想像以上に大変?!小1の壁とは?その対策は?
小学校に進学するとともに仕事との両立が難しくなるとして社会問題となっている「小1の壁」。放課後には学童保育もあるのに、なぜ壁となってしまうのか、その原因を探ります。
小1の壁を乗り越えるために自分でできる対策や、職場への働きかけについてもご紹介します。
目次
- 小1の壁とは?なぜ壁に?
- 小学校入学で感じる不安
- 時短勤務が小学校入学前に終了する企業も多い
- 学童の終了時間に間に合わない、長期休暇も悩みの種
- 小学校生活をサポートする時間の確保が困難
- 実際に入学前より大変。1/4は働き方を変更
- 小1の壁、自分で対策するには?国の今後の対応は?
- 自分でできる5つの対策
- 国や自治体の対応
- 小1の壁、退職するしかない?
- まとめ
小1の壁とは?なぜ壁に?
「小1の壁」とは、子供の小学校入学にあたり家族のライフスタイルが変化し、共働き家庭がそれまでと同じように仕事を続けることが困難になる状況を指します。
仕事を続けることが難しくなる原因は、小学校下校後や夏休みなどの長期休暇の預け先の確保が難しいことなどにあります。
具体的にどのような点が問題になっているのでしょうか。
小学校入学で感じる不安
小学校入学にあたりそれまでと同じように働けなくなる理由はいくつかあります。
小学校入学にあたり、不安を感じる主な項目は下記のとおりです。※1
- 時短勤務の終了
- 放課後の子供の預け先の確保
- 長期休暇中の子供の預け先の確保
- 宿題や勉強のサポート
- 参加が必要な学校行事(PTAや保護者会)の増加
- 子供の友人関係の変化 など
会社の就業規則の問題と、小学生の生活時間の問題、学業のサポートなどが重なり、不安につながっているというのが実態です。
個別に理由を探りましょう。
時短勤務が小学校入学前に終了する企業も多い
小学校入学が壁となってしまう理由の1つが、時短勤務の終了にあります。
多くの企業が、正社員の時短勤務の適用を3歳までもしくは小学校入学までとしており、正社員として働き続けるためにはフルタイム勤務を選択せざるを得ないのが実態です。
平成29年の調査では、時短勤務などの措置の対象を小学校入学前までに終了している企業は、7割以上とされています。※2
フルタイムの8時間勤務となると、公立の学童の終了時間にお迎えに間に合わず、仕事を続けることが難しくなってしまうのです。
学童の終了時間に間に合わない、長期休暇も悩みの種
学校の下校後や長期休暇の預け先として「学童保育」がありますが、保育園とは対応時間などが異なるため仕事との両立を難しくしています。
仕事の両立を困難にする学童の問題点
- 預け時間
- 長期休暇のお弁当などの対応
- 待機児童の問題も
一般的に公立の学童の終了時間は18時や18時半となっています。
延長できる学童でも19時までのところが多く、保育園の延長保育の20時半までと比較してかなり短くなっています。
正社員として働くためにはフルタイムで働かなければならないにも関わらず、預け先が確保できないため「小1の壁」となっています。
また、小学生になると夏休みなどの長期休暇も問題となっています。
学童に入ることができていれば預けることはできますが、お弁当が必要だったり子供が行くのを嫌がったりといった理由から、貴重な夏休み毎日学童で過ごさせることに不安を感じるケースが多いようです。
夏休みの過ごし方に関するあるアンケートでは、夏休みに親がいない間、公立の学童に通っているのは低学年の子で約22%とされています。
一方、子供だけで留守番をさせる家庭も低学年でも34%以上にのぼります。※3
また、保育園同様、公立の学童も待機児童が問題となっています。
待機児童になってしまった場合、民間の学童に入るか、祖父母の協力を得られる場合にはお願いするか、習い事などで時間を埋めるかというような選択肢を取らなければなりません。
民間の学童は平日毎日預けるとなると費用もかさむため、仕事との両立を悩むママも多いようです。
小学校生活をサポートする時間の確保が困難
小学校になると学校の宿題が出されます。
1年生の間は宿題をする習慣も身についていないので、まだまだ親のサポートが必要な場合が多く、その宿題の時間の確保も不安要素の1つとなっています。
実際に小学生の子を持つ親の多くが、宿題や勉強のサポートが大変だと感じているようです。※1
また、小学生になると親の参加が必要な学校行事も増えます。
働くママの多くが保育園から小学校へと子供を進学させることになりますが、保育園のように仕事の日時への配慮はあまり期待できません。
PTAや保育参観といった活動に、割かれる時間も不安要素の1つとなっています。※1
