早期教育とは?メリットと弊害、幼児教育との違いは?
子どもが小さいうちから文字の読み書きや計算、英語学習などを行う早期教育。
近年では、幼児向けの知育教室(幼児教室)や家庭で学べる英語をはじめとした教材、オンラインなどの通信教育の普及もあり、興味のある家庭も多いのではないでしょうか。
今回は、この早期教育のメリットや弊害、混同しやすい幼児教育との違いについて解説します。
目次
- 早期教育とは?幼児教育と違いはある?
- 幼児教育との違いは?
- 早期教育に効果はある?メリットは?
- 小学校での学習にスムーズに対応できる
- 語彙力や想像力が養われる
- 子どもの可能性を広げられる
- コミュニケーション能力につながる
- 親子の絆が深まる
- 自己肯定感を育むきっかけになる
- 目的を間違えると弊害も!早期教育のデメリット
- 子どもの自主性が育ちにくくなる
- 自己肯定感を下げる原因にもなる
- 無理強いすると嫌いになってしまう
- 費用負担が大きい
- 早期教育は、習い事でするもの?運動は?
- 英語は早期教育が必要?学習における臨界期とは
- まとめ
早期教育とは?幼児教育と違いはある?
早期教育とは、胎児期から幼児期の子どもに対して、読み書きや外国語、計算などを学習することを指します。※1
幼児期までは、物事の吸収力や順応能力が高いとされる脳が柔軟な時期。
この時期に、子どもの能力を引き出すのが早期教育の大きな目的です。※1
小学校受験のために早期教育を行う場合もあります。※1
幼児教育との違いは?
早期教育を知るうえで注意したいのが、幼児教育との違いです。
幼児教育は、子どもの生涯にわたる学習の基盤を作ることが目的です。※3
家庭での生活はもちろん、幼稚園や保育園、習い事の教室など、子どもが生活するすべての場所において行われるすべての教育を指します。※3
さらに幼児教育は、早期教育のように知識や技術を先取って習得するものではありません。
子どもが自ら行う活動としての「遊び」も学習と位置付けています。※4
具体的には、幼児教育は、幅広い活動を通じて好奇心や道徳心などの人間形成の基礎を身に着けることが目的の教育です。※3※4
小学校受験を目的とした早期教育は、結果を重要視し、学びの土台を作るもの。
子どもの成長と共に伸びていく力をはぐくむ幼児教育とは本質的に異なります。※4
※1早期教育とは/長尾みゆき 村上昌美 元木順子 中村学園大学短期大学部幼児保育学科/2021年8月6日現在
https://www.nakamura-u.ac.jp/~hashimot/members/papers/Vol3/Vol3-1.pdf
※2早期教育が幼児の発達に与える影響と今後の在り方/須森りか/2021年8月6日現在
https://www2.gsis.kumamoto-u.ac.jp/study/soturon/98h/sumo.pdf
※3第2節 幼児教育の意義及び役割/文部科学省/2021年8月6日現在
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1395402.htm
※4子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について/文部科学省中央教育審議会 /2021年8月6日現在
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05121401.pdf
早期教育に効果はある?メリットは?
