【文系・理系診断】あなたはどっち?文理選択の前に将来を考えよう
進学に向けて大きな分かれ道となる文理選択。
受験なんてまだまだ先、と考えていても、実は高1年生の秋には文系か理系かを決めておかなければいけません。
文系・理系それぞれの就職先や高校での勉強の違い、文理選択で後悔しない選び方を紹介します。
目次
- 文系を選択した人の進路・就職
- 代表的な学部一覧
- 法学部の特徴・就職
- 経済学部の特徴・就職
- 文学部の特徴・就職
- 外国語学部の特徴・就職
- 理系を選択した人の進路・就職
- 代表的な学部一覧
- 医学部の特徴・就職
- 薬学部の特徴
- 工学部の特徴・就職
- 理学部の特徴・就職
- 目指す学部によっては文系・理系が融合する場合も
- 文系・理系の受験勉強の違い
- 文理選択の一般的なスケジュール
- 文系は英語、国語、地歴公民を重視
- 理系は数学、理科を重視
- 文転・理転、難しいのはどっち?
- あなたはどっち?文系・理系診断
- 受験だけを考えて決めるのはNG
- 将来どんな仕事がしたい?
- どんなことに興味がある?
- まとめ
文系を選択した人の進路・就職
高校と大学の大きな違いは、学びの内容が大きく細分化されることです。
高校1年生の文理選択は、あなたにとって大学生活の4年間をかけて追求したい学問を探す第一歩であり、卒業後の人生にも大きく関わってきます。
まずは、文系を選択すると進学先としてどんな学部・学科があるのか、またそれぞれ卒業後にはどんな職業に就いているのかを見ていきましょう。
代表的な学部一覧
文系学部は、大きく分けて「社会科学系統」と「人文科学系系統」があります。
<社会科学系統>
社会科学は法律や経済など社会のさまざまな現象を研究する学問で、人文科学と比較すると実学としての性質が強いことが特徴です。
主な学部は、法学部、経済学部、経営学部、社会学部、社会福祉学部、総合政策学部、国際関係学部などがあります。
社会科学系統をさらに分類すると、次のようになります。
法学・政治学関係:法や政治の視点から、国内外の現代社会の課題を研究する
経済学・経営学関係:現代の経済を理論的に分析する、流通の仕組みを学ぶ
社会学・福祉関係:社会の仕組みを総合的・学際的に学ぶ、福祉社会の実現に向けた実学的な内容を学ぶ
政策科学関係:問題解決のための政策立案・実行能力を育む、地域づくりの政策課題に取り組む
国際関係学関係:世界各地の事象を多角的に分析する
<人文科学系統>
人文科学は、一言で表すと「人類の文化を探求する学問」で、社会科学と比較すると抽象的な概念をテーマとするところが特徴です。
主な学部は文学部、人文学部、外国語学部、国際文化学部、神学部、人間学部、心理学部などがあります。
人文科学系統をさらに分類すると、次のようになます。
文学・語学関係:日本や外国の文学を研究する、高い語学力を習得する、世界のさまざまな文化への理解を深める
史学・地理学関係:史料等に基づいて日本史・西洋史・東洋史を研究する
哲学関係:西洋哲学を中心に国内・世界の哲学を研究する、人間の心理・行動を研究する
文化学関係:世界各地の文化を思想・社会・民族などさまざまな切り口から研究・比較する
人間科学関係:心理学・社会学を中心に人間を多角的・総合的に研究する
また、大学で音楽や美術などを専攻したい人も、文理選択で文系コースに進学するケースが一般的です。※1
法学部の特徴・就職
法学部は「裁判官、検察官、弁護士になりたい人のための学部」と思われがちですが、これは誤解です。
むしろ法学部から法曹三者になる人は少数派で、法学部出身者の多くは、金融・保険業、メーカーなどの一般企業、中央省庁、地方自治体、など幅広いフィールドで活躍しています。
資格を取得して司法書士、行政書士、社会保険労務士などの士業になる人もいます。
法学部の学びは「リーガルマインド(法的思考力)」を身につけることを目標としています。
リーガルマインドとは、「法律に関する基礎的な知識を学び、それを応用するために自分で論理的に考え、その考えを正しく他人に伝え、たがいに議論する」力のことで、社会に主体的に関わっていくための力を養います。※2
経済学部の特徴・就職
経済学部は、経済活動の仕組み、機能、法則について研究する経済学や、企業経営の経営管理や組織のあり方、マーケティングなどを学ぶ経営学などを扱います。
卒業後の就職先は、一般企業では金融・保険業、商社、流通業、情報サービス業など、中央省庁や地方自治体の公務員になる人もいます。
資格を取得して公認会計士や税理士という道もあります。
