うちは親子共依存?親子共依存から抜け出せるの?

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近年、「仲良し親子」が増加しているといわれています。
親子の仲が良いのは良いことですが、その関係性の度合いによっては、「親子共依存」に陥ってしまっている可能性があります。
親子共依存が子供に与える影響は大きく、子供の未来も変えてしまう可能性も秘めています。
共依存とはどういう状態なのか、また誰もが陥る可能性のある共依存の危険性を知り、今一度親子関係を見直してみましょう。

目次

  1. 親子間での共依存とは
    • 共依存とは何か
    • 共依存の親と子の特徴
  2. 親子共依存になってしまう理由
    • 身近な人や生まれ育った環境
    • 日本の教育のあり方
    • 親の子供への執着
    • 共依存と似ている?アダルトチルドレン
  3. 親子共依存に秘められたリスク
    • 親が子離れできない
    • 子供の自立の妨げ
    • 共依存になるとなかなか抜け出せない
  4. 共依存親子から抜け出すには
    • 親が子供から離れる
    • 子供が自分の力で生きていける力を身につける
  5. まとめ

親子間での共依存とは

共依存とは何か

共依存とは「共に依存する」と書きますが、厚生労働省のe-ヘルスネットには、「依存症者に必要とされることに存在価値を見いだし、ともに依存を維持している周囲の人間の在り様」とあります。
共依存とはつまり、依存する人と依存される人がお互いに依存しあっている状態のことです。
自分が相手に必要とされることで自己の価値を見いだし、安心感や満足感を得ているのです。
共依存は誰もが陥る可能性がありますが、今回は、「親子間の共依存」について考えてみます。

 

共依存の親と子の特徴

共依存にある親と子供には、どのような特徴があるのでしょうか。


【親目線】
共依存の親によく見られる行動をいくつか挙げてみます。

  • 常に子供の先回りの行動をする
  • 子供が困っていると、じっとしていられない
  • 「こうしたほうがいい」「ああしたほうがいい」と何事にも口を出してくる
  • 自分のことより常に子供を最優先
  • 子供のために行動することで、自分に満足している
  • 子供が大人になってもお金を援助する

これらはほんの一部にすぎません。
親の役目は本来、子供に様々な経験をさせ、自分の力で生きるために必要なことを身につけさせることですが、共依存にある親は、子供をいつまでもそばに置き、自立を妨げていることになります。※2


【子供目線】
では次に、子供の特徴もいくつか見てみましょう。

  • 親がいないと何もできない
  • 大人になっても親から経済的援助を受けている
  • 周囲とのつながりが少なく、自分の相談相手は友達ではなく、母親
  • 相手に問題がある場合でも、自分が悪いと思い込む

子供はいつまでも親に安心感を求め、親のいない生活が考えられない状態になっています。
子供は本来、中学生ぐらいになると親との距離を置きたがる時期になります。
自分の意思が強くなり、自分の時間や居場所が欲しいと思います。
親からすれば、子供が何を考えているのかわからない時期でもありますが、精神的に親から離れようとすることや友達と群がることは自然な変化であり、重要な成長なのです。
例えば、息子が父親に一方的に叱られたとします。
息子は恐らく、自分の言い分を聞かずに叱ってくる父親に納得がいかず、そのモヤモヤした気持ちを誰かに聞いてもらいたくなっています。
息子が聞いてほしい相手とは誰でしょうか。
中高生ぐらいであれば、恐らく「友達」となるはずです。
しかし、親に依存している子供は、友達ではなく、親、特に母親を相手として選びます
一番頼りにできるのが母親という状況は、自立からはほど遠くなります。※3


【双方の目線】
それぞれ親と子の特徴をいくつか挙げましたが、双方に共通して見られる特徴は、「お互いが共依存であることを自覚していない」ということです。
これは、共依存の方によく見られる特徴であり、実はこれが重要な問題なのです。※2、3

