 海竜社
※2 教育と医学の会(編) 2019年3月1日 教育と医学 第67巻第3号通巻第789号 慶応義塾大学出版

●子離れできない親を子供はどう感じているか

子離れができない親に対して、子供たちにはさまざまな思いがあるようです。

親の行動から感じる子供の心理

失敗や辛い思いをさせたくないからと、「ママが明日の準備をしてあげるからね」などと、何でも先回りをして手を出す人は要注意です。
確かに、可愛い我が子を思っての行動と言動かもしれません。
けれども、心のどこかで落ち込んだ子供の姿を見るのが辛いという気持ちが存在しているはずです。
親自身が辛い思いをしたくないという気持ちです。
そして親の子供を思う気持ちとは裏腹に、子供は親の奥底にある気持ちをキャッチし、ママが嫌な思いをしたくないだけなんだ、ということに気付きます。
だったら言うとおりにしてればいいや、自分は結局、ママの飾りでしかない、自分は大切にされていないと感じてしまいます。※4
次に園や学校、友達と遊ぶなど、親が居ない環境での出来事をしつこく聞きだそうとする人もいます。
そして、子供の話した出来事が親の考えにそぐわない、と思ったら、「○○した方がよかったのに」「○○するべきだった」と、子供を責めてしまいます
責められ続けた子供はしつこく聞きだそうとする親に対して、うるさいと感じる反面、親をガッカリさせてしまうと自信を失ったりして、もう話したくない、と口をつぐんでしまうようです。※4
また、子供の意見や希望は聞くけれども「でもね、こうした方が良い」と親の意見を押し付けてばかりいると、子供はどうせ話しても論破されるだけだからムダ、面倒くさいと感じてしまいます。 ※4

親から発せられる言葉から感じる子供の心理

優秀な家系や地位があると思っている親、父親を偉大だと思っている母親は、子供に対して「あなたは他の子とは別格なのよ」「あなたは出来る子」と過剰に期待に満ちた言葉をかけ続けることがあります。※1
そんな言葉を聞いて育つ子供は、頑張っているけどできない自分に対して、自分は家族とは違って自分は何て小さな人間なのだろうと感じ、自身を過小評価してしまいます。
さらに、期待に応えたいけれど結果が出せなかったらどうしようという不安を常に感じています。
それから、「あの子を見てみなさい」と我が子を兄弟や友達と過剰に比較をして、子供のやる気を奮い立たせようとする人もいるでしょう。※4
このような親の発言で子供は、やる気をだすどころか、悲しみを感じるだけとなります。
親はダメな自分よりも「あの子」の方がいいのだと思い込み、自分を必要としていないと感じてしまうでしょう。
また、子供の将来が心配で子供がやりたくないことを「あなたのためだから」という言葉を使い無理強いすることは、子供にとってプレッシャーを感じることもあります。※4
思春期を迎える年頃の子供の言動は親にとってとても気になることだと思います。
だからといって、「その格好はみっともない」「周りに流されてばかり」などと過剰に指摘していると、子供は自分自身や友達など自己の全てを否定されているように感じ、さらに「うるさいなぁ」「ほっといてよ」と感じてしまうのです。
※1、4

※1 木元教子(著) 1991年3月発行 子離れ親離れのすすめ 海竜社
※4 浅妻秀子(著) 2017年4月発行 幼児期・小学生・思春期 子どもが本当は欲しがっているお母さんの言葉 青春出版社

