子供が「考える力」を身につけるために、親としてできることがある!
近年、子供たちの考える力の低下が注目されています。
学校における学習要項の改訂なども行われていますが、そもそも子供の「考える力」とは何でしょうか。
一般的には「考える力=学力」と思われがちですが、そうではありません。試験の点数さえ高ければ良いわけでは無いのです。
では、そもそも「考える」とはどういうことなのか、そしてなぜ「考える力」が必要なのでしょうか。
目次
- そもそも「考える」とはどのような行動か
- 「考える」という言葉の意味について
- どうすれば「考える」ようになるか
- 重要なのは「答えに至るまでのプロセス」
- 今時の子供たちを取り巻く環境
- 本来の「親がするべきこと」
- 「考える」ことを身に付ければ、たくさんの応用につながる
- 考えることが子供に与える影響
- 「考える力」を育てるために親ができること
- 親に必要なのは「長い目」
- 子供との関係が考える力を生む
- まとめ
そもそも「考える」とはどのような行動か
「考える」という言葉の意味について
近年、文部科学省をはじめとするさまざまなところで「考える力」の重要性が叫ばれています。
内閣府のサイトで確認できる資料では、これからの時代に育成すべき資質・能力の三つの柱が挙げられています。
● どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか
主体性・多様性・協働性・学びに向かう力・人間性など
● 何を知っているか、何ができるか
個別の知識・技能
● 知っていること・できることをどう使うか
思考力・判断力・表現力など
現在は、知識・技能を身につけるとともに、思考・判断・表現する力が求められていることが分かります。※1、※2
これらは内閣府が公開しているものですが、もとは知財教育タスクフォースと呼ばれる会議にて、文部科学省が提示した資料です。
文部科学省では、発達段階に応じて創造性に関わる資質・能力が備わるような教育を推進しています。
では、そもそも「考える」とはどういうことなのでしょうか。
考えるとは、簡単に言えば、「自らの判断で行動すること」といえるでしょう。
つまり、ただ正解を追い求めるのではなく、自分に問い、じっくり考え、自分の意見を出せることなのです。
これは簡単なようでありますが、なかなかすぐにはできないことではないでしょうか。
確かに、親は「もっとよく考えなさい!」と言いますが、実際に何をどうやって考えればいいのか、どう考えるのがベストなのかを、子供に伝えられていないのではないでしょうか。
学校では、「考える」ということについてさまざまな教育が行われているようですが、家庭では詳しく学ぶ機会、教える機会は少ないかもしれません。
考えることを習慣づけていくには、時間がかかります。
しかし考える力は、毎日の生活の中で育てることが可能です。
子供たちは、毎日、さまざまな場面に遭遇します。
忘れ物をしてしまった、遅刻をしてしまった、友達や兄弟と喧嘩した、遊びの計画を立てる、お手伝いをする、など、考えなければならない状況はいくらでもあるのです。
そういう時こそが、考える力を伸ばすチャンスです。
考える力を伸ばすには、学校任せだけではなく、親の考える力も必要となってくるのです。※3
どうすれば「考える」ようになるか
学校や家庭など、さまざまな集団生活を通して、考える力は育っていきます。
考える力が必要なのは勉強だけではありません。
例えば、学校の準備や家のお手伝い、お金の使い方、家族との会話など、日常生活においても子供が考えなければいけない状況はたくさんあります。
一つ一つの行動に対して、じっくり考えながら行動していくことが本来は大切なのです。
またこの先、進学や就職といった、親任せではいけない場面に遭遇していきます。
考える力はすぐに備わるわけではありませんので、言われたことしかやらない、自分の意見が言えないなど、考える力が低い子供は、早い段階から考える習慣を身につけていくことが必要でしょう。
では、考える力を育てるにはどうしたらよいのでしょうか。
考えることを身に付けるには、「人との対話」が必要です。
もちろん、自分一人の力で考える力を身に付けることもできないことはありません。
しかし、さまざまな体験を通して人と出会い、人との対話によって、自分に問い、考えることの方が、楽しく考えることができるのではないでしょうか。
子供にとって身近な存在である両親との会話は、まさしく考える力を伸ばすのに大切なのです。※3
※1 内閣府 初等中等教育における創造性の涵養と知的財産の意義の理解に向けて / 2019年8月29日閲覧
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/kyouiku/dai1/siryou4.pdf
※2 文部科学省 新学習指導要領における思考力,判断力,表現力の評価について / 2019年8月29日閲覧
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/080/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/10/11/1408209_3.pdf
※3 考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門 梶谷真司(著) 2018年9月 幻冬舎新書
重要なのは「答えに至るまでのプロセス」
今時の子供たちを取り巻く環境
まずは、最近の子供たちの傾向をみてみましょう。
- わからないことは、考えようとせず、すぐあきらめてしまう
- 自分の意見を言えない子が多い
- 調べようとせず、答えをすぐ知りたがる
上記の傾向について、「うちの子そうだな」と当てはまるご家庭も多いのではないでしょうか。※4
考えようとしない子供になっていった背景には、実は毎日の親との会話や行動の習慣からきていることも多くあるといえるでしょう。
例えば、「早く○○しなさい」「○○忘れていない?」「○○しちゃダメ!」など、子供が考えようとする前に、親が先回りして発言していませんか?
