子供の自己肯定感を高めるために親ができることとは?

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最近、「自己肯定感」という言葉を耳にすることはありませんか。
日本の子供たちは、諸外国に比べて自己肯定感が低いといわれており、日本は国を挙げてこれを課題とし、要因の分析、対応策を検討しています。
なぜ日本の子供は自己肯定感が低いと言われるようになったのか、自己肯定感を高めるにはどう育てていけばよいのか、親としては気になるところです。
子供の自己肯定感を高めるために親としてできることについて見ていきましょう。

目次

  1. 自己肯定感の実態
    • 自己肯定感とは
    • 日本と世界の自己肯定感
  2. 自己肯定感の低さは他にも影響する
    • 自己肯定感が低いとマイナスになるもの
  3. 自己肯定感の低い子供の未来予想図
    • 自己肯定感が低いままの自分
    • 低い自己肯定感と周囲との関係
  4. 子供の自己肯定感を高めるには
    • 自己肯定感を高めるTipsアレコレ
  5. まとめ

自己肯定感の実態

自己肯定感とは

最近、「自己肯定感」という言葉をよく耳にするようになったと感じませんか。
日本では自己肯定感が低いことを課題とし、様々な分析や対策が講じられているところです。
子供を持つ親にとって、自己肯定感を高める子育て法は、気になる育児法でしょう。

そもそも「自己肯定感」とは、どういう意味なのでしょう。

実用日本語表現辞典によると、自分のあり方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する言葉とあります。
自己肯定感の考え方は様々ですが、簡単に言えば、自分のことを否定的にとらえるのではなく、自分は価値ある存在であると感じることといえるでしょう。
つまり、自己肯定感が低い子は、自分に対して否定的な感情が強く、肯定的な感情を持ちにくいということです。※1

 

日本と世界の自己肯定感

文部科学省の資料によると、日本の子供たちは、諸外国の子供たちよりも自己肯定感が低いという結果が報告されています。
以下の項目について日本と諸外国の若者に対する意識調査を行っています。

  • 私は人並みの能力がある
  • 私は、自分自身に満足している
  • 自分には長所がある

これらの項目に対して「とてもそう思う」「まあそう思う」と答えた割合が、諸外国よりも低い状況です。
逆に「自分はダメな人間だと思うことがある」という項目に対しては、「とてもそう思う」と「まあそう思う」と答えた割合が7割を超えており、アメリカ、中国、韓国と比較すると、もっとも高い割合を示しました。

これは、自分を肯定的に捉えている人の割合が低いことを示しています。

年齢による差もあるようです。

同じく文部科学省の資料によると、年齢が上がっていくとともに、肯定的な意識が低くなっているという結果も報告されています。

小学6年生よりも、中学3年生の方が自己肯定感は低め、という結果になっています。

つまり、諸外国に比べ日本の子供たちは、学力がトップレベルといえるにもかかわらず、自分に対する肯定的な評価が低い状況にあると考えられます。

子供たちが自分の価値を認識し、相手の価値も尊重しながら、自分の可能性に挑戦していく姿勢が大事といえるでしょう。※1、2、3

 

※2 文部科学省 日本の子供たちの自己肯定感が低い現状について / 2019年7月29日閲覧
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/chousakai/dai1/siryou4.pdf
※3 内閣府 平成26年版 子ども・若者白書(全体版) 特集1 自己認識 / 2019年7月29日閲覧
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26honpen/tokushu_02.html
※1 石田勝紀 子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば 2018年7月発行 株式会社 集英社

自己肯定感の低さは他にも影響する

自己肯定感が低いとマイナスになるもの

では、自己肯定感が低いとマイナスになるものについて見ていきましょう。
2014年版子ども・若者白書(全体版)によると、意欲・心の状態・社会参加・自分の将来に対するイメージに関する調査において、マイナス思考がみられます。
それぞれの問いに対する結果を見てみましょう。

 

【意欲について】
●うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む

この項目に対して「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた割合は、諸外国よりの低いという結果が出ています。
●つまらない、やる気が出ないと感じたこと

この項目に対して、「あった」「どちらかといえばあった」と答えた割合は、諸外国よりも多いくなっています。

 
つまり、日本の若者は諸外国と比べて、うまくいくかわからないことに対し意欲的に取り組むという意識が低く、つまらない、やる気が出ないと感じる若者が多いことがわかります。


【心の状態について】

●悲しいと感じた
●ゆううつだと感じた


これらの項目に対して、「そう感じている」という若者は諸外国に比べ多く、特に10代前半では、大きな差がみられます。

 
【社会形成・社会参加について】

●社会の問題に関与したい
●社会現象が変えられるかもしれない


「社会問題へ関わりたい」や「私が社会参加することで、社会現象が変わるかもしれない」と思っている割合は約3割~4割で、諸外国に比べ低いです。

 
【自らの将来に対するイメージについて】

●将来への希望
●40歳になった時幸せになっている

 