※1 厚生労働省 e-ヘルスネット 共依存  /  2019年12月25日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-058.html
※2 水澤都加佐(著) あなたのためなら死んでもいいわ 自分を見失う病「共依存」 2016年6月発行 株式会社 春秋社
※3 尾木直樹(著) 親子共依存 2015年2月発行 株式会社ポプラ社

親子共依存になってしまう理由

身近な人や生まれ育った環境

共依存の問題は、身近な人の状況や生まれ育った環境が関係しています。
例えば、家庭の中に暴力がある、夫婦仲が悪い、家庭に居場所がないといった状況の中で育ち、このような状況が日常的に続く環境にいると、人はその状況に馴れてしまい、耐性ができてしまいます。
本来ならあり得ない状況、周りからは異常に見える状態であっても、暮らしていけるようになってしまうのです。
耐性ができてしまうという点では、共依存でも同じようなことがいえます。
例えば、両親や祖父母など、身近に依存症者がいると、考え方や行動、人との関わり方、習慣などの影響を受けやすく、何かに依存しようとします。
親が子供に依存している状態は、子供にとっては親から守られた生活に馴れてしまうため、楽に生きることを覚えてしまうのです。
自分で何かを考えたり行動したりしなくても、親がすべて先回りして考えて行動してくれるからです。
しかし、この状態が長く続くと、ますます自立から遠ざかっていくのです。※2

 

日本の教育のあり方

共依存という問題は、日本の教育のあり方にもその原因があるといわれています
現代の日本の教育は変わりつつありますが、今の親世代は「自立」を目指す教育ではありませんでした。
子供の教育とは本来、何を目指すべきなのでしょうか。
日本の教育は現在でも、他者との比較の中で個人を伸ばすことを目的としているように見えます。
目標とする数値を掲げ、競争し合う傾向が見られ、個人の人格や内面の成長は後回しとなっています。
その結果、いざ自立しようとしてもなかなか前へ進む勇気が持てず上手くいかない、あるいはいつまでも誰かに頼りながら生きていく、といった生き方を選ぶようになります。
これが共依存を生み出す原因になっているのかもしれません。※3

 

親の子供への執着

親子が共依存状態に陥る兆候として、親の子供への過干渉があります

  • 子供のやるべきことに、いちいち口を出したり、手伝ったりする
  • 自分の考えを子供に押し付け、自分の思い通りに育てようとする
  • 子供の問題を自分が解決しようとする

世の中は、不安なことばかりです。
子供をいつまでも傍に置いて見守っていきたいと思う親の気持ちもよく分かります。
しかし、子供はいずれ、その世の中を自分の力で渡っていかなければなりません
いつまでも親の保護の中では、生きてはいけないのです。
親が子離れできなければ、子供も親離れができません。
そして共依存の関係が成立してしまいます。※2、※3

 

共依存と似ている?アダルトチルドレン

共依存と近しい意味で「アダルトチルドレン」という言葉を耳にする方もいるでしょう。
アダルトチルドレンは、アルコール依存やギャンブル、夫婦関係の悪いなど家庭が上手く機能していない家庭に育ち、何かしらのトラウマを抱えて大人になった人のことをいいます。
相手の評価に敏感になり自分に自信が持てなくなり、物や人に依存してしまうのです。
夫や子供など、身近な人に依存することもあります。
さらに共依存は、児童虐待や教育虐待、DVなどに陥りやすいといわれています。
必ずではありませんが、アダルトチルドレンもまた、自分が育った環境と同じことを子供に繰り返すことが多いといわれています。※4、5

※2 水澤都加佐(著) あなたのためなら死んでもいいわ 自分を見失う病「共依存」 2016年6月発行 株式会社 春秋社 
※3 尾木直樹(著) 親子共依存 2015年2月発行 株式会社ポプラ社
※4 おおたとしまさ(著) 追いつめる親「あなたのため」は呪いの言葉 2017年7月発行 毎日新聞出版
※5 友田明美 藤澤玲子(著) 虐待が脳を変える脳科学者からのメッセージ 2018年1月発行 株式会社新曜社

