専業主婦とは?家計や貯金の実態は?社会復帰する?しない?
専業主婦は、無職の妻を指します。
統計などに使われる専業主婦の定義は、扶養の範囲内ということではないようです。
共働きが増えているとはいえ、専業主婦の割合もゼロではありません。
今回は専業主婦の実態について、年収や家計(お小遣いや貯金)、仕事の考え方、理想の働き方などの点から解説します。
目次
- 専業主婦の定義とは?割合は?
- 扶養内で働く人は専業主婦ではない
- 専業主婦の割合は?
- なぜ働かない、働けない…専業主婦を続ける理由
- 妊娠出産を機に退職
- 働きたいけど働けない…
- 働きたい理由
- なりたい?なりたくない?専業主婦への価値観
- 本当は子どもができても働き続けたい
- 根強い「家庭を守るのは妻の役割」との考え
- 専業主婦、年収の平均額は?
- 専業主婦世帯の平均年収650万円
- お小遣いはある?家計の内訳は?
- 毎月の貯金額は?
- 専業主婦を卒業!仕事を始めるには?
- 正社員復帰は可能?
- パートは扶養の範囲内?それ以上?
- 勤務時間が決まっている派遣や契約社員
- フリーランスなら在宅で働ける?
- まとめ
専業主婦の定義とは?割合は?
専業主婦は、無職の主婦を指す言葉です。
専業主婦家庭は、夫が働いていて妻が無職の家庭を指します。
最近では「専業主夫」という言葉も使われますが、これは妻が働いている家庭の無職の夫を指す言葉。
いずれにせよ、夫婦どちらか一方が働いている家庭で、働いていない方を指しています。
近年、専業主婦は減り、共働きが増えていると言われますよね。
これは主に、総務省の「労働力調査」のデータをもとにしています。
「労働力調査」では、専業主婦は非労働力を指しています。※1
パートや自営業で働く主婦はもちろん、失業中の主婦も専業主婦には含まれません。※1
扶養内で働く人は専業主婦ではない
子どもが幼稚園や学校に通っている短時間だけ働いている主婦も多いですよね。
最近では、テレワークや副業の普及により、在宅で短時間仕事をする働き方も増えています。
しかし「労働力調査」をはじめとする統計上の定義では、これらの働き方をする主婦は専業主婦には該当しません。
夫の扶養の範囲内で働く主婦も、何らかの仕事をしていれば、専業主婦には当たらないのです。
「扶養家族」という言葉があるので、養われている妻は、扶養内であれば専業主婦に当たると認識している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし統計の定義上は、扶養内でも働いていれば専業主婦には当たらないのです。
また、仕事の休職や求職、失業中の人も専業主婦には含まれません。
夫が働き、一切働かずに家庭を守るのが専業主婦の定義だといえそうです。
・扶養内とは?
扶養内で働く人とは、夫が扶養控除を受けられる範囲内、もしくは夫の社会保険の扶養に入られる範囲内で働く人を指します。
1.扶養控除
妻の年間給与所得が103万円以下の場合、夫は38万円の所得控除が受けられる※2
2.社会保険の被扶養者
年間収入が130万円未満の同一世帯の家族は、社会保険の被扶養者に該当する※3
専業主婦の割合は?
総務省の「労働力調査」によると、専業主婦は年々減少しており、全体の3割となっています。
2020年の労働力調査では、共働き1240世帯に対し、専業主婦は571世帯。※4
1995年ごろから、働き世帯が専業主婦を上回っています。
今後は、さらに共働き世帯が増え、共働きが当たり前の世の中になるのかもしれません。
※1 労働力調査 用語の解説/総務省統計局/2021年10月20日現在
https://www.stat.go.jp/data/roudou/definit.html
※2 扶養控除|国税庁/2021年10月20日現在
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
※3 被扶養者とは? | 全国健康保険協会/2021年10月20日現在
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/sbb3163/1959-230/#7-a
※4 図12 専業主婦世帯と共働き世帯|労働政策研究・研修機構(JILPT)/2021年10月20日現在
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html
なぜ働かない、働けない…専業主婦を続ける理由
なりたくて専業主婦でいる人もいれば、仕方なく専業主婦を続けている人もいます。
働きたいと思っている人も少なくないようです。
妊娠出産を機に退職
専業主婦といっても、その多くはもともと正社員で働いていた人たち。
第一子の出産を機に退職する人が多いようです。※5
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、結婚前後では約8割が仕事を続けているのに対し、第一子妊娠出産前後では、約5割。※5
およそ半数は、第一子妊娠出産を機に退職しています。
さらにパートや派遣で働く女性の退職率は約8割にものぼります。※5
出産を機に仕事を辞めた理由は、
- 子育てをしながら仕事を続けるのは大変だから
- 子育てに専念したかった
- 自分の身体や胎児を大切にしたいと考えた
という回答が4割以上を占めています。※5
子育てと仕事の両立に悩み、退職した人が多いとわかります。
働きたいけど働けない…
出産を機に退職をしても、また働きたいと考えている人も珍しくありません。
育児中の専業主婦のうち、いずれ働きたいと考えている人が5~6割です。※5
しかし実際に仕事を探している人は2~3割。
働きたいと思いつつも、まだ仕事を探すまでには至らない人も少なくないようです。
まだ仕事を探していない理由としては、出産育児や介護・看護のためといった家庭の事情が6~7割を占めています。※5
一方、探したが見つからない、希望する仕事がない、スキルに自信がないといった理由もあるようです。※5
働きたい意欲はあるものの、育児と仕事の両立の難しさ、自分の能力面での不安が、働けない理由のようですね。
働きたい理由
パートや派遣で社会復帰を希望する理由は、半数が経済的なもの。※6
主に、子どもの教育費や生活費のための費用です。
子どもにかかるお金は、成長するにつれて増えていきます。
下記記事にて詳しく解説しています。
子育て費用、実際にかかる費用は?無理のない貯め方は?