日本の若者は、自分の将来に希望を持っている割合が低く、40歳になった時幸せになっていると思う割合も諸外国に比べ低いです。

自分の将来に明るい希望を抱けない若者が多くいるということです。

では40歳になった時のイメージとしては、どのようなことが浮かんでいるのでしょうか。

「有名になっている」や「世界で活躍している」といった出世に関する項目は低いようですが、「親を大切にしている」や「結婚している」、「子供を育てている」といった家族形成に関する項目は高いという結果が出ています。


これらの調査からもわかるように、日本の若者は自分に自信が持てず、悲観的に見ている傾向にあるといえるでしょう。※3

※3内閣府 平成26年版 子ども・若者白書(全体版) 特集1 自己認識
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26honpen/tokushu_02.html
2019年7月29日閲覧

自己肯定感の低い子供の未来予想図

自己肯定感が低いままの自分

自己肯定感が低いままでいると、どのような傾向がみられるのでしょうか。
例えば、小さい頃から過保護に育てられ、親の準備したものに沿って暮らしていた場合、自分で決める機会や挑戦の場が少なくなります。当然、自分の意思で動くことに不安が伴います。
親や他人の考えが気になり、自分の意思がなかなか表現できないでしょう。
また、自分の進路さえも自分で決められないでしょう。
やりたいことを自分で決めて、自分で乗り越えていくことこそが、自信につながるのです。※4

 

低い自己肯定感と周囲との関係

自己肯定感は、自分で育つものではなく、周囲のつながりがあってこそ育っていくものだと考えられます。
「自分の存在や成長を受け入れられる、認められる」ことで、育っていくのでしょう。
子供たちは、年齢が上がるにつれ、周りにどうみられるかを気にするようになっていきます。

特に思春期の子供は、同世代への評価が気になる頃でしょう。自分のやりたいことはさておき、友達に合わせて行動しようとします。
また社会に出ると、上の人に気に入られようとします。
「本当はこうしたいけど、何を言われるかわからないし、やめておこう」ということが増えてきます。
「みんなと同じにしていれば大丈夫だろう」と考えるようになってしまいます。
つまり、自分を守る方向に行動してしまうのです。
それが、引きこもりであったり、抵抗や暴力であったり、自分を守るための行動は様々ですが、どちらも根本は子供の不安な気持ちから起こるものと考えられます。

では、どんな言葉をかけてあげれば、不安を恐れずに、前へ進むことができるのでしょうか。
「気にすることないよ!やりたいようにやれば」というのも、なんか子供任せのようですし、「あなたなら大丈夫よ!」というのも、一見励ましの言葉ですが、もしできなかった時のことを考えると、寄り添った言葉かけではないかもしれません
もし子供が失敗を恐れているなら、「失敗してもいいんだよ!」あるいは「失敗することが不安なんだね」など、失敗してもいいことを伝え、不安な気持ちも認めてあげるとよいかもしれません。
そして、「あなたはあなた。他の子と違っていてもいいと思うよ。思うようにやってみたらどうかな?」など、チャレンジする勇気が持てるような言葉かけをしてみましょう。※4、5

※4 星 一郎 アドラー7博士が教える子供を伸ばすほめ方 ダメにするほめ方 2009年10月発行 株式会社青春出版社
※5 吉野 明 女の子の「自己肯定感」を高める育て方 2018年9月発行 株式会社実務教育出版

子供の自己肯定感を高めるには

自己肯定感を高めるTipsアレコレ

子供の自己肯定感を高めるために親ができることには、どんなことがあるでしょうか。
いくつか挙げてみたいと思います。

普段子供に使っている言葉を変えてみる
子供に残る言葉、つまり短い言葉で話しかけてみましょう。

長い言葉は心に留まらないですし、普段使わない言葉も違和感があって、すっと入ってこないでしょう。
では、自己肯定感を高めるプラスの言葉には、どのようなものがあるのでしょうか。

 

1.認める言葉
「いいね」という言葉を明るく、さりげなく使ってみましょう。
「おお、いいね!」「いいじゃん」など。
「いいね」は相手を認める言葉で、あらゆるシーンで何気なく使える言葉ではないでしょうか。
こういった言葉を耳にしていると、自分の存在を肯定されていると感じやすくなります。
そして、相手を喜ばせたいという前向きな気持ちになっていくでしょう。※1

 

2. 感謝の言葉
誰かの役に立っている、貢献している、と思えた時、自分は必要とされている存在なんだと実感します。
普段の生活の中で、ちょっとしたお願いをしてみるとよいでしょう。
それは、時間のかかること、めんどうなものではなく、「ちょっと、そこのお皿取ってほしいんだけど」や「○○ちゃん(弟や妹)を起こしてきてくれる?」など、気軽にできることを頼んでみましょう。
そうすることで、「ありがとう」「助かった」「うれしい」という言葉をする機会もどんどん増えていきます。
親が「ありがとう」「助かった」「嬉しい」という言葉を、積極的に子供にかけることで、子供は人から感謝される喜びを感じ、子供も自然と人のために動くようになるのではないでしょうか。※1