●子離れを上手にしていくための心得

成長に合わせた子離れ

いきなり子離れをしようと思っても、親子双方にとって良い結果を生むことはありません。
子供の成長過程をみながら、少しずつ子離れをしていく心構えと意識の切り替えをしていきましょう。
乳幼児期~幼児期では、子供の甘えを十分に受け止め、子供の「自分は家族の一員なんだ」「愛されている」という実感を育て、愛着形成で自己肯定感と親子の信頼関係をしっかりと築きましょう
この親子間の信頼関係があれば、親元を離れて過ごす子供に理不尽なことが起こっても、自己肯定感が確立されているので、子供は自身の力で解決することを学んでいきます
親の方も、失敗したらどうしよう、嫌な思いをして泣いていないだろうかと心配ばかりするのではなく、我が子は今強く成長していく過程なのだという意識をもちましょう。※5
学童期になると、子供自身は自分の身の回りのことをしなければ、学校という組織の中で生活をすることができなくなります。
また、友達同士の動きも活発になる時期ですから、親にとってはまだまだ未熟な我が子の行動力に不安を感じるでしょう。
しかしここでは、ある程度のことは子供に任せて様子をみることが大切です
何でもかんでも親が口や手を出してしまうと、子供の判断力が育たず、「指示待ち人間」になってしまいます。
見守りながら子供自身に任せ、どうしようもない事態が起きたときにそっと手を差し伸べてサポートするとよいでしょう。※5
思春期は、子離れをする大きなチャンスです。
子供は自分のアイデンティティ(自己)を確立しようと奮闘している時期ですから、今まで以上に親元から離れていこうとします。
親子にとって苦しい状態ではありますが、ここでも「頑張れ」という気持ちで子供を信じて見守りましょう
それから、子供の意見や考えに耳を傾け「子供なりの考え方」を理解をすることも大事です
※4、5

親の考え方、意識を変えていく

子離れをするにあたり、親の考え方や意識は子育てを通じて変えていくことがとても大切です。
「育児は育自」ともいうように、親として育っていく過程でもあるのです。
子供を産んだのは確かに母親ではありますが、だからといって子供は所有物ではありません
ここを勘違いすると、自身が果たせなかった夢や理想を子供に押し付けてしまう可能性もあります。
子供も一人の人間であり自我をもった個人であることを理解しましょう※1、2
手のかかる幼児期ではまだ「育てる(保護する)・育てられる(保護される)」という密接した親子関係が必要ですが、小学校にあがるくらいから1対1の関係を意識するようにしましょう※1、2
近年は、少子化や核家族という社会的背景から、子供とだけ過ごす時間が増え、「子育てが生きがい」になりやすい時代です。
子供が自立し、親元から巣立っていった後にやってくる喪失感を防ぐために、親も趣味や習い事などを見つけ、親自身のコミュニティを確立し、自分のためだけの時間や空間を持てるようにしておきましょう。※1、3
また、日頃から夫婦関係を良好に保つように心がけましょう。
例えば子供が寝た後に家で映画を見る、子供の前でも自然とスキンシップがとれるようにするなど、夫婦の絆を意識しながら子育てをしていれば、子育てが生きがいという落とし穴から抜け出すことができます※1
過保護・過干渉にならないためには、失敗やネガティブな経験こそが人として成長していくという考え方が必要です。※4
子供の困難を親が阻止することは、「こんなときはこうすればいい」「こうしてみよう」という、子供の創意工夫や成長を奪うことになります。
成長を奪われた子供は、社会に出たときに非常に大きな壁にぶつかります。
そうならないためには、子供の可能性を信じて「挑戦・失敗」を経験させる勇気をもちましょう
また、親自身の子供時代、親から自立をしようと反抗や葛藤をしていたことを振り返ってみましょう。
そうすることで、今現在の我が子の気持ちや考えが理解でき、子供への接し方のヒントに繋がるかもしれません。 ※1、2、3、4

※3母親と子どもの関係性からみる 支援のあり方に関する研究 ~学童期に至るまでの関係性に着目して~ 猪野塚 容子・綿 祐二 2020年1月10日閲覧
https://www.u-bunkyo.ac.jp/center/library/image/kyukiyo11_15%20213-232.pdf  
2020年1月31日閲覧
※5 志免長役場 教育力向上福岡県民運動 ワンポイント・リーフレット 第31号 親離れ・子離れ(依存と自立) 
https://www.town.shime.lg.jp/uploaded/attachment/336.pdf
2020年1月31日閲覧
※1 木元教子(著) 1991年3月発行 子離れ親離れのすすめ 株式会社海竜社
※2 教育と医学の会 編 2019年3月発行 教育と医学 第67巻第3号通巻第789号 慶応義塾大学出版株式会社
※4 浅妻秀子(著) 2017年4月発行 幼児期・小学生・思春期 子どもが本当は欲しがっているお母さんの言葉 株式会社青春出版社

まとめ

子供のためと良かれと思ってしてきたことが実は子供の自立の足を引っ張り、親自身も「子離れ」できていない状態になっていたかと思います。
また、子供が自分の元を去っていく寂しさが「子離れ」できない要因でもありました。
今すぐに親自身の考え方や感情を変えることは難しいですが、子供の成長と共に親も自立を目指し、お互いの関係性を良くしていけたらいいのではないかと思います。

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