※5 第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)/国立社会保障・人口問題研究所/2021年10月20日現在
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/k_45/pdf/s1.pdf
※6 2015年 社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)現代日本の結婚と出産/国立社会保障・人口問題研究所/2021年10月20日現在
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/NFS15_reportALL.pdf
なりたい?なりたくない?専業主婦への価値観
専業主婦になりたくない妻、専業主婦になって家庭を支えてほしい夫、いろいろな価値観があるかと思います。
一昔前は、結婚したら、子どもが生まれたら、女性は家庭に入り専業主婦になるのが当たり前だと考えられていました。
しかし最近では、男女ともに「女性は働かない方がいい」と考える人は少数派です。※7
本当は子どもができても働き続けたい
男女共同参画白書では、女性が仕事をすることへの意識についての報告箇所があります。
2019年の調査では、「子どもができても仕事を続けた方がいい」と考える人が最も多いようです。
女性の63.7%、男性の58%を占めています。※7
さらに、子どもが成長したら再就職をするという考え方の人は、女性19.7%、男性21.1%。
これらを合わせると、男女とも約8割の人は共働きを希望していることが分かります。
根強い「家庭を守るのは妻の役割」との考え
「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という意識をもつ人は、男女ともに減少しています。※7
ただ減少しても、まだ半数近くは「女性が家庭を守るべき」という価値観を持っているようです。
2019年の調査では、「妻が家庭を守る」という考えの反対派(どちらかといえば反対・反対の合計)は、女性63.4%、男性55.7%となっています。※7
2002年の調査では、女性51.3%、男性42.1%ですので、20年で反対派が10%以上増加していることになります。※7
「女性が家庭を守るべき」という考えを持つ人は徐々に減っているものの、「家庭を守るのは妻」という価値観も半数近くと根強く残っているのです。
一方、経済的な面では、共働きが理想的だと考える人も少なくないかもしれません。
専業主婦世帯は、共働きよりも将来のリスクがあります。
次章では、専業主婦世帯の世帯年収や貯金事情をみていきます。
※7 男女共同参画白書 令和2年版/2021年10月20日現在
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/pdf/r02_tokusyu.pdf
専業主婦、年収の平均額は?
専業主婦世帯の平均年収650万円
総務省の家計調査によると、専業主婦世帯の夫の1ヶ月の収入は542,280円です。※8
年収に換算すると、およそ650万円。
専業主婦世帯の平均的な世帯年収は、およそ650万円のようです。
お小遣いはある?家計の内訳は?
専業主婦は、夫の収入のみで家計をやりくりしています。
自分と夫のお小遣いはあるのか、毎月の貯金はいくらなのか、など家計の内訳をみてみましょう。
【1ヶ月の家計収支】 単位:円
勤務先からの収入 | 542,000円 |
消費支出(住居等除く) | 262,000円 |
食費 | 80,000円 |
光熱・水道 | 22,000円 |
家具・家事用品 | 13,000円 |
被服及び履物 | 11,000円 |
保健医療 | 14,000円 |
教育関係費 | 26,000円 |
情報通信関係費 | 19,000円 |
教養娯楽関係費 | 30,000円 |
その他の消費支出(雑費・お小遣い・交際費など) | 48,000円 |
※8 総務省 家計調査より作成(百円単位四捨五入)
・毎月の生活費は約26万円(家賃・車関連費除く)
専業主婦世帯の毎月の生活費は、家賃や車にかかる費用を除き約26万円です。※8
食費が3割以上を占めています。
・お小遣いや交際費は、毎月4.8万円
食費に次いで多い出費が、その他の消費支出です。
雑費やお小遣い、交際費、理美容代などがふくまれます。※8
これらお小遣いなどの合計額は、毎月4.8万円。
専業主婦世帯でも、お小遣いがないわけではないようです。
共働き夫婦と比べると毎月1.3万円少ない金額です。※8
毎月の貯金額は?