文学部の特徴・就職
文学部は扱う範囲が非常に広く、また細分化しているため、何をするのかわからないと思う人も多いかもしれません。
文学部は、文学はもちろんのこと、語学、哲学、歴史学、社会学、心理学など、人文科学系統のほとんどの学問が集まっている学部で、あらゆる専攻に共通しているのは「人間とは何か」を突き詰めていくことです。
文学部の学生は新聞・雑誌・テレビなどマスコミ系を志望する人が多いことが特徴です。
実際の就職先は一般企業が多く、金融・保険業、情報通信業、メーカーなど業界を問わず活躍しています。
国語・英語・社会などの教員や図書館司書などの公務員になる人も多いようです。※3
外国語学部の特徴・就職
外国語学部は、英語、スペイン語、中国語など世界のさまざまな言語や文化を学び、専攻した言語に関する高いスキルや文化への理解を養っていく学部です。
ネイティブスピーカーの教員が授業を行うことも多く、言語習得に必要な「聞く・話す・読む・書く」という技能を磨いていきます。
卒業生は高い語学力を活かせる職業に就く人が多く、通訳・翻訳家のほか、一般企業では商社・貿易業、フライトアテンダントやホテルスタッフなどの接客業で外国人と接する機会が多い職業を目指せます。
また、中学・高校の英語教員のほか、外国人を相手に日本語を教える仕事に就く人もいます。
※1:2017年 『大学受験プライムゼミブックス 大学学科案内』学研プラス
※2:2018年 山下久猛著『法学部 中高生のための学部選びガイド (なるにはBOOKS 大学学部調べ)』ぺりかん社
※3:2018年 戸田京子著『文学部 中高生のための学部選びガイド (なるにはBOOKS 大学学部調べ)』ぺりかん社
理系を選択した人の進路・就職
では、理系を選択すると進学先としてどんな学部・学科があり、それぞれ卒業後はどんな職業に就いているのでしょうか?
代表的な学部一覧
理系学部は、大きく分けて「医療・保健学系統」「工学系統」「理学系統」「農学系統」があります。
<医療・保険学系統>
主な学部は、医学部、歯学部、薬学部、看護学部などです。
それぞれ、医師、歯科医師、薬剤師、看護師といった人間の健康や生命に深く関わる職業に就くための専門的な知識と技術を習得する学部です。
また、チーム医療を支える臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士など各種専門スタッフを育成する医療技術学部、リハビリテーション学部などもあります。
いずれも国家資格やその先の就職とダイレクトに結びつく学びが特徴です。
<工学系統>
主な学部は、工学部、理工学部です。
工学部は、機械工学、電気通信工学、土木建築工学、応用化学などの研究を通じて将来のエンジニアとなる人材を多数排出しています。
理工学部は、理学と工学を組み合わせた学部で、理学部よりも応用色の強い学びが特徴です。
また、工学の中でもさらにテーマを絞り込んだ、基礎工学部、情報理工学部、生命工学部、産業工学部、芸術工学部などもあります。
<理学系統>
主な学部は、理学部、理工学部、情報科学部などです。
理学部は、数学、物理学、化学、生物学、地学などの理論や実験を通して、自然の謎を解き明かしていきます。
自然科学を大きく2つに分けたとき、自然の謎を解き明かそうとする基礎科学を担うのが理学部、どうすれば現実生活に役立つのかを追求する応用科学を担うのが工学部や農学部です。
<農学系統>
主な学部は、農学部、獣医学部、畜産学部、水産学部などです。
農学系統は、生物学を中心に化学、工学、経済学なども扱いながら、農林水産業の発展、エネルギー問題や環境問題への対応に貢献していく学問系統です。※1
医学部の特徴・就職
医師の卵が集まる医学部医学科は、1〜3年生で人体の構造や機能を知る基礎医学を学び、3年生から臓器ごとにさまざまな症例に取り組む臨床医学を、5年生から実際の病院で学ぶ臨床実習を行います。
これらの学びに加えて国家試験に合格することで医師免許が与えられますが、その後も2年間の臨床研修を受けることが義務付けられています。
実際に診療を行う医師以外にも、研究医、医療行政に携わる公務員、製薬会社など一般企業といった就職先があります。
薬学部の特徴
薬学部薬学科は、病院・薬局で医師の処方箋に基づいて薬を調剤したり、薬の飲み合わせや重複をチェックしたりする薬剤師を養成します。
6年間の過程で、薬の成り立ちから、使い方、作り方までをトータルで学びます。
医学部医学科と同じように病院や調剤薬局での実習があり、患者さんへの服薬指導なども経験します。
