過保護のつもりが過干渉?!子供の成長段階に合わせた保護のやり方を考えよう。

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過保護という言葉にはあまり良いイメージを持たないかもしれませんが、親にとってみれば、子供はいつまでも守るべきもの、保護すべきものです。
小さな頃に過剰な保護を受けた子供は、ある時期になると自然と自立していきます。
子供にとって保護は必要なものなのです。
でも、保護のやり過ぎや、親の考えだけで保護することは禁物。
親が保護のつもりで行う行為は、気付かないうちに過干渉にもなってしまうのです。

目次

  1. 過保護の意味を考えよう
    • 過保護とは
    • よく似た言葉、過干渉との違い
  2. 過保護は親の行動をこう変える
    • 最近話題のヘリコプター・ペアレント
    • 過干渉な親ほど本当子供の姿を見ていない?
  3. 過保護と過干渉を取り違えると、子供の将来も変えてしまう?
    • ヘリコプター・ペアレントに育てられた子供
    • 正しい過保護、間違った過保護
    • 過保護が正解な時期と不正解な時期がある
  4. いつまでも過保護な親にならないために
    • 幼児期の接し方
    • 学童期の接し方
    • 思春期の接し方
  5. まとめ

過保護の意味を考えよう

過保護とは

過保護という言葉に、みなさんはどのような印象をお持ちでしょうか。
どちらかというと、過保護はよくないもの、マイナスのイメージがあるかもしれません。
親がいつまでも子供を守り、保護すべきなのは当然のことですが、保護が行き過ぎる、つまり過保護で育てると、子供を甘やかしてしまうのではないか、子供の成長が遅れるのではないかなどの心配を抱く方も多く見られます。※1、2
しかし、必ずしもそうではありません。
今一度、過保護の意味を考えてみましょう。
過保護とは、子供に「保護」を与え過ぎること、子供が望んでいることを、子供が望む通りにやってあげ過ぎてしまうことです。※1
いかがでしょう?ご自身にあてはまりますか?
それとも「ほらやっぱり、過保護って良くない」と思われますか?
「子供の望むことをやってあげ過ぎる」ことは、意外とできていない方も多いのではないでしょうか。
子供が「お母さん、○○一緒にしよ~」と言ってきても、仕事が忙しかったり、家事に追われていたりして、「今お母さん忙しいから、また今度ね」などと言って、子供の願いに応えられていないことはよくあることです。
ある程度大きくなった子供が、「お母さん抱っこして~」と来たら、すぐに抱っこしてあげられますか?
もう大きくなって重くなっていますし、抱っこなんて恥ずかしいよと言う親もいます。※1、2
逆に、自分は過保護なのではないかと心配している方、子供を過保護に育てすぎて失敗したなと思っている方もいるでしょう。
でも本当に自分は、子供が望むことをやってあげ過ぎている過保護な親なのでしょうか?※1

 

よく似た言葉、過干渉との違い

過保護と一緒によく出てくる言葉に、過干渉という言葉があります。
大きな違いは、過保護子供が望むことをやってあげ過ぎることだったのに対し、過干渉子供が望んでないことをやってあげ過ぎることです。※1
親が子供に望むことをやり過ぎてしまっている、つまり子供が望まないことにも関わらず親の想いだけでやり過ぎてしまうことです。
そうなると、子供は自分を出しにくくなってしまうのです。※1
それなら、子供が望まないことはやらなくて良い、やらせなくて良いかというと、そうではありません。
例えば、子供が勉強したくないから宿題をやらなくて良い、あるいは野菜が嫌いだから肉しか食べないなというわけではないように、最低限必要なことは、教えていく必要はあります。※1、2
過保護と過干渉はどちらも子供にやってあげ過ぎることでは同じですが、子供が望んでいるかいないかという点が大きく違います。
本来なら対局にあるべきもの、という考え方が正しいといえます。※1
しかしながら、過保護と過干渉が同一の言葉として使われることが多いのはなぜでしょうか。
それは、親の方に「干渉している」という意識が無いからと考えられます。※1
過保護だと思っていたことが、実は過干渉だったということもあります。
過保護、過干渉の意味をしっかり理解することが必要です。※1

