親を困らせる子供の行動、もしかしたら試し行動かも!?そんなとき、どうすればいい?
子供の成長は親にとって幸せを感じさせてくれます。
しかし自我が芽生えた頃から、親にとって困ってしまう行動も目立ってくるようになります。
子供がとる「困った問題行動」には、親や大人を試す「試し行動」というものがあります。
自分の行動に対し、親がどのような反応をするか、試しているのです。
子供はなぜ、そのような行動をとるのでしょうか。
試し行動をする子供の心理や原因を、親と子の間で共有していきましょう。
目次
- 試し行動をする子供の特徴
- 自分の安全基地や愛情を探る行動が試し行動
- 自己主張との違い
- 試し行動をする子供の心理とは
- 愛着形成の途中や親の態度に混乱している子供の場合
- 虐待を受けた子供や里親に養子縁組した子供の場合
- 試し行動を放っておくとどうなる?
- 子供は「どうせ自分なんて」と否定的になる
- 試し行動→混乱→試し行動のループが続いた場合
- 子供の試し行動と上手に向き合う方法
- 子供に「あなたは大切な存在である」ことを伝える
- 子供の全てを受け止めるのは危険
- まとめ
試し行動をする子供の特徴
自分の安全基地や愛情を探る行動が試し行動
子供の試し行動という言葉、聞いたことはあっても、具体的にどのような行為が試し行動になるのか、判断しにくいかもしれません。
試し行動をする子供の特徴を、いくつかあげてみます。
- 親の見ている前でいたずらをする。
- 怪我をしたときに大げさに痛がる(赤ちゃん返りのような行動)
- 何を言っても反抗して「イヤだ」と言う
- 親の言うことと反対の行動をとる(天邪鬼のような態度) ※1、2
子供は、親や周りの大人から自分が一人の人間としてどれだけ愛されているのかを探ろうとし、自身がとった行動が大人たちにどこまで許されるか、どんな反応を示すのかを試します。
悪いことだと理解していながら困らせるような行動をとってしまうのです。
また、入園入学の時期や、下の子が産まれるなどの環境の変化があった際は、大人たちを自分にとっての安全基地であるかどうかを確認するために、試し行動をとる場合もあります。 ※2、3
自己主張との違い
自己主張するための行動と試し行動は似ていますが、子供の心理状態に違いがあります。
たとえば、2歳前後から起こるイヤイヤ期での反抗や駄々をこねるなどの行為は、「自分でできる」「こうやりたい」という意思や感情を持ち始めた、自我の芽生えから起こる自己主張です。
また、自己主張がだんだんと強くなる一方、言葉による自己表現がまだ上手にできない時期なので、感情をあらわすために物を投げたり、気持ちが伝わらないイライラからかんしゃくを起こしたりしてしまうこともあります。 ※4
思春期※になると、アイデンティティを確立するために、さまざまな葛藤を繰り返します。
子供は一人の大人として認めてほしいという欲求により、親に対して反発することがあります。
その気持ちが、天邪鬼のような態度や八つ当たり、無視などの行為として現れます。 ※5
このように親が困る問題行動が全て試し行動になるわけではありません。
そのときの子供がおかれている状況を考慮して、注意深く子供の様子や状態を見ることが大切です。
※思春期:心の発達の面では、小学校高学年から高校生くらいまでの時期で、個人差があります。 ※5
※1 日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 5 2011 児童養護施設職員が被虐待児とのかかわりを進展させるプロセス / 2020年5月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/34/5/34_20110729012/_pdf
※2 全国里親委託等推進委員会 里親 ファミリーホーム 養育指針ハンドブック 里親手引き 5子どもの行動の理解と援助 / 2020年5月29日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/working2-08.pdf
※3 トマス・ゴードン著 1998年1月発行 親業 子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方 大和書房
※4 今井和子著 2016年8月第1刷発行 見えてますか?子どもからのシグナル0歳児から5歳児 行動の意味とその対応 小学館
※5 厚生労働省 e-ヘルスネット 思春期のこころの発達と問題行動の理解 / 2020年5月29日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-002.html
試し行動をする子供の心理とは
