【私立・公立】中学と高校の勉強!違いと塾選びに注目!

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2018年度の首都圏の中学入試では、私立を受験した子どもが前年より2.6%増加しました。首都圏の中学受験生は2016年度から連続して増加しており、特に大学付属校や系列校に人気が集まっています。
「私立は公立と比べて学費が高い」「入試がハード」という印象がありますが、肝心の授業内に大きな違いがあります。

今回は、主に中学校と高等学校の私立と公立の授業内容や進度の違いなどについて、詳しく解説します。

目次

  1. 公立と私立の違いとは
    • 運営母体の違い
    • 国立・公立の小中学校の授業料は無償
    • 越境入学について
  2. 授業のスピードの違い
    • 中高一貫校や大学付属校による違いも
  3. 勉強内容の違い
    • 数学と英語の違い
    • 増加する中学の英語入試
    • 私立の授業はどんどん進む
    • 補修が充実している学校も
  4. 塾選びのポイント
  5. まとめ

公立と私立の違いとは

公立と私立の学校では、学費に差があるのはもちろんですが、授業の内容や進度にも大きな違いがあります
授業内容について解説する前に、まず、根本の運営母体の違いから見ていきましょう。

運営母体の違い

私立や公立の大きな違いは、運営母体にあります。

 

・公立

公立学校とは地方公共団体が設置する、無料の教育を行う学校のことで、多くの場合、税金によって運営されています。

設置者は都道府県や市町村、区、公立大学法人で、公立大学の付属校も公立学校にあたります。

 

・私立

私立学校とは学校法人が設置する学校のことです。

ここでいう「法人」とは、私立学校法によって、「私立学校の設置を目的として、この法律の定めるところにより設置される法人」と定められています。

授業内容は、学校独自のカリキュラムを組んでいるところが多くあります

 

・国立

国立学校とは国立大学法人が運営している大学です。

以前は国が設置して運営していましたが、2003年施行の国立大学法人法によって国立大学法人が運営母体になり、学校ごとの特色を生かした教育が展開できるようになりました

よく、公立と同義でとらえられがちですが、国立は国税、公立は都道府県や市の税金が資金になっている点で異なります。

 

・公立と私立の学校数と生徒数

公立と私立の学校数や生徒数には、どのような違いがあるのでしょうか。

以下は、毎年行われている文部科学省の学校基本調査(平成30年度)※1の結果です。

 

■公立

小学校:19,591校、6,312,233人

中学校:9,421校、2,983,719人

高等学校:3,559校、2,184,925人

 

■私立

小学校:231校、77,779人

中学校:778校、238,326人

高等学校:1,323校、1,042,637人

 

 ※1平成30年度(文部科学省)

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/08/02/1407449_1.pdf

国立・公立の小中学校の授業料は無償

国立と公立の小中学校の授業料について、学校教育法第6条では、「授業料を徴収できない」と定められています。

給食費や教材費、中には寄付金などを集める学校もありますが、授業料としては無償です。

一方、国立公立高等学校において、以前は授業料無償制でしたが、法律改正により平成26年4月以降の入学者からは、「高等学校等就学支援金」が家庭の所得に応じて支給される新制度に変わりました※2

※2文部科学省 高校生等への修学支援
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342674.htm

越境入学について

また、公立の学校は越境入学を禁止している地域が多く、特別な事情がない限り、地域で決められた学校への入学することになっています。

対して私立の学校は、広く門戸を開けており、入学試験で合格した児童や生徒はその居住地を問わず入学できます。

 

授業のスピードの違い

私立と公立の大きな違いは、授業数とその内容、進度のスピードにあります。

 

たとえば、平成29年告示の学習指導要領では、小学校4年生から6年生の年間授業数を1学年1,015単位(1単位45分)と設定しています。※3
対して私立の小学校では、学校により違いはあるものの、ほとんどが公立よりも多い授業数を設けています。

中学校においても、3年間の総合計授業数が公立で3,045単位であるのに対し、私立では1学年1400単位前後、3学年で4,000単位前後となっており、実に公立と私立とでは1000単位近くの差があります。

 

さらに、私立では主要科目(英語や数学)を総体的に増やしている傾向にあり、大学受験に向けて手厚いフォローをしていることをアピールしています。

※3 文部科学省 学習指導要領
小学校:http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/05/1384661_4_3_2.pdf
中学校:http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/05/07/1384661_5_4.pdf

中高一貫校や大学付属校による違いも

私立ではほとんどの場合、系列学校があり、多くの児童・生徒がそこに進学していきます。
中でも、私立中学校と私立高等学校が一体化した「中高一貫校」や大学まで内部進学が可能な「大学付属校」は人気があります。