幼児期は、脳の成長が著しく、多くの物事を吸収しやすい時期です。
この時期の早期教育は、脳の発達面において、子どもに良い影響や効果があるとされています。※1
早期教育のメリットは、以下のような点が挙げられます。
【早期教育のメリット】
- 小学校での学習にスムーズに対応できる
- 語彙力や想像力が養われる
- 子どもの可能性を広げられる
- コミュニケーション能力につながる
- 親子の絆が深まる
- 自己肯定感を育むきっかけになる
小学校での学習にスムーズに対応できる
幼児期から読み書きや英語などの学習を行うと、就学後の学習がスムーズにスタートできるメリットがあります。
小さなうちから学習の基礎が出来ているため、授業に遅れることなく勉強しやすい環境が整えられるのです。
また、読み聞かせなどを通じて集中力がつくと、小学校での授業にも集中して取り組めます※5
語彙力や想像力が養われる
幼いうちからの絵本の読み聞かせも、就学後の効果に期待できる早期教育の一つです。
幼児期から絵本を通して言葉に触れていると語彙力がつき、豊かな想像力も養われます。※5
想像力が付くことで、聞いたお話をスムーズに想像でき、長い話の絵本も次第に集中して聞けるようになります。
さらに、絵本の読み聞かせで養った語彙力や想像力は、話の意図をくみ取る基礎につながります。※5
子どもの可能性を広げられる
子どもが小さいうちは、自分の力だけで得意分野や適性を知ることは困難です。
早期教育でさまざまな経験や学習をすることで、親子とも今まで気づかなかった才能や興味のある分野に気づくかもしれません。
早期教育を行うことは、時として子どもの持つ可能性を広げることにも繋がるのです。
また、好きなものや得意なものを早いうちから専門的に学ぶことで、より能力が高まる可能性も出てきます。
コミュニケーション能力につながる
早期教育は習い事として、外部のスクールなどで行うこともありますよね。
早いうちから大人の講師や集団とのやり取りを経験することは、コミュニケーション能力を養うことに繋がります。
例えば、礼儀を重んじる武道系の習い事では幼児期から徹底して礼儀を学びます。
将来社会に出たときのコミュニケーション能力の基礎となる、礼儀正しさを身に付けられるでしょう。※1
親子の絆が深まる
早期教育は、親のサポートが欠かせません。
必然的に親が子どもに関わる時間が増えます。
特に通信教育や教材を使った自宅で行う早期教育は、親が主体となって進めなければなりませんよね。
子どもとの会話は、必然的に多くなるはずです。
早期教育を通じて子どもとの触れ合いやスキンシップをする機会が増え、親子の絆がより深まるのです。
スキンシップは子どもの精神的な安定を得やすく、それによって集中力や記憶力も高まりやすいとされています。※6
この点も早期教育のメリットと言えるでしょう。
自己肯定感を育むきっかけになる
早期教育の結果として、出来ることが増えたり、達成感を得たり、子どもの経験も増えるでしょう。
達成感を経た経験は、「自己肯定感」を育みやすい傾向があると、ある調査で分かっています。※7
自己肯定感は、子どもが自分自身を好きだと感じたり、自分に良いところがあると認めたりする生きる上で大切な気持ちです。
自己肯定感が高い子どもは、協調性が高く、物事を前向きに捉えやすいそうです。※8
チャレンジ精神に富んでいるため、子ども自身の可能性をより高めることが出来るのです。※8
早期教育は、子どもが豊かな人生を過ごす上で大切なことを学ぶ機会でもあると言えそうです。
ただし弊害が全くないわけではありません。
次章で詳しく解説します。
※1早期教育とは/長尾 みゆき 村上 昌美 元木 順子 中村学園大学短期大学部幼児保育学科/2021年8月6日現在
https://www.nakamura-u.ac.jp/~hashimot/members/papers/Vol3/Vol3-1.pdf
※5絵本の読み聞かせ 子どもの「自己肯定感」を伸ばす/NIKKEI STYLE/2021年8月6日現在
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO81189520S4A221C1000000/
※6子どもとのスキンシップが必要な理由/関西保育福祉専門学校/2021年8月6日現在
https://www.khf.ac.jp/weblog/%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%A8%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E7%90%86%E7%94%B1/
※7日本の子供たちの自己肯定感が低い現状について/首相官邸/2021年8月6日現在
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/chousakai/dai1/siryou4.pdf
※8子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば/石田勝紀/集英社/2021年8月6日現在
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-780842-1
目的を間違えると弊害も!早期教育のデメリット
さまざまなメリットを持つ早期教育ですが、その一方で通常の発達段階よりも早く教育を行うことで考えられる懸念点も存在します。
早期教育を行うことで起こり得るデメリットは主に4つです。
【早期教育のデメリット】
- 子どもの自主性が育ちにくくなる
- 自己肯定感を下げる原因にもなる
- 無理強いすると嫌いになってしまう
- 費用負担が大きい
子どもの自主性が育ちにくくなる
小さい頃に学び始める早期教育では、大人が子どもに代わって意思決定をしますよね。
大人が意思決定していると、子どもが受け身になる場面が多いかもしれません。
子どもが自分自身で物事を決める機会が奪われてしまっている懸念もあるのです。
また、子どもは自分自身のために努力するのでなく、親の期待に応えるためという依存的な人格になりやすいとも言われています。※2
自分で物事を切り開く力が付きにくくなる懸念もあるようです。※2
自己肯定感を下げる原因にもなる
達成感に繋がる経験を得やすいメリットの反面、親や講師など関わる人の対応によって自己肯定感を下げる原因にもなります。
子どもが上手く出来ず「他の子は出来るのに、どうして出来ないの?」「何度やれば分かるの?」など否定的な言葉を掛けてしまうとはありませんか?