 

※1 佐々木正美(著) 杉浦正明(編) 2002年7月発行 過保護のススメ 小学館
https://books.rakuten.co.jp/rb/1459978/
※2 河合隼雄(著) 2005年7月発行 過保護なくして親離れはない 五月書房
https://www.amazon.co.jp/%E9%81%8E%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%97%E3%81%A6%E8%A6%AA%E9%9B%A2%E3%82%8C%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84-%E6%B2%B3%E5%90%88-%E9%9A%BC%E9%9B%84/dp/4772704272

過保護は親の行動をこう変える

最近話題のヘリコプター・ペアレント

子どもの上をつねにヘリコプターのように旋回して見張っている親、ヘリコプター・ペアレントという言葉をご存知でしょうか。※3
この言葉を作った人物は、親と子の心の結びつきに精通するアメリカの精神科医フォスター・クラインと、子育てや子供を伸ばす躾に詳しい教育のプロであるジム・フェイです。
彼らは、子供の行動を監視し、先回りして何でも準備してしまうような親たちを、子供の上を常に旋回するヘリコプターに見立てたというわけです。※4
では、ヘリコプター・ペアレントを日本語にするなら、過保護過干渉どちらが適切でしょうか
仮に、子供が「常に監視してほしい、先回りして準備してほしい」と考えているならば、これは過保護になるでしょう。
子供がまだ小さく、自分で身の回りのことをするのが難しいのならば、保護者としての親の責任になるのかもしれません。※4
しかしこれが、大学生や社会人になる年齢ならどうでしょうか。
本来、子供はその年齢になれば自立し、自分のことは自分でする、自分の将来は自分で決めるという年齢のはずです。
こう考える子供にとっては、過干渉になってしまいます。
一方でその年齢になっても親の監視や先回りした行動を望む子供は、自立しているとはいえません。
つまり、自立した子供を育てるという親の責任とは、対極の状況になってしまうのです。※4

 

過干渉な親ほど本当子供の姿を見ていない?

現在の日本に目を向けてみましょう。
乳幼児くらいの子供であれば本来、家の中から外の世界を知る時期です。
友達と遊んだり、習い事などで好きなことを自由にしたりすることは素晴らしいですし、親としてそれを見守ることは必要です。※1
しかし、集団生活にも慣れ、自分の考えを持てるようになったはずの年齢でも親は干渉し過ぎていないでしょうか。

  • 学校や習い事の送り迎えをいつまでも続ける
  • 子供同士の外出でも状況を逐一知りたがる
  • 学芸会で子供の配役に口を出す

子供は、これらを本当に親に望んでいるのでしょうか。※4
例えば、友達同士で学校や習い事に通うことも、自我が出てきた子供にとってはやりたいことかもしれません。
もちろん、親として学校や習い事への道中を心配する気持ちは分かります。
でもそれならば、安全に通う方法を子供に教えることも、必要なのではないでしょうか。※4

 

※1 佐々木正美(著) 杉浦正明(編) 2002年7月発行 過保護のススメ 小学館
https://books.rakuten.co.jp/rb/1459978/
※3 CS研レポートVol.61 特別支援教育実施から1年―その課題と問題点―  / 2020年6月30日閲覧
https://shinko-keirin.co.jp/keirinkan/csken/pdf/61.pdf
※4 ジュリー・リスコット・ヘイムス (著) 多賀谷正子、菊池由美(訳) 2018年9月発行 大人の育て方 子どもの自立心を育む方法 パンローリング
https://books.rakuten.co.jp/rb/15588393/

過保護と過干渉を取り違えると、子供の将来も変えてしまう?

