スマホ脳になると脳の発達をジャマされる!?親子で取り組むべき、スマホ脳からの脱却

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IT機器の発達により今ではすっかり生活に溶け込んでいるスマートフォン。
近年では、子供のスマホ所持も増えてきているようです。
便利ではあるけれど使い方に注意を払わなければ、脳に悪影響を与えてしまいます。
スマホが脳にどのような悪影響を与えるのか、そこから抜け出すにはどうすれば良いかを考えてみましょう。

目次

  1. スマホが脳の発達に与える影響
    • 発達時期にスマホを常に使用している子供達はどうなるか
    • 学力とスマホの関係
  2. スマホ依存がさらに脳を壊す
    • スマホ依存・ネット依存・ゲーム依存とは
    • 生活習慣の乱れが脳の成長を阻む
  3. スマホ脳の問題は子供だけではない
    • スマホ脳ともの忘れの関係
    • 前頭前野の機能が低下すると脳は退化する
    • ぼんやりと考える機能はすごい
  4. スマホと上手に付き合いスマホ脳から抜けだそう
    • 親が子供にするべき事
    • 自身で気をつけること、実践すること
  5. まとめ

スマホが脳の発達に与える影響

発達時期にスマホを常に使用している子供達はどうなるか

人の脳の大半は、3歳頃までの間に猛スピードで発達し、大人の脳と同じくらいに成長するといわれています。※1
この大切な時期、楽しそうにしているから、大人しくなるから、などの理由で子供にスマホを使わせていませんか。
子供が興味津々でスマホを見ているとき、一見すると脳に良い刺激をあたえているように見えますが、実際の脳はたくさんの情報や刺激を受け取りすぎて、パンク寸前になっています。※2
脳は、たくさんの情報を得てもそれをアウトプットしなければパンクしてしまい、正常な働きができなくなってきます。
もの忘れ、記憶力の低下、思考力や集中力の低下などがみられるようになってくるのです。※2
人の考える力を司っているのは、前頭前野と呼ばれる部分です。
ここは、発想力や想像力を生む部分もあります。※2
また、人は考えるときに言葉を使いますので、言語能力の発達にも関わってきます
子供が言葉を覚えていく最初の過程は、親子のコミュニケーションです。
この時期にスマホで静かにさせたり、親がスマホに夢中になっていたりすると、十分なコミュニケーションが取れません。
言語形成が不十分だと考える力が弱くなり、今後の脳の成長にも大きく影響します。※1、3
前頭前野の働きはまた、「視覚・嗅覚・触覚・味覚・聴覚」の五感の発達にも影響を与えます。
赤ちゃんは、ママの声掛けや抱っこされたときのぬくもり、授乳中に目を合わせるなどの愛着形成と刺激から、五感を育てます
もう少し大きくなれば読み聞かせ、家族と一緒の楽しい食事も愛着形成です。 ※1、3
スマホは、五感のなかで嗅覚や触覚の発達にも影響を与えます
嗅覚や触覚は、愛着形成を基礎として、外遊びからもさまざまなことを学んで発達していくからです
この発達は、目をつぶっていても触った感触や匂いでママやパパを判断したり、大きくなれば嗅覚だけで食べ物の腐敗を察知したりすることにつながります。
しかし、スマホで動画やゲームをすることが当たり前になると、友達と集まっても家で遊んだり、外に出ても公園で輪になってスマホをいじっていたりします。 ※3
これでは、嗅覚や触覚が育っていく環境ではありません
また、身体を動かすことで脳の働きをコントロールするホルモンのバランスが整い、イライラする気持ちなどを落ち着かせます。
外遊びで身体を動かすことが、キレやすい子になることの予防にもつながるのです。※1

 

学力とスマホの関係

スマホは、学力にも悪影響を与えます。
調べ物などがすぐにできるから物知りになると思うかもしれませんが、実際は違います。
図書館や本、教科書などを使い調べたい箇所を探しながら苦労や努力をして問題を解決していく従来の方法は、脳に多くの刺激を与え、知識がより深く脳に刻み込まれます。※2
しかし簡単にかつピンポイントで情報が得られるスマホは、学習の本質から外れ、脳が考えて学ぼうとしないので知識が深く刻み込まれないのです。
また、スマホからの膨大な情報量が脳をパンク状態にさせ、勉強したことや得た知識が上手に処理させていない可能性もあります。※2
2014年度に仙台市が行った「学習意欲の科学的研究 に関するプロジェクト」の調査によると、2時間以上の勉強+4時間以上のスマホを使用する子供と、30分未満の勉強+2~3時間スマホを使用する子供の数学の平均点は、ほぼ変わらないという結果になっており、30分未満の勉強+スマホは全く使用しない子供の方が、平均点が良いことも分かりました。※4
ですから、頑張って勉強してもスマホを長時間にわたり使用していると、学習したことが無駄になってしまう恐れが生じてしまいます。
この調査で最も成績が良かったのは、2時間以上の勉強+1時間未満スマホを使用している子供でした。※2、4

