「非認知能力とは?」を簡単に解説!具体的にどう育てる?どう遊ぶ?

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非認知能力とは、簡単に言うと点数では測りにくい「生きていくために必要な能力」のこと。
近年、学校や保育の現場でも取り入れられるようになり、注目を集めています。
今回は、非認知能力と認知能力の違いや相関性、さらに非認知能力を高める親の接し方や、非認知能力を鍛えるための具体的な遊びの例をご紹介します。

目次

  1. 非認知能力とは?
    • 注目される背景
  2. 非認知能力と認知能力の違いと関連性
  3. 非認知能力を高めるに重要なこととは?
    • 幼児期は遊びが重要
    • 自制心や協調性も遊びを通じて育つ
    • 乳児期の愛着形成が非認知能力を高めるカギ
  4. 非認知能力を鍛える遊び、具体例を解説
    • ごっこ遊び
    • 外遊び
    • 水遊び
    • 空き箱や洗濯ばさみで工作
    • 読み聞かせ
    • 歌を通じた遊び
    • お手伝いもおススメ
    • 自由時間も大切に
  5. まとめ

非認知能力とは?

非認知能力とは、数値化できない「生きていくために必要な能力」のことです。
学力やIQといった数値で測れるものではなく、協調性やコミュニケーション力など数値では測りにくい能力全般を意味します。
日本生涯学習総合研究所によると、非認知能力の代表的な能力は以下の通りです。


【非認知能力の例】

  • 協調性※1
  • コミュニケーション力※1
  • 主体性※1
  • 自己管理能力※1
  • 自己肯定感※1
  • 実行力※1
  • 統率力※1
  • 創造性※1
  • 探究心※1
  • 共感性※1
  • 道徳心※1
  • 倫理観※1
  • 規範意識※1
  • 公共性※1

子供の発達段階に応じて身につく能力も進化するものの、どれも生きていくために必要となる基本的な能力です。
国際機関である経済協力開発機構(OECD)では、非認知能力は「社会的情緒」という言葉で表されています。※1

 

注目される背景

非認知能力は、2001年にアメリカの経済学者であるジェームズ・J・ヘックマン氏により提唱された概念です。※2
認知能力にも影響することがわかり、一躍注目を集めました。※2
日本では、2020年度からスタートする新学習指導要領の「育成すべき資質・能力」の1つに「学びに向かう力、人間性等」が含まれたことで、関心が高まっています。※3
「非認知能力」は学力以外の「新しい能力」と言われます。
学力などの認知能力と非認知能力との関係については、次章で詳しくご紹介します。

 

※1 「非認知能力」の概念に関する考察/一般財団法人 日本生涯学習総合研究所/平成 30 年 3 月 27 日/2020年3月14日現在
http://www.shogai-soken.or.jp/htmltop/toppage.files/non-cog2018.pdf
※2 非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する報告書/国立教育政策研究所 /研究者代表者 遠藤俊彦/2020年3月14日現在
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h28a/syocyu-2-1_a.pdf
※3 2.新しい学習指導要領等が目指す姿:文部科学省/2020年3月14日現在
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1364316.htm

非認知能力と認知能力の違いと関連性

認知能力は学力のような点数で測ることができる能力。※4
一方、非認知能力は点数で測ることが難しい能力です。※4
点数で測ることができる学力やIQとは異なり、コミュニケーション能力や忍耐力、やりきる力などは数値化できません。
非認知能力が注目されている理由の1つに、非認知能力と認知能力の相関性があります。
非認知能力が高いと認知能力も高まることが、いくつかの研究で示されています。※5
文部科学省が実施している全国学力・学習状況調査でも、学習意欲が高い子の方が、学力が高い(平均正答率が高い)傾向にあることが報告されています。※6
自分の意見を発表するのが得意・自分の発言に自信がある・人の意見を最後まで聞くという項目に当てはまる場合も、同じく学力が高い傾向にあるとされています。※6
このような結果から、非認知能力は認知能力にも影響すると考えられています。
確かに、いやいや勉強していても勉強は頭に入ってこないですよね。
学力をつけるためには、意欲や自信がベースになるとも言えそうです。

