一人っ子って、ホントにわがまま?一人っ子の性格は育て方で大きく変わる
皆さんは一人っ子にどのようなイメージを持っていますか?
「一人っ子はわがままだ」というネガティブなイメージを持たれる方、あるいは周りからそう言われて育った方が多いのではないでしょうか。
しかし、本当に一人っ子はわがままに育ってしまうのでしょうか?
ここでは、ネガティブイメージである「一人っ子=わがまま」について考えてみましょう。
目次
- 一人っ子の増加の要因
- 少子高齢化が進んだ現代
- 考え方の変化
- 一人っ子の生活
- 一人っ子の生活とは
- 一人っ子の家庭環境
- 叱らない子育ては甘やかすではない
- 叱らない子育てを勘違いしてはいけない
- 叱らない子育てで育った子供の性格はどうなるか
- 一人っ子をわがままと言わせないために
- 我が子をわがままにさせないために
- 一人っ子はわがままという偏見に負けない
- まとめ
一人っ子の増加の要因
少子高齢化が進んだ現代
1940年代から70年代は第一次ベビーブーム・第二次ベビーブームが起こり、兄弟がいるのが当たり前という社会でした。
近所の子供たちと分け隔てなく遊び、集団を束ねるリーダー(ガキ大将)が近所の子供たちの親代わりのような役割をして、子供たちは貧しくてもたくましく独自の社会を築いていた時代です。
一方、当時の一人っ子は、周囲に比べると経済的に恵まれていた可能性もあります。
おもちゃやおやつ、食事などに不自由することもなく、また兄弟間の争いもなく両親を独り占めでき、両親や祖父母の愛情がその子だけに注がれるので、「甘ったれ」「わがまま」「遊び相手がいなくて可哀そう」など偏見の目で見られていたようです。※1、2
ところが、1977年頃から一人っ子家族が増加の傾向となり、近年では出生率の低下とは反比例するように、一人っ子が急増しています。
しかし、一人っ子が増えてきているにも関わらず、昔からの偏見はそう簡単に払拭されるものではありません。
中には、ネガティブなイメージを持たれている一人っ子家庭もあるのではないでしょうか。※2、3
考え方の変化
では、なぜ一人っ子が増えてきているのでしょうか。
これには女性の考え方の変化や社会全般の変化が関わっていることが関係しています。
キャリアウーマンと呼ばれる女性が社会へ進出するにつれ、男女平等が重視されるようになりました。
そして、女性の考えや意見を述べることが社会的に受け入れられるようになり、「女性は家庭に入り・家事・子育てに精を出す」という考え方が古いものとなってきています。
そのような背景から、仕事も家庭も子育ても全力投球で幸せな日々を送るために「我が家は子供が1人でも十分幸せ」と考える人が、増えてきたのではないでしょうか。
また、社会で活躍する女性は、仕事に一所懸命であり仕事が生きがいと頑張っている人も多く、晩婚、高齢出産となる傾向にあるため、結果として「一人っ子家族」になることもあるでしょう。
加えて、保育園の待機児童問題や教育費の問題など、社会の子育て環境の不安定さ、家庭の経済的な理由を考慮し「1人の子供に愛情をかけて育てる」とする考え方もあるでしょう。
さらには、病気など何かしらの理由で1人しか産めないという場合もありますし、核家族化が進み祖父母や親せきなどから子育ての援助が受けにくい環境であることも、関係していると考えられています。※1、3
※3 国立社会保障・人口問題研究所 第Ⅱ部 夫婦調査の結果概要:第2章夫婦の出生力 / 2019年9月27日閲覧
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/report15html/NFS15R_html07.html#h3%202-2-1
※1 7歳までに知っておきたい!「一人っ子」の育て方 和田秀樹 著 2013年12月31日 株式会社学研パブリッシング