このような声掛けは、子どもは自分に対して否定的な意識を持ちやすくなります。
否定的な言葉をかけられた経験が重なると、自己肯定感の低い子どもになってしまう可能性があるのです。
また子どもが努力した過程ではなく、結果だけを褒めたり認めたりすることにも注意しなければなりません。
子どもは結果を出さなければ認めらないと感じてしまうかもしれません。※9
その結果、自己肯定感の成長を阻害することに繋がるとも言われています。※9
無理強いすると嫌いになってしまう
親が焦って無理強いしてしまうと、子どもは学ぶことが嫌いになってしまうかもしれません。
子どもの興味は、遊びの中で育つとも言われています。
いきなり英語や読み書き、計算を教えても、興味がなければ子どもは見向きもしませんよね。
そこを強制的にやらせようとすると、かえって勉強嫌いになってしまうと危惧されています。
費用負担が大きい
乳幼児期から英会話やスイミングなど習い事をさせるには費用がかかります。
子どもが小さいうちから教育費をかけてしまい、将来の学費が足らなくなってしまっては元も子もありませんよね。※1
大学までの学費を見越したうえで、早期教育にいくらかけられるか家計設計が求められます。
子どもが幼いうちは、上手く出来なかったり、失敗したりすることも多いものです。
親として我が子のありままの姿を受け入れ、無条件で認める姿勢を持つことが早期教育において大切なことの1つでしょう。
※1早期教育とは/長尾 みゆき 村上 昌美 元木 順子 中村学園大学短期大学部幼児保育学科/2021年8月6日現在
https://www.nakamura-u.ac.jp/~hashimot/members/papers/Vol3/Vol3-1.pdf
※2早期教育が幼児の発達に与える影響と今後の在り方/須森りか/2021年8月6日現在
https://www2.gsis.kumamoto-u.ac.jp/study/soturon/98h/sumo.pdf
※9子どもの自己肯定感を高め、「やりたいこと」を引き出す子育て/ダイヤモンド・オンライン/2021年8月6日現在
https://diamond.jp/articles/-/207966
早期教育は、習い事でするもの?運動は?