愛着形成の途中や親の態度に混乱している子供の場合
なぜ子供は試し行動をとってしまうのか、その心理を探っていきましょう。
例えば、親がスマホばかり見ていて子供と向き合えていないとき、子供は困らせるようなことをして親の気を引きます。
そして、怒られるだけなのか相手をしてくれるのかと親の反応を試し、自分の求める愛情と親から与えられる愛情が同じなのかを確かめます。 ※4
つまり子供は、「ママやパパは私(僕)のこと好きなのかな?」と不安に感じたり、「ちっともわかってくれない」と不満を抱いたりすると、親に振り向いてもらえるように行動にでます。 ※4
泣いたり、甘えたりしながら、親がどれだけ自分に愛情を注いでくれるのか、自分がどれだけ大切にされているのかを確認して安心したいのです。
愛情や人の気持ちは形のあるものではないので、目で見て確かめることができません。
ですから、悪い行為だと理解していても、親の反応を目で見て愛情を確認したくなるのです。 ※4
それから、親の態度に子供が混乱しているときもあります。
例えば、子供が「まだご飯食べたくない」と言った場合、子供の意見や要求をできるだけ受け入れようとして「それじゃ、まだ食べなくていいよ」と答えたとします。
けれども親の本心として早く片付けたいという欲求があるとき、イライラが顔や態度に出てしまいませんか。 ※3
子供は親の言葉の受け入れと態度による拒否の両方を感じ取ります。
ママは「いいよ」と言って自分の要求を受け入れてくれたけど、怒っているみたいだから本当は嫌なのかな?どうすればいいんだろう?と、子供は混乱します。 ※3
このような矛盾した状況が度重なると、「ママは嘘を言っているから自分は愛されてないのかな」と考えるようになります。
そして、心が不安定になり、親の愛情を確認しようとさまざまな試し行動を起こすようになります。 ※3
虐待を受けた子供や里親に養子縁組した子供の場合
愛情の確認や信頼関係を築くために、虐待を受けてきた子供や里親の元で生活をする子供が試し行動をとる場合もあります。
虐待を受けて育った子供の多くは、幼い頃の親子の愛着関係が確立されないまま成長してしまいます。
スキンシップや大切にされる経験よりも、暴言や無関心などの環境に置かれ、愛情を受け取る経験が極端に少ないため、子供にとっての安全基地の基盤は不安定なままなのです。
自分は人間として受け入れられていないと感じ、人を信用できずいつも不安な気持ちを抱えてしまう子供もいます。 ※1、5
このような心理状態の場合、人と関りを持つような状況になるとわざと反抗的な態度や言葉を言ったりして相手の反応を探ろうとします。
どこまで自分の行動を許し受け入れてくれるのか、一人の人間として大切にしてくれるのかを試しているのです。 ※1
また、里親の元で暮らす子供は、新しい家族に迎えられ共に生活をすることになります。
この人たち(里親家族)を信用して大丈夫なのだろうかと、大きな環境の変化からの不安が生じています。
子供によっては、自分は実親から見放された人間だから、里親に対しても「自分はよそ者」という気持ちを抱くこともあります。
だからこそ、本当に自分は快く受け入れられているのかと不安なのです。 ※2、6
里子になる子供の多くは、虐待経験や信頼関係を築いた人たちとの別れの経験があるため、心に深刻なダメージを負っています。
そこへさらに環境の変化も加わるのです。
こうした背景から、赤ちゃん返りや否定的な態度など、信頼関係や相手の受け入れを試す行動に出てしまうのです。 ※6
試し行動をとる子供たちの心理の共通点は、「大切にされているのか」「どこまで許されるのか」を確認しているといえるでしょう。
※1 J-STAGE 児童養護施設職員が被虐待児とのかかわりを進展させるプロセス / 2020年5月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/34/5/34_20110729012/_pdf
※2 厚生労働省 里親手引き 5子どもの行動の 理解と援助 / 2020年5月29日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/working2-08.pdf
※3 トマス・ゴードン著 1998年1月発行 親業 子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方 大和書房
※4 今井和子著 2016年8月第1刷発行 見えてますか?子どもからのシグナル0歳児から5歳児 行動の意味とその対応 小学館
※5 友田明美 藤澤玲子著 2019年2月発行 虐待が脳を変える 脳科学者からのメッセージ 新曜社
※6 公益財団法人全国里親会 里親及びファミリーホーム養育指針
試し行動を放っておくとどうなる?