※1 宮城県・宮城県教育委員会 川島隆太と考えるうちの子の未来学~「三つ子の魂 百まで」を脳科学がひも解く~ / 2020年3月27日閲覧https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/208503.pdf
※4 東北大学加齢医学研究所・仙台市教育委員会 学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト リーフレット集 / 2020年3月27日閲覧http://www.sendai-c.ed.jp/~tooricho/pdf/gakushuiyoku.pdf
※2 奥村歩著 2017年9月発行 10万人の脳を診断した脳神経外科医が教える その「もの忘れ」はスマホ認知症だった 青春出版社
※3 清川輝基・内海裕美著 2018年10月発行 子どもが危ない! スマホ社会の落とし穴 少年写真新聞社

スマホ依存がさらに脳を壊す

スマホ依存・ネット依存・ゲーム依存とは

最近、ネット依存・ゲーム依存・スマホ依存という言葉を、メディアなどでみかけるようになりました。
これらの依存症は、脳の機能をさらに低下させてしまうといわれています。
なぜでしょうか。
テレビゲームをしているときの脳は、正常時の2倍のドーパミンを放出しています。
これは麻薬を使用したときと同じ量のドーパミンを放出していることになります。
ドーパミンは、人に快(歓び)の報酬をもたらす物質です。
ゲームに勝ったときの高揚感や攻略した時の満足感、これが快の報酬となり、その感覚をまた味わいたい、報酬を得たいと思い、ゲームがやめられなくなります。※5
しかし、ゲームによる快の報酬は、努力や苦労をして得た歓びとは違います
簡単に手に入る報酬であるため、苦労せずに獲得できることに慣れ、のめり込んでいきます。
今ではスマホでも本格的なゲームができてしまう時代です。
しかもいつでもどこでもプレイすることができてしまうのも、依存症を生む1つの要因なのかもしれません。
ゲームをしなくても動画やSNSなどの利用も快の報酬となり、スマホ依存の危険性があります。
SNSでの「いいね」や、自分が公開した動画への嬉しいコメントが快の報酬になります。
それを脳が学習して、さらなる快の報酬を得ようと何度もチェックします
さらに脳は、動画やネットサーフィンなどで得た有益な情報や刺激を学習し、何時間でも見てしまうのです。
つまり、スマホ依存はゲーム依存とネット依存の2つの側面があります。 ※5

 

生活習慣の乱れが脳の成長を阻む

スマホ依存になると、当然ながら生活習慣が乱れます。
これが脳の成長にとって大きな壁となり、脳の健全な発達が阻まれてしまいます
まずは睡眠の乱れ。
布団の中で横になりながら寝る間を惜しんでゲームやSNS、動画の視聴などをしていると、睡眠時間の減少や睡眠の質の低下、昼夜逆転などをもたらします
睡眠不足はさらに、イライラや、集中力・意欲・食欲の低下を引き起こします。 ※3、5
睡眠の習慣が乱れると、脳の海馬が大きく育たなくなってしまいます。
海馬は学習や何かを記憶するときに働く、重要な部分です。
特に子供の頃は7~9時間の睡眠が海馬を大きく成長させるといわれており、海馬の成長に睡眠不足は大敵なのです。 ※1、6
睡眠不足は起床時間の遅れや朝食の欠食、家族とのコミュニケーション低下などの状態にもつながります。
朝食を食べないと、脳の神経細胞が必要とするエネルギーが充分に届けられなくなり、活発に活動することができず、ボーっとしてしまい集中力や意欲をさらに低下させます
何よりも栄養バランスの整った食事は脳細胞を作るために必要です
朝欠食の習慣は、脳の発達をさまたげているのです。 ※1、4

※1 宮城県・宮城県教育委員会 川島隆太と考えるうちの子の未来学~「三つ子の魂 百まで」を脳科学がひも解く~ / 2020年3月27日閲覧https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/208503.pdf
※4 東北大学加齢医学研究所・仙台市教育委員会 学習意欲の科学的研究 に関するプロジェクト リーフレット集 / 2020年3月27日閲覧http://www.sendai-c.ed.jp/~tooricho/pdf/gakushuiyoku.pdf
※6  NeuroImage Volume 60, Issue 1, March 2012, Pages 471-475 Sleep duration during weekdays affects hippocampal gray matter volume in healthy children / 2020年3月27日閲覧https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1053811911013541?via%3Dihub
※2 奥村歩著 2017年9月発行 10万人の脳を診断した脳神経外科医が教える その「もの忘れ」はスマホ認知症だった 青春出版社
※5 岡田尊司著 2014年12月発行 インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで 株式会社文藝春秋

