「通知表・通信簿」の内容をひも解いて、子供の力を伸ばそう

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学期の最終日に持ち帰ってくる「通知表・通信簿」。
結果だけをみてそのままにしていませんか。
通知表からは子供の学習状況や日々の生活の様子を把握できます。
親世代が子供だった頃の通知表とは違う点もあり、よく理解できていないというご家庭もいるでしょう。
通知表の内容やしくみを理解し、子供のさらなる成長につなげていきましょう。

目次

  1. 通知表・通信簿ってどういうもの?
    • 通知表・通信簿とは
    • 通知表にはどんなことが書かれているか
  2. 通知表・通信簿の評価のしくみ
    • 文部科学省が定めている「学習指導要領」に基づく
    • 評価のしくみ
  3. 通知表・通信簿の見方
    • 観点別評価と評定には基準値がある
    • 観点別評価→評定へつながる
    • 各教科の評価以外の欄にもじっくり目を通す
  4. 通知表は、受け取った後が大事!
    • 通知表に関する疑問はそのままにしない
    • 通知表を介して、子供とじっくり話す時間を取る
    • 通知表には必ず子供の良さが書いてある
  5. まとめ

通知表・通信簿ってどういうもの?

通知表・通信簿とは

子供が学期の最終日に持ち帰ってくる通知表。
そこには、学習状況や活動の様子が書かれており、保護者にとっては関心の高いものではないでしょうか。
まずは通知表とはどのようなものなのか、見ていきましょう。
通知表の表紙に書かれている名称は、学校によってそれぞれ違います。
「あゆみ」「通知表」「通信票」「通知票」「のびゆくすがた」など、多様です。
型の大きさやページ数も様々です。※1
通知票の内容構成や評価の仕方、記載方法なども学校によって異なります。
さらに、みなさんは驚かれるかもしれませんが、通知表の作成は法的に義務付けられていません。
子供の具体的な成長、日々の努力に目を向けないで、結果だけに捉われてしまうなどの理由から、作成していない学校もあるようです。※1、2
それならば、通知表は何のために作られているのでしょうか。
通知票は、先生が保護者に子供の様子を知らせる連絡帳と同じ役割を担っています。
子供の学習面や生活面の改善のための資料であり、次学期(次学年)に向けてさらに努力や継続を促すものです。
学校側は、通知表を介して保護者に子供の現状を知ってもらいたいと考えています。
そして保護者の協力を得ながら、見守っていこうとしています。
通知表を受け取ったら、親子でそれをどう活用していくのか。
これがとても大切です。※1、2

 

通知表にはどんなことが書かれているか

では、実際の通知票の記載内容を見てみましょう。
小学校と中学校では、記載されている内容は違いますが、通知表に記載されている項目はおおよそ下記の通りです。※3、4、5

 

  • 学習の記録(観点別評価、評定)
  • 特別の教科 道徳
  • 外国語活動の記録
  • 総合的な学習の時間の記録
  • 特別活動の記録(学級活動、委員会、クラブ活動、学校行事など)
  • 行動の記録
  • 総合所見
  • 出欠の記録

これらは、文部科学省の資料「各教科等・各学年等の評価の観点等及びその趣旨」を参考に、学校が記載します。


例えば、行動の記録の項目の一つに「基本的な生活習慣」があります。
小学校1、2学年:安全に気を付け、時間を守り、物を大切にし、気持ちのよいあいさつを行い、規則正しい生活をする
小学校3、4学年:安全に努め、物や時間を有効に使い、礼儀正しく節度のある生活をする
小学校5、6学年:自他の安全に努め、礼儀正しく行動し、節度を守り節制に心掛ける
中学校:自他の安全に努め、礼儀正しく節度を守り節制に心掛け調和のある生活をする
実際のお子様の通知表を見るとわかりますが、このような難しい表現ではなく、もっと具体的でわかりやすい言葉で記されているかと思います。
学年が上がるごとに書き方が変わることにも注目しましょう。※6

