気づいたら自分も毒親!?子供のためではなく、自分のための育児をしていませんか?

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今や、さまざまなメディアで取り上げられる「毒親」という言葉。
禍々しい言葉に見えますが、実は誰でも毒親になる可能性を秘めています。
子供のためと言いながら、子供はいつまでも子供と思って行動している親は、傍からみれば子供を大事にしているように見えます。
しかし、子供の成長という観点では、必ずしも子供のためにはなっていないケースが多々あります。
毒親とはどのような親なのかを理解し、本当の意味で子供を支える親を目指しましょう。

目次

  1. そもそも“毒親”とは何か
    • 毒親という言葉は、どこから来たのか
    • 毒親に育てられた子供はどうなるか
  2. もしかして、自分は毒親?
    • 自分は毒親なのかどうか、己の行動を振り返ってみよう
    • 毒母の特徴
    • 毒父の特徴
  3. 親が毒親になってしまう理由
    • 毒親になりやすい大人が増えている?
    • 毒親になりやすいタイプがある?
  4. 毒親から脱け出すために
    • 子供にどう育ってほしいのかを考える
    • 自分の言動が悪いと気付いたら、子供に謝ろう
  5. まとめ

そもそも“毒親”とは何か

毒親という言葉は、どこから来たのか

毒親という言葉は、1990年代に発行されたスーザン・フォワードの著書「毒になる親」で使われたのが最初であると言われています。
現在では毒親と聞くと、とても強烈な表現ですが、最初は「子供に悪影響を及ぼしている親」として使われました。※1、2
毒親になる親には、どのような特徴があるのか見てみましょう。

 

・子供にとって神様であろうとする
親は絶対的存在であり、子供は常に親の言う通りにすべきという考えを持った親です。
自分の言うことは正しいと思っています。※2

 

・子供を支配し、「あなたのため」を免罪符にする
子供は未熟で、親がいなければ何もできないと思っており、あれやこれやと「あなたのため」と先回りして行動します。
自分と子供を一緒にし、子供を一人の人間として見ていません。※2

 

・残酷な言葉を平気で使う
子供の気持ちを考えることなく、平気で子供を罵ります。
子供を否定する言葉を発し、子供の心を傷つけます。※2

 

・無視する親
過干渉とは逆に、子供のことに無関心で、子供を放置している親です。
「兄弟姉妹で、私だけ構ってもらえなかった」など、兄弟姉妹で扱いが違う場合や、親の都合のいい時だけ使われるといった場合もこれに当たります。※1

 

毒親に育てられた子供はどうなるか

一般的に、毒親に育てられた子供は、心が壊れてしまい、心が成長できないといわれます。※1
子供の頃は親の言うままに生きてきた、親に大事にされなかったなどの経験をした子供は、「自分は親がいないと何もできない」「自分はダメな子供」と思うようになり、自分に自信が持てません。
親に逆らうことなく、自分の感情を閉じ込めて生きてきたため、自分を表現することも苦手です。
親以外の人との関わりを避けようとします。※1
大人になってもそのトラウマから抜け出せず、社会への生きづらさをずっと抱えて生きていくことになり、大人になり切れない子供、いわゆるアダルトチルドレンになる可能性もあります。※1

 

【アダルトチルドレンに見られる特徴】

  • 見捨てられる不安におびえる

常に周りの評価が気になり、相手の期待に沿う生き方をしようとします。※1

  • 自己評価が低い

「どうせ、私なんて」と、自分を卑下し、自分に自信が持てず、チャレンジすることに抵抗があります。※1

  • 被害妄想に陥る

周りから高評価されても素直に受け入れられず、その評価の裏には悪意があると考えてしまいます。※1

  • 生活の中で楽しみを見いだせない

周りの自分への評価が気になるあまり、自分の感情を押さえ込んでしまいます。
また楽しむことに罪悪感を抱いているため、何事も楽しめません。※1

  • 表情が乏しい

感情を押さえ込んで生活してきたため、不安・悲しみ・怒り・喜びなど感情を認知・表現することが苦手です。※1

  • 環境の変化を嫌う

周りから見ると生きづらい生活でも、その生活を変えようとしません。
ましてや他人から強制されて生活が変化することを、ものすごく嫌います。※1

 

※1 斎藤学(著) 2015年2月発行 「毒親」の子どもたちへ メタモル出版
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026100729-00
https://product.rakuten.co.jp/product/-/1378c03c2e96d3fc2f4e8b16a0e76f5e/
※2 スーザン・フォワード(著) 玉置悟 (翻訳) 2001年10月発行 毒になる親 一生苦しむ子供 講談社+α文庫
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000193526

もしかして、自分は毒親?

