赤ちゃんにテレビは見せない?発達への影響は?いつからOK?

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家事をするときは、赤ちゃんがテレビを見ていてくれると助かることもありますよね。
見せない方がいいと思いつつも、つい見せてしまうという人も少なくないはず。
ただ、ママやパパにとって、テレビが与える発達への影響も気になりますよね。
今回は子どものテレビ視聴の実態から現在分かっているテレビの発達への影響を、国内外の様々な研究をもとにご紹介します。

目次

  1. 赤ちゃんにテレビを見せる?見せない?
    • 0歳でも3時間15分
    • 2歳までは幼児向けが番組中心
  2. テレビはいつから見せてもいい?専門機関の推奨は…
    • WHOの推奨、テレビは2歳から
    • 2歳未満は推奨されない理由
  3. 視力だけじゃない!発達への影響は?
    • 視力の低下
    • 肥満への影響
    • 睡眠への影響
    • 発達への影響
  4. 赤ちゃん・子どもにテレビを見せる際に気をつけたいこと
    • つけっぱなしで長時間見せすぎない
    • 適切な距離を保つ
    • 親子で一緒に見る
    • ルールを決める
    • 年齢にふさわしい番組を選ぶ
    • 親もテレビのつけっぱなしに気を付ける
  5. まとめ

赤ちゃんにテレビを見せる?見せない?

赤ちゃんに、よくないと思いつつテレビを見せてしまうのは、あなただけではありません。
0歳の頃からテレビを見せている家庭も少なくないようです。

 

0歳でも3時間15分

子どものテレビ接触を調査した放送局の発表によると、年齢ごとの平均的なテレビ視聴時間は下記の通りです。

 

※()内は専念時間…見ることに専念していて「ながら見」や「ついているだけ」ではない状態

  • 0歳…3時間15分(12分)※1
  • 1歳…3時間23分(24分)※1
  • 2歳…2時間44分(24分)※1
  • 3歳…2時間30分(30分)※1
  • 4歳…2時間14分(27分)※1
  • 5歳…2時間10分(31分)※1
  • 6歳…2時間7分(32分)※1
  • 7歳…1時間58分(31分)※1
  • 8歳…1時間59分(31分)※1
  • 9歳…1時間33分(28分)※1

 

0歳の頃から、家庭のテレビがついていて家族と見ている家庭が多いようですね。
0歳のうちから、平均12分くらい集中してテレビを見ているようです。※1
ただ上記時間の大半は、大人と一緒に何かをしながら見る、テレビがついているだけという状況だとわかります。
年齢があがるにつれ、子どもがテレビと接触する時間は減っています。

 

2歳までは幼児向けが番組中心

赤ちゃん・子どもに、どんな番組を見せているかも気になるところではないでしょうか。
ある放送局の調査によると、子どもがよく見ているテレビ番組は、0歳~4歳頃までが幼児番組5歳以降ではアニメ番組が多いようです。※1
2歳頃からアニメ番組を見る家庭も出てきます。※1
さらに年齢があがるにつれ、バラエティ番組やクイズ番組など、見るテレビ番組の種類が増えていくようです。※1


この結果を見る限り、赤ちゃんにあたる乳幼児期からテレビに触れさせている家庭も珍しくないようです。
だからといって、赤ちゃんのうちからテレビを見せてもよいのでしょうか。
次章では、テレビを見てもいい年齢について見ていきましょう。

 

※1 子ども(0歳から9歳)のテレビ接触/中井俊朗 /2021年9月16日現在
https://sjc.or.jp/topics/wp-content/uploads/2017/06/vol101_4-2.pdf

テレビはいつから見せてもいい?専門機関の推奨は…

WHOの推奨、テレビは2歳から

子どものテレビ視聴については、WHO(世界保健機関)が世界の0~4歳児の研究結果を元に、以下のようなガイドラインを定めています。

 

子どもがテレビなどの画面を集中して見る時間は、

  • 2歳未満は推奨しない※2
  • 2歳~4歳は1時間以内※2

と発表しています。

 

またアメリカ小児科学会や日本小児科医会も、2011年に同様の声明文を発表しています。※3

 

2歳未満は推奨されない理由

アメリカ小児科学会は、2歳未満はテレビを推奨しない理由として、下記3つを挙げてします。

 