実際に入学前より大変。1/4は働き方を変更
実際に、小学生の子を持つ親は入学前より大変だと感じている方が多く、あるアンケートでは8割近くが入学前より仕事との両立が大変になったと回答しています。※1
同アンケートでは、1/4の方が小学校入学を機に転職をするなど、働き方を変えたとされています。※1
※1 小1の壁とは?退職せずに乗り切る方法と会社ができること | スリール株式会社/2019年1月23日現在
https://sourire-heart.com/7718/
※2 「平成29年度雇用均等基本調査」事業所調査 |厚生労働省/2019年1月23日現在
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-29r/03.pdf
※3 アクサダイレクト生命 「小学生の夏休みの過ごし方」調査(2014 年 07 月 01 日)/2019年1月23日現在
https://www.axa-direct-life.co.jp/corporate/pdf/140701_a.pdf?topbnid=n_20140701_a
小1の壁、自分で対策するには?国の今後の対応は?
小学校入学にあたり仕事との両立は難しいものではありますが、乗り越えられないものでもありません。
仕事と両立をするために、できる対策をご紹介いたします。
自分でできる5つの対策
- 両親や親族などに頼る
- 民間学童も検討する
- 習い事で時間を埋める
- 宿題などの勉強は、どうしても不安であれば民間学童や塾も検討
- コミュニケーション問題は時間より質
1 両親や親族など頼る
もし両親や親族など、子供を見ていてもらえる方が近所にいる場合は頼るのが1番です。
子供が歩いて行ける距離の範囲内に住んでいればよいのですが、そのような恵まれた環境の方は少ないかもしれません。
2 民間学童に入れる
公立の学童に入れないもしくは入れない場合、民間学童という選択肢もあります。
民間企業が運営する学童では、夜20時までなど公立よりも遅くまで預けることができ、宿題もスタッフが見てくれたり、長期休暇のお弁当も手配してもらえたりと働くママにはうれしいサービスです。
しかし、平日週5日預けるとなると、月5万円前後といった費用がかかる場合が多く、公立の月5500円前後と比較して高額となっています。
また、生徒が多いエリアでは、民間学童も待機児童がでているところもあります。
3 習い事で時間を埋める
同じ月5万円程度を払うのであれば、習い事を毎日させるという選択肢もあります。
習い事の場合は、送り迎えのサービスはないので、子供が自分で行ける範囲に限られますし、小学校1年生のうちは一人で行かせるのは不安…という方も多いと思います。
その場合には、お友達と一緒に行ったり、学校と習い事の送迎だけファミリーサポートに依頼するなどの対策が必要となります。
また、習い事は時間が決まっているものが多く、習い事までの時間や習い事が終わってからの時間をどう過ごすかも課題となります。
1日に複数の習い事を入れたり、レッスン時間が長い習い事を選んだりして乗り切りることになります。
4 宿題などの勉強は、不安であれば民間学童や塾を頼っても
毎日の宿題も、小1の壁の1つの原因となっています。
公立の学童では宿題をやるかどうかは子供次第となり、帰宅後に宿題をやるとなると時間が足らないといった問題が発生しています。
宿題に関しては、子供が自発的に学童で済ませてきてくれるのが一番ですが、なかなか難しい場合もあるでしょう。
まずは夕食や朝食の準備の時間を活用できないか、家庭でルールを考えてみてはいかがでしょうか。
テレビやゲームは宿題が終わってから、決めたところまではこの時間で終わらせるというように子供と一緒に決めることで、確保できる時間もあるかもしれません。
低学年のうちは、まだ長時間集中できる集中力もありませんし、長時間勉強するよりも休憩をはさみながら細切れで勉強する方がよいという研究結果もあります。※4
まずは、すき間時間で宿題ができないか、親子で見直してみましょう。
自宅で時間が取れずに宿題をやれない場合には、宿題を見てくれる民間学童や塾などの利用する方法もあります。
民間学童は帰る時間までに宿題を済ませ、きちんと終わっているか内容をチェックしてくれるところも多いですし、塾でも宿題の時間をとってくれるところもあるようです。
費用はかかりますが、働いている間に済ませられるので子供も時間をかけて勉強できますし、親としても安心です。
小学校の低学年ではどれくらいの勉強が必要なのでしょうか。
勉強のポイントと、宿題をしない子については、こちらの記事でご紹介しています!