ヘリコプター・ペアレントに育てられた子供

親が過干渉、つまりヘリコプター・ペアレントだった場合、子供はいくつになっても自ら行動ができません
今まで親がすべてを先回りしてくれたので、その方が楽なのです。※4
そして、お友達との距離、周囲の人との距離を上手くつかむのも、難しくなるでしょう。
そもそも、親が自分の行動を信頼しない、自分に頼ってくれることが無いわけですから、自分も人を頼ることができません。
親へは頼っているのでなく、依存しているのです。
結局のところ、常に子供の行動にも目を光らせているのは、親が他人を信頼していないからです。
すると、子供も誰かを信頼することが出来なくなってしまいます。※4

 

正しい過保護、間違った過保護

過保護にも正しい過保護と間違った過保護が存在します。
過保護の方法を取り違えると、子供の将来も変わってきます。
・正しい過保護
子供が望むことを思い通りに叶えてあげることです。
例えば、小学生になっても母親の膝の上に乗りたがる子供を、親は拒否することなく乗せてあげることです。※1
子供が真に満足すれば、子供はそれ以上の要求をしなくなっていきます。※1
・間違った過保護
子供が本来望んでいないのに、親がやり過ぎてしまうことであり、要は過干渉と同じなのです。
例えば、習い事に通うのに、我が子だけを車で送り迎えすることです。
これは、友達との関係を邪魔し、人との関わり方を学ぶ機会を失っていると言えます。※1
子供の愛情要求にすべて応えることは正しい過保護ではありますが、ワガママをすべて聞くこととは違います。
もちろん、子供が物やお金が欲しいと言うから与えるということでもありません。※1
線引きが難しいところではありますが、「子供の安全・安心欲求に応える」ことは正しい過保護と考え、ワガママを通すことは間違った過保護と考えると良いのではないでしょうか。※1

 

過保護が正解な時期と不正解な時期がある

親は子供が何を望んでいるかをしっかり見極め、成長にあわせた保護をすることが必要です。

 

  • 幼児期

幼児期は、過保護すぎるぐらいでも良い時期です。※1
幼児期は子供が望むことが一番多い時期です。
子供にとって初めての○○も多く、親の助けを必要とします。
この時期の子供は頻繁に母親とスキンシップを取りたがりますし、一人でのお着替え、お友達作りなども初めての経験です。※1
親からの「守られている」という安心感が、子供の成長を伸ばしていきます。※1

 

  • 学童期

学童期は、過保護と保護の境目の時期と言えます。※1
小学校に入り、初めての勉強を好きになるかどうかは、親と子供の関わり方が影響してきます。※1
また、学校に慣れてくると、自分の気の合うお友達と過ごす時間がとても楽しくなってきます。
子供にとって友達は宝です。※1

 

  • 思春期

思春期は、保護への依存から自立へと変わっていく時期です。
それまでに十分に親に依存し、親からの正しい過保護で育ってきた子供は、自然と自立を目指すようになります。
逆に、それまでに十分に親に依存できず、正しい過保護で育ってこなかった子供は、自分に自信が持てないため、自立が難しくなります。※1

 

※1 佐々木正美(著) 杉浦正明(編) 2002年7月発行 過保護のススメ 小学館
https://books.rakuten.co.jp/rb/1459978/
※4 ジュリー・リスコット・ヘイムス (著) 多賀谷正子、菊池由美(訳) 2018年8月発行 大人の育て方 子どもの自立心を育む方法 パンローリング
https://books.rakuten.co.jp/rb/15588393/

いつまでも過保護な親にならないために

幼児期の接し方

幼児期は、子供が望むことを、出来る限り叶えてあげましょう。※1
子供が抱っこをして欲しいと願うなら抱っこしてあげる、遊んで欲しいと願うなら一緒に遊んであげてください。
家族の誰かに代わりを頼むのではなく、親がやってあげることが大事です。※1
ただし、躾や自由との違いをしっかりわきまえて行動しましょう。
病院など、静かにするシーンで騒ぐことはやってはいけないことですよね。
子供のやって欲しいことが環境状況などの理由でできない場合もあります。
その時は子供にきちんと理由を説明し、必ず後から叶えてあげましょう。※1
子供といる時間が長い幼児期こそ、親が子供にしてあげる機会はたくさんあります。
子供の望むことを叶えてばかりいると、いつまでも親を頼りつづけるのではないかという心配は無用です。
満足した子供は、自然と離れていきます。※1