※2 一人っ子を伸ばす母親、ダメにする母親 松永暢史 著 2009年6月2日 株式会社アスコム
一人っ子の生活
一人っ子の生活とは
ネガティブな偏見の目で見られてしまいがちな一人っ子の生活とは、一体どのようなものなのでしょうか。
一人っ子の家庭は、二人、三人と子供を持つ人や高齢の方から「1人じゃ寂しいんじゃない?」と聞かれることが多々あるようです。
すると、一人っ子の親(特に母親)は罪悪感を抱えて悩んでしまう方もいるでしょう。
しかし、当の本人は兄弟のいない生活が当たり前であり「寂しい」と感じることはないのだそうです。
小さな頃から子供が一人という環境で育つと、一人遊びが上手になることもあります。
むしろ、いつでも両親が自分の話に耳を傾け答えてくれるので、精神的に満ち足りているという捉え方もあります。
一方で、一人っ子としての生活が長いため、単独行動になってしまいがちなところもあるようです。
何でも一人でやろうと考えると、どうしてもできる範囲が限られてしまい、結果的に「自分ができる範囲でやろう」という発想になり、それで満足してしまう、ということです。
このような場合は、皆と協力して物事を進めるとより良いものが出来上がるという経験を、親子で体験してみると、お友達とも協力していけるようなるかもしれません。
また、多人数でのコミュニケーションでは理不尽な問題が起こることがあります。
例えば、兄弟がいれば「お兄ちゃんだから我慢して」と、理不尽だけれども従わなくてはならない場面があります。
また、兄弟間の喧嘩など、たびたび起こる理不尽な経験や、自分とは違う意見に触れる機会が日常茶飯事です。
一方の一人っ子はこうした機会が少ないため、理にかなっていないことを受け入れるのが苦手です。
しかし、集団生活を始めるようになると、こうした場面はたくさん生じます。
小さな頃から引くときは引くという、協調性を育てることも必要です。※1、4
一人っ子の家庭環境
一人っ子の家庭環境を見ると、経済的に比較的恵まれていることが多いようです。
「一人っ子は六つの財布を持つ」と言われるように、両親、父方母方の祖父母からの愛情が注がれるのです。
そのため、習い事や衣食住、おもちゃやゲームに困ることは少ないようです。
両親や周囲の大人から沢山の愛情を受けて育つので、自己肯定感が育まれ、自信に満ちた子供に成長していくでしょう。
しかし、言われるがままに何でも買い与えたり、身の回りのお世話などを先回りしてやってしまったりなど、間違った愛情を注いでしまうと、それらが当たり前になってしまい、欲しいものが手に入らないとしつこく駄々をこねる子供になりかねません。
また、大人に囲まれた環境の中で常に受け身でいると「人と分け合う」「分かち合う喜び」を知らずに育ってしまい、協調性のないわがままな子へと成長することも考えられます。
「ママも使いたいから、一緒に使わせてくれたら助かるな」「これ、パパも好きだから半分こしたら喜ぶよ」など、相手のことを考えられるようなシチュエーションを作ってあげましょう。
反対に「一人っ子だから」という偏見を気にするあまり、とても厳しくしつけられる一人っ子もいます。
甘やかしてはいけないと厳しくしすぎて十分な愛情が注がれずに育つ子供は、一人っ子でなくても自己肯定感の低い子になり、健全な自己を創り上げていくことができません。
仮にわがままな子にはならないとしても、自分の考えを表面化できない頼りない子になってしまうでしょう。
愛情の量が多すぎてわがままな子になるのではなく、愛情の質がポイントなのです。※1、2、4
※1 7歳までに知っておきたい!「一人っ子」の育て方 和田秀樹 著 2013年12月31日 株式会社学研パブリッシング
※2 一人っ子を伸ばす母親、ダメにする母親 松永暢史 著 2009年6月2日 株式会社アスコム
※4 一人っ子をグングン伸ばすママがしていること 子育てネット 著 2010年6月1日 大和書房
