子供には意外と難しい足し算!足し算のつまずきをなくすために、親にできる教え方とは。
小学校に入ると算数が始まり、まず習うのは「足し算」です。
足し算は、大人には簡単すぎますから、子供がどこでつまずいているのかが理解できない、どう教えてよいのかわからない、という方も多いことでしょう。
足し算は大人になっても使う、もっとも簡単な計算方法です。
子供の「足し算のつまずき」をなくすためには、家庭でどう教えるべきなのでしょうか。
子供と一緒に、足し算をもっと身近なものにしていきましょう。
目次
- 子供には意外と難しい足し算
- 数の意味が理解できていない?
- 数は楽しい、面白いと感じさせること
- 小学校1年生で習う足し算の教え方
- 足し算を教える前に数のしくみを教える
- 数に慣れたら小さい数の足し算からスタートする
- 指を使って計算するのはどうなのか
- 幼児期に足し算の基礎を身につける
- 幼児期に教えるメリット
- 幼児期から数を身近なものに
- 家庭学習での教え方のポイント
- 親が教えるメリット
- 家庭学習でやるべきこと、気をつけるべきこと
- まとめ
子供には意外と難しい足し算
数の意味が理解できていない?
足し算は、子供にとっては意外と難しいものです。
もしも子供が足し算でつまずいていたら、まずは何が原因なのかを探ってみましょう。
「100までの数字が言えれば、ひとまず1年生の足し算は大丈夫だろう」と思っている親も多いかもしれません。
しかし100まで言えることと、ものの数をきちんと数えられることは違います。
中には、書かれてある数字を読めない子供もいます。
子供は1~100までの流れで暗記しているだけなので、数を飛ばして言ってみたり、途中で数がわからなくなったりということもあります。
また、鉛筆2本とノート2冊など、ものが違うというだけで、個数が同じ「2」であることが理解できない子もいます。
さらに、足し算を暗記している子供は、桁の小さい数字はスムーズに計算できても、桁が大きくなると計算できなくなることがあります。
そして、「うちの子、5+2の計算はできるけれど、文章問題になると足し算なのか引き算なのか分からなくなってしまう」という悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
これは、子供が文章問題に書かれている状況を、イメージできていないために起こる問題です。
これらのつまずきは、いずれも数の意味が理解できていないことが原因と考えることができます。※1
数は楽しい、面白いと感じさせること
前述のつまずきからも分かるように、足し算は暗記するものではないということをまずは理解させることが大切です。
足し算に入る前に、数について詳しく教えることから始めてみましょう。
例えば、幼児期から数に触れている子供は、小学1年生の足し算へスムーズに進んでいくことができます。
参考書やドリルで数の意味を教えることもできますが、身近なものを使って教えることの方が、子供には理解しやすいようです。
日常の生活にあるものを大いに利用し、数と触れ合いましょう。
そして、ここで大事にしたいことは、「数は楽しくて、面白いもの」と感じられるように、生活や遊びの中に数を取り入れることです。
数を楽しい、面白いと感じている子は、おそらく算数が好きです。
算数はゲームのようにどんどんクリアしていければ、ますます面白くなる教科です。
幼児期にこうした体験をしている子供は、この先難問につまずいても、自分の力で解いていこうとするでしょう。※2
※1 祖川泰治(著) 2016年11月発行 小学校前の3年間にできること、してあげたいこと すばる舎
※2 宇治美知子(著) 2000年1月発行 算数が楽しくなる、できる子になる!算数が好きになる教え方 三樹書房
小学校1年生で習う足し算の教え方
足し算を教える前に数のしくみを教える
小学校で最初に習う算数は、「足し算」ではありません。
実は足し算の前にやるべきことがあります。
それは、数のしくみを教えることです。