 

・中高一貫校
中高一貫校の場合、中学校に入学する前に試験があることがほとんどです。

無事、中学校の入試に合格すれば、高校受験しなくてもよいため、私立受験を決める親も少なくありません。

多くの中高一貫校が、高校2年生までに高等学校の全カリキュラムを終え、3年生の1年間を大学受験のために費やせるようになっています。

また、公立の場合、中学3年生の夏になると部活を引退しますが、中高一貫校では受験がないため、部活を続けることができます。

受験で部活動を中断しなくても済むところは、中高一貫校のメリットのひとつといえるでしょう。

そのほか、先生の転任が少ないことも、中高一貫校の特色です。
私立学校は法人のため、教員はその学校の専任です。生徒の性格や学力、事情などをしっかり把握して、卒業まで見守ってくれるのもよいところです。

 

・大学付属校
私立の中には、大学付属校として、小学校、中学校、高等学校などがあります。
大学付属校の場合、それぞれの学年である程度の成績を収め、推薦を獲得できれば受験を経ずに大学まで進学できます。そのため、受験目的のスピーディな授業展開ではなく、内部進学に向けじっくりと勉強に取り組む形態が多く見られます。

別の系列の学校へ進学する生徒もいますが、大学まで内部進学する道を選択する生徒が多いのが特徴です。

ただし、付属校に在学していれば、誰もが内部進学ができるわけではありません。

多くは系列大学へ「推薦入学」することになりますが、その人数には枠があり、推薦を獲得できなかった生徒は外部受験をしなければならなくなります。

勉強内容の違い

私立と公立の勉強内容の違いは、特に数学と英語に顕著にあらわれています。どのような違いあるのか、詳しくみていきましょう。

数学と英語の違い

・数学
数学に関しては、特に大きな違いがあります。

私立では、数研出版が中高一貫校のために編集した「体系数学」と呼ばれる検定外教科書を採用しているところが多く、非常に早いスピードで授業が進みます。

公立で扱う検定教科書との大きな違いは、中学校と高等学校の数学を体系的に学ぶように工夫されているところです。

学習指導要領では高等学校の内容でも、中学校で扱うこともあります。

 

たとえば、体系数学では、方程式のあとに不等式を学ぶ配列になっているものもあります。
数学への理解を深めるための流れを重視し、学習指導要領には含まれない内容や学年を超えて融合させた内容も展開されています。

私立の中には公立の3年間分の内容を1年間で終了させるほどのスピードで進めるところもあります。

遅くとも2年生までには、中学校数学を終了させ、さらに高度な数学へ発展していきます。

 

中学3年生のときには、ほとんどの中高一貫校では、中学3年生のときに高校1年生の勉強を開始しますから、非常に力がつくカリキュラムになっているといえるでしょう。
公立の生徒よりも早い段階で大学受験を視野にいれた対策に入るため、大学受験においては、公立の生徒より、少し有利になるかもしれません。

 

・英語
インターネットで世界中がつながるようになった現代、日本においては、2020年の大学入試改革やスーパーグローバルハイスクールの取り組みなど、国をあげての英語教育改革が進んでいます。※3

グローバルスクールとは、文部科学省が指定した高等学校。グローバルに活躍する人材の育成を目的とした教育を行い、研究を進めています。

 

また、2020年からスタートする、大学入学共通テストでは、これまでのリスニングとリーディングの試験に加え、スピーキングとライティングを加えた4技能が予定されています。

このように、日本のグローバル教育に拍車がかかる中、私立と公立の英語の授業内容はどのように違いがあるのでしょうか。

公立で使用される英語の検定教科書と、私立で多く使用される「NEW TREASURE」を比較してみましょう。

検定教科書に出てくる英単語数は、中学3年間でおよそ900語(新指導要領では1,200語)なのに対し、「NEW TREASURE」では約3,000語。

「NEW TREASURE」では、高校文法まで含まれ、読む、聞く、書く、話すの4技能を総合的に強化できる内容になっており、そのボリュームは公立の倍以上です。

中には中学卒業までに英検2級(高等学校卒業程度)の取得を目標にしている私立中学校もあり、公立の授業のスピードと大きな差があることが分かります。

また、私立の場合、小学校1年生から英語の授業を展開していたり、フランス語やドイツ語などの英語以外の言語を学ぶ学校もあります。

※3スーパーグローバルハイスクール公式ページ
http://www.sghc.jp/

増加する中学の英語入試

従来の中学入試科目と言えば、国・算・社・理、または国・算と面接が中心でしたが、近年では英語が加わる学校が増えてきています。
首都圏模試センター調べによると、首都圏の中学入試で、英語(選択)入試を実施しているのは、現在のところ112校(内、私立111校)。