これは、子供の考える行為を止めてしまい、言われて行動する子になってしまう可能性があります。
両親は子供のためと思い、一生懸命子育てをしています。
失敗させないように、恥をかかせないようにと、あらゆることに敏感になって、つい声をかけてしまいがちです。
しかし、この親の行動は、子供の考える力を弱くしてしまっているのです。
逆に、子供との会話をちょっと変えることで、考える習慣が徐々に身についていくわけですから、親のコミュニケーション能力はとても重要なのです。※4
本来の「親がするべきこと」
子供が考える過程を、親は奪ってはいけません。
- 疑問を持つこと
- 解決策を探すこと
- 自分の言葉で言うこと
など、考える過程を大事にしてあげましょう。
親は答えを知っていても、すぐに答えを渡さないことです。
忙しい時も多いかもしれませんが、親が「待つ」姿勢は必要です。
また、答えが出ない場合も、それは受け入れましょう。
考えずに答えが出ないのではなく、考えた末、答えが出なかったわけですから、それは認めてあげましょう。
また、答えの質も問わないことがポイントです。
自分で考えて出した意見ですから、それが適していようがいまいが関係ありません。
考える過程が重要なのです。一人の意見として受け入れましょう。※4
※4 アドラー博士が教える子どもの「考える力」を引き出す魔法のひと言 星一郎(著) 2010年12月発行 株式会社青春出版社
「考える」ことを身に付ければ、たくさんの応用につながる
考えることが子供に与える影響
では、考えることができる子の特徴を見てみましょう。
● 考える子供は、周りに惑わされない、流されない
考えられる子供は、疑問をもち、その疑問についてじっくり考え、自分の意見を発表できる子供です。
その答えが正解であろうがなかろうが、関係ありません。
周りの意見のほとんどが自分と違ったとしても、それは自分で納得して出した意見なのです。
周りの意見に惑わされることなく、自分の意見を曲げずに言うことを褒めてあげましょう。
失敗することを恐れないという面も、持ち合わせているのかもしれません。
● ピンチの時、どうすれば乗り越えられるか考えることができる
小学生から中学生になると、環境の変化についていけない子もいます。
中学になると、勉強も教科数が増え、内容も難しくなってきます。
部活動では、学年の違う子たちと一緒に行動します。
大きな環境変化に戸惑う子もいるでしょう。
でも、考える子供は、そんな環境の変化があっても、それを「乗り切る力」を持ち合わせています。
どうすれば、ここを乗り切ることができるのかを考えることができるからです。
● 自分に自信が持てる
一生懸命考えた意見であれば、きっと自信を持って言えるはずです。
逆に、相手が出した意見が違っていても、「そうか、そういう意見もあるんだ!」と相手を思う気持ちが自然と備わってくるでしょう。
もちろん、考えることが苦痛になるようでは効果がありません。
子供の疑問に、ヒントも何も与えないこともまた、子供の考える行為を奪うことになります。
子供との日々のコミュニケ―ションに、考えるということを楽しみながら取り入れてみましょう。※5
※5 「考える子」が育つお母さんの会話術 多湖 輝(著) 2010年9月発行 株式会社 新講社
「考える力」を育てるために親ができること
親に必要なのは「長い目」
子供のうちは「考える力」がなくても、いつか大人になったら自分で考えられるようになるだろうと思っている親も多いのではないでしょうか。
でも、それは違います。考える力は、ある時急に身に付くものではないからです。
また、学力を高めれば考える力が育つと思っている方もいるかもしれませんが、学力=考える力ではありません。
学力や知識を高める前に、考えるという習慣を身に付ける方が、これから生きていくうえで大きな力となるのです。
分からない時、悩んだ時、困った時は、まず考える。これが重要です。
考えることが身についていない子供は、問題に直面した時に、考えずに放り出してしまったり、逃げ出してしまったり、他人の意見に惑わされたりします。
しかし、親は子供の行動一つ一つが気になるのが普通です。
失敗をしないか、ケガをしないか、忘れ物はないかなど、つい先回りの言動を起こしがちです。
しかしこれは、子供の考えるという過程を奪っています。
忘れ物をしたら、自分は今何をしたら良いかを考え、人に借りるなど行動し、「今度は気をつけよう」と思います。
ケガをしたり、危ない目にあったら、「これは危ないからやめよう、気をつけよう」と思います。
これを繰り返すことで、自分で考え、行動できる子供になっていきます。
子供のためと思い手を出し過ぎると、子供も親に依存してしまい、親の発言に従って生きていくことになります。
親は子供を見届ける勇気が必要。考える力を育てることで、将来社会に出ても立派に乗り越えていける子供になるのです。※4
子供との関係が考える力を生む
子供の考える力を育てるためには、「会話」が重要です。
日々繰り返される子供との会話は、数え切れません。
その一つ一つの会話に耳を傾け、子供が考えられる方向へ導いてあげることが必要です。
そのために、いくつかの会話のポイントをみてみましょう。
● 子供の疑問を大切にする
どうして?という疑問が出てくると、自ずとその疑問の答えを考えたくなるでしょう。
分からないことが多ければ、たくさん考えるようになるのは当然のことです。
毎日の生活の中で、子供が「どうして?」と考える時間を、大事にしましょう。
● すぐに答えを教えないこと
例えば「あれって、何なの?」という子供の質問に、答えを即答していることはありませんか?