スマホ脳の問題は子供だけではない

スマホ脳ともの忘れの関係

大人でも最近、なんだか物忘れが多いなと思うことはありませんか?
これには情報を処理する前頭前野との深い関りがあります。
前頭前野は、思考・意欲・創造・理性・判断という能力を持つ脳の司令塔です。
私たちの脳は、外から得たさまざまな情報を司令塔に集め、そこで最終的な理解や考え、判断を下します。
そして前頭前野には、集めた情報を処理するために3つの機能が備わっています。※2

 

  1. 浅く考える機能:短時間の情報保持(その日の予定など)や、単発的な情報や作業の処理(眩しいからカーテンを閉めようなど)を行う。
  2. 深く考える機能:過去の記憶、経験、知識などを使い、じっくり考える(将来の夢の実現には何が必要かなど)。
  3. ぼんやりと考える機能:何もせずにぼんやりとイメージを膨らませる(川の流れをただ見つめているなど)。  ※2


前頭前野には本来、これらの機能がありますが、スマホ脳になると1の浅く考える機能が働き過ぎている状態になります。
暇つぶしのために読んでいるニュースやライフハック、ブログなどの記事は、深く考えることもなく、何気なく読んでいることが多いのではないでしょうか。
この場合は、浅く考える機能が処理していることになります。※2
そして、次から次へと情報が脳に送り込まれるだけでアウトプットができずにいると、脳がパンク状態になり機能が低下してしまいます
容量オーバーと一緒ですから新しい情報が入ってきても記憶しておくことができなくなり、もの忘れが頻繁に起きてしまうことになります。※2

 

前頭前野の機能が低下すると脳は退化する

脳の司令塔である前頭前野の機能低下は、もの忘れ以外にも、さまざまな脳活動に支障をきたします。

 

浅く考える機能が低下した場合
浅く考える機能ばかりが働き容量オーバーになると脳が疲れてしまい、日常的な行動をとることが難しくなります。※2
・日常的に必要とされる判断力が低下し、とっさの行動ができなくなる。
例えば、転びそうな人に反射的に手を差し伸べるなど。
・自分自身が持っている価値基準や判断の基準が迷走し、周囲の意見や考えに影響されやすくなる。
SNSなどのコメントを、常に気にするようになる。
・情報過多になると、本来は不必要な知識も入ってくるため、今の自分には何が重要なのかが分からなくなり、物事の優先順位が判断できなくなる。 ※2

 

深く考える機能が低下した場合
そもそも人は深く考えることで、思考や判断を身に付けていきます。
この力を使わないということは、思考力・判断力の低下をまねきます。
・深く考えることができなくなると、集中力が低下する危険性が高まる。
特にスマホ脳では、着信が気になったりゲームの続きが気になったりと、本来やるべきことに集中できなくなる。
・感情のコントロールも前頭前野が行っているため、上手くコントロールできなくなると、キレやすくなったり、心の病気にかかりやすくなったりする。 ※2

 

ぼんやりと考える機能はすごい

前途した2つの機能をバランス良く働かせ健康的に保つには脳を休ませることが必要です
ここで、ぼんやりと考える機能が重要な役割を果たしています。
例えば、体験や記憶を整理したり、将来の行動を順序立てて整理したり、ちょっとしたひらめきなど、自分自身をより良くしていくための作業が行われているのです。
しかしこの機能は、脳が意図的に何かを考えていたり情報を収集していたりしているときには、機能しません。
機能しないままでいると、脳が常に緊張した状態になり「働く・休む」のオン・オフ切り替えが上手にいかず、最悪の場合、うつ状態に陥ることもあります。 ※2
ではこのぼんやりと考える機能を働かせるためにはどうすれば良いのでしょうか。
答えは簡単です。
何もしない、深く考えない時間を意識的に作れば良いのです
1日中ぼんやりする必要はありません。
ちょっと時間が空いたとき、夜寝る前の数分間、朝目覚めてから布団を出るまでの数分間でも、「これからどうしようかな……」とか、「今日は1日どんな日かな……」など、ただぼんやりと考える時間を持ちましょう。