 

学童期の接し方

幼児期に親にべったりだった子も、周りの状況を見ながら、自分の行動を考えるようになります。※1
親からの愛情を十分に受けた子供は、自然と離れて、自立しようとします。※1
親への安心感が十分あるならば、友人や教師など周りの人とも良い関係が築いていけます。※1
子供が勉強について分からないと言ってきた時は、学校に任せるのではなく、親も一緒になって「分からない」を考えてあげてください。
親のちょっとした導きで、すらっと解けてしまうこともあります。
勉強は、叱られながらやると嫌いになってしまいます。
できたことを褒めて、「これが出来たんだから次もできるよ」と声を掛けてあげるとやる気が出ます。
子供の能力を引き出すのは、親の声かけなのです。※5
友達と習い事や塾に行きたいと言ったなら、友達と行かせてあげましょう。
もちろん安全性を確認する必要はありますし、最初の1回は一緒に行くのも良いでしょう。
友達との時間は子供にとってとても楽しい時間です。
友達から学ぶこともたくさんあります。
友達から教わったり、友達に教えたりと、人を頼り、人から頼られることを繰り返しながら、子供は成長していきます。※1

 

思春期の接し方

思春期は、親と子供との関わり方が難しいと言われる時期ですが、思春期の特徴を理解できれば、そう難しいものではありません。
思春期の子供は自分を見つめ直し、自分を作っていく時期です。※6、7
自分で考えて決めたいという気持ちが強くなり、親の先走った行動にイラっとします
子供の自立のためには、親はそっと見守ること、子供を信じて待つことが大切なのです。※4、6、7
親に言われなくても、自分の将来のことを少しずつ考え始めていきます。
進路や就職も最終的に決めるのは子供でなくてはいけません。
親の引いたレールだけを歩かせてはダメなのです。
子供の意思を尊重しましょう
自分で決めたことなら、多少の苦難もきっと乗り越えて前へ進んでいけるはずです。※4
もちろん、子供が悩んでいる時や親を必要としてきた時はじっくり子供の話を聞き、手を差し伸べてあげてください。
親という安心できる存在があるからこそ、子供は成長し、自立していけるのです。※4、6、7

 

※1 佐々木正美(著) 杉浦正明(編) 2002年7月発行 過保護のススメ 小学館
https://books.rakuten.co.jp/rb/1459978/
※4 ジュリー・リスコット・ヘイムス (著) 多賀谷正子、菊池由美(訳) 2018年8月発行 大人の育て方 子どもの自立心を育む方法 パンローリング
https://books.rakuten.co.jp/rb/15588393/
※5 星一郎(著) 2009年10月発行 アドラー博士が教える子供を伸ばすほめ方、ダメにするほめ方 青春出版社
http://www.seishun.co.jp/book/10909/
※6 尾木直樹(著) 2016年8月発行 尾木ママの「思春期の子どもと向き合う」すごいコツ 講談社
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000212425
※7 深尾憲二朗(著) 2018年8月発行 思春期:少年・少女の不思議のこころ (思春期のこころと身体Q&A) ミネルヴァ書房
https://www.minervashobo.co.jp/book/b373380.html

まとめ

幼児期の過保護は決して悪いことではありません。
むしろこれから先の子供の成長に大きな影響を与える、必要不可決な対応方法です。
しかし、子供が自立した大人になるためには、子供の成長段階に応じた保護の仕方があります。
幼児期に必要な保護と、思春期に必要な保護は意味が変わってきます。
いつまでも過保護では、子供は成長できません。
子供が「今何を望んでいるのか」を見極めていくことが必要なのです。

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