幼児期の子供の性格を決めるものは?何歳くらいまで?
昔からの諺に「三つ子の魂、百まで」があります。
これは「子供の性格はある程度の年齢を過ぎると、一生変わらない」ということを表しています。
小さい子をイメージし、三歳を表す「三つ子」が使われていますが、では、子供の性格とはいつ頃、何が影響し、どのようにして決まるのでしょうか。
本当に、三歳までで決まってしまうのでしょうか。
ここでは、子供の性格が決まってくる時期や、それに影響する事柄について、考えてみます。
目次
- そもそも、性格ってどういうもの?
- 行動と性格
- 性格と人格、パーソナリティ
- 幼児期の子供の性格形成には親が関係する
- 現代にも通じる考え方 「サイモンズ式分類」
- 性格形成には、生活環境も関係する
- 内的な要因で決まる子供の性格
- 外的な要因で決まる子供の性格
- 「三つ子の魂、百まで」は、ウソかホントか
- 「三つ子の魂、百まで」は、ウソかホントか
- 一部はウソ、一部はホント
- まとめ
そもそも、性格ってどういうもの?
行動と性格
あなたは、何かしらの行動を起こそうとするとき、何に基づき、何をきっかけとして動き出すでしょうか。
一般的に、人を動かすためのトリガーには、動機、欲求、要求などがあります。
例えば仕事中、お腹が空いたと感じて、机の中からおやつを出して食べる、ということはありませんか?
空腹に対する欲求は、おやつを食べることで満足感を得て終わります。
しかし、必ずしもこれらの行動が、すぐに叶うわけではありません。
机の中におやつが無ければ、その欲求が叶うまで「我慢」をしなくてはなりません。
同じ欲求に対しても、その時に置かれている環境によって、実際の行動が変わるのです。 ※1
おやつが無ければ空腹でイライラするかもしれませんし、近くのコンビニにおやつを買いに行くかもしれません。
隣の人に分けてもらえば、翌日には同じものを買ってきて返す、という行動につながることもあります。
このように、同じ「欲求」に対しても、その時に置かれている環境によって、人の行動は変わるのです。
また、他の人と同じ「欲求」を感じていて、置かれている環境が同じでも、性格によって実際の行動が変わることもあります。
短気な人は、おやつが無いことにとてもイライラして、仕事が手につかなくなるかもしれません。
真面目な人は、とにかく我慢して仕事を急いで片付け、定時になったらすぐに帰るかもしれません。
用心深い人は、こういうことが無いようにと、机の中のおやつの在庫を増やすかもしれません。
このように、その人の行動を決める要素には、性格も関係しているのです。※2
性格と人格、パーソナリティ
「性格」は英語でcharakter(キャラクター)といいます。
似たような言葉に、「personality(パーソナリティ)」や「人格」があります。
personalityの語源は、ラテン語のペルソナ(persona)であるといわれますが、これは元々「仮面」を意味する言葉です。
この語源から考えると、personalityという言葉には、周りの人に「見てほしい自分」という意味が含まれるとされています。
charakterとpersonalityは、ほぼ同じような意味で使われることが多いですが、character(性格)とは本来「その人にとって、生まれながらにして持っている、個人的な特徴」を意味します。
一方のpersonalityは、その人を目立たせる特徴や個性と訳されることがあります。
そしてもう一つの人格ですが、「社会的な影響で形成された役割」のように捉えると考えられており、日本語では道徳的な意味も含まれると考えられています。
現在では、性格、charakter、人格、personalityが日常的に使われており、区別することは難しくなっています。※1、※2
※1 詫摩 武俊ら 著 2003年10月1日発刊 性格心理学への招待[改訂版]―自分を知り他者を理解するために サイエンス社
※2 無藤隆ら 著 2018年4月6日発刊 心理学 新版 (New Liberal Arts Selection)
幼児期の子供の性格形成には親が関係する
現代にも通じる考え方 「サイモンズ式分類」
サイモンズ式分類をさらに発展させた考え方によると、親の養育態度と子供の性格との関係は、次のようになるといわれています。
下記は、左が親の養育態度、右が子供の性格を表しています。
- 支配的 → 従順、自発性なし、消極的、依存的、温和
- かまいすぎ → 幼児的、依存的、神経質、受動的、臆病