これらはイラストや図を利用しながら教えていくので、楽しく取り組めます。
学校では教科書やドリル、プリントを使っての練習となりますが、家にある身近なものを使ってでもできる内容です。※2、3
【仲間さがし】
動物や植物、食べ物などの絵の中から、同じものに分ける作業です。
仲間さがしは、共通なものをきちんと認識できているかが問われます。
声かけのステップとしては、「同じものを〇で囲ってみよう」から「果物はどれかな?動物はどれかな?」というように、段階を踏んで進めていきましょう。※2、3
【ものの数と数字の一致】
絵に書かれているものを見て、数を数字で書く練習です。
数字の書き順もしっかり見てあげましょう。※2
【数の大小】
大小を教えるときに注意したいのが、「どちらが大きい、小さい」ではなく、「どちらが多い、少ない」と問いかけることです。
数字の大きい、小さいという表現は、子供には理解しにくいようです。※2
【左から何番目、右から何番目、上から~つ、下から~つ】
これは、言葉の違いを認識させる問いかけですので、子供が上下、左右の認識ができていないとできません。
もしまだよく分かっていない場合は、左はどっちかな?右はどっちかな?と声をかけてから始めていくとよいでしょう。
「左から2番目を〇で囲もう」「右から2つを〇で囲もう」「ねこは上から何番目かな?」といったように、上下左右の言葉を変えながら、「~つめ」と「~つ」の違いを理解させましょう。※2、3
数に慣れたら小さい数の足し算からスタートする
【答えが5未満の数の計算】
答えが5未満の数の計算は、「1+1」「1+2」「1+3」「2+1」「2+2」「3+1」の6通りです。
まずはこれら6つの計算に慣れることから始めます。
その後に「0+1」などの「0」を含む足し算に取り組んでいきます。
この頃の子供は、身近にあるものを使って教えると、数を実感しやすいようです。
例えば、ママはりんごを1個持っています。
○○ちゃんは、りんごを3個持っています。
合わせるといくつですか?というように文章にすることで、合わせる=足すということも同時に理解できます。※3、4
【5のかたまりの認識】
足し算で5のかたまりは重要ではないのでは?と思う方もいるかもしれません。
しかし、一目で5と認識できるようにしておくと、数える時にわざわざ1から数えなくても、5を基準に6、7、8、というように数えられるようになります。
さらに6から9の数を分解する時にも5のかたまりが役立ちます。
「3はあといくつで5になるかな?」というように、いくつといくつで5になるかの練習をしましょう。※3、4
【答えが6から9までの計算】
ここで、前述の「5のかたまり」が利用できます。
例えば、6+2=の計算は、5のかたまりが認識できていれば、5+1+2=という計算式に分解出来て、計算がしやすくなります。
6+2ぐらいの計算であれば暗記してしまう子供もいますが、この方法は後の「繰り上がり足し算」のベースとなってきますので、ぜひ使いこなせるようにしましょう。※3、4
【10のかたまりの認識】
算盤を習った方はお分かりかと思いますが、合わせて「10」になる数字の組み合わせは重要です。
10のかたまりは、繰り上がりの足し算に大いに役立ちます。
数式を見ながら、「3たす7は10」、「4たす6は10」などのように繰り返し声に出すと、記憶に残っていくでしょう。※2、3、4
【8+4=のような繰り上がりのある足し算】
繰り上がりの足し算8+4の場合、まずは数字の大きい「8」に目を向けます。
そして8を10にするために、4から2をもらいます。
4は2を渡したので残り2となり、10+2という計算式になります。
前述の10のかたまりがここで役立つわけです。
小学校によっては、繰り上がりの計算方法を、さくらんぼ計算、チェリンボ計算などと呼び、教えている学校もあります。
これは、8を5+3に分けるときの書き方が、枝でつながった2つのさくらんぼに見えるためです。