叱らない子育ては甘やかすではない
叱らない子育てを勘違いしてはいけない
子供は厳しく叱り、しつけて育てるという子育て論から、叱らない子育て論が提唱されるようになりました。
しかし、この叱らない子育てを勘違いして実践している方も少なくないようです。
例えば、他の子を蹴飛ばしても「○○ちゃんダメよ~」というだけで叱らない、公共の場で騒いだり物を壊したりしても「子供のやったことだから」と子供本人には注意しないなど、「叱らない子育て」を「しつけをしない育児」と勘違いしているのではないでしょうか。
十分な愛情を注ぎ甘えさせることは、子供の成長にとってとても大切なことです。
近年では、たっぷり甘えさせてもらい豊かな愛情を受けて育った子供は、心身共に健全な素直で自己肯定感のある人になると言われてきています。※4
しかし、「甘えさせる」と「甘やかす」は違います。
甘えさせるというのは子供の要求に対しできるだけ快く応じてあげることです。
甘やかしは、おもちゃや欲しいものを買い与えその後は放っておくことです。
モノを与え静かに1人遊びをさせて、その横で親はスマホに夢中になっていては、いくら長時間一緒に居ても子供は親に放っておかれているのと同じです。
これらの勘違いは一人っ子に限ったことではありませんが、一人っ子の親の方が「大切なたった一人の我が子」という点で、勘違いしやすいのかもしれません。※1、5
自分自身に置き換えてみましょう。
例えば、自分の夫に話かけても何だか投げやりな言葉しか返ってこなかったらどうでしょうか。
もちろん時と場合にもよりますが、多くの場合妻はイライラしますし、夫婦喧嘩に発展する可能性もあります。
これは、子供も同じなのです。
相手が自分のことを考えてくれない、自分の気持ち寄り添ってくれないということは、相手にとっての自分の価値が低いといわれていることと同じなのです。
叱らない子育てで育った子供の性格はどうなるか
叱るとは本来、手短に教えること、しつけることです。
子供やお友達に対して危険が及びそうな時や怪我をしそうな時には、ビシッとした口調で危険な行動を止めることです。※1、4、5
叱らない子育てを間違って解釈し「甘やかす」「何をしても許す」という育て方をしていると、子供はわがままな子になります。
何をしても許されるのですから当然の結果です。
このような子育て法はわがままな子を作り上げるだけではありません。
しても良いことと悪いことの区別、社会のマナーやルールを知らずに育った結果、次のよう言動がみられるようになります。
●お友達の家に平気で上がりこみ、「喉が渇いた」「お腹が空いた」と要求する
●知っている人にも挨拶ができない
●すぐに手をだして乱暴する
●気配りができない
●周囲の状況判断ができない(空気が読めない)
甘やかして育てた結果、問題行動だらけの子供になりかねません。
全く叱らずに子供の好きなようにさせるという方針は、一見のびのびと育てているように思われますが、善悪の区別、モラルやマナーを教えない、放任という名の優しい虐待であるといえるでしょう。
このまま大人になると、社会に適応できない大人になる可能性もあります。
もしかしたら、社会に出る前に周囲の人から敬遠され、誰からも相手にされなくなってしまうかもしれません。※1、4、5
※1 7歳までに知っておきたい!「一人っ子」の育て方 和田秀樹 著 2013年12月31日 株式会社学研パブリッシング
※4 一人っ子をグングン伸ばすママがしていること 子育てネット 著 2010年6月1日 大和書房
※5 子供って、どこまで甘えさせればいいの? 山崎雅保 著 2006年12月4日 株式会社リヨン社
一人っ子をわがままと言わせないために
我が子をわがままにさせないために
では、一人っ子に対してどのような点に気配りをしていけば、わがままな子にならずに成長するのでしょうか。