早期教育の内容は、子どもの成長に合わせて変わります。
胎児期に行われている早期教育は、胎教音楽や、お腹の子どもに絵本を読んだり語りかけたりするといったものです。
乳幼児期に行われる教育は、文字の読み書きや英語など学習系の内容や、音楽や絵画などの芸術系、スイミングやリトミックといった運動系など、さまざまです。※1
最近は、特定のスクールに行かなくても家庭で学べる教材や通信教育も増えています。
特にパソコンで学べるオンライン学習は、アプリや映像を中心として無料で学べるコンテンツも登場しています。
【胎児期の早期教育】
- 音楽を聞かせる※1
- 日本語や外国語の音声を聞かせ※1
- 母親の声に絵本の読み聞かせ※1
など
【乳幼児期の早期教育(例)】
◆学習系
- 文字の読み書き※1
- 計算※1
- そろばん※1
- 英語※1 など
◆芸術系
- ピアノなどの音楽※1
- リトミック※1
- 絵画工作※1 など
◆運動系
- スイミング※1
- バレエ※1
- 体操教室※1
- リトミック※1
- サッカー※1
- 武道※1 など
最近では学習系から運動系までさまざまな習い事に赤ちゃんの頃から挑戦できます。
一方家庭でできることもたくさんあります。
赤ちゃんの頃に手軽にできるのは、絵本の読み聞かせです。
自治体によっては、赤ちゃんの絵本がもらえるところもあります。
赤ちゃんへの絵本の読み聞かせは、その後の言語力にもつながり重要視されているのです。
絵本の読み聞かせ♪ 赤ちゃんから始める効果と読み聞かせのコツ
で詳しく解説しています。
※1早期教育とは/長尾 みゆき 村上 昌美 元木 順子 中村学園大学短期大学部幼児保育学科/2021年8月6日現在
https://www.nakamura-u.ac.jp/~hashimot/members/papers/Vol3/Vol3-1.pdf
英語は早期教育が必要?学習における臨界期とは
早期教育の中でもとりわけ注目度が高いのが「英語学習」ではないでしょうか。
赤ちゃん向けの英語教材があったり、幼児期から通える英会話教室が人気だったりと、小さい頃から英語に触れさせたいという家庭も珍しくはありません。
小さいうちから英語を習わせたいという背景には、英語の「臨界期」への懸念があります。
もとにあるのは、臨界期を過ぎると習得が不十分になるという仮説です。
臨界期前に子供に英語を習得させたほうが、ネイティブに近い言語力が身につくと考えられています。
しかし第二言語の臨界期については、まだ判明していないことも多く結論はでていません。※10
ただ一般的に英語学習は年齢が上がるほど習得が難しくなると解釈されています。※11
日本人の英語習得において、発音の獲得は5歳~8歳くらいだそうです。※11
早くから始めることで、人生のうちの総学習時間が確保でき、学習到達度が高くなるという考え方もあります。
さらに小さい頃から英語を習うことで、中学高校の英語学習時にモチベーションが高いという相関性も指摘されています。※11
英語教育においても早期教育はいくつかのメリットがあると言えるでしょう。
ただ英語の場合も、子どもに興味がなければ親の押し付けになってしまいます。
小さい子の言語習得には、大人からの優しい話しかけが欠かせません。※12
親も楽しみながら、遊びの延長で子どもに英語で話しかけるところから始めてみてはいかがでしょうか。
※10 言語習得の臨界期について/白畑 知彦/静岡大学/2021年8月6日現在
https://www.jstage.jst.go.jp/article/secondlanguage2002/3/0/3_3/_pdf
※11 EFL環境において臨界期はあるか/吉田研作/文部科学省/2021年8月6日現在
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2014/04/01/1345784_02.pdf
※12 0歳児の言語習得と四肢運動の発達/正高信男/バイオメカニズム学会誌/2021年8月6日現在
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/26/1/26_KJ00000972787/_pdf/-char/ja
まとめ
幼児期は、脳の発達が著しい時期です。
このような時期にさまざまな経験や知識を与えられる早期教育は、子どもの可能性を広げる方法の1つです。
英語や読み書きだけでなく運動面でも、幼児期に多くの経験をすることで、小学校入学後もスムーズに学べるかもしれません。
しかしこの時期の子供は、自我や心の成長も未発達な状態です。
親が強制してしまうと、将来に渡り勉強嫌いになってしまう可能性も否定できません。
我が子の気持ちやその時々の状態を把握しつつ、親として子どもに寄り添ったサポートをしてあげられると良いですね。