自分は毒親なのかどうか、己の行動を振り返ってみよう

毒親は、一見するとその言動は問題が無さそうに見えます。
本人も自覚が無いことが多いため、自分や周りからも気づかれにくいのです。
しかし、周りから指摘されないのなら、自分で気付くしかありません。
次に挙げるチェック項目は、毒親に見られる特徴です。
私、毒親かも?と不安を抱いている人、今は「自分は毒親ではない」と思っている人も、ぜひこの機会に自分を振り返ってみましょう。
新たな発見があるかもしれません。※3


【自身について】

  • 常に悩みや心配事を抱えている
  • 家事や仕事に追われる生活だ
  • 周りの目が気になる
  • 家事を完璧にしないと気が済まない
  • 体裁が悪いことを嫌う
  • 家の外と中では態度が違う
  • 家族に謝れないか、逆にすぐ泣く、すぐ謝る
  • 自分は正しい、自分はいい親だと思っている※3

 

【子供に対して】

  • 「早くしなさい」「ちゃんとしなさい」が口癖だ
  • 子供が自分の言う通りにしないと腹が立つ
  • 子供が今何をしているのか常に把握したい
  • 兄弟姉妹を比較する、兄弟姉妹によって対応が違う※3

 

【成人した子供に対して】

  • 子供の就職先はこうあるべきだと考えている
  • 子供の交友関係、異性との交際に口出しする
  • 結婚後も近くに住んでほしい
  • 自活した子供に、食料などをしょっちゅう送る※3

上記のうち、半分以上にチェックがつく場合は、毒親度が高めと言えるでしょう。
毒親にはいくつかのタイプがあります。
ここでは毒父・毒母について見ていきます。※3

 

毒母の特徴

毒親になる母親には、大きく4つのタイプがあります。

 

・毒舌罵倒が当たり前、まるでジャイアン
比較的分かりやすい、特徴的なタイプ。
事あるごとに「お前はダメだ!」と否定的な言葉で子供を罵ったり、怒鳴ったりすることもある。
時には、手や足を出し暴力的になる。※3

 

・かわいそうな母を演じる
子供が自分の思い通りにならないと、子供の前で泣いたり、つらそうな姿を子供に見せたりする。
子供に罪悪感を抱かせ、コントロールしている母親。※3

 

・レールを敷きまくる
「子供が将来困らないように」という思いから常に世話を焼き、母親の敷いたレールの上を歩かせようとする。
子供が親の希望する道へ進むと、周りからは毒親どころか、よい母に見られる。※3

 

・自分が一番大事
子供の気持ちよりも、自分のことを一番に思っている母親。
自分はよい妻、よい母親であることが大事であり、自分に過ちがあっても認めない、話をそらすなどの言動がみられる。※3


他にも、手段を選ばず、自分の思いのまま行動するタイプ、子供と向き合えず、放置するタイプなどもあります。
もちろん、1つのタイプだけでなく、2つ以上組み合わさっている場合もあります。※3

毒父の特徴

毒親になる父親にも、大きく4つのタイプがあります。


・事なかれ主義、母親に同調
子供が母親から理不尽な扱いをされていても、見て見ぬふりをする。
子供を助けるどころか、母親に同調する。※3

 

・根性論で攻める
「根性があればどんな目標も達成できる」という考え方を持った、頑固なスパルタ親父。
好きな言葉は根性。
「お前は根性が足りない!」と怒鳴ることもある。※3

 

・家族を顧みない
仕事優先で、子育て家事は妻に任せきりの父。
当然子供にとって父親の存在は薄く、思い出もほとんど無い。
たまに家にいても、自分の好きなことに時間を使う。※3

