「9歳の壁(10歳の壁)」とは?親の関わり方や対処法について心理学を参考に解説

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9歳の壁という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
10歳の壁、小4の壁と呼ばれることもあり、小学生のお子様がいる親の方は耳にしたことがあるかもしれません。
9歳の壁とは、勉強や人間関係などでつまづいてしまうなど、様々な点で起こりうる問題のことを指します。
どのような壁なのか、男女の違いや対処法についてご紹介します。

9歳の壁(10歳の壁)・小4の壁とは? 3つの正体

「9歳の壁」とは、もともと9歳・10歳頃に増える勉強のつまづきを意味する言葉として使われていました。※1
しかし、近年では、一般的に「9歳の壁」「小4の壁」「10歳の壁」は、勉強以外の問題も含む形で使われています。
小学校4年生の「環境の変化」や「発達段階の変化」が、現代のさらなる「壁」となって親子の前に立ちはだかっているのです。
「環境の変化」は、小学4年生になると学童が終了してしまい親は働き方を見直さなければならなくなるという問題です。
「発達段階の変化」は、9歳頃になると、子供は自分と他人との違いを意識し始め、人間関係が複雑化するため、子供との付き合い方が難しくなるという問題です。※2
それでは、3つの壁について詳しく見てみましょう。

 

算数・国語につまづく?勉強の壁

小学4年生になると、勉強の質が本格的な教科学習へと突入し、難しくなるため、学校の勉強についていけない子が増えることが分かっています。
このように、小4になり勉強についていけないことが、1つ目の「壁」です。
教科ごとに見てみると、国語では、話し言葉中心の学びから書き言葉中心の学習に変化します。※3
書き言葉には、抽象的な概念や高次な学習言語も含まれるため、これらが理解できずに苦しんでしまいます。
さらに、算数では、足し算、引き算、九九のような暗記でも解ける基礎問題が終わり、図形問題や文章問題なども出題されるようになり、読解力や思考力が問われるようになります。
その結果、小学4年生頃に、学習についていけない子が増加しています。※し※4
また、社会や理科といった科目も教科としての学習にシフトし、勉強に対しての学習意欲も個人差がでてくる時期です。

 

人間関係・自己肯定感の壁

小学校4年生頃は思春期・反抗期の始まりの時期です。
心も体も自立に向けて大きく成長する時期ですが、それ故に、親としても接し方が変わり悩むことも増えるのではないでしょうか。
9歳頃の子供の人間関係は、それまでの「親子関係中心」から「友人関係中心」へと変化します。※5
男女を意識し出すのもこの頃で、友人関係も複雑になり、子供には悩みの種になっているかもしれません。
また、小学4年頃から劣等感や羞恥心などを強く意識する子もいて、場合によっては否定的な自己評価につながってしまいます。
親は子供の変化を注意深く見守る必要があります。
しかし、学年が上がるにつれ、子供は親に話をしてくれなくなり、子供の内面が見えづらくなることもあり、親にとっての壁となっています。※1

 

共働き家庭に立ちはだかる働き方の壁

共働きの親にとって頭の痛い「壁」が、学童問題です。
現在の学童の制度は小学6年生までが対象とされています。
しかし、待機児童が多い地域では、小学校4年生以上になると学童を出なければならないことも多く、放課後の子供の居場所が社会的にも問題となっています
公立の学童保育が使えなくなってしまった場合、共働き家庭では、パパかママが働く時間を調整せざるを得ません。
さらに、中学受験をする場合は、小学校4年生から進学塾に通うかどうかという悩みも出てきます。※7
親は、塾への送り迎え、長期休暇の講習のお弁当や送り迎え、子供の勉強のサポート、勉強の時間管理、メンタルのサポートなど、子供をサポートする時間を確保する必要があります。
その結果、仕事を辞める、時短勤務に切り替える、雇用形態を切り替えるなどの働き方に悩むことになります

学童についてや、小学生の預け先については、
想像以上に大変?!小1の壁とは?その対策は?