もし子供が繰り上がりの足し算でつまずいているようなら、再度「5のかたまり、10のかたまり」に戻って確認しましょう。※2、3、4
指を使って計算するのはどうなのか
指を使って計算することに関してですが、指は片手だと5、両手だと10なので、ちょうど使いやすく、子供にとっては分かりやすいようです。
5のかたまり、10のかたまりを覚える時にも利用できます。
数が大きくなれば、指では対応できなくなりますし、計算に慣れてくれば、次第に頭で考えるようになるでしょう。※2、3
※2 宇治美知子(著) 2000年1月発行 算数が楽しくなる、できる子になる!算数が好きになる教え方 三樹書房
※3 大嶋秀樹(著) 2007年5月発行 お母さんが教えるはじめての小学算数~一番わかりやすい小学算数の教え方低学年編~ 実業之日本社
※4 大嶋秀樹(著) 2014年3月発行 改訂新版一番わかりやすい小学算数の教え方~お母さんのための算数「虎の巻」~ 実業之日本社
幼児期に足し算の基礎を身につける
幼児期に教えるメリット
幼児期は、子供の心身が大きく発達する時期です。
「なぜ?」「どうして?」という疑問を多く投げかけてくるのもこの頃です。
周りに見えるものや人が話す言葉に興味を持ち、それについて深く知りたがります。
教えようとしなくても、自然と吸収することが多い時期ですが、ここに親のプラスアルファの導きがあると、さらに子供の能力を伸ばすことができます。
また、親も勉強をさせなきゃと焦る時期でもないので、心に余裕をもって子供と接することが出来る時期でもあります。
机に向かって勉強させるというよりは、身近なもので遊びながら、数に触れていきましょう。
子供といる時間も長いこの時期だからこそ、親も一緒に楽しみながら関わることができます。
幼児期から数を身近なものとしている子供は、小学生で始まる足し算に、もスムーズに取り組めるようになるでしょう。※1、2
幼児期から数を身近なものに
小さい頃は数を数えるのが大好き、そんな記憶がある方も多いでしょう。
お風呂に入った時、100まで数えたらお風呂から出ようと言うと、喜んで数を数えていませんでしたか?
このように、子供は小さい頃から数に触れ合う機会がたくさんあります。※2
しかし、自分が言っている数と実際のものの数を一致させることは、子供にとって少々難しいことです。
ものを数える時は、「一対一対応」で教えていくようにするとよいでしょう。
一対一対応とは、「一個に一個ずつ」の考え方です。
身の回りにあるもので、これいくつあるかな?と聞くようにすると、次第にものの数と数字が一致してきます。
数をきちんと数えられるようになって、初めて数字を使えるようになるのです。※1
では、幼児期の子供が楽しみながら数に触れていく方法を、いくつか挙げてみます。
例えば、おもちゃの片づけ。
かごをいくつか用意し、お人形、ブロック、電車などそれぞれに分けさせることで、物を分類することができるようになります。
食事の準備では、「お皿と箸を用意して」とお願いすることで、家族は何人いてお皿や箸はいくつ必要かを考えることができます。
料理のお手伝いでは、計量カップで調味料を測ってもらったり、ミニトマトを一人3個ずつ配ってもらったりすることで、数と関わることができます。※1、2
お菓子を買う時は「100円までだったらいいよ」などと決めると、子供は頭で計算しながら選ぶようになります。
このように、日常生活の中には数があふれています。
遊びやお手伝い、買い物などを通して、足し算の基礎となる数を身近なものにしていきましょう。※1、2
※1 祖川泰治(著) 2016年11月発行 小学校前の3年間にできること、してあげたいこと すばる舎
※2 宇治美知子(著) 2000年1月発行 算数が楽しくなる、できる子になる!算数が好きになる教え方 三樹書房
家庭学習での教え方のポイント
親が教えるメリット
学校の先生は大勢の生徒に「算数」を教える必要があるため、個別に対応しながら授業を進めていくことは難しいといえます。
子供の方から問いかけをしない限り、子供がどこでつまずいているのかをきちんと把握することは、難しいのではないでしょうか。