※2 奥村歩著 2017年9月発行 10万人の脳を診断した脳神経外科医が教える その「もの忘れ」はスマホ認知症だった 青春出版社

スマホと上手に付き合いスマホ脳から抜けだそう

親が子供にするべき事

世の中に浸透したスマホを、今さら手放すことは容易ではありません。
それにスマホの全てが悪いということでもありません。
何事も節度をもって付き合っていくことが大切なのです。
では、スマホと上手な関係性を保つために、親が子供にするべきことは何かを考えてみましょう。


フィルタリングをかける、時間制限をかける
一番手っ取り早いのは、子供のスマホに制限をかけることです。
契約している会社やスマホの種類により違いはありますが、

  • 有害・有料サイトの閲覧
  • 子供自身による勝手な課金
  • 使用する時間や曜日

これらを制限する機能があります。
また、使用する時間(何時~何時まで)や曜日(土日は使えないなど)を制限するフィルタリングではなく、1日にトータルして1時間、2時間などと設定して制限をかけることもできます。 ※5

 

家族の絆形成が最優先
子供のスマホ利用に制限をかけることは可能ですが、やはりそれだけでは、子供がスマホに依存したくなる気持ちの解決にはなりません。
親子でお互いの信頼が頼りないものであると、子供の心は不安定になり、つい身近にあるスマホにのめり込みやすくなるのです。
このような状態で無理に制限をかけても、反発を招いてしまうだけ。
お互いに話合って物事を決められる関係性が必要です。
普段から子供との関わり合いを大切にし、絆を深めておきましょう。
子供は、親の愛情不足、絆不足を感じると、自分の逃げ道としてスマホなどへ依存してしまうのです。
具体的には、子供の話をしっかり聞き、子供に完璧を求めないことです。
兄弟姉妹間での葛藤や、親同士の不仲なども、子供にとっては親からの愛情不足を感じる要因です。
親が子供に対して充分な愛情を注ぎ、家庭内のこうした課題をともに解決していける家庭の子供は、スマホに依存する可能性が低くなります。※5

 

自身で気をつけること、実践すること

ここでは、子供も大人も実践できるスマホ脳予防法です。
次のことを、できる範囲からで良いので、ぜひ親子で取り組んでみましょう。

 

・知りたい情報をあえて手間のかかる方法で調べる。
すぐにスマホで検索せず、分からないことは辞書を引く、図書館に行って調べるなど、自分で考えるたりするような行動をしましょう。
こうした行動は、情報のつながりを自分で考えたり、さらに深堀して調べるなど、脳に刺激を与えることにつながります。 ※2

 

・できるだけ1つのことに集中する。
2つ以上の事を同時進行したり、スマホを使ってさまざまな情報を一度に得たりすることは、脳を疲れさせます。
できるだけ1つのことにフォーカスを当て、スマホに頼らずに一つずつ処理するようにしましょう。 ※2

 

・段階的にスマホから離れる時間を増やしていく。
電車だったら2駅はスマホを見ない、トイレには持って行かないなど、少しずつスマホを使用している時間を減らしていきましょう。
そして、意識して手放している時間を脳がぼんやりする時間に変えてみれば、ぼんやりする機能も使われ一石二鳥です。 ※2

 

・外に出る
買い物は通販、人とのコミュニケーションはメールやSNSなど、何でも家の中で済ませるのではなく、外に出て直接いろいろなものや人に触れ合ってみましょう。
五感が刺激されるだけではなく、植物や自然は脳に癒しを与えてくれる効果も期待できます。 ※2

 

・睡眠の取り方の見直しと改善
例えば、寝室を適温にし適度に暗くする、就寝1時間前はスマホやパソコンはしない、寝室や布団の中にスマホを持ち込まないなど、質の良い睡眠は大切です。
就寝直前のスマホや布団の中でのスマホは、脳を働かせ続けることになります。
スマホやパソコンのブルーライトは脳を覚醒させてしまうため、すんなりと寝付けなくなるのです。
朝起きたら日光を浴びることも、脳をスッキリと目覚めさせる効果があります。
脳を健康に保つためにも、質の良い睡眠を心がけましょう。※2

 

※2 奥村歩著 2017年9月発行 10万人の脳を診断した脳神経外科医が教える その「もの忘れ」はスマホ認知症だった 青春出版社
※5 岡田尊司著 2014年2月発行 インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで 文藝春秋

まとめ

便利で楽しいからと親も何気なく使っていた、あるいは子供にも使わせていたスマホは、私たちの脳にさまざまな弊害をもたらしています。
子供が楽しそうだから、子供が大人しくしているからではなく、スマホが子供の脳や成長に与える影響を理解し、親と子が上手にスマホと付き合っていくことが良いのではないでしょうか。

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