2019年度には、人気校が英語入試を導入することが決まっており、今後もますます増えていくことが予想されます。

 

また、公立では、2020年度から小学校3年生、4年生で35単位、5年生、6年生で70単位の英語教育がスタートします。

小学校の間に約700単語に触れると定められており、公立の英語教育も大きく変化していくことになります。

私立の授業はどんどん進む

公立の場合、一律の授業数、学習指導要領に沿った授業が展開されます。

公立の他校と学習内容に差が生まれにくく、公立高校受験の際も、中学の学習範囲さえ理解できていれば、対応できるようになっています。

 

一方私立の場合、学校独自のカリキュラムで編成されており、土曜日も学校が開かれているとことも少なくありません。

授業数も多く、どんどん先へ進みます。

そのため、公立の学校では網羅しきれない範囲の難しい学習内容にまで手を伸ばすことができるのです。

難関私立中学校・高等学校などでは、その先のトップレベルの大学入試を見据えてカリキュラムを組み込んでいることが多くなっています。

しかし、私立では、生徒に授業のスピードについていける学力が必要です。

授業についていけなくなった生徒が挽回するのは難しく、退学を選択する生徒もいます。

子どもを私立学校へ進学させたいと考える場合、その子の性格や学力に合った学校選びが重要になってきます。

補修が充実している学校も

中高一貫校の授業は非常にペースが速いので、生徒が授業に置いていかれないように、補修を行う学校もあります。

公立と比較しても、自習室やPC室が充実しているなど、予備校や塾にひけをとらない補修を行ってくれる学校もあります。

補修制度については学校によって違うので、入学を希望する学校ではどのような体制になっているのかを、予め確認しておくとよいでしょう。

塾選びのポイント

学校外での学習活動のひとつが学習塾です。
私立中学の受験生が増加する中、どの学年から学習塾に通う生徒が多いのでしょうか。

 

一般的には、学年があがるにつれて、塾に入る子どもが増加していく傾向にありましたが、近年では、小学校低学年からの塾通いが増えているといいます。

低学年の場合は、学校の授業の補修を目的に通う児童が多く、小学校4年生からは中学受験を狙った受験対策が目的の子どもが多いと言えます。

 

さらに、文部科学省の「子どもの学習費調査」から導きだすと、中学1年生で約6割、中学3年生になると、8割以上の生徒が塾に通うようになっています。※4

塾といっても公立向け、私立向け、進学に特化した塾などさまざまです。

それぞれの特徴を見てみましょう。

 

・公立向けの塾
たとえば、公立の学校へ通う児童・生徒を対象としている塾の場合、近くの公立学校の授業進度に合わせて授業を進めることが多くなります。

目標を次の試験(中学校であれば中間・期末試験など)に設定し、最終的な目標を高校受験に置いているところがほとんどです。

 

・私立向けの塾
一方、私立学校へ通う児童・生徒の場合、上記のような塾に通っても、私立の学習内容は公立とは大きく異なりますし、授業のスピードも速く、学校の勉強のフォローには不十分です。

そういった場合、たとえば小学生であれば中学受験を目玉にしている塾や、個人のスピードに合わせたプライベート、もしくはセミプライベートの塾を選ぶ方が効率的でしょう。

また、私立の学校付近には、近隣の私立学校に対応した塾が開かれている場合があります。

そういった塾は学校の情報を入手して、それに合わせた授業を展開しています。

進学校に通っているのであれば、大学受験のための予備校などに、早い段階で入学できる場合もあります。

ただし、多くの場合、入塾にも高い学力が必要です。

大手の塾になると、一般的な公立学校に通う児童・生徒を対象とした、難関校受験対策のクラスがあったり、中高一貫校に対応した授業を提供していたりと、さまざまなコースが用意されています。

興味のある方は、問い合わせて、確認してみるとよいでしょう。

※4文部科学省:平成28年度子供の学習費調査の結果について
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/22/1399308_1.pdf

まとめ

公立と私立の学校では、多くの違いがありますが、それぞれの学校が真摯に子どもの教育に向き合っているのには変わりありません。

公立の学校では、国が定めた学習指導要領で定められた範囲を、誰もが公平に受けることができます。

私立の学校では、授業のスピードが速く、公立では触れないような難しい内容の勉強も出てきます。

学校全体の学力の底上げを狙うようなフォローはなく、どんどん勉強を先に進めていく進学校の場合は、お子さんが食らいついていける性格であるかをじっくり考えてみてください。

子ども時代は、自己形成するための大切な時期です。

「よい教育をさせたい」という親の想いを優先するのでなく、お子さんの将来を見据えて、長期的な目線で考えたいものですね。

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