一方、親の場合、我が子だけに集中して宿題や勉強に目を向けることができ、子供のつまずきや弱点にも気づくことができます。
さらに親は自分の子供の性格を把握していますので、子供に適した学習法はどのような方法なのかを、最優先に考え教えていくことができます。※1
子供が苦手としていることにいち早く気づいてあげられ、手を差し伸べてあげられるのは、身近にいる親です。
子供は、そんな支えてくれる親がいることで、大きな安心感を得ます。
小学校に入ると、習い事や友達と遊ぶ機会が増えて、親といる時間がグッと減ってきますので、親と関わる時間が多い幼児期に、子供の興味を引き出してあげましょう。※1、2
家庭学習でやるべきこと、気をつけるべきこと
家庭学習をしている我が子への教え方のポイントは、小学校の勉強を学校や塾に任せっきりにしないことです。
「忙しいから見てあげられない」「親が教えるより専門の先生が教える方が的確」などといった理由で、放ったからしはいけません。※1、5
小学校レベルの勉強であれば、教科書を見返したり、調べたりすれば、親が全く分からないということはないでしょう。
親からの少しの助言が、学校の授業での解決への糸口になるかもしれません。
子供の「わからない」という言葉に対して、「今度先生に聞いてみなさい」ではなく、「どこがわからないのかな?」「お母さんと一緒に考えてみよう」と声をかけてあげましょう。
もちろん親でもわからないことはあり、そんな解けない自分を恥ずかしいと思う親の気持ちもわかります。
しかしそれよりも、子供はお母さんと一緒に考えたり、調べたりして勉強できる環境が嬉しいのです。
身近なもの、例えばビー玉など「同じ形とサイズで数がたくさんあるもの」を使って、「ここにビー玉が5個あります。
お父さんがビー玉を2個買ってきました。
全部でいくつになりますか」といったような問題を作ってあげましょう。
そして実際に今ある数と追加する数を、ビー玉を動かしながら足していくようにすると、子供は頭の中で数をイメージしやすくなります。
「足し算」は身近なものでできるとわかれば、逆に子供も親に問題を作って出してくるかもしれません。※1、2、5、6
子供の勉強をずっと見ている必要はありません。
大事なのは、親が子供に寄り添う姿勢です。
子供が努力している姿勢は大いにほめてあげてください。
もくもくと勉強している自分を評価してもらうことで、さらに自信になり、頑張れます。※4、5
兄弟姉妹でも性格は違いますし、能力も違います。
その子に合った教え方で進めていきましょう。
そしてどんな場合でも、焦らず、ガミガミ言わないことです。
「なんでこんな問題が解けないの?」は、子供にとっての禁句なのです。
もし焦ってガミガミ言いそうになったら、一度深呼吸して親の感情を落ち着かせるとよいでしょう。※1、2、4、5、6
※1 祖川泰治(著) 2016年11月発行 小学校前の3年間にできること、してあげたいこと すばる舎
※2 宇治美知子(著) 2000年1月発行 算数が楽しくなる、できる子になる!算数が好きになる教え方 三樹書房
※4 大嶋秀樹(著) 2014年3月発行 改訂新版一番わかりやすい小学算数の教え方~お母さんのための算数「虎の巻」~ 実業之日本社
※5 斎藤孝(著) 2005年3月発行 子どもの能力を確実に引き出す!斎藤孝の実践母親塾 旺文社
※6 吉本笑子(著) 2010年10月発行 花まるママの子どもの才能を伸ばす魔法のことばノート かんき出版
まとめ
算数の基本である足し算ですが、子供には意外と難しいもの。
一度つまずくと、算数自体が嫌いになってしまう子もいます。
その一方で、算数は一度好きになれば、とことん追求したくなる教科でもあります。
その基礎となるのが、足し算なのです。
幼児期の子供は何にでも興味を持って吸収しやすく、日常生活や遊びの中には、数があふれています。
子供が足し算に楽しんで取り組めるよう、親は日々の生活の中でも導いてあげましょう。