国家試験に合格して資格を取得したら、病院・薬局・ドラッグストアの薬剤師として働くほか、製薬会社や化粧品メーカーで研究職に就くケースもあります。
工学部の特徴・就職
工学部は、研究成果を実際の社会に役立つ製品の開発に活かし、幅広い分野でものづくりを担うエンジニアを育成する学部です。
研究分野が広いため学科・専攻は細分化されますが、中心的な存在の機械工学科の場合、自動車・コンピュータ・ロボットなどあらゆる製品・システムを開発・設計・製造するための学問を基に、より高度な性能を目指すための教育・研究を行っています。
工学部の卒業生は、自動車・電機・精密機器等を作るメーカーはもちろんのこと、建設業、インフラ系、医療・製薬系、食品系など、専門に応じてさまざまな職場に進んでいます。
理学部の特徴・就職
理学部で学ぶ学問は基礎科学であり、研究内容が実社会の課題に直接役立つわけではありません。
しかし、今日の豊かで安全な生活を支える技術・製品は、どれも基礎科学の上に成り立っています。
理学部の教育・研究は、社会の基盤を作る「縁の下の力持ち」のような存在なのです。
例えば数学科では、公式や定理を使って答えを導き出すのではなく、公式や定理そのものの意味や、背景にある原理・真理を理解していくために学びます。
理学部で学んだことを直接活かせる仕事は研究職ですが、学部を卒業した後に修士課程・博士課程へ進んで博士号を取得することが必要で、狭き門です。
中学校や高校で数学や理科の教員になる人が多く、専門性を活かしてIT業界・メーカーなどの一般企業や公務員を目指す道もあります。※4
目指す学部によっては文系・理系が融合する場合も
ここまで文系と理系に分けて学部を紹介してきましたが、最近は文理学部や総合科学部などの文理融合系の学部が増えています。
現代社会は複雑化していて、一つの分野の専門知識だけでは課題を解決できるとは限りません。
そこで、文系・理系を問わず幅広い分野を学んで、現代社会の課題に対応できる人材を育てるのが文理融合系学部の特徴です。
※1:2017年 『大学受験プライムゼミブックス 大学学科案内』学研プラス
※4:2018年 佐藤成美 著『理学部 中高生のための学部選びガイド (なるにはBOOKS 大学学部調べ)』ぺりかん社
文系・理系の受験勉強の違い
大学入試は、目指す大学・学部・学科によって試験に使われる教科・科目が異なります。
特に、文系と理系では、高校で受ける授業や受験勉強の内容が大きく違ってくるのです。
文理選択の一般的なスケジュール
文理選択の時期は学校ごとに異なりますが、一般的には高校1年生の夏休み前後から始まります。
まずは、文系・理系のどちらを希望するのか希望調査が夏休み前後に行われます。
最終的な答えを出すまでにまだ時間があるので、夏休みを利用して進路についてしっかり考えたり、保護者と話し合ったりしておきます。
そして、高校1年生の秋〜冬には、担任と面談で話し合ったうえで文理選択の最終的な意思決定を行い、高校2年生に進級するときに文系・理系のコース分けが行われます。
文系は英語、国語、地歴公民を重視
文系学部の受験で主に使われる教科は、英語、国語、地理歴史・公民です。
数学や理科の授業は理系コースと比べて少なくなります。
国公立大学の一般入試は、文系・理系を問わず、センター試験で5教科を課す大学・学部が最も多くなっているので、数学や理科もバランスよく勉強する必要があるでしょう。
※5
一方、私立文系の一般入試は、英語、国語、地理歴史・公民または数学から選択という3教科で行われることが多いです。
文系の受験勉強の特徴は、暗記量が膨大だということです。
地理歴史・公民が暗記科目であるのは言うまでもありませんが、英語は英単語、国語は古文単語の暗記が欠かせません。
理系は数学、理科を重視
理系学部の受験で主に使われる教科は、英語、数学、理科(物理・化学・生物・地学)です。
国語や地理歴史・公民の比重は文系コースと比べると小さくなります。
しかし国公立大学の一般入試は、文系と同じくセンター試験で5教科を課す大学・学部が最も多いため、国語や地理歴史・公民も一定レベルの学力が求められます。
私立理系の一般入試は、英語、数学、理科の3教科で行われることが多いです。
理系の受験勉強の特徴は、数学や理科の内容が高度になり理解が難しくなることです。
問題の答えをなかなか導き出せなかったり、参考書の解説を読んでも解決しづらかったりするので、理解できない点ができたら先生や友達に質問してどんどん解決していく姿勢が大切です。
文転・理転、難しいのはどっち?