 

・恐怖で家族を縛り付けるモラハラ
自分の意に反することが起きると、妻に向かって「お前が悪い」と怒鳴り、恐怖で家族を縛り付ける。
家族は、びくびくしながら生活することになる。※3
前述したジャイアンタイプの母親の相方として多いのは、「事なかれ主義」の父親のようです。
母親から理不尽な扱いをされる子供を見ても見ぬふり。
これも立派な毒親です。※3
幼少期の出来事が大人になっても影響すると言われるように、ここに挙げた毒親たちも、毒親に育てられた経験をもつことが多いといわれています。※3

 

※3 高橋リエ(著) 2019年6月発行 気づけない毒親 毎日新聞出版
http://mainichibooks.com/books/humanities/post-675.html

親が毒親になってしまう理由

毒親になりやすい大人が増えている?

日本は今、毒親になりやすい大人が増えているといわれています。


その理由の一つに、日本の子育てに異変が起きていることが挙げられます。
本来、子供のための子育てであるべきですが、「親のための子育て」になっているケースが増えているのです。※3
周りの評価や世間体が気になる親は、よい親に見られたいためにしっかりした子供を育てようとします。
周りの評価にこだわり、子供をますます自分の思い通りに従わせようとし、子供の気持ちは後回しにしてしまいます。※3


例えば、子供時代に周りから「いい子、いい子」と言われ、親に逆らうことなく、我慢をしてきた子供は、親に見捨てられる不安を抱えています。
自分の気持ちを抑え、親の気持ちを優先したため、心の成長ができず、親の指示が無いと動けなくなってしまうのです。※3

また、幼少期にしつけと称して怒鳴られたり、外に立たされたり、閉じ込められたりした経験がある子供や、いつも夫婦喧嘩が絶えない環境にいた子供、育児放棄された子供なども、恐怖と不安を感じながら生きています。※3
また、はっきりとは言わないけれど相手に察することを求める人もいます。
「●●しなさい」といわない代わりに、言葉には出さなくても「●●するべき」という態度で相手に分からせるのです。
子供は親から「●●しなさい」と言葉にされると、自分が大人になったとき「それは違う」と否定することができます。
しかし、言葉にされずに育つと自然と自分に染みついてしまい、それがおかしいということに気付けません。※2
例えば、両親が「子供より親が優先」と考えていれば、直接言葉で言わなくても、それは子供にも伝わります。
仮にその子供が大人になって結婚し新たな家庭を築いても、親は子供に干渉し続けるでしょう。
子供の配偶者を無視し、子供の家族よりも親を優先させようとします。
子供はそうした親の態度や言動を「おかしい」と思うことができなければ、自分の家庭を破たんさせてしまうかもしれません。
子供の頃の記憶は大人になっても消えません。
それどころか、幼少期の経験がこれから進む人生に悪影響を及ぼし、自分が毒親になる可能性があります。
子供時代に親にどのように育てられたかは、とても重要なのです。※3

 

毒親になりやすいタイプがある?

これまでご説明しましたように、毒親の多くは、常に心配性です。
心配性の親は子供にリスクのあることはさせたくなく、子供の行動を見張り、つい先回りして行動しがちです。
子供の気持ちよりも自分の気持ちを優先します。※1、3
親の過干渉によって、子供は次第に自分で考えて行動することが少なくなり、自分がどうしたいのかさえ、わからなくなってきます。
親の言う通りにしていれば、間違いないだろうと思うようになり、進学先や就職先を選ぶ時も、常に親の意見を聞き選択していきます。
一方の親は、子供が自分の思う道に進むことで、自分は正しかったと安心感を得ます。※3
毒親は心配性から心に余裕がなく、相手の気持ちを思いやれません。
思ったことをすぐ口に出したり、子供の前で平気で夫婦喧嘩をしたりします。※3
しかし、毒親は他人からの評価を気にするため、外面がよく、周囲からは良い人に見られがちです。
このように、毒親に育てられた子供もまた、毒親になる場合も多いのです。※2、3

 