- 受容的 → 思慮深い、親切、情緒安定
- 甘やかし → わがまま、反抗的、幼児的
- 服従的 → 無責任、従順でない、攻撃的、乱暴
- 無視 → 乱暴、攻撃的、情緒不安定、創造性に富む
- 拒否的 → 神経質、反社会的、注意を引こうとする、冷淡
- 残酷 → 強情、冷酷、逃避的、独立的
ただし、親の養育態度は必ずしも「親の性格」から発生するものではなく、それぞれが置かれている環境により、必然的にそうなると考える部分もあります。
例えば、幼児期の子供が元々病気がちであれば、親は必然的に過保護になりますし、逆に元気で思慮深く、情緒が安定している子供なら、ある程度は放任になることもあります。※1、※2
また、親が家事や仕事をしている間、テレビやスマホなどのメディアに触れる時間が長ければ、その影響を受けることもあります。
何かを破壊するシーンを良く見る子供は、物を壊すことを悪いと思わなくなりますし、残虐なシーンを見慣れた子供は、人を傷つけることも平気な子供になるかもしれません。
親が意識的に、必要以上にメディアに触れない生活をさせるかどうかで、幼児期の子供の性格が決まってくることがあるのです。※2
※1 詫摩 武俊ら 著 2003年10月1日発刊 性格心理学への招待[改訂版]―自分を知り他者を理解するために サイエンス社
※2 無藤隆ら 著 2018年4月6日発刊 心理学 新版 (New Liberal Arts Selection)
性格形成には、生活環境も関係する
内的な要因で決まる子供の性格
日本語には、「持って生まれた性格」や「天性の○○」という言葉があります。
これは、生まれた時から備わっている、気質や才能などを表す言葉です。
親子の見た目が似るのは当然ですが、性格まで「遺伝」が関係するのでしょうか。
これまでにさまざまな研究が行われてきましたが、現在では、遺伝による「気質」と育った「環境」との相互作用によって性格が形作られる、と考えられています。
の記事でもご紹介しているように、夫婦喧嘩も子供の性格に影響をあたえますし。
幼児期の子供は親の行動を見て真似をしますので、同じ家屋の中で生活している中、粗暴な親なら粗暴な子供が、温和な親なら温和な子供が育つ、ということです。
では「遺伝」を考えたとき、まったく同じ遺伝子を持つはずの「一卵性双生児」についてはどうでしょうか。
ある研究によると、一卵性双生児では、知能や学業成績、宗教性や創造性などで、高い相関性を示すことが分かったのだそうです。
さらに「神経質」「外向性」などの性格を表す項目でも、似通っていることが多い傾向が見られました。
二卵性双生児の場合は、それぞれの項目での相関性が高くはなく、一卵性双生児ほどではありませんが、「兄弟(姉妹)」と同じくらいの相関性があるのだそうです。
つまり子供の性格は、遺伝の影響を少なからず受けていることになります。
しかし、一卵性双生児といえども考え方や行動がまったく同じではないことから、性格形成には、親の接し方や生活環境などの影響もあると考えられます。※2
性格はまた、身体的な特徴から決まってくることもあります。
例えば、身長や体重、容姿などです。
背が低いことをからかわれながら成長すると、それに負けないほど意志が強く実行力のある大人になることがありますし、逆に卑屈で他人との交流を避けるような生き方をする人もいます。
子供のころから「美人だ」と育てられた子供は、好意を持たれることで安定した情緒を育むことがありますし、逆に人を見下すような冷たい性格になることもあります。
ここには外的要因も大きく関係していますが、その原因となっているのが、内的な要因です。 ※2
外的な要因で決まる子供の性格
では、兄弟姉妹の例を見てみましょう。
幼児期に、お兄ちゃんだから我慢しなさい、お姉ちゃんだから下の子の面倒をみなさい、などの言葉を受け育てられた子供は、我慢強い子供、兄弟姉妹の面倒をよく見る子供になることがあります。
親から子供への愛情の深さに違いがあれば、親から子供への態度が変わり、子供の性格にも違いが出てきます。
同じ兄弟でも、かまわれすぎた子供は依存的で神経質になりがちですし、支配的に育てられた子供は従順ですが消極的で自分の意思で行動できない子供になりがちです。 ※2
親子の関係において、「しつけ」も性格を決める、一つの要素になります。
親が「しつけを厳しくしなければいけない」と考えていれば、支配的、かまいすぎ、残酷などの養育態度になるでしょう。
逆に「子供は勝手に育つ」との考え方ならば、受容的、甘やかし、無視などの養育態度になるかもしれません。