※1 国立教育政策研究所 通信簿に関する調査研究  / 2020年2月28日閲覧
https://www.nier.go.jp/kiso/hyouka/tsuushinbo.pdf
※2 文部科学省  児童生徒の学習評価の在り方について(報告) / 2020年2月28日閲覧https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/attach/1292216.htm
※3 文部科学省 学習評価に関する資料 / 2020年2月28日閲覧https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/10/10/1409925_3.pdf
※4 文部科学省 小学校児童指導要録(参考様式) / 2020年2月28日閲覧https://www.mext.go.jp/component/b_menu/nc/__icsFiles/afieldfile/2019/04/09/1415206_1_1.pdf
※5 文部科学省 中学校生徒指導要録(参考様式) / 2020年2月28日閲覧https://www.mext.go.jp/component/b_menu/nc/__icsFiles/afieldfile/2019/04/09/1415206_2.pdf
※6 文部科学省 各教科等・各学年等の評価の観点等及びその趣旨 / 2020年2月28日閲覧
https://www.mext.go.jp/component/b_menu/nc/__icsFiles/afieldfile/2019/04/09/1415196_4_1_2.pdf

通知表・通信簿の評価のしくみ

文部科学省が定めている「学習指導要領」に基づく

通知票は、文部科学省が定めている「学習指導要領」をもとに作成されています。
学習指導要領は、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、国が定めた「教育課程の基準」となるものです。
最初に告示という形で定められたのは1958年(昭和33年)であり、その後およそ10年に一度のペースで改訂されています。※7
最近では、2017年(平成29年)3月31日に改訂されました。
2018年度から移行期間とし、小学校は2020年度から、中学校は2021年度から全面実施となります。※8
ではその、改訂内容を見てみましょう。
現行では4つの観点、関心・意欲・態度、思考・判断・表現、技能、知識・理解で構成されています。
今回の改訂により、新学習指導要領では、3つの観点知識及び技能、思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度へ変更となりました。※3、9

 

評価のしくみ

では、学校はどのように評価しているのでしょうか。
かつての学習評価は、5は全体の何%といったように、学級または学年における位置づけを評価する「集団に準拠した評価(いわゆる相対評価)」でした。
しかし2001年度から、目標がどのくらい実現したかを評価する「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)」に変わりました。
これは「観点別学習状況の評価」と「評定」で示されます。※3
さらに、観点別評価や評定では示しきれない子供たちの良いところや可能性、進歩状況などを評価する「個人内評価」があり、これらは道徳や総合所見などに示されます。※3
このように、「目標に準拠した評価」になったことで、子供一人一人の進歩状況や各教科の目標がどこまで到達したかを把握できるようになりました。
他人と比べることがないため、頑張れば頑張っただけ評価してもらえるというわけです。
では、「観点別学習状況の評価(以下、観点別評価とする)」と「評定」について詳しく見ていきましょう。


【観点別評価】
各教科には4つの観点(国語は5つ)が存在し、その評価は3段階表示となっています。
学校により表示の仕方は異なり、ABC表示、◎〇△表示、よくできる、できる、もう少しなど、さまざまです。
十分満足できる状況をA、おおむね満足できる状況をB、努力を要する状況をCとし、3段階に区別しています。※9、10、11、12
各教科を観点別に見ていくことで、子供の得意分野と苦手分野を読み取ることができます。
同じ教科の中にも得意分野と苦手分野が把握できれば、工夫しながら次の学習に取り組むことができます。
つい評定の方に目がいきがちですが、得意と苦手を把握できないままやみくもに「勉強しなさい」といっても、子供には響きません。
子供の力を伸ばすには、実は観点別評価が重要です。
観点別評価と評定はつながっており、評定を上げたいのであれば、各教科に記載されている観点に目を向け、取り組むとよいでしょう。※9、10、11


【評定】
小学校では評定を実施している学校と実施していない学校がありますが、中学校はほぼ実施しています。
高校受験における評定(いわゆる内申点)を活用するからです。
評定は5~1の5段階表示となっております。
十分満足できるもののうち、特に程度が高い状況を5、十分満足できる状況を4、おおむね満足できる状況を3、努力を要する状況を2、一層努力を要する状況が1となります。
観点別評価をもとに、評定が行われます。※9、10、11、12

 

※3 文部科学省 学習評価に関する資料 / 2020年2月28日閲覧https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/10/10/1409925_3.pdf
※7 文部科学省 学習指導要領「生きる力」  / 2020年2月28日閲覧
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm
※8 文部科学省 新学習指導要領の全面実施と学習評価の改善について / 2020年2月28日閲覧
https://www.tokushima-ec.ed.jp/?action=common_download_main&upload_id=14833
※9 学習評価の在り方ハンドブック 小・中学校編 / 2020年2月28日閲覧
https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/gakushuhyouka_R010613-01.pdf
※10 東京都教育委員会 児童・生徒の学習評価(評価・評定) 適正で信頼される評価の推進に向けてⅠ理論編 / 2020年2月28日閲覧
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/advancement/files/evaluation/hyoukasuisin2.pdf
※11 東京都教育委員会 児童・生徒の学習評価(評価・評定) 適正で信頼される評価の推進に向けてⅡ実践編 / 2020年2月28日閲覧https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/advancement/files/evaluation/hyoukasuisin3.pdf
※12 国立教育政策研究所 評価規準の作成のための参考資料(中学校) / 2020年2月28日閲覧 https://www.nier.go.jp/kaihatsu/hyoukakijun/chuu/all.pdf