・小学1年生!勉強はどのくらいさせるべき?小学生の力を伸ばす勉強法とは
・宿題のやる気が出ない、宿題ができない…子供のために親は何ができる?
5 コミュニケーションは時間より質
小学校に入ると、子供の日々の様子を把握する手段が減ります。
保育園であれば、連絡帳で先生とのやりとりがありますし、送り迎えの際に先生と会話することで園での様子を知ることができましたが、小学校になると連絡帳はありませんし、先生と話す時間もありません。
また保育園や幼稚園時代よりも子供自身の友達関係も広がり把握しづらくなります。
子供との会話から日々の様子を知るしかなくなり、それまで以上に親子のコミュニケーションが重要となりますが、仕事をしていると、コミュニケーションの時間も必然的に少なくなってしまいます。
実際に、多くの親はコミュニケーション不足を感じているといいます。※5
時間が足りないと感じる場合には、夕食時など顔を見て話しができる時間に、子供が話しやすい環境づくりを心がけ、コミュニケーションの質を高めていくことで乗り切りましょう。
些細な日常でのコミュニケーションを心掛け、子供が自分から話しやすいように日ごろから子供の話に耳を傾けたり、親子で一緒に何かに取り組むようにしたりということで、コミュニケーションの質は変わるとされています。※6※7
国や自治体の対応
小1の壁を打破するために、国も動き出しています。
2014年に「放課後子供総合プラン」が策定され、2019年までに学童を30万人分を新たに整備するよう進められています。
2018年の調査では、入所児童数は前年比63,200人増となっています。※8
2015年の児童福祉法の改正により、それまで「おおむね10歳未満」とされていた学童の対象年齢が「小学校に就学している児童」に変更され、小学校高学年でも利用できるようになりました。
制度の整備が進んでも、待機児童は増えており、都心部では入所できない児童がいる地域もあります。※9
入所できなかった場合は仕事との両立が困難となるため、自分で対策をするか働き方を変更するかの判断を迫られることになります。
自治体でも、大阪市のように学童の取り組みに対して補助金を出すなど、対策がとられているところもあり、今後の改善が待たれます。※10
また、学童保育が不足している地域では、児童館などが開放されているところもあります。
放課後の小学生向けにクラブ活動などの場を提供しているところもありますので、お住まいの地域の状況を確認してみてはいかがでしょうか。※11
※4 勉強時間は短い方が好成績?:朝日新聞デジタル/2019年1月23日現在
http://www.asahi.com/ad/15minutes/
※5 幼児・児童の保護者5,000人に聞く 親子・夫婦・保護者と先生のコミュニケーション実態調査 - きずなプラスプロジェクト/2019年1月23日現在
http://kizunaplus.snapsnap.jp/archives/45
※6 親子のコミュニケーションからみた家族室の役割に関する研究 藤野淳子・北浦か ほる/2019年1月23日現在
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/71/602/71_KJ00004303969/_pdf/-char/ja
※7 「子どもとの生活に関する意識調査」日常のささいな親子時間を大事にする家庭ほど子どもを理解し、のびのび育つ環境に? イケア・ジャパン株式会社(2013年7月30日)/2019年1月23日現在
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000006550.html
※8 学童保育(放課後児童クラブ)の実施状況調査結果について 全国学童保育連絡協議会(2018 年 10 月3日)/2019年1月23日現在
http://www2s.biglobe.ne.jp/Gakudou/pressrelease20181003.pdf
※9 学童保育の待機児童 最多 共働き増加で1万6957人/2019年1月23日現在
https://r10.to/hvauKS
※10 働く女性に立ちはだかる「小1の壁」、大阪市が実態把握へ 新1年生の親対象 データ把握し分析/2019年1月23日現在
https://www.sankei.com/west/news/180219/wst1802190052-n2.html
※11 【東京すくすく】「小1の壁」に安心を 学童保育待機時の受け皿紹介 練馬区が初の地域説明会/2019年1月23日現在
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/hoiku/8591/
小1の壁、退職するしかない?
