音読の効果とは?効果的なやり方や宿題の目的を解説

公開日:

小学生になると、毎日の宿題として出されることの多い音読。
なぜ本を読む音読が宿題にされるのか、学習面で効果はあるのか疑問に感じる方もいるのではないでしょうか?
この記事では音読について子どもへの効果や黙読との違いや、効果的なやり方、宿題の目的などを明らかにしていきます。

 

目次

  1. 音読とは?朗読との違いは?
    • 音読とは
    • 音読と朗読の違い
  2. 音読の効果とは?
    • 脳が活性化する
    • 語彙力や文章の理解力を上げる
    • 日本語の響きやリズムを知り英語にも役立つ
    • 声を出す練習
    • 腹式呼吸が身につく
    • 達成感を得やすい
  3. 音読の宿題の目的は?黙読ではだめな理由
    • 宿題の目的
    • 黙読ではだめな理由
  4. 「効果がない」のはやり方が違う?
    • 声は大きく、はっきりと読む
    • 感情は込めなくてもOK
    • 慣れてきたら文章の切れ目を意識する
    • 苦手意識がある場合は題材を工夫
  5. 英語学習も音読が効果的?!
    • 小学生にもできる英語の音読
  6. まとめ

音読とは?朗読との違いは?

音読とは

まずは音読とはそもそも何なのか、おさらいしておきましょう。
音読とは、書かれた文章を声に出して読むことであり、文章を正しくはっきりすらすらと読むことが目的です。※1※2
学校では、国語の授業で音読が取り入れられています。
飽きずに繰り返し音読するために、学校では様々な工夫がされています。
一斉に読む、先生の後に続けて生徒が読む、生徒が一人ずつ順番に読む、役割分担して読む、速く読むなど、同じ文章も変化をつけて繰り返し音読しているようです。※2

 

音読と朗読の違い

音読と似て非なるのが、朗読です。
音読が文章を声に出して読むことなのに対し、朗読は文章を人に聞かせるため声に出して読むことを言います。
音読のように文章を正しくはっきり読むだけでなく、朗読は作品の価値や特性を音声で表現することも目的の1つです。※1※2
つまり、音読はただ声に出して文章を読むだけで成り立つのに対し、朗読は文章に出てくる場面の雰囲気や人物の心情を音声で表現しなければなりません。
朗読はテレビ番組などで流れるナレーションに近いイメージといえるでしょう。


文部科学省の学習指導要領では、小学校低学年は音読を、小学校高学年は朗読を学習領域としています。※2

音読と朗読は読み方の目的が違うものの、どちらも「読書」に変わりありません。
読書は、本などの書物を読むこと。
子どもの文章力や読解力の向上に役立つので、子どもには読書の習慣を身につけてほしい親も多いのではないでしょうか。
読書にはどんな効果がある?人生を豊かにする読書のススメ

にある通り、子どもが興味を持つ本から読ませてあげるのが習慣づけの第一歩です。
まずは、どんなものでも活字の本を読むところから始めるとよさそうです。

 

※1 例解新国語辞典 第十版/林四郎 監修/篠崎晃一(編修代表)相澤正夫・大島資生 編著/三省堂/2021年5月8日現在
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dict/ssd13689
※2  7 音読・朗読/文部科学省/2021年5月8日現在
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/002/007.htm

音読の効果とは?

音読は文章を声に出して読むだけのシンプルなもの。
それゆえに効果があるのか疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
実は音読には、文章の理解する手助けや脳を活性化させるなど、さまざまなメリットがあると言われています。

 

【音読の効果の一例】

  • 脳が活性化する※3
  • 語彙力や文章の理解力を上げる※4
  • 日本語の響きやリズムを知り英語学習にも役立つ※4
  • 声を出す練習になる※4
  • 腹式呼吸が身につく※2
  • 達成感を得やすい

 

脳が活性化する

音読をすると、脳の側頭葉や後頭葉、頭頂葉に加え左右の前頭前野、聴覚野といった脳の多くの部分を活性化させることが分かっています。※3
つまり音読により、大脳にある多くの神経細胞が働くのです。※3
文章を読むだけの黙読でも、脳の左右の前頭前野などの部位が活性化します。※3
しかし音読では、文章を声に出し、さらにその音を聞くという行為を伴います。
よって、より脳の広範囲が活性化されるのです。

 

語彙力や文章の理解力を上げる

文章を声に出して読むと、言葉の意味をとらえられるようになるのも音読の1つの効果です。※4
声に出して読むためには、自分で理解しようとするものです 。
文章のまとまりや言葉の意味を意識したり、気にしたりするようになります。※4
小学校低学年の学習指導要領では、内容を理解しながら、どのように感じるか、自分の音読を自分で聞きながら把握していく点にも重点が置かれています。※4
文章の内容をとらえるために、音読は有効な手段なのです。

 