※1 斎藤学(著) 2015年2月発行 「毒親」の子どもたちへ メタモル出版
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026100729-00
https://product.rakuten.co.jp/product/-/1378c03c2e96d3fc2f4e8b16a0e76f5e/
※2 スーザン・フォワード(著) 玉置悟 (翻訳) 2001年10月発行 毒になる親 一生苦しむ子供 講談社+α文庫
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000193526
※3 高橋リエ(著) 2019年6月発行 気づけない毒親 毎日新聞出版
http://mainichibooks.com/books/humanities/post-675.html

毒親から脱け出すために

子供にどう育ってほしいのかを考える

現在の日本では、子供の自己肯定感が低いことが問題となっています。※4、5
内閣府が行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)」によると、日本の子供の中で今の自分に満足しているのは、わずか45%程度でした。
諸外国は、アメリカ87%、フランス86%、ドイツ82%の子供が、自分に満足していると答えています。※5
自分に満足することは、自分を大切にする力につながります
その結果、自己や社会に関わる心の力、非認知能力が高くなるのです。
具体的には、自尊感情や忍耐力、共感性や社会性を指します。※4
この非認知能力が充分に育たない子供は、一見するとルールに従う良い子に見えますし、親の引いたレールの上は危ぶむことなく進むでしょう。※4
しかし、子供は本来、子供なりに自分の道を自分で探していくものです。※2
自分の子供に、どのように育ってほしいのか。
自ら行動できる子、自ら生きる力を持つ子に育ってほしいなら、今すぐ毒親から抜け出しましょう。

 

自分の言動が悪いと気付いたら、子供に謝ろう

前述の通り、毒親に育てられた子供は、自分もまた毒親になる可能性があります。
毒親に育てられると、毒親では無い親の子育てしか分かりませんから、自分もまた子供の頃に受けた子育てを真似しようとしてしまうのです。※2
でも、もし今自分が「私は毒親かもしれない」と思ったら、その流れを断ち切ることができます。※2


では、具体的にどうすれば良いのか。
子供を一人の人間として認め、自らの言動の間違いに気付いたら謝れば良いのです。
もちろん、すべてにおいて子供と同等である必要はありません。
子供が危ないこと、悪いことをしたら叱ることは必要です。
躾や指導は親の役割だからです。
しかし、親であるあなた自身が子供に対して良くない行いをしたときは、素直に謝りましょう。
これが毒親から抜け出す手段なのです。※2
例えば、イライラしてつい八つ当たりをしてしまった時、言うことを聞かないからと必要以上に手を挙げてしまった時、子供を傷つけるような言葉を言ってしまった時などです。
そこに気付いて、すぐに「ごめんね」と謝れる親を、子供は見下したりせず、むしろ尊敬します。
毒親という言葉を生んだスーザン・フォワードは「子供に謝ることができない人というのは、愛情が欠けている人間である」と記しています。※2
子供と同じ立場に立とうとすれば、過干渉、自分が子供にとって神であること、可哀想な母を演じること、モラハラ、こうした言動は自然と無くなっていくのではないでしょうか。※3 

 

※5 内閣府 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度) 第2部 調査の結果
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/h30/pdf/s2-1.pdf
2020年4月24日閲覧
※2 スーザン・フォワード(著) 玉置悟 (翻訳) 2001年10月発行 毒になる親 一生苦しむ子供 講談社+α文庫
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000193526
※3 高橋リエ(著) 2019年6月発行 気づけない毒親 毎日新聞出版
http://mainichibooks.com/books/humanities/post-675.html
※4 西郷孝彦、尾木直樹、吉原穀(著) 2020年4月発行 「過干渉」をやめたら子どもは伸びる 小学館
https://www.shogakukan.co.jp/books/09825370

まとめ

親からすれば、子供はいつまでたっても子供かもしれません。
しかし子供は、赤ちゃんから幼児、学童から学生、そして大人へと、体は確実に成長していきます。
それに伴い、自立した大人になるための心を育てていくのは、親の接し方が重要です。
もしも「自分はもしかすると毒親だったかも」と気付けたら、毒親を抜け出すチャンス。
親は自らの行動を振り返ることで、毒親路線からの脱却を図りましょう。

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