子供が6歳・7歳・8歳になると、母親の就業率が大きく落ち込んでいることが分かっています。
小1の壁にあたり、仕事をあきらめたり就業形態を変更したりする人が多いことは、メディアでも報道されたりと目に触れる機会が増えています。
しかし、小学校入学にあたり、いままでと同じように働くことが困難になるということを就業先は理解しているでしょうか?
同じ課題を感じている世代が少ない職場では、この「小1の壁」が認識されていない場合もあるようです。
制度がないからとあきらめず、就業先に対して状況を説明し、対策を検討してもらうなど働きかけることも、自分以外の働くママ社員のためにも有効です。
先述のアンケートでも、正社員でも約12%の方は子供の夏休み期間中は勤務時間を調整していると回答しています。※12
全体からするとまだまだ少ないですが、調整できる企業もあるという事実を盾に、就業先に働きかけることも働くママの役割と言えるかもしれません。
今後同じ問題に遭遇するママ社員を助けることにもつながります。
会社に対しては、勤務時間の調整や、テレワークの導入、時間単位での有休取得などを提案することが有効だと考えられます。
また、家庭では、日ごろから周りのママと協力関係を築いたり、長期休暇に備えパパとママで夏季休暇日程や日数の調整をしたりということで、仕事との両立が可能になる場合もあるでしょう。
仕事と両立させたい場合は、どのような選択肢があるのか、一度会社とも家族とも話し合いの機会を持ってみてはいかがでしょうか。
※12 アクサダイレクト生命 「小学生の夏休みの過ごし方」調査(2014 年 07 月 01 日)/2019年1月23日現在
https://www.axa-direct-life.co.jp/corporate/pdf/140701_a.pdf?topbnid=n_20140701_a
まとめ
小1の壁は、小学校入学を機に起きるライフスタイルの変化に伴い、仕事との両立が難しくなるためにおこるものです。
仕事との両立が難しいからと簡単に仕事をあきらめてしまうのではなく、一度会社にそのような状況になっていることを話しをしてみたり、自治体の窓口に相談をしてみてみることで、何か解決方法が見いだせるかもしれません。
職場では、社会問題とされていても、同じくらいの年齢のお子様がいらっしゃらない企業の担当者の方の場合は、実態を把握されていない場合もあるのではないでしょうか。
制度がないからとあきらめず、一度話をしてみることをおすすめします。
また、いざという時に頼れる周りの人を作っておくことも大切です。
親族が近くにいないという場合には、ファミリーサポートに利用登録をして使える状態にして置いたり、ママ友に助けてもらえるような関係を築いておくなど、できることはいくつかあります。
自治体によっては学童以外にも放課後に子供が行ける場所を開放している地域もありますので、小学校入学前のお子様をお持ちの方は、そのような施設を見学にいってみるのもよいでしょう。
学童に入れなかった場合でも選択肢があると知っておくだけでも安心材料になるはずです。