日本語の響きやリズムを知り英語にも役立つ

音読をすると日本語独特の響きやリズムに気づくという点も音読の効果の1つです。
音読を通じて伝統的な日本語の響きやリズムに親しみ、日本語独特の美しさや楽しさを知ることが期待されています。※4
よって小学校中学年以上の国語の学習指導要領では、俳句や短歌、古文、漢文なども音読の対象です。※4
さらに音読を通じて日本語の音やリズムを知ることで、英語の発音やリズムとの違いに気づくきっかけにもなると考えられています。※5
小学校の英語は、聞くことと話すことに重点が置かれています。※5
音読を通じて日本語の音に親しんでいると、英語を学ぶ上でもプラスに働くはずです。

 

声を出す練習

毎日の音読は、声を出す練習の役割を果たしてくれます。
学校での音読は、大きい声ではっきりと読むよう指導されます。※4
もちろん家での音読は、大勢の前で話すような緊張感のある環境とは異なるものの、声を出す練習にはなるでしょう。

 

腹式呼吸が身につく

音読は大きな声ではきはきと文章を読むため、腹式呼吸が身につきやすいと言われています。※2
腹式呼吸ができると、よく通る聞きやすい声を出しやすいものです 。※2
学校での発言にも役立つでしょう。
また腹式呼吸はイライラ解消など、メンタル面での効果も期待されています。※6
音読を通じて腹式呼吸のやり方を教えてあげられると、子どものメンタル面へのサポートにもなるかもしれません。

 

達成感を得やすい

音読は、同じ文章を繰り返し練習します。
繰り返し練習することで次第にスムーズに読めるようになるため、子供自身も成果を感じやすいものです。
達成感を得やすいのは、子供にとっては大きなメリットです。
音読は問題集を解くことに比べると簡単に取り組めるので、勉強へのモチベーションをあげるきっかけにもなるでしょう。

 

※2  7 音読・朗読/文部科学省/2021年5月8日現在
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/002/007.htm
※3 東北大学 川島隆太教授 インタビュー「読む&書く」からこそ学びは深くなる/学校法人産業能率大学総合研究所/2021年5月8日現在
https://www.hj.sanno.ac.jp/cp/feature/201911/08-02.html
※4 小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 国語編/文部科学省/2021年5月8日現在
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_002.pdf
※5 小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 外国語活動・外国語編/文部科学省/2021年5月8日現在
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_011.pdf
※6 こころと体のセルフケア|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省/2021年5月8日現在
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/index.html

音読の宿題の目的は?黙読ではだめな理由

毎日音読の宿題が出されるという小学校も少なくないでしょう。
親が聞いて丸付けをしなければならないこともあり、忙しいと負担に感じてしまいます。
音読が小学生の宿題にされるのはどうしてなのでしょうか?

 

宿題の目的

音読が宿題にされるのは、語彙力や文章力などの学習面はもちろんのこと、情緒などの内面的な育成にも必要だと考えられているからです。


文部科学省では、音読により国語力と創造力にかかわる脳の分野が活性化するという脳科学の知見から、積極的に音読が取り入れられています。※7
また音読で漢字の読みを覚えたり、文章の内容を理解したりできることも大きなメリットの1つです。※7
また古典の音読では、日本語の美しいリズムや表現を身に付け、情緒力や豊かな人間性を形成することが期待されています。※7

 

また毎日の宿題として家庭学習の習慣づけになることにも意味があると考えられます。
家庭学習は「学習習慣」で左右される!親ができる習慣づけのコツと勉強内容

にある通り、小学生の早いうちから家庭学習を習慣づけることは、その後の学力にも影響します
小学校低学年のうちは、宿題を通じて家庭学習に取り組むことが1つの学習目標です。
ただドリル問題で机に向かうだけでは飽きてしまいます。
音読という異なるタイプの学習を取り入れれば、まだ集中力が続かない低学年でも家庭学習しやすいでしょう。

 

黙読ではだめな理由

もちろん黙読も学習として必要なものですので、決して悪いわけではありません。
しかし前章でも解説したように、音読は黙読よりも脳の幅広い部位を活性化させることが分かっています。※3
また、黙読では無意識に分からない単語を飛ばしていたり、集中力が無くなると文字を目で追うだけの流し読みになったりしがち。
一方音読では、単語1つ1つを意識し、文章の理解できていない箇所が明確になります。
また音読を通じて自分が理解しているかどうかを確認し、理解したことの表現につながります。※4
このように音読には黙読にはないメリットがいくつもあるため、音読が推奨されているのです。

 

※3 東北大学 川島隆太教授 インタビュー「読む&書く」からこそ学びは深くなる/学校法人産業能率大学総合研究所/2021年5月8日現在
https://www.hj.sanno.ac.jp/cp/feature/201911/08-02.html
※4 小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 国語編/文部科学省/2021年5月8日現在
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_002.pdf
※7 これからの時代に求められる国語力について-II これからの時代に求められる国語力を身に付けるための方策について-第1 国語力を身に付けるための国語教育の在り方/文部科学省/2021年5月8日現在
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/04020301/007.htm

「効果がない」のはやり方が違う?

音読の宿題を毎日していても、なかなか上達しない…うまくいかないと感じることもあるでしょう。
「効果がないのに…」と感じていると、毎日の宿題に付き合うのも苦痛なものです。
音読のやり方を知ると、音読に対する見方が変わるかもしれません。

 

【音読の宿題のコツ】

  • 声は大きく、はっきりと読む
  • 感情は込めなくてもOK
  • 慣れてきたら文章の切れ目を意識する
  • 苦手意識がある場合は題材を工夫

 

 

声は大きく、はっきりと読む

音読で分からない言葉に出くわすと、声が小さくなったり読むスピードが急に遅くなったりしませんか。
大きな声ではっきり読むことを意識して音読に取り組むようにすると、文章を正しく理解することにつながります。※4
音読は、ひとまず大きな声ではっきり読めていれば「よし」としましょう。
さらに文章を理解するには、分からない単語は辞書で調べる癖をつけると、国語力の向上に役立ちます。
親子で辞書を引き、子どもに調べる癖をつけてあげられるとよいですね。

 

感情は込めなくてもOK

冒頭で解説したように、音読は文章を声に出して読むことを意味しています。
音読の段階では、文章の表現や出てくる人物の感情まで表す必要はありません
親は子どもの読み方が棒読みだなと感じても、低学年のうちは特に「大きな声ではっきり」読むことに重点を置きます。
朗読の要素を踏まえて感情を表現するのは、小学校でも高学年になってからです。※4

 

慣れてきたら文章の切れ目を意識する

音読に慣れてきたら、句読点を意識して区切って読むことを意識します。
低学年のうちは「道に/花が/咲いて/いました」のように、単語ごとに不自然な区切りで読んでしまうこともあるでしょう。
音読をはじめたばかりであれば、あまり細かい指摘は必要ありません。
ただ音読に慣れてきたら「。」や「、」などの句読点を意識して、自然な流れで読めるようにサポートしてあげましょう。

 

苦手意識がある場合は題材を工夫

音読が苦手で嫌がる子もいるでしょう。
音読が苦手で拒否感を示す子には、音読の練習として別の文章を用意するのもよいかもしれません。
文字の量が抑え目で、内容も子どもが興味を持つ題材のお話だと取り組みやすいです。
少ない量でも、まずは声に出して文章を読むことに慣れさせてあげましょう。
どんな文章を音読させたらいいか迷ったら、書店などで販売されている子ども向けの音読書籍もおすすめです。
本の中にはいかに早く、間違えずに音読できるかなどゲーム感覚で取り組めるものもあります。
音読に抵抗のある子は、そのような音読の本から始めてみるのもよいかもしれません。

 

※4 小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 国語編/文部科学省/2021年5月8日現在
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_002.pdf

 

英語学習も音読が効果的?!

英語学習にも、音読のメリットがあるといくつかの研究で指摘されています。※8
音読の主なメリットは、理解力の増加、音声面での理解、読解スピードの向上、構文の理解などです。※8
音読と暗唱、筆写のグループに分けテスト結果を比較した調査では、音読のグループはリスニングやボキャブラリーのテストで優位だったとの報告があります。※8
繰り返し音読することで音に慣れ、聞く力がアップすると考えられています。※8
小学校で導入された英語授業はどんなもの?親が押えておくきポイントとは

で解説の通り、小学生の英語ではリスニングやスピーキング、プレゼンテーションが中心です。
学校では、慣れない英語での発表を恥ずかしがってしまう子もいるでしょう。
まずは家庭で、英語の音読を取り入れてみるとよいかもしれません。

 

小学生にもできる英語の音読

小学生では、まだ英語の文章を読めずに音読が難しい子も多いでしょう。
学校でも英語の読みを学ぶのは、一般的に小学5年生以降。※5
小学4年生まではコミュニケーション中心の授業で、音を聞いて声に出す学びが主です。※5
高学年以降に音読で苦労しないために、ローマ字の読みや単語を早い段階で学んでおくのも1つの方法です。※9
英語の音を聞き分けて音読できる子は、英単語の読み書きの能力が高くなる傾向にあるという研究結果もあります。※9
英語の音を聞き分けるためには、小さいうちはチャンツなど英語の歌で学ぶことも有効だとされています。※9

 

※5 小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 外国語活動・外国語編/文部科学省/2021年5月8日現在
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_011.pdf
※8 英語能力テストに関する研究│英語学習方法の考察:音読,暗唱,筆写/神奈川県立川崎高等学校 教諭 小林 潤子/2021年5月8日現在
https://www.eiken.or.jp/center_for_research/pdf/bulletin/vol18/vol_18_p30-p49.pdf
※9 英語を楽しく読める小学生 -低学年からの文字学習の勧め- - CRN 子どもは未来である/2021年5月8日現在
https://www.blog.crn.or.jp/report/02/105.html

まとめ

音読の意味と効果、やり方についてご紹介いたしました。
音読は、朗読や黙読とは異なるものです。
声に出して読むからこそ、効果が期待できます。
低学年のうちは、上手に朗読する必要はありません。
大きな声で元気に読むことで、日本語の音やリズムを認識し、文章を理解する手助けとなります。
英語の音やリズムとの違いを知る上でも有効だとされていますので、親子で楽しみながら取り組んでみて下さい。

 

公開日:
上へ