親子共依存に秘められたリスク

親が子離れできない

前述のような親の過干渉は、子供の自己決定の機会を奪い、子供の自立を妨げてしまう可能性を秘めています。
例えば教育面でのリスクを考えてみましょう。
共依存な親は教育熱心であることが多く、場合によっては「教育虐待」につながることもあります。
教育虐待とは、親が「あなたのためだから」と言って、行き過ぎた教育やしつけを行うことです。
子供に対して「こうあるべきだ」、「こうなってほしい」と思う気持ちが強く、子供に選択肢を与えません
当然、子供が自分で決めた道は、素直に受け入れられません
そして、子供にとっても人生の節目である結婚。
親は本来、自分の子供が愛する人と結婚して新たな幸せを掴もうとしているなら、その子供を快く送り出してあげたいと思うものです。
しかし、共依存である母親の場合、子供が自分から離れていってしまうのではないか、自分が見捨てられるのではないかという不安な気持ちを抱きます。
いつまでも子供が心配であり、子供がいない生活が考えられない、その結果、子供の家庭にも過干渉になってしまうことが考えられます。


本来なら子供の成長や幸せは喜ぶべきであるのに、素直に喜べない親たちがいるのです。
進学・就職・結婚など、生きていれば親と意見が対立する機会はたくさんあります。
世代も違いますし、個人の価値観も違いますので、対立することは当たり前です。
お互いの意見をまずは受け入れることがベストなのですが、子供に依存する親の場合、お互いの意見が違ったというだけで自分の心が保てなくなり、親子の関係性がさらに悪くなる可能性があります。※4、6

 

子供の自立の妨げ

共依存で子供も親に依存している場合、子供は社会に出たとしても親以外の人とコミュニケーションをとることが難しく、新しい人間関係が作れないという状況に陥ります。
また親の思うままに過ごしている子供は、自分の意見を閉じ込めて生活しているため、うまく自分の意見を伝えることができません。
さらに、親がいないと何もできないダメな人間なんだと自分の存在価値を否定してしまいます。
それどころか、自分で何かを考えることも難しくなってしまうこともあります。
ますます親から離れられなくなり、自立する力が持てません。※2、6

 

共依存になるとなかなか抜け出せない

共依存になると、なかなか抜け出せないという厄介な問題があります。
共依存者は相手に必要とされることで、自分の価値を見いだしているため、相手がいないと困るのです。※4
例えば、翌日の学校の用意を全て親が行っていると、中学生や高校生になっても自分で学校に行く用意ができなくなります。
子供にとっては、親がやってくれる方が楽ですよね。
親は「この子は自分が居ないとダメ」と感じ、子供は「親がやってくれるから自分はやらなくて良い」と考えてしまい、結果的に子供はいつまでも自立できません。

※2 水澤都加佐(著) あなたのためなら死んでもいいわ 自分を見失う病「共依存」 2016年6月発行 株式会社 春秋社
※4 おおたとしまさ(著) 追いつめる親「あなたのため」は呪いの言葉 2017年7月発行 毎日新聞出版
※6 石原加受子(著) 「苦しい親子関係」から抜け出す方法」 2018年10月発行 株式会社あさ出版

共依存親子から抜け出すには

共依存親子は、自分たちがお互いに依存しているという自覚がありません。
よって、共依存から抜け出すためには、まず親子関係を客観的かつ冷静に見つめることが必要です。
お互いが共依存であることを認め、そして共依存から抜け出したいと強く願うことです。
共依存になってしまっている自分を受け入れない限り、共依存からは抜け出せません。※6
親子関係を客観的に見る一番簡単な方法は、近しい人たちからの指摘を受け入れることです。
母と子が共依存なら、夫に普段の生活を観察してもらうのが良いでしょう。
両親と子供が共依存なら、ママ友や会社の友人など家族以外の第三者に、子供との普段の接し方を観察してもらい、指摘を素直に受け入れることが大切なのです。※6

 