  • 2歳未満では、教育的にも発達面でもよい影響があるとは言えない※3
  • 健康面・発達面で悪影響が考えられる※3
  • 親がテレビを見ている時間が長い家庭では、子どもへの発達の悪影響が考えられる※3

 

次章からは、テレビが子どもにもたらすこれらの影響について、さまざまな調査や研究結果をご紹介します。

 

※2 To grow up healthy, children need to sit less and play more/WHO/2021年9月16日現在
https://www.who.int/news/item/24-04-2019-to-grow-up-healthy-children-need-to-sit-less-and-play-more
※3 乳幼児のメディア使用に関するアメリカでの最近の声明とわが国における今後の課題/森田健宏/堀田博史/佐藤朝美/松河秀哉/松山由美子/奥林泰一郎/深見俊崇/中村 恵/2021年9月16日現在
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaems/21/2/21_61/_pdf/-char/ja

 

視力だけじゃない!発達への影響は?

「テレビを見すぎると目が悪くなる」と言われますよね。
ただ親としては、視力だけでなく、心身の発達への影響も気になるものです。
ここからはさまざまな調査結果をもとに、テレビを見ることが視力や心理面など、子どもの発達へどう影響するのかを確認していきましょう。

 

テレビを見すぎると、下記のような影響が示唆されています。

  • 視力の低下
  • 肥満への影響
  • 睡眠への影響
  • 発達への影響

 

詳しく見ていきましょう。

 

視力の低下

テレビを見せることで最も気になる影響は、子どもの視力でしょう。
岡山大学が実施した、幼少期のテレビ視聴とその後(小学生時)の視力低下の関連性についての解析研究を見てみましょう。

 

・小さい頃のテレビの見すぎは視力低下の一因に
1.5歳および2.5歳時点で主な遊びが「テレビを見ること」だった子は、小学生になると視力が低下することが明らかにされています。※4
また、2.5歳時にテレビの視聴時間が長かった子は、小学生になると視力が低下することも報告されています。※4
しかし、3.5歳、4.5歳、5.5歳ではテレビの視聴時間が長くても、小学生時の視力低下との関連性は見られなかったそうです。※4
小さいうちほど、テレビを長時間見ると視力に悪影響を及ぼすことが伺えます。

 

 

肥満への影響

長時間テレビを見せてしまうと、身体にもいくつかの影響があるとも言われています。
子どものテレビと肥満の関係を調査した研究では、肥満度が高い子どもほど、テレビの視聴時間が長いことが示されています。※5
またアメリカで行われた調査でも、一日のテレビを見る時間が1時間増えるごとに、子どものBMI(肥満度を表す体格指数)が平均して約0.1ポイント増加することが報告されています。※6
子どものテレビを見る時間が長いほど、肥満傾向が強くなるようです。

 

睡眠への影響

乳幼児期から長時間テレビを見続けていると、睡眠に影響している可能性も指摘されています。
アメリカで6ヶ月から8歳頃までの子どもを対象に実施した調査では、テレビを見る時間が1時間増えるごとに睡眠時間の平均が7分短くなると報告されています。※7
また他の調査によると、3歳までに、1日の睡眠時間が12時間未満・テレビを1日2時間以上見ている子は、太りすぎてしまう可能性が16%ほどあるそうです。※8

 

発達への影響

テレビを見せると、言葉の発達などに影響を与えるとも考えられています。
言葉が遅れる可能性」を示唆する研究結果がある一方で、親子でテレビを見て会話することで「子どもの言葉の発達を促す可能性」も指摘されています。※1※9※10

 

・言葉の遅れ
子どもに長時間テレビを見せると言葉の遅れが見られる可能性が、いくつかの研究で指摘されています。※9※10
その一つが、日本小児科学会が1歳半検診を受けた子どもと親を対象に行った調査です。
1歳半の時点で1日に4時間以上テレビを見ている子は4時間未満の子に比べて言葉の遅れが1.3倍あったと言われています。※9
さらにテレビが8時間以上ついている家庭の子も言葉の遅れが見られたそうです。※9
また5歳~18歳を対象に行われた別の調査でも、テレビを長時間見ることが言語能力の低下に関連している可能性が指摘されています。※10

 