専業主婦世帯でも、平均年収の家庭では毎月貯金ができているようです。
2020年の家計調査によると、1ヶ月の貯蓄の純増額は専業主婦でおよそ15.7万円。
共働きでは、22.5万円です。
平均貯蓄率は、専業主婦で約32%、共働きで約39%です。※8
やはり共働きの方が毎月の貯金率も多いことがわかります。
※8 2020年「家計調査」 家計収支編/第3-11表 妻の就業状態,世帯類型別1世帯当たり1か月間の収入と支出/総務省/2021年10月20日現在
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000000330001&tclass2=000000330004&tclass3=000000330005&stat_infid=000032048831&result_back=1&tclass4val=0
専業主婦を卒業!仕事を始めるには?
育児中の専業主婦のうち今後働きたいと考えている人の多くは、主にパートや派遣、契約社員等の非正規で働きたいと考えているようです。※6
正社員で復職したい人は7.7%と少数です。※6
働き方別に、専業主婦が仕事を探す場合の注意点などをまとめました。
正社員復帰は可能?
専業主婦から正社員への復帰は、能力面でも勤務時間の面でも難しい印象がありませんか?
正社員での就業は、基本的にフルタイムの仕事が多く、何かしらのキャリアが求められるものです。
しかし最近では、ママ向けの正社員転職を扱うエージェントや時短専門の転職サービスもあり、以前よりも主婦の正社員再就職や転職をしやすい環境が出来始めています。
さらに厚生労働省でも、マザーズハローワークを全国に設置し、主婦の再就職を支援。
パートから正社員へ、専業主婦からの再就職への相談や、求人の紹介を受けられます。※9
正社員で働く一番のメリットは、経済的にラクになることです。
毎月の家計がラクになるだけでなく、将来の年金生活にも影響します。
正社員で自分の社会保険に加入すれば、受給できる年金額が増える場合も多いためです。
正社員での再就職を希望するならば、能力面や勤務時間が希望に合う企業があるか、転職エージェントやマザーズハローワークで相談してみるのがよいかもしれません。
パートは扶養の範囲内?それ以上?
パートで復帰したい方も多いですよね。
パートの場合、職種によっては、勤務時間を1日単位で調整できたり、近所でも働けたりするのがメリットです。
夫の「扶養の範囲内で働く」といった調整が可能な場合も多いでしょう。
扶養の範囲内で働く場合には、
・年間給与所得が103万円以下→夫に38万円の所得控除※2
・年間収入130万円未満→社会保険の被扶養者※3
この2点に注意が必要です。
また、児童手当や高校の授業料無償化なども気を付けたいポイントです。
これらの制度には、世帯年収の受給制限が設けられています。
パートの年収が増えて、各種手当がなくなった…と後悔することがないよう、事前に年収額を確認しておくと安心です。
勤務時間が決まっている派遣や契約社員
派遣や契約社員の非正規社員として再就職する方法もあります。
いままでは、出社してのフルタイムか時短勤務が基本でした。
しかし最近では、在宅勤務や時短勤務を前提とした派遣会社もあります。
週4日以下勤務や、時短勤務といった変則的な就業を紹介する派遣サービスも登場し、派遣でも多様な働き方が広まりつつある状況です。
基本的には契約通りの時間や場所で働くことになるため、子どもの用事に合わせて急に融通をきかせられるかどうかは、契約ごとに異なるでしょう。
フリーランスなら在宅で働ける?
ここまでの働き方の中で、最も自己裁量で働けるのがフリーランスです。
時間や場所にとらわれずに働いている方も少なくありません。
自分のスキルでできる仕事を請け負うので、1日2~3時間だけ働くというスタイルも可能です。
最近では、在宅でスキルを活かした仕事探しのサービスも増えていますよね。
スキルシェアサービスやクラウドワーカー向けサービス、ハンドメイドマーケットなどを活用し、自分に合った仕事を見つけやすい環境になっています。
専業主婦からの仕事復帰として最も取り組みやすい方法かもしれません。
ただ安定的に仕事を得られる保証はありませんし、時給単価に換算するとパートより低い可能性もあります。
フリーランス専門の仕事紹介サービスも増えているので、気になる方は相談してみてはいかがでしょうか。
自分の立ち位置や相場などを確認できます。
※2 扶養控除|国税庁/2021年10月20日現在
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
※3 被扶養者とは? | 全国健康保険協会/2021年10月20日現在
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/sbb3163/1959-230/#7-a
※9 施設のご案内(窓口・各コーナー等) | マザーズハローワーク東京/2021年10月20日現在
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-mother/facilities.html
まとめ
専業主婦の定義から実態について解説いたしました。
多くの専業主婦は、子育てを機に専業主婦になったものの、その後、働く意欲がないわけではありません。
働きたくても、育児や介護などを理由に働けないのが実態のようです。
まだ「家のことは女性がやる」という考えも根強く、夫のサポートを得られない家庭も少なくないでしょう。
「女性も仕事をすべき」と考える人は増えてはいるものの、まだまだ育児や家事へのサポートは少ないのが実態です。
ただ最近は、働き方が多様化し、時短勤務や在宅勤務を導入する企業も増えています。
時短や在宅の求人や、ママ向けの求人を専門に取り扱うサービスもあるので、再就職したいと考えたら、一度相談してみると求人の実情を把握できるはずです。