通知表・通信簿の見方

観点別評価と評定には基準値がある

前述の通り、観点別評価は、

  • A:十分満足できる
  • B:おおむね満足できる
  • C:努力を要する

と分けられており、さらに次のように評定しています。

 

  • Aのうち、特に程度が高い状況を5、十分満足できる状況を4、
  • Bのうち、おおむね満足できる状況を3、努力を要する状況を2
  • Cは一層努力を要する状況で1

となっています。


学校によっては、この区別を数値化して公表している学校もあります。

  • 観点別評価:80%以上がA、50%以上~80%未満がB、50%未満がC
  • 評定: 90%以上が5、80%以上90%未満を4、50%以上80%未満が3、20%以上50%未満が2、20%未満が1

などです。※12


これらの数値は一例ですが、このように数値化することで、観点別評価と評定の関係性が明確になり、わかりやすいというメリットはあります。
しかし、小学校では3段階の観点別評価から3段階の評定となるので戸惑うことはないですが、中学校では3段階の観点別評価から5段階の評定になるため、疑問も生じてきます。
特に中学校の場合、通知表の評定が高校受験の際に関わってくることから、とても気になるところです。※10、11

 

観点別評価→評定へつながる

ここで観点別評価と評定の関係について考えてみます。
観点別評価が評定につながるわけですが、通知表の評定を見てなぜ?と疑問に思うことがあります。
それは4つの観点別評価がすべてAであるのに、評定が5でない場合です。
具体例を挙げてみてみましょう。数学の4つの観点をそれぞれ100満点とします。
観点別評価Aの基準値を80%以上とすると、100点でAの子もいれば80点でAの子もいます。


2つの例を見比べてみましょう。
子供1:80点(A)+80点(A)+80点(A)+80点(A)=320点
子供2:100点(A)+90点(A)+70点(A)+100点(A)=360点
子供1はAAAA、子供2はAABAとなり、ABC表示だけをみると、子供1の方が子供2より評価が高いと感じるでしょう。
しかし、4つの観点の合計を見ると、子供2の方が子供1より高くなります。
さらに、90%以上を5、80%以上90%未満を4という基準で評定をつけるならば、子供1は評定4、子供2は評定5となります。
つまり、観点別評価がすべてAであったとしても、評定が必ず5になるとは限らないということです。※11

 

各教科の評価以外の欄にもじっくり目を通す

通知票で注目すべきは、各教科の学習成績だけではありません。
学習状況以外の欄にもじっくり目を通していく必要があります。
子供が学校でどのように過ごしているかは、所見や行動の記録、活動の記録などから読み取ることができます。※13、14
行動の記録には

  • あいさつや言葉遣いはきちんと出来るか
  • 身の回りの整理整頓は出来ているか
  • 決まりは守っているか
  • 友達と仲良く助け合っているか

などいくつかの項目が書かれています。
忘れ物が多く、整理整頓ができないと勉強に集中できません。
学習状況の改善の前に、まずは行動の記録に書かれている項目がきちんとできていることが必要です。
返事や挨拶ができる、決まりを守るなど、当たり前のことが出来ているか、学校任せではなく、家庭でも生活を見直してみてください。※13、14
活動の記録では、係りや委員会、学校行事等にどう関わったかが記載されています。
その活動内容を通して、会話が広がることもあります。
所見の欄は狭いスペースではありますが、先生から見た子供の頑張っている様子、子供が持っている素晴らしい一面、また今後の課題などが短い言葉の中に凝縮されています。
親の知らない我が子を知ることもあります。
出欠の記録も必ず目を通しましょう。
毎日学校へ行くと家を出ても、始業時間に間に合っていないケースもありますので、欠席日数・遅刻・早退日数、その理由に間違いがないか確認しておきましょう。※14