こちらの記事で詳しくご紹介しています。

次章からは、種類の異なる3つの壁を克服する方法をご紹介します。

 

※1、※6 J-STAGE、9、10歳児の特性一学力・教育評価研究の立場 から一/2019年6月26日現在 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jraps/30/2/30_KJ00006202648/_pdf
※2 子ども達が9歳前後に迎える大転換期 | 9歳の壁 | KEYNOTE | 中学受験-小学生のための中学受験塾。日能研/2019年6月26日現在
http://www.nichinoken.co.jp/opinion/keynote/05-01.html
※3 CORE、児童期の認知発達と心理発達の特徴と支援について2019年6月26日現在
https://core.ac.uk/download/pdf/72731782.pdf
※4 文部科学省、子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題/2019年6月26日現在
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/shiryo/attach/1282789.htm
※5 公立大学法人 福岡県立大学 児童期における友人関係の発達/2019年6月26日現在
http://www.fukuoka-pu.ac.jp/kiyou/kiyo15_1/1501_kunieda.pdf
※7 中学受験に失敗しない/高濱正伸著/PHP研究所/2013年4月発行

「9歳の壁」「10歳の壁」対策、勉強は「復習を繰り返し、得意を伸ばす」

前述の通りですが、小学4年生頃になると、勉強が難しくなり、学力に差が出てきます。
暗記すれば解けていたものが、問題の意図を理解しなければ解けない問題や、小学3年生までの学習の基礎を理解していないと解けない問題が増えているはずです。
子供が勉強についていけていないと感じたら、まずは理解できているところまで戻り、復習するところから始めましょう
苦手なところは学年を超えてでも一度戻り、繰り返し復習をします。※8
出来る問題から繰り返すことで、理解が深まるだけでなく、「出来る」という肯定的な感覚を持つことができます
子供は、理解できないと途端にやる気をなくしますが、正解を繰り返すと勉強が面白いと感じて前向きになれるものです。
理解しているところ・得意なところを伸ばしていくことが、勉強の壁を乗り越えるポイントです。
暗記が得意であれば、漢字や歴史など暗記すればよい勉強だけを先取りして進めることで、子供の自信につなげることもできます。※9
そうすることで、勉強嫌いにならないだけでなく、苦手な部分の復習に時間を割くこともでき一石二鳥です。
また、つまづいているところを理解するには、既に理解していることに関連付けたり比較したりして教えていきます
抽象的な考え方は、映像や図、絵で視覚的に説明するのもよいとされています。※10
大人でも、抽象的な問題は図や絵で説明された方が、わかりやすいですよね。

 

最近では、スマホやタブレットを活用して視覚的に教えることができるものもありますので、関連する動画やアプリをチェックしてみるのもおすすめです。

上記の内容をまとめると、勉強の壁を克服するためのポイントは、こちらの4つです。

  • 理解しているところまで戻り復習する
  • 得意なところから伸ばす
  • 苦手な部分は、既に理解している知識に関連付けたり比較したりして説明する
  • 映像や図などを使い説明する

9歳・10歳(小4)の「勉強の壁」を乗り越えるために、これらのポイントを参考に家庭学習を進めてみてはいかがでしょうか。

 

※8 頭のいい子が育つ10歳からの習慣/清水克彦著/PHP研究所/2015年2月
※9 「勉強が得意な子」をつくるお母さんの戦略/和田秀樹著/学研パブリッシング/2015年3月発行

心理学では大きな変化の時。「認める」ことで自己肯定感が高まる

小学4年生頃になると、他人と自分を比較するようになり、自己肯定感が低くなることが増えると言われています。※10
文部科学省の資料でも、小学校高学年に重視すべき課題の一つとして「自己肯定感の育成」があげられています。※11

自己肯定感を高めるためには、子供が親から「褒められている」「愛されている」「大切にされている」と感じているかがポイントです。
文部科学省の調査結果から、自己肯定感と親との関わりの中で感じるこれらの感情の関連性が高いことが分かっています。
子供ができたことを親が認め、褒めることで、子供の成功体験となり、自己肯定感を高めることに繋がります。※12
9歳・10歳頃になると、反抗期が始まる子もいて親子のコミュニケーションが難しくなる時期です。
この時期になると「すごいね」「偉いね」と言っているだけでは、子供は褒められていると感じていないかもしれません。
何がどうよかったのか、具体的に褒める方が伝わりやすいようです
褒めるだけでなく、親からの「ありがとう」の一言も効果的なようです。※13

※10 CORE、児童期の認知発達と心理発達の特徴と支援について/2019年6月26日現在
https://core.ac.uk/download/pdf/72731782.pdf
※11 文部科学省、子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題/2019年6月26日現在
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/shiryo/attach/1282789.htm
※12 文部科学省、自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の. 実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上/2019年6月26日現在
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2017/06/27/1387211_07_1.pdf
※13 子育てハッピーアドバイス大好き!が伝わるほめ方・叱り方<3>小学生編/明橋大二著/1万年堂出版/2013年2月発行