 

3. 感心の言葉
「うん、うん」「なるほど!」など相槌の手法です。
親子間の会話の中では、なかなか発しない言葉かもしれません。
日々の忙しさから、子供の話も真剣に聞いてあげることも少ないのではないでしょうか。
「後で聞くからー」でそのままにしていませんか?
  もし、忙しくて聞いてあげられない場合は、「今忙しいから後で聞くね!」といって、必ず後で聞いてあげましょう。

お母さんはちゃんと話を聞いてくれていると感じることは大事で、安心感が得られるでしょう。※1

 

●子供のありのままを認めてあげる
身近にいる親が、子供のありのままを認めてあげること
親は子供を自立させたいと思うのは当然で、「いまのままでいいよ」なんて言葉は、なかなか言えないかもしれません。
つい子供のためと思って、「ああ、しなさい」「こうしなさい」「もっと頑張れ」と声をかけてしまいがちです。
できない自分をダメだと思うようになり、ますます自分を肯定できなくなることは避けたいところです。
受け止めてくれる親や家族がいることは、大きな支えとなるでしょう。※5 

 

●普段からスキンシップをしておく
言葉かけに配慮するとともに、スキンシップも大事です。
スキンシップといっても抱きしめることだけではありません。
「目を見て話す」「肩をポンとたたく」「背中を軽く押す」「手を握る」など、様々あります。
ただし、スキンシップもやり過ぎたら気持ち悪いとなりますので、程よいスキンシップを試してみましょう。
スキンシップは共感を表す手段のひとつ。
子供さんが甘えてきたなら、嫌がらないで、そっと受け入れてあげましょう。
特に子供が落ち込んでいるときは、スキンシップは効果的といえるでしょう。※5 
  
●他人や兄弟と比較しない
身近だと、兄弟との比較。

勉強やスポーツがすごくできる兄がいたとします。親は、その兄を基準に、接してしまいがちです。
「お兄ちゃんはできるのに。」これは、兄しか見ていないんじゃないか、「私なんて」、と思ってしまいます。
他の人や兄弟に勝ったからって、自己肯定感が育つのでしょうか。

それぞれ違う人間なのだから、違うのは当然のことです。

その子だけを見て、その子のできること、素晴らしいところを見つけて、ほめてあげましょう。
他と比べることなく、その子の人格を認めてあげることが大切です。
そうすることで、ちゃんと見てくれているなと感じて、自分は自分と思えていくのではないでしょうか。※4、5

 

●親好みの子供にしない
着る服や習い事、学校選び、ここには大抵、親がさせたい、行かせたいなどの好みが入ってしまいがち。
また物だけでなく、性格や行動力などにおいても同じで、親の思い通りの子は「いい子」となり、親の思い通りでないと「しょうがないな」となってしまったりします。
人には、それぞれ個性があり、長所が必ずあります。
そこの部分をよい方向に伸ばしてあげられるような子育てを心がけるとよいでしょう。
親の価値観で子供を判断することはしないようにしましょう。
日々の親の観察力は必要です。
子供の良いところ探しをしてみませんか。※4

 

●一緒に、親の自己肯定感も高めよう

子供の自己肯定感を高めるには、親の自己肯定感も一緒に高めていくとより効果的でしょう。
子育てがうまくいかないことは多々あるでしょう。
でもそんな時、「ダメな親だから」とか「こんなお母さんでごめん」とか言われた子供はどう思うでしょうか。
子供は「ダメな親に育てられた」と思い、「自分もダメな子供なんだ」と否定的になってしまうこともあるかもしれません。
人生、全てがうまくいくわけではないです。
それを乗り越えようと頑張っている自分を、認めてあげるとよいでしょう。
失敗してもやり直せるのだから。
「この自分でいいんだ」と思えると、楽に、楽しく子育てできるのではないでしょうか。※4

 

※1 石田勝紀 子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば 2018年7月発行 株式会社集英社
※4 星 一郎 アドラー7博士が教える子供を伸ばすほめ方 ダメにするほめ方 2009年10月発行 株式会社青春出版社
※5 吉野 明 女の子の「自己肯定感」を高める育て方 2018年9月発行 株式会社実務教育出版

まとめ

子供の頃から「自分が受け入れられている」という感覚は、人格形成にも大きく影響し、親の言葉かけ一つで子供の自己肯定感は大きく変わってきます。
子供の自己肯定感を高めるためには、身近にいる親の接し方はとても重要です。

ポイントは「親好みの子」を求めるのではなく、「子供のありのままを受け入れ、認めてあげる」ことなのです。

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