・言葉の獲得を促す可能性
一方、別の調査では、テレビを見て親子で話すことで0歳~2歳の言葉の獲得を促す可能性が指摘されています。※11
この調査によると、子どもの言語発達によい影響を与える条件は、親子でテレビを一緒に見て、テレビの内容を子どもに伝えたり説明したりすること。※11
親子でテレビを一緒に見るだけではよい影響は確認できないようです。※11


小さいうちからテレビを長時間見せると、視力や肥満など健康面が懸念されます。
一方で、言葉の獲得のように、一定条件下ではよい影響があるという研究結果もあるようです。
次章では、赤ちゃんや子どもにテレビを見せる際に気を付けたいことをまとめました。

 

※4 幼少期のテレビ視聴は学童期の視力低下につながる/岡山大学/2021年9月16日現在
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r3/press20210422-10.pdf
※5 子ども達がテレビ等視聴,ファミコン等で遊んでいる実態と肥満との関係調査成績/日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会/2021年9月16日現在
http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/kakuron/2_undou/undo_pdf/undo_10.pdf
※6 Adiposity and Different Types of Screen Time/米国小児学会 /2021年9月16日現在
https://pediatrics.aappublications.org/content/132/6/e1497?sid=bfb92237-9bd8-4f08-bf55-cd1b1313f266
※7 More TV watching may mean less sleep for children/Harvard T.H. Chan School of Public Health/2021年9月16日現在
https://www.hsph.harvard.edu/news/hsph-in-the-news/more-tv-watching-may-mean-less-sleep-for-children/
※8 Less Sleep, More TV Leads to Overweight Infants and Toddlers/ScienceDaily/2021年9月16日現在
https://www.sciencedaily.com/releases/2008/04/080407160735.htm
※9 乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です/日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会/2021年9月16日現在
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20040401_TV_teigen.pdf
※10 長時間テレビ視聴が小児の高次認知脳領域の発達性変化や言語性知能に 悪影響を与えることを発見 ~発達期の小児の長時間の TV 視聴には一層のケアを喚起~/東北大学加齢医学研究所 認知機能発達寄附研究部門/2021年9月16日現在
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press_20131118_02web.pdf
※11 乳幼児期のテレビ・ビデオ接触の実態および社会情緒的発達との関連―0歳・1歳・2歳の3時点調査から ―/菅原ますみ/2021年9月16日現在
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/category/bangumi_kodomo/pdf/report3_3all.pdf

赤ちゃん・子どもにテレビを見せる際に気をつけたいこと

テレビ視聴に適した年齢と視聴時間に注意しながら、子どもがテレビと上手く関わるにはどのような点に気をつければよいのでしょうか?
ここからは親として子どものテレビ視聴で気をつけるべき点や関わり方のコツを紹介します。

 

【テレビを見せるなら気をつけたいこと】

  • つけっぱなしで長時間見せすぎない
  • 適切な距離を保つ
  • 親子で一緒に見る
  • ルールを決める
  • 年齢にふさわしい番組を選ぶ
  • 親もテレビのつけっぱなしに気を付ける

 

 

つけっぱなしで長時間見せすぎない

子どもの年齢にかかわらず注意したいのが、長時間テレビを見せ続けないことです
テレビを付けっぱなしにしていると、子どもはどうしても視覚や聴覚に刺激の多いテレビに注意が向きがち。
言葉でのコミュニケーションがまだ取れないうちは、親が適切なタイミングでテレビを消すように配慮しましょう。
ある程度コミュニケーションが取れるようになったら、上手にテレビを切り上げられるよう工夫を。
1話ごとの時間が短いアニメーションであれば、終了のサインを出しやすいかもしれません。
「あと2つ見たらおしまいね」といった声掛けや、時計のアラームをかけて「この時計がピピピとなったらおしまいにしようね。」など、試してみて下さい。

 

適切な距離を保つ

テレビ画面の近くで視聴し続けると、視力に影響が出ることも懸念されます。
テレビの適切な視聴距離は、テレビ画面の縦の長さの3倍ほど。※12
テレビを見る位置にテープを張ったり、座布団を置いたりして、適切なテレビとの距離を子どもが視覚的に分かるようにするなど、工夫してみて下さい。
さらに、距離だけでなくテレビを見るときの部屋の明るさにも注意が必要です。
暗い部屋で明るいテレビを見ると、大人でも目が疲れてしまいますよね。
部屋の暗さとテレビの明るさの差が大きいのが原因だそうです。※13
部屋はテレビ画面と同じくらいの明るさになるよう調節しましょう。