文転・理転とは、文系・理系コースに分かれた後に、志望する進路を変更して、もう一方に切り替えることです。
将来就きたい職業や学びたいことが変わった、自分が選択したコースの勉強が合っていないと気づいたという人が文転・理転を検討します。
学校で在籍するコースを変更できない場合は、元のコースで受験には必要ない授業を受けながら、新しい教科・科目を独学で勉強しなければならなりません。
特に、理系の高度な内容を独学で学ぶことはハードルが高いことなどから、文系から理系を目指す理転のほうが難しいと言われています。
※5:文部科学省「平成28年度国公立大学入学者選抜について」
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1361463.htm
あなたはどっち?文系・理系診断
苦し紛れの文転・理転で苦労しないために、高校1年生の文理選択の前に自分に合うコースはどちらか、十分検討しましょう。
では、文系・理系を自己診断するには、どのような視点で考えればいいのでしょうか?
受験だけを考えて決めるのはNG
まず、「数学が苦手だから文系」「国語が苦手だから理系」とすぐに決めてしまうのはやめましょう。
受験で苦労したくない、という視点で将来に関わる選択をすると、後で自分の興味・関心と真剣に向き合ったときに後悔するかもしれません。
それに、苦手と思い込んでいる教科も、実際は正しい勉強の仕方を知らないだけ、勉強にかける時間が短すぎるだけ、という可能性もあります。
興味のある職業や学部・学科と得意教科が食い違っていても、受験までまだ時間はあるので、高校1年生の時点で諦める必要はありません。
希望の進路に向けて、どうすれば苦手を克服していけるのか、または得意科目を活かしたり苦手科目をなるべく回避したりする方法はないかなど、先生に相談してみましょう。
将来どんな仕事がしたい?
文系・理系診断の王道は「将来どんな仕事がしたいか」に真剣に向き合うことです。
将来やりたい仕事が決まっている場合は、その職業に就くにはどんな学部・学科に進む必要があるかを確認しましょう。
代表的なものでは、医師や薬剤師になるには医学部や薬学部に進学することがマストです。
資格が必要な職業は学部・学科が絞られるため、自ずと文理選択の答えが見えてくるでしょう。
しかし、高校1年生の時点で、まだ将来やりたい仕事が決まっていない、じっくり考えたことがないという人は珍しくありません。
この機会に、世の中にはどんな職業があるのか、自分はどんなことに喜びや楽しさを感じるのか、仕事を通してどんな人になりたいかを調べたり考えをまとめたりしてみてください。
文理選択は気が重いと思っている人も、「自分の人生でやりたいことを叶えるためのステップ」ととらえ直して前向きに夢を膨らませてみましょう。
また、将来の仕事から選ぶといっても「就職に有利そうだ」という理由で決めるのは危険です。
もし、あまり興味を持てない学部・学科を選んでしまうと、勉強についていけなくなったり、研究がつらくなったりして、どこかで行き詰まりを感じてしまうでしょう。
どんなことに興味がある?
大学と高校の大きな違いは、講義を聞いて知識を習得するだけでなく、自分で研究テーマを設定して論文や実験に取り組むことです。
将来の職業について希望がまとまらない人は、自分が大学4年間で興味を持ち続けることができそうな学問は何か、考えてみてください。
文理選択時に学部・学科まで絞り込めなくても、文系・理系のどちらかを選択する目安になるはずです。
そしてコース分け後、高校2年生〜3年生の初め頃までの時間を使って、改めて将来やりたい仕事を考えてみましょう。
まとめ
高校入学から文理選択まではあっという間です。
日頃から自分の将来について考えたり、具体的に情報収集したりして、後悔なく文理選択に望める準備をしておきましょう。
文理選択としっかり向き合って目指す大学や職業が見えてくれば、勉強へのやる気も自然とアップするはずです。