放課後、一人で留守番をするなら家庭でルール作りを

小学4年生から学童に通えなくなると、放課後の過ごし方が変わります。
一人で留守番をする、習い事や塾などに通うなど、家庭ごとに過ごし方は様々です。
高学年になると電子ゲームで遊ぶ子が増えたりと遊び方も多様化するものの、子供同士で予定が合わずに一緒に遊べないことも増えているのではないでしょうか。※14※15
放課後の子供の居場所がないことは社会的にも問題になっており、学校の校庭や児童館などの公共の場所を放課後に開放している自治体もあります。※16
自治体の対応を確認しておくと、意外なところに選択肢があるかもしれません。

子供が、学童以外の場所で放課後を過ごす場合、子供に家の鍵を渡すこともあるかと思います。
子供が安全に過ごせるよう、鍵の取り扱いや一人での過ごし方、帰宅時間を守るなどのルールを親子で必ず決めておきましょう

※14 厚生労働省、子どもの生活時間に関する調査研究/2019年6月26日現在
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000184127.pdf
※15 第一生命、小学生の放課後の過ごし方の実態と母親の意識/2019年6月26日現在
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/note/notes0807a.pdf
※16 練馬区、ねりっこクラブ事業概要/2019年6月26日現在
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kosodatekyoiku/kodomo/nerikkoclub/gaiyou.html

男の子と女の子で違う?「9歳の壁」を克服するポイント

男の子は1つのことに集中しやすいのに対し、女の子は同時にいろいろなことを考えることができるなど、男の子と女の子の脳にはもともと違いがあることが分かっています。※17
9歳~10歳頃になると、男女の体の違いも出始め、早い子では親に反抗的になる子も出てくる時期です。

9歳~10歳頃の男の子は、幼児期まではママにべったり甘えていても、急にそっけない態度や反抗的な態度をとる子も出てきます。
親としては息子の状況を把握できなくなり心配になってしまうかもしれません。
反抗してくるのも成長の証ですので、親はそばで見守る姿勢で接しましょう
さらに、男の子の成長はマイペースでゆっくりな傾向があると言われます。
勉強に関しても、男の子は遅咲きの場合もあるので、親は「この子は出来ない」と決めつけたりせず、子供の可能性を信じて待つのがポイントです。※18※19

この頃は、女の子の方が成長が早くしっかりしているため、勉強も自分から取り組める子もいるでしょう。
見てあげなくても自分で勉強してくれるので、親は安心していられます。
しかし、自分でやっているからと子供に任せていると、9歳の壁で勉強が難しくなった時につまづいてしまうことも出てくるようです。
自分からコツコツ努する子が多い女の子ではありますが、親は、適度に目をかけ、できたところは「褒める」ことは忘れないようにしたいものです。※20

男の子と女の子の違いは、こちらの2記事でもご紹介しています。
男の子育児は難しい?大変?接し方のポイント

女の子育児♪育てやすいと言われるその実態は!?

 

まとめ

小4頃の9歳~10歳に問題が増える「9歳の壁」についてご紹介いたしました。
この時期は、勉強の難易度があがり授業についていけなくなる子が増えるだけでなく、思春期がはじまり友人関係が難しくなったり、自分と他人を強く認識し劣等感を持ってしまったり、反抗期が始まったりと、メンタル面でも問題を抱えやすい時期です。
勉強についていけていないと感じたら、家庭で出来ている所まで戻り復習する、得意なところを伸ばすようサポートしましょう。
苦手なところは図や映像などを使って伝えるなど工夫をすると子供も理解しやすいかもしれません。
タブレット教材は、映像で図などを活用して解説されているものも多いので、家庭学習に取り入れることを検討してみてはいかがでしょうか。
心理学上でも、9歳~10歳は大きな変化の時期とされています。
メンタル面では、親が子供を認めて褒めることで、子供の自己肯定感が育まれます
「すごいね」と言う、うわべの言葉がけだけでは、子供は、自分が認めてもらえていると感じられないかもしれません。
「ありがとう」など感謝の気持ちも伝えるのも、子供の自己肯定感を育む1つの方法です。

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