父親はどのように子育てに関わればいいの?父親ができる子育てとは?

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世間では、積極的に家事や育児に関わっている父親を「イクメン」と呼んでおり、父親による育児への意識が高まっています。
子供が生まれたら子育てに積極的に関わっていきたいと思っている男性も多い一方で、実際には長時間の仕事と家庭との両立に悩みを抱えている父親も、多いのではないでしょうか。
そんな父親の子育ての悩みに触れ、父親の家庭でのあり方、夫婦で子育てを楽しむためのポイントをお伝えします。

目次

  1. なぜ父親の子育て参加が望まれるのか
    • 父親が子育てを積極的に行うとよい理由
  2. 父親の子育て・家事時間の現状
    • 日本の夫婦の育児・家事の状況は
    • 諸外国との比較
    • 日本の背景にあるもの
  3. 父親の子育てに関する悩み
    • 育児に悩みを抱える父親の声
  4. 子育て上手な父親になるために
    • 子供が小さいうちこそ、関わりを持とう
    • 週1回、早めに帰る日を作ろう
    • 子育て上手とは子供と密に関わること、だけではない
    • 自分のことは自分でできる父親の姿
  5. まとめ

なぜ父親の子育て参加が望まれるのか

父親が子育てを積極的に行うとよい理由

父親が子育てに参加することには、さまざまな面でプラスになることがあります。

 

・女性=母親の職場進出の促進
日本の少子高齢化における問題の一つに、近い将来の働き手不足という問題があり、女性の社会進出、女性の労働力確保が強く望まれています。
女性社員の育成に力を入れている企業も増えており、近年は出産後も働く女性が増えています。
しかしその一方で、出産して家庭を持つと、仕事と家庭、育児の両立に厳しさを感じている人も多くいます。
育休制度の活用など、父親が子育てに積極的に参加することは、家庭内における女性の役割負担を軽減し、母親が働きやすく環境をつくることへとつながります。

 

・子どもの自己評価が上がる
父親が育児に参加すると、子供の自己評価が高くなるといわれています。
それは、自分は母親だけでなく、父親からも愛されている、認められていると気持ちを持つことができるためです。
「自分は必要とされている」、「生きている価値がある」という自己肯定感自尊感情が土台にあれば、困難な状況になっても、前向きに考えられる子供へと成長していきます。
生まれたときから一緒にいる母親と、ある程度成長して周りを気にするようになって初めて気づく父親という存在。やはり母親とは少し違う、時々家にいる人のような存在かもしれません。
そんな父親に認めてもらえる、ほめてもらえることは、他人から認められることに近い喜びの感情を抱くようです。
この感情は、これから学校や社会に出る自信へとつながっていくでしょう。

 

・夫婦関係もより良好に
育児を積極的に行う夫は、妻からの評価も高くなります。
母親にゆとりを与え、育児の悩みを共有することで、夫婦間の会話も増えます。
子供の成長だけでなく、夫婦関係もプラスに影響することでしょう。


・父親自身の成長
妻の育児の大変さを理解し、母親の気持ちに寄り添うことができます。
男性は解決を急ぎますが、女性は解決の前に、感情を共有し共感してほしいと思うのです。
日々の子育ての大変さを誰かに分かってもらいたいと願っています。
それを誰かに理解してもらえることは、母親にとっての心の支えにもなります。
父親は子育ての参加を通して、男性には乏しいとされる他者に共感する力を養うことができるでしょう。※1、※2
このように、父親が育児に参加することは、母親にとってのメリットだけではありません。
子供の心を強くして自己評価を高くするほか、父親自身の成長にもつながっていくのです。

 

※1 明橋大二(著) 忙しいパパのための子育てハッピーアドバイス 2007年11月発行 1万年堂出版
※2 高濱正伸(著) 父親ができる最高の子育て 2017年4月発行 株式会社ポプラ社

父親の子育て・家事時間の現状

日本の夫婦の育児・家事の状況は

では、実際の父親の子育て・家事時間はどれほどなのか、2017年10月に公表された、内閣府男女共同参画局の資料を元に見ていきます。
6歳未満の子供をもつ夫の育児・家事関連時間(1日平均)の推移をみると、1996年では38分だったものが、2006年には60分、2011年には67分、2016年には83分と、年々増加しています。
しかし、妻の時間をみると、2016年妻の育児・家事関連時間は454分であり、妻と夫との差がはるかに大きいことが分かります。
では、世帯のあり方によって育児・家事関連時間は違ってくるのでしょうか。
母親が専業主婦であるか、共働き世帯であるかを基準に見ていきます。
前出の内閣府男女共同参画局の資料によると、夫が有業で妻が無業の世帯(専業主婦の世帯)における男性の子育て・育児時間は75分、同様に夫と妻共に有業の世帯(共働き世帯)では84分となっています。
確かに、共働き世帯の方が男性の育児時間は長めですが、その差はわずか9分です。
父親の育児・家事関連時間について、その家庭が共働きか否かは、さほど関係ないことが分かります。※3