 

親子で一緒に見る

前章でも解説の通り、親子でテレビを見る際に、大人が子どもに質問や問いかけをすると、子どものテレビの内容に対する理解力や語彙力の向上が期待できるというデータもあります。※11※14

 

親子で一緒にテレビを見て、見た内容について子どもに話しかけてみてください。
子どもだけにテレビを見せておくと、親子のコミュニケーションも減ってしまいがちです。
さらに親がテレビに夢中になっていても、子どもとのコミュニケーションは減ってしまいます

 

テレビに出ている動物を指して「これは前に動物園で見たね。」「この動物は何て名前だっけ?」と、子どもがわかりやすいよう語り掛けてみて下さい。
親子で一緒にテレビを見て会話で導いてあげると、子どもはテレビから多くの学びを得られるかもしれません。

 

ルールを決める

テレビを見るタイミングや視聴時間など、あらかじめルールを決めてテレビのある生活を楽しみましょう。※14
全国学力・学習状況調査では、テレビやDVDを見たりする時間のルールを決めている家庭の子どもは、学力が高いことがわかっています。※15
これは、小中学生を対象にした調査の結果ではあるものの、小さい頃からルールを決めて習慣化することが大切です。

 

年齢にふさわしい番組を選ぶ

子どもの年齢に合った質のよいテレビ番組を見せることも大切です。※14
子どもに見せる番組を決めたり、見せたくない内容はチャンネルを変えたり、多くの親は子ども向けの番組を選んでいるようです。※11
番組を選ぶには、親は子どもが見る番組に興味を持ち、一緒に見る必要がありますよね。
赤ちゃんや幼児のうちは特に、親が番組を選んであげたいものです。

 

親もテレビのつけっぱなしに気を付ける

赤ちゃんと一緒にいる部屋で、親自身がテレビをつけっぱなしにするのも気を付けた方がよさそうです。
大人が常時テレビをつけていると、大人はテレビに集中してしまい、子どもとのコミュニケーションが減ることが分かっています。※3
親子の会話や交流が減ってしまうと、子どもの発達によくない可能性が指摘されています。※3
親自身も、テレビを見る時間を気にした方がよさそうですね。

 

※3 乳幼児のメディア使用に関するアメリカでの最近の声明とわが国における今後の課題/森田健宏/堀田博史/佐藤朝美/松河秀哉/松山由美子/奥林泰一郎/深見俊崇/中村 恵/2021年9月16日現在
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaems/21/2/21_61/_pdf/-char/ja
※11 乳幼児期のテレビ・ビデオ接触の実態および社会情緒的発達との関連―0歳・1歳・2歳の3時点調査から ―/菅原ますみ/2021年9月16日現在
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/category/bangumi_kodomo/pdf/report3_3all.pdf
※12 上手な使い方(最適な視聴距離)/シャープ/2021年9月16日現在
https://jp.sharp/support/advice/aquos/use_01.html
※13 大画面テレビ・ステップアップ講座 ~照明でお部屋の雰囲気アップ/Joshin web/2021年9月16日現在
https://joshinweb.jp/av/stepup4.html
※14青少年委員会 「意見交換会」(山陰地区)の概要/BPO放送倫理・番組向上機構/2021年9月16日現在
https://www.bpo.gr.jp/?p=9205
※14  広報みなと2020年11月1日号 子育て・子ども関連情報 子どものテレビ視聴と目の話/港区ホームページ/2021年9月16日現在
https://www.city.minato.tokyo.jp/kouhou/kuse/koho/minato2020/202011/20201101top/27.html
※15  「平成29年度全国学力・学習状況調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」(国立大学法人お茶の水女子大学)/内閣府/2021年9月16日現在
https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/yuushikisya/k_7/pdf/ref4.pdf

まとめ

赤ちゃんのうちから、テレビを見ている子も珍しくはありません。
ただ長時間、ひとりでテレビを見せておくのは、子どもの発達上、あまりよいことではなさそうです。
一方、大人と一緒に会話をしながら適切な時間見るのであれば、語彙力などが向上する可能性も示されています。
親子のコミュニケーションツールとして上手く活用すれば、子どもにとって学びや興味を得られるきっかけにもなるのです。
テレビばかりになりすぎず、外遊びや読み聞かせなどの時間をとりながら、適度にテレビを取り入れてみませんか?

 

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