たとえ親が答えを知っていたとしても、できるだけ子供が考えようとする機会を大事にしましょう。
一緒に調べるのもよいでしょう。
調べていく過程でさらに興味を抱くかもしれません。
自分で考え、それでも分からないことは書籍やパソコンなどを使って自分で調べ、答えを導き出す、この過程が考える力を育てるのです。
● 会話を広げていこう
子育てや仕事で忙しくても、つい忙しさから子供の話に「そうなのね。」だけで終わらせていませんか?
例えば、キャンプから戻ってきた子供との会話。
「キャンプどうだった?」という母の声かけに、子供は「楽しかったよ。」と答えます。
でも、その後は?
「よかったね。」とだけ母が言って終わらせたら、会話はそこでストップしてしまいます。
でもこの時「じゃあ、キャンプで一番楽しかったことは何?」と聞いたらどうでしょう。
子供は、その楽しかったことをもう一度思い返し、考え、自分の体験したことを話してくれるでしょう。
そして、話してくれたことに対してまた問い返してみる、すると会話はどんどん広がっていきます。
親の会話力ってとても大切なのです。
● 親の意見は断定的であってはならない
子供がある事柄について親に質問してきた時、知識のある親は「○○だからよ。」と答えます。
でも、親が1つしか答えを出さないとどうなるでしょう。
子供は「そうか」と納得し、自分で考えることをしなくなってしまうのではないでしょうか。
このような場合は、「お母さんはこう思うのだけど、あなたはどう思う?」と問いかけてはいかがでしょうか。
親の意見を一つの意見として参考にしつつ、自分なりに考え、自分なりの意見を導き出そうとします。
● 体験こそが、より考える力を育てる
子供はいろんなことを吸収しやすいものです。
しかしたくさんの知識があっても、実際に見たり、触ったりなど、実体験する機会は少ないかもしれません。
持っている知識が正しいかどうか確認できるのは、実際に「体験」することです。
例えば、カブトムシについて詳しく知っていても、実際は見たことがない子供の場合、知識だけが先行し、図鑑などに載っていないことは考えることをしなくなります。
でも、実際にカブトムシをみたり、触ったりできたらどうでしょう。
ますます疑問を抱き、その答えを知りたいと思うでしょうから、いやでも考えるようになります。
親はできる限り、体験の機会を作ってあげましょう。
知識だけでは終わらせないということです。
● 親も子供と一緒に考えてみる
子供を持つ家庭において、日々子育ての悩みや心配事も多いことでしょう。
解決できる問題もありますが、はっきりとした答えられない問題も多々あります。
でも、親だからって完璧な意見は必要ありません。
考えたい、考えていこうという親の姿勢は、子供にも影響します。
子供と一緒に考えることこそが大切なのです。
会話を広げていけるのは、親子間に信頼関係があるからです。
子供は身近な存在である親を信頼しています。
大切なのは、親も子供を信頼してあげること。
子供の悪いところだけ見るのではなく、成長したところ、いいところを探してみましょう。
親に認められていることが、子供の大きな自信につながります。※4、5
※4 アドラー博士が教える子どもの「考える力」を引き出す魔法のひと言 星一郎(著) 2010年12月発行 株式会社青春出版社
※5 「自分で考える力」が育つ親子の対話術 狩野 みき(著) 2015年3月発行 朝日新聞出版
まとめ
「自分で考えて行動できる子になってほしい」というのは、親であればだれもが思うことでしょう。
いつか大人になったら自分で考えられるだろうと思っている方もいるかもしれません。
しかし、考える力は、そう簡単に見につくものではなく、時間をかけて見についていくものだと考えられます。
日頃から、身近にいる親がもっと会話を広げられるような言葉かけをしていくことで、自然と「考える子」に育っていくことでしょう。