 

諸外国との比較

さらに、夫の育児・家事時間を諸外国(米国・英国・フランス・ドイツ・スウェーデン・ノルウェー)と比較してみましょう。
日本の夫の育児・家事時間83分に対して、米国190分、英国166分、フランス150分、ドイツ180分、スウェーデン201分、ノルウェー192分となりました。
日本の男性よりも諸外国の男性の方が、育児や家事に関わる時間が1.5倍以上多いことが分かります。
日本は、先進国中最低の水準といえます。
一方、妻の育児・家事時間を他の先進国と比べてどうでしょうか。
日本の妻が454分を費やすのに対して、米国340分、英国369分、フランス349分、ドイツ371分、スウェーデン329分、ノルウェー326分といずれも短いです。
男性に比べると諸外国でも女性の育児・関連時間の方が長いですが、日本の女性は他の先進国の女性よりも、育児や家事などへの負担が大きいことがわかります。※3

 

日本の背景にあるもの

これらの結果の背景にあるものとは何でしょうか。
日本はまだまだ、父親は仕事、子育てや家事は母親が中心に行うものという意識が強く、母親だからやって当たり前という風潮がいまだに残っているのではないでしょうか。
また、夫の労働(仕事)時間が長いこともその要因の一つです。
日本はよく働く国として知られていますが、朝早く、帰りが遅い現状は、家事や子供と関わる時間が取れないことを示しています。
また、夫の単身赴任、長時間労働、ひとり親家庭などで夫不在の家庭では、妻がほぼ一人で子育てをしているワンオペ育児の家庭が多いのも現状です。
このように現代の子育ては、母親中心で子育てをせざるをえない状況にあります。
地域との関わりも少なく、近くに頼れる人がいないことも、その要因と言えるでしょう。※4

※3 内閣府男女共同参画局 「平成28年社会生活基本調査」の結果から~男性の育児・家事関連時間~ / 2019年11月29日閲覧
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/k_42/pdf/s1-2.pdf
※4 安藤哲也 NPO法人ファザーリング・ジャパン(著) 「仕事も家庭も」世代の新・人生戦略「パパは大変」が「面白い!」に変わる本 2017年2月発行 株式会社扶桑社

父親の子育てに関する悩み

育児に悩みを抱える父親の声

父親は育児に関わりたいと思っていてもそこにはいくつの壁があるようです。
父親の抱える悩みについて、父親視点でみていきます。


・家事や育児へのダメ出し
母親は毎日、家事や子育てをしています。
当然夫よりも手際もよく、レベルも高いでしょう。
母親と同じように試みてはいても、全く同じというわけにはいきません。
母親は感謝の言葉の前に、自分を基準にした夫のレベルに不満を言うことがあります。
「この干し方だと乾かない」とか「オムツを変える時はこうやって」などです。
「自分でやった方が早い」と言われそうですが、お互いに感謝の気持ちを持ってほしいですよね。

 

・子供がパパ嫌いである
パパ嫌いは、父親になれば一度は通る道です
母親は子供が生まれる前、お腹の中にいる時から一緒なのです。
子供に「パパ嫌い」と言われると落ち込みますが、ある時期になれば、パパとママを比べるとママの方が良い、となります。
一緒に過ごす時間も関係しているのです。

 

・仕事が忙しくて時間が取れない
子育て世代の男性を悩ませるのは、労働時間が長いことです。
働き盛りの世代ですので、会社からの期待も大きいことでしょう。
家事・育児に関わって妻の負担を少しでも軽減したい、仕事も頑張りたい、という2つの気持ちとの間で葛藤が生じます。

 

・育休を取ることの理解が得られない
現在の日本の制度上、会社に申請すれば男性でも育児休業は取れます
取得可能な時期は子供が1歳になるまでですが、さらに認可保育園に入所できないなど、子供を育てられる環境が整わない理由があれば、申請により1歳6ヶ月、最長2歳まで延長可能となっています。
しかし、厚生労働省「2017年度雇用均等基本調査」によると、男性育児休暇取得率は5.14%と、育児休業制度を利用する男性は少ないのが現状です。
その理由としては、父親が育休を取ることへの理解がない上司、職場もまだまだあるようです。※4
この他、父親の抱える悩みの中に、夫婦間の悩みとして、出産を機に夫婦の仲が悪くなる「産後クライシス」という問題もあります。
これは、子供が生まれてから、妻の夫への態度や接し方が変わることが、大きな要因です。
母親は子供のことに集中し、愛情が父親から子供へ向かうのは、自然なことなのかもしれません。
実は、この時期に父親が母親のケアができているかどうかで、その後の夫婦関係の変化に違いが現れてくるといわれています。※4

 

※4 安藤哲也 NPO法人ファザーリング・ジャパン(著) 「仕事も家庭も」世代の新・人生戦略「パパは大変」が「面白い!」に変わる本 2017年2月発行 株式会社扶桑社