 

※4 学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす/中山芳一著/東京書籍
※5 幼少期の家庭環境、非認知能力が学歴、雇用形態、賃金に与える影響/独立行政法人経済産業研究所/RIETI Discussion Paper Series 14-J-019/2014年3月/2020年3月14日現在
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/14j019.pdf
※6 平成25年度全国学力・学習調査 報告書 クロス集計|文部科学省・国立教育政策研究所/2020年3月14日現在
https://www.nier.go.jp/13chousakekkahoukoku/data/research-report/crosstab_report.pdf

非認知能力を高めるに重要なこととは?

非認知能力を高めるために、親が子供にできることは何なのでしょうか。
幼児期を中心にご紹介します。

 

幼児期は遊びが重要

幼児期の非認知能力は、遊びの中で育つとよくいわれます。※7
幼児期に特に取り入れたいのは「外遊び」だそうです。
文部科学省の幼児運動指針でも、体を動かす遊びを通じて協調性やコミュニケーション力、意欲、有用感などが身につくことが示されています。※8
子供が非認知能力を身につけるために親ができることは、

  • 見守る※9
  • 安全な環境を用意する※10
  • 自分でやろうとすることを尊重する※11

など基本的な協力姿勢です。
大人が思っている遊び方をしていないと、つい口を出したくなりますよね。
しかし、危険が伴うような遊び方でなければ見守ることも必要です。
具体的にどのような遊びがよいのかについては、後ほど詳しくご紹介します。

 

自制心や協調性も遊びを通じて育つ

非認知能力の中でも、自己管理力や規範意識にあたる自制心は、重要な要素として注目されています。※2
ある実験結果で、自制心が高い子は将来社会的に成功する確率が高いことが示され注目を集めました。※12
有名な「マシュマロテスト」と呼ばれる実験です。
目の前のマシュマロを15分我慢出来たら2つもらえるという実験の結果、我慢できた1/3の子の方が大人になって成功する確率が高かったことがわかっています。※12
しかし自制心は、乳児のうちは、あまり我慢することはできなくて当たり前です。
自制心や我慢する力は4歳頃から発達すると言われています。※11
4歳を過ぎれば、鬼ごっこやフルーツバスケットなどルールのある遊びも楽しめるようになる時期。
集団での遊びを通じても、我慢する気持ちや頑張る気持ち、挑戦する気持ちが育ちます。※11
転んで痛くても我慢したり、自分がやりたい役を我慢したりと、遊びでの経験を通じて、自制心や協調性が育つでしょう。

 

乳児期の愛着形成が非認知能力を高めるカギ

非認知能力を高めるためには、乳児期の愛着形成が重要だと様々な研究で示されています。※2
愛着形成とは、周りの大人に大切にされているという心のよりどころです。※13
文部科学省も乳児期に重視すべき課題に「愛着の形成」をあげています。※13
小さい頃に周りに愛されているという安定した信頼感を得ることは、その後の非認知能力にも大きな影響を与えるようです。※13
親子の信頼感を育むためには、スキンシップが効果的だと言われています。※13
子供が小さいうちは、抱っこをしたり膝に座らせたりして、できるだけ子供の話しを聞く時間を持つのもよいでしょう。
成長につれてスキンシップは難しくなるかもしれませんが、子供をありのまま受け入れることで子供の自己肯定感などにもつながるはずです。

 

※2 非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する報告書/国立教育政策研究所 /研究者代表者 遠藤俊彦/2020年3月14日現在
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h28a/syocyu-2-1_a.pdf
※7非認知能力を育てる あそびのレシピ/大豆生田啓友, ‎大豆生田千夏/講談社
※8 幼児期運動指針|文部科学省/2020年3月14日現在
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm
※9 親は子どもの遊びにどう関わればいい? | 子育てに役立つ情報満載【すくコム】 | NHKエデュケーショナル/2020年3月14日現