子供は「どうせ自分なんて」と否定的になる
親としては困ることが多く悩ましい試し行動。
もしも理解を示さずにいたらどうなってしまうのでしょうか。
子供のとった行動に対して、「ちゃんとしなさい、悪い子ね!」と頭ごなしに感情的に怒ったり、子供の反抗的な態度を無視したりしていませんか。
このようなことが繰り返されると、次第に「自分はダメな子」「嫌われている」と考えるようになります。
このネガティブ思考は徐々に子供の心に広がっていき、いつの間にか自分に自信のない自己肯定感の低い子供になるでしょう。 ※7
すると子供は、「どうせ上手くいかない」と自分の力を過小評価するようになり、「自分なんて」と自己を否定してしまいます。
そして、周囲との関わりを「ウザイ」と感じ、他者や物事を受け入れなくなってしまうのです。 ※7
自己肯定感の高い子供は自信に満ち溢れ、新しいことにも挑戦していこうとしますが、反対に自己肯定感の低い子供は失敗を恐れ、自分が傷つくことや嫌な事を避けるようになります。
また、周囲を「ウザイ」と思ってしまうと、協調性に欠け、思いやりの心が育ちにくくなります。
その一方で人間関係のトラブルが起きると、「どうせ自分なんて」と敏感になりすぐに落ち込む傾向があります。 ※7
試し行動→混乱→試し行動のループが続いた場合
試し行動の心理状態で述べたように、子供は親の一致しない行為に混乱して、どうすれば愛されるか(受け入れられるか)をあれこれと試すようになります。
試し行動が子供の混乱から引き起こされていることに気付かず、子供の全てを受け入れて自由に育てようと空回りします。
その結果、本音を隠してうわべだけの受容を続けます。
言葉では受容したり黙認したりしているのですが、態度や雰囲気が否定的な状態です。
それを見て子供はさらに混乱し、また試し行動をするようになります。 ※3
そしてこのループが長い間続くと、親子の間に溝ができてしまうでしょう。
子供を想う親の気持ちとは裏腹に、子供は「口ではいいよって言っているけど」と言葉と本心が違うことを学び、親の正直な気持ちや率直さを疑ってかかるようになってしまうのです。
表面上は良いママ(パパ)を演じているけど、本当は自分のことは嫌いなんだと考えるようになり、親に対して不信感をつのらせてしまいます。
親は自分のことを心から受け入れていないと判断し、「だったら何を言ってもムダ」と距離を置くようになります。 ※3
両者が本音で語り合えなくなると、子供が抱える問題に気づくことができなくなります。
もし気づいたとしても、子供は自分の気持ちや考えを正直に話さなくなるでしょう。
その結果、子供が悩みやピンチに直面したときに、親として手を差し伸べ知恵を与える関係性を築いていけなくなり、子供の力になれるチャンスを逃してしまいます。 ※3
※3 トマス・ゴードン著 1998年1月発行 親業 子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方 大和書房
http://www.daiwashobo.co.jp/book/b89923.html
※7 石田勝紀著 2018年7月第1刷発行 子どもの自己肯定感を高める10の魔法の言葉 集英社
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-780842-1
子供の試し行動と上手に向き合う方法
子供に「あなたは大切な存在である」ことを伝える
試し行動と上手に向き合うことで、親子の愛情を育み、楽しく子育てができたら最高ですよね。
そのためには、まずは抱っこやマッサージなど身体に触れるスキンシップを、子供が拒否を示さない限り心がけるようにしましょう。
スキンシップからは安心感と信頼感が生まれます。※4
問題行動に対しては、なぜそうしたのか子供の気持ちを理解するように努めながら、話を聞いてあげます。