親が子供から離れる

相手から離れるには、相手を変えるのではなく、自分を変えていくしかないということです。
親はどうあるべきなのかを見てみましょう


・親は分厚い壁になろう
親は、子供の成長過程に応じた対応が必要です。
中でも重要なのが、思春期頃の反抗期。この時期の子供は、親に口答えすることが増え、反抗的な態度をとります。
しかし、子供は体の変化と心の成長のギャップに悩み、親へ反抗することでバランスを取ろうとしています。
この時は、親がオドオドしたり、子供のご機嫌を取ってはいけません。
「ダメなものはダメ」と、親の考えと態度が揺るがないことを子供に理解させます
子供はこうした親とのやりとりの中で、「許されない事」を認識していきます※3

 

・自分の人生を楽しもう
今の子供の姿をありのままに認め、自分のことに目を向けましょう。
新しいことへのチャレンジ、趣味を持つ、ボランティア活動に参加することは、自分の人生を楽しむ有効的な方法です。
親が子供以外のことで没頭できることができれば、自ずと子供との距離は離れていきます。
また、私を必要としてくれる人が他にもいるんだと、自信を取り戻すきっかけにもなります。※3

 

・他者中心ではなく、自分中心で
「自分中心」とは、自分の気持ちや欲求に蓋をせず、感情としっかり向き合い、受け止めることです。
人は誰でも欠点を持っています。
自分の気持ちに寄り添いながら、今の自分を認めましょう。
そうすることで自己肯定感が育まれ、自分を大事にするようになり、周りの意見や行動に左右されることも少なくなります。※6

 

子供が自分の力で生きていける力を身につける

子供を自立した大人にしたいのならば、共依存の関係からいち早く抜け出す必要があります。
ここでは、4つの自立について考えてみます。

 

1つ目は、精神的自立です。
幼児期のように親に判断してもらうのではなく、他人に頼らず、自分で考え、判断し、行動できる力を備えることです。
小さい頃から、いろいろな体験を通じて心の成長を目指しましょう。
子供の興味のあることだけでなく、今までやったことがないことや困難なことにも挑戦すること。
自分から取り組んで達成できれば、子供の自信につながります。

 

2つ目は、経済的自立です。
つまり、自分の稼いだお金で生活できるようになることです。
生きていくためにお金がどう関わっていくのか、手にしたお金をどう使うのかも含め、お金を稼ぐことの意義を教えることが大切です。

 

3つ目は、社会的自立です。
社会の一員としての自覚を持つことです。
気遣いや常識が備わっていれば、他人に不快感を与えることは少なくなり、良い人間関係が築けます。 

 

4つ目は、性的自立です。
男女の心と体の差異を理解し、お互いの性を尊重し合うことです。
昔に比べると、性的自立ができていない子供が増えています。
幼児期の親とのスキンシップは信頼形成のために有効ですが、中高生になっても親との入浴が日常的ということはあり得ません。
親は、子供がこれら4つの自立ができるようにサポートしてください。
もしも自分がサポートできていないと感じたら、その時こそ親子の関係性を見直すチャンスなのです。
自分の人生は、自分で選択し決定するものです。
親は、子供の意思を尊重し、見守ることが大切です。※2、3、6

※2 水澤都加佐(著) あなたのためなら死んでもいいわ 自分を見失う病「共依存」 2016年6月発行 株式会社 春秋社 
※3 尾木直樹(著) 親子共依存 2015年2月発行 株式会社ポプラ社
※6 石原加受子(著) 「苦しい親子関係」から抜け出す方法」 2018年10月発行 株式会社あさ出版

まとめ

「うちは仲良し親子だから大丈夫」と思っていても、知らず知らずのうちに、親子共依存になっている場合があります。
他者がいないと生きられない状態はとても危険です。
子供が大人になった時、自分の力で生きていける力を身につけさせることこそが、親の役目です。
今からでも遅くありません。
親子関係を見直し、お互いの自立のためにできることをしていきましょう。

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