※10 東京都教育委員会 児童・生徒の学習評価(評価・評定) 適正で信頼される評価の推進に向けてⅠ理論編 / 2020年2月28日閲覧https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/advancement/files/evaluation/hyoukasuisin2.pdf
※11 東京都教育委員会東京都教育庁指導部 児童・生徒の学習評価(評価・評定) 適正で信頼される評価の推進に向けてⅡ実践編 / 2020年2月28日閲覧 https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/advancement/files/evaluation/hyoukasuisin3.pdf
※12 国立教育政策研究所 評価規準の作成のための参考資料(中学校) https://www.nier.go.jp/kaihatsu/hyoukakijun/chuu/all.pdf / 2020年2月28日閲覧
※13 田中耕治編 2010年12月10日発行 よくわかる教育評価第2版 株式会社ミネルヴァ書房
※14 塚田亮 宮沢義一著 2010年81日発行 通知表の成績はどうして決まる?子どもを伸ばす通知表の正しい読み方・生かし方 東洋館出版社

通知表は、受け取った後が大事!

通知表に関する疑問はそのままにしない

我が子の成績を上げたいなら、親は通知表のしくみを理解しておく必要があります。
通知表の仕組みがよく分からない状況では、単にテストの点数だけが上がっても、通知表の評定を上げることは難しいのです
テストで高得点を取っていても、学習に対する姿勢・意欲や思考力・判断力・表現力の評価が低いこともあります。
実際に、テストが高得点でも、提出物の提出状況や授業態度などによっては、評点は低くなります。
評定を上げていくには、評価の高いものは維持し、評価の低い観点に目を向け、努力することが必要です。
年度の初めに、通知表の評価に関する説明会を実施している学校も多いので、ぜひ参加することをお勧めします。
また、我が子の通知表を見て、疑問に思うことが出てきた場合は、担任に問合せをしてもよいのではないでしょうか。
実際、中学校では、観点別評価は各教科の観点項目ごとにABCと3段階の評価、評定では、54321の5段階評価。
3段階を5段階にする段階で、学校側が何を基準にしているのか、分かりにくい部分もあります。
まずは学校から配布される資料の評価方法のしくみをしっかり理解した上で、それでも疑問が生じるようならば質問する、というスタンスを取りましょう。※15

 

通知表を介して、子供とじっくり話す時間を取る

通知票に書かれていることを隅々まで読み、現状を子供と共有しましょう。
決して、子供から渡された通知表を一度見て終わりにはしないでください。
親は子供の良いところ、頑張ったところ、改善を要するところ、今後の課題などを通知表から読み取り、ぜひ言葉かけやアドバイスをしてあげてください。
例えば、テストの点数は良くて提出物もきちんと出すのに評定で5にならない場合は、授業態度や取り組み姿勢でマイナスになっている可能性があります。
また評価が下がったのはなぜか、評価が上がったのはなぜか、を親子で分析してみてください。
自分の現状を知り、自分のこれまでを振り返り、気づき、次へと取り組む。
この振り返りの過程が大事なのです。※14

 

通知表には必ず子供の良さが書いてある

中には、評価の悪いところだけを気にする親もいるでしょう。
「あなたはこれが出来ていないから、成績があがらない」など、評価の悪いところだけを指摘していては、子供はやる気を失います
通知表を渡すことが嫌だと感じるようになります。
通知表には必ず子供の良いところも書かれています
特に所見の欄は、担任の先生から見た「その子らしさ」が読み取れます。
親では気づかなかった面が、書かれていることもあります。
悪い点を指摘する前に、子供の良いところ、頑張ったところに触れて言葉をかけてあげましょう
人は誰でも、自分の良さを人に認めてもらえると、大きな自信になります。
子供にとってもっとも身近な存在である親は、子供の自信を伸ばすような声掛けも必要なのです。※14

※15 文部科学省 学習評価の現状と課題 / 2020年2月28日閲覧 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/080/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/12/15/1399427_1.pdf
※14 塚田亮 宮沢義一著 2010年8月1日発行 通知表の成績はどうして決まる?子どもを伸ばす通知表の正しい読み方・生かし方 東洋館出版社

まとめ

通知表は、学校の学習状況や学校での様子を保護者や子供に伝えるものです。
ぜひ通知表を通じて、親子でじっくり話す機会を持ってください。
親子でしっかりと現状を把握することが大切なのです。
親は子供を教科の成績結果だけで判断するのではなく、他の記載事項に書かれている子供の良いところや頑張っていること、今後の課題などを読み取り、親子で共有しましょう。

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