まずは愛情をたくさん注ぎ、たっぷりと甘えさせてあげましょう。
甘えさせると「甘ったれ」になるのではないかと不安になる方もいるかもしれませんが、自分自身を保護し守ってくれる両親がたくさんの愛情と甘える時間を与えてくれることで、子供は容認してくれていると感じ自己肯定感が育まれます。
そして健全で安定した心の土台を築くことができるのです。
健全で安定した心の土台がしっかりとしていれば、我慢をすることや理不尽な出来事、叱られた理由などを前向きに捉えることができるようになり、子供自身も「自分のために叱ってくれている」と納得しやすくなります。
一人っ子は親と子が接する時間がたくさんあるので、親としても心の余裕を持ちながらしっかりと善悪の区別を教えてあげましょう。
また、思いやりを育てるために団体で行うスポーツを習わせるのも良いでしょう。
バレーボール、野球、サッカーなど、子供が興味を持ったものなら何でもかまいません。
女の子なら、ダンスやチアガールなどもかわいいですよね。
団体競技のようなチームプレーであれば、チームメイトや協力してくれる大人たちにも気を配り感謝をすることが身につきやすくなります。
試合に出られず応援してくれる仲間を思いやる心や、練習についてこられない子を気遣う心も芽生えてくるのです。※4、5、6
時には親が兄弟の代わりとなり子供と一緒にゲームをするなどして、物事には順番があることや、頑張っても負けるときは負けることを、少しずつ教えていくことも必要です。
そしてきちんと順番が守れた時は褒め、負けてしまった時はしっかりと慰めると同時に「今度はがんばろうね」と前向きな気持ちになれるように導いていきましょう。
一人っ子はわがままという偏見に負けない
ここまで頑張って育てていても、周囲には「一人っ子はわがままだから」という偏見を持つ人もいます。
子供ならではのちょっとしたわがままを言っただけで、「ほら、やっぱり一人っ子だから」と言われてしまうのは辛いですよね。
けれども、兄弟姉妹がいる子供だって、わがままな子供はたくさんいます。
前述のような、勘違いした「叱らない子育て」で育った子供や、ずいぶんと歳の離れた兄弟の下の子供、一人だけ性別が違う末っ子など、一人っ子でなくても育つ環境によっては一人っ子以上にわがままな子供もいるのではないでしょうか。
もしも「一人っ子だから」のバッシングを受けたら、「どんな子供でもあり得る言動を、一人っ子のわがままと決めつけるのはおかしい」と反論し、周囲の間違った考えを正していくことも、大事な我が子を守るためには必要なのです。
バッシングをしてくるような人たちには、「古い偏見を信じて根拠のないことを言っている」と悟り、同じ土俵に立つことなく、自信を持って子育てをしてください。
信念を持った親の生き方は、その背中を見て育つ子供にも伝わるはずです。※1、2
※1 7歳までに知っておきたい!「一人っ子」の育て方 和田秀樹 著 2013年12月31日 株式会社学研パブリッシング
※2 一人っ子を伸ばす母親、ダメにする母親 松永暢史 著 2009年6月2日 株式会社アスコム
※4 一人っ子をグングン伸ばすママがしていること 子育てネット 著 2010年6月1日 大和書房
※5 子供って、どこまで甘えさせればいいの? 山崎雅保 著 2006年12月4日 株式会社リヨン社
※6 性格の良い子が育つママとパパの習慣 清水克彦 著 2011年1月27日 株式会社講談社
まとめ
兄弟がいる家庭にも一人っ子の家庭にも、それぞれメリット・デメリットは存在します。
しかし、どんな家族構成であれ、育て方が子供の性格や性質を決めていく部分は大きいのです。
「三つ子の魂百まで」という諺がありますが、これは乳幼児期の接し方が子供の将来を大きく左右する可能性を示しています。
うちの子は「一人っ子」だからと悩みを抱えず、自信を持って楽しい子育てライフを送っていきましょう。