子供と向き合う時間を取るようにしましょう。
普段の生活の中で、子供に感謝の言葉を伝えるように意識するのも良いです。
「ありがとう」や「嬉しい」と言葉で、親から感謝されて(受け入れられて)いると感じ、子供の心は満たされます。 ※7
そして、「あなたは大切で大事な存在」というメッセージを日常的に送りましょう。
思春期で無視されても、「いってらっしゃい」「おかえり」など、シンプルでもいいので言葉にしましょう。
言葉にすることで、親の大切なメッセージは少しずつ子供に伝わるでしょう。
これらは言語が理解できない小さな子にも効果的な方法です。
子供との関わりに、決まったパターンはありません。
スキンシップを求める子供もいますし、大人が嘘をつかないことを求める子もいます。
話をじっくり聞いてあげるだけでも、子供の心が満たされることもあるでしょう。
大事なのは、子供が求めることを親が理解しようとしているか、です。
個々の性格や成長過程に合った関わり方を、意識していきましょう。 ※1
子供の全てを受け止めるのは危険
とはいえ、いくら子供が親の愛情を欲しがっているからといって、子供の言いなりになり、言動の全てを受け入れるのは良くありません。
善悪の区別がわからない子や、わがままな子になる危険性があります。
親にとって不快に感じることやしてほしくないことは、きちんと伝えましょう。
例えば綺麗にした部屋を散らかす、ゆっくり休みたいときに騒ぐなどです。
そのときも、子供の気持ちを理解して肯定したうえで、「ママはこんな気持ちになる」ということを伝えます。
子供は自分を受け入れてくれてはいるけど、自分の行動が大好きな親を悲しませる、不快にさせてしまうということに気づきます。 ※3
そして、解決策を一緒に考え、お互いが納得できるようにつとめましょう。
相手を思いやる気持ちが親子の愛情を深めることとなるでしょう。 ※3
また、公共の物を壊す、人に乱暴するなどモラルに反することをしたときも、毅然とした態度で叱ることも大切です。
注意は促すように諭す、叱るときは本気の覚悟ですることで、メリハリを持たせます。
すると子供は、自分のことを真剣に考えてくれていると感じるでしょう。
叱った後は抱っこをしたり、言葉で大切な存在であることを子供に伝えましょう。 ※1、4
※1 J-STAGE 児童養護施設職員が被虐待児とのかかわりを進展させるプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/34/5/34_20110729012/_pdf
※3 トマス・ゴードン著 1998年1月発行 親業 子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方 大和書房
http://www.daiwashobo.co.jp/book/b89923.html
※4 今井和子著 2016年8月第1刷発行 見えてますか?子どもからのシグナル0歳児から5歳児 行動の意味とその対応 小学館
https://www.shogakukan.co.jp/books/09311417
※7 石田勝紀著 2018年7月第1刷発行 子どもの自己肯定感を高める10の魔法の言葉 集英社
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-780842-1
まとめ
子供は、大人以上に周囲のできごとや大好きなママやパパのことを見ています。
そして不安や恐怖に敏感な心を持っています。
だからこそ、試し行動で親の愛情を確認してみたり、どこまでが許させるのかを試してみたりするのです。
子供が試し行動をするのは当たり前と心得て、親はしっかりと子供と向き合うことが大切です。
繊細な子供の心を親の愛で満たしてあげることが、子供を強くたくましく成長させることに繋がるのではないでしょうか。