子育て上手な父親になるために

子供が小さいうちこそ、関わりを持とう

父親は、母親のレベルまで家事・育児をできるようになる必要はありません。
父親ができること、父親しかできないことで子供と関わることを心がけていきましょう。
もっとも大切なのは、子供との関わりを小さいうちから持つことです。
父親にとっては一番仕事が忙しい世代ではありますが、できるだけ早く家に帰るようにします。
子供をお風呂に入れたり、寝かしつけたり、帰ってからもできることはあります。
また、小さい時は子供の成長も著しく、成長を一緒に喜びあえる機会が多い時期でもあります。
その成長過程はずっと記憶に残り、忘れられないものとなるでしょう。
特におむつ替え、お風呂入れは、子供との良いスキンシップです。
言葉を話せなくてもスキンシップを続ければ、子供もこの人は安心できる人だと感じることができます。
当然、子供との関わり方は子供の成長とともに変えていく必要があります。
いつまでも子供扱いしていてはいけません。
将来子供が自立していけるように、ほどよい距離感で子供と接して行くことも必要です。※1

 

週1回、早めに帰る日を作ろう

父親の育児休業取得は母親の負担の軽減につながります。
できることなら、多くの人が活用したいところです。
しかし、今抱えている仕事量の中で、育児休業を取ることには無理があると諦めている父親もいることでしょう。
休みは取れなくても、できることはあります。
それは、週1回、早めに帰るようにするということです。
早く帰ることで、家族との時間が持て、母親の負担も軽減されます。
今日は早く帰ると決めると、効率性を考えて仕事をするようになり、今までよりも生産性が上がるかもしれません。※1

 

子育て上手とは子供と密に関わること、だけではない

子育て上手な父親とは、子供と密に関わっている父親のことを思いがちですが、オムツ交換、お風呂に入れる、ミルクを飲ませる、公園で遊ぶといった、直接的なことだけが父親の育児ではありません
皿洗いや洗濯物干しなどの家事を行うことで母親の家事負担を減らせば、母親の心に余裕もできます。
イライラが軽減し、子育ても余裕を持って取り組んでいけるようになるのです。
そして、母親の心のサポートも必要です。
産後の母親は子育ての不安や悩みが多く、精神的に不安定な時期です。
母親の気持ちを受け止め、寄り添ってあげましょう。
子育ては夫婦でするものであり、父親が子育てに協力するのは当たり前のこと。
「やってあげている」という気持ちは捨てましょう。
また、母親は家事に子育てに、父親は長時間の仕事で、お互いに心も体も疲れています。
そんな中でもお互いにねぎらい、感謝の気持ちを伝えあうことができている夫婦は、ベストな関係です。
しかし、実際はお互い忙しさを理由に、コミュニケーションが図れていないことの方が多いのかもしれません。
家に帰ったらゆっくりしたい、そう考える父親も多いでしょう。
一方で、母親は父親が帰ってきてくれたことで、ちょっとホッとした気持ちになります。
ひとまず自分のことは置いて、妻のことを気にかけてあげることも必要です。
「今日も1日ご苦労さま」、「ありがとう」など、ねぎらいや感謝の言葉をかけるだけでも、夫婦の関係性を良好なものに変えていきます。※1、2
子供にとって良好な関係の夫婦の姿は、家が安心できる場所であるという認識へとつながります

 

自分のことは自分でできる父親の姿

そして、自分の身の回りのことはできるだけ自分でするようにすること。
多くの家庭は、結婚すると、自分でできることさえも妻に任せることが多くなってきます。
ご飯はテーブルの上にすぐ食べられる状態で並び、洗濯物も脱衣かごの中に入れておけばキレイになり、ワイシャツはアイロンした状態で吊られています。
独身時代は自分でしていたことでも、家庭を持つと妻がやってくれるので、自然と自分でやらなくなります
そして徐々にそれが当たり前になっていくのです。
もちろん、妻には妻のやり方がありますので、任せることでスムーズにいくこともあります。
しかし「箸、取って」、「コート用意して」など、自分の身の回りのことだけでも自分でできるようにすれば、妻の負担は明らかに減ります
こうした父親の姿は、子供にも良い影響を与え、自分のことを自分で出来る子、誰かを手伝ってあげられる子へと成長させていきます。
子供と積極的に関わることだけに重視するのではなく、母親のサポートもでき、自分のこともできる父親こそが、子育て上手な父親といえるのではないでしょうか。※1、2

※1 明橋大二(著) 忙しいパパのための子育てハッピーアドバイス 2007年11月発行 1万年堂出版
※2 高濱正伸(著) 父親ができる最高の子育て 2017年4月発行 株式会社ポプラ社

まとめ

子育て上手な父親とは、子供と遊ぶことや子供との関わりをたくさん持つことだけではありません。
子育ては、夫婦で協力してやっていくものです。
子供だけでなく、子供との時間が多い母親の心をサポートできてこそ、子育て上手な父親といえるのではないでしょうか。
母親が楽しく笑顔で過ごしている姿は、子供にとって嬉しいものです。
父親ができること、父親しかできないことで子育てをしていきましょう。

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