特に幼児期の子供にとっては、親との関係は重要です。
親にほめられたい、親に喜んでほしい、親と一緒に楽しみたい、こうした子供の欲求に対して親がどう接するか、あるいは悪いことや恥ずかしいことをどう教えていくかで、その後の性格も変わってきます。
兄弟が増えたときの親の接し方については、
兄弟姉妹が増えたときの親の接し方!上の子の環境は大きく変わります
の記事で詳しくご紹介しています。
ところで、「その子らしさ」を表す性格が身に付くのは、いつ頃なのでしょうか。
心理学の中では、明確な定義はありません。
ただし、幼児期を経て、小学校に入学する学童期になると、それまでに形成された性格に従って行動することが増えるため、個人差はさらに大きくなる傾向があると考えられています。
例えば、幼児期から積極的で人の前に出ることを好む子供は、学童期に入っても、クラス委員や人の上に立つ立場を好みます。
逆に幼児期から消極的で恥じらいが強い子供は、人の前に出ることを好まず、自分の世界を作り上げることもあります。
しかし、学童期になって出来た友達や先生、学問などの影響を受け、それまでとは違う行動をとり始める子供もいます。
つまり、学童期に入る6歳前後までに出来あがった性格は、その後の性格や生き方をある程度は決める可能性がありますが、生活環境の変化などにより、性格が変わることは十分にあり得るのです。 ※2
※2 無藤隆ら 著 2018年4月6日発刊 心理学 新版 (New Liberal Arts Selection)
「三つ子の魂、百まで」は、ウソかホントか
「三つ子の魂、百まで」は、ウソかホントか
日本の諺に「三つ子の魂、百まで」というのがあります。
これは「幼い頃の性格は、年齢を重ねても変わらない」というのが本当の意味です。
ここから生まれたのが、いわゆる「三歳児神話」で、「3歳までは母親は子育てに専念すべきだ」という、少しゆがんだ考え方です。
三歳児神話には、次にあげる3つのポイントがあります。
- 子供の成長には三歳までが非常に大切
- この大切な時期、母親は養育に専念しなければならない
- そうでなければ、子供は寂しい思いから成長にゆがみを生じる
つまり「三歳児神話」とは、本来の諺の意味とは違う捉え方により生まれた考え方なのです。
一部はウソ、一部はホント
三歳児神話は、1960年代頃に広まったとされています。
当時は「母親が家にいる」のが当たり前で、1990年代初めでも、既婚女性の9割は「少なくとも子供が小さいうちは、母親は仕事をもたず家にいるのが望ましい」と答えていました。
しかし、1998年に公表された厚生白書において、厚生労働省は三歳児神話を否定しています。 ※3
もちろん、子供の成長には三歳までが非常に大切であることは本当ですが、そこにあるのは「愛情の深さ」です。
三歳くらいまでは、人からの愛情を受けて、他人を信頼する心を育み、同時に子供が自信をつける時期です。
逆にこの時期に十分な愛情を受けられなかった子供は、自分に自信がない、他人を信用しない子供になります。
すると、本人の性格形成にも、大きな影響を与えるのです。
そこに必要なのは、必ずしも「母親だけ」ではないというのが、現代の考え方です。
など、母親からの影響はあるかもしれませんが、子供をあやし、一緒に遊び、笑ったり泣いたりすることは、父親や地域の人が代われる部分もあるのです。
ポイントは、皆が同じ方向を向きながら子供に深い愛情を注げるか、ということです。※3
前述の通り子供の性格は、親の養育態度である程度方向性が決まってきます。
どんな子供に育ってほしいか、どのような生き方をしてほしいのか。
親は、自分の性格に関わらず、子供の将来を見据えた養育態度で接すること、周りの人もそれと同じ態度で接することが、重要なのかもしれません。
※3 厚生白書(平成10年版)http://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/kousei/1998/dl/04.pdf
まとめ
「持って生まれた性格」という言葉がありますが、赤ちゃんの性格にも、個人差はあります。
しかし成長するにつれ、その個人差はどんどん大きくなります。
明確な定義はありませんが、一般的にはおよそ6歳くらいまでにある程度は性格が形成され、何らかの要因によって、その後も変わっていくことがあります。
その差をうみだすものは、親の行動だけではありません。
生活環境や、おともだちとの関係、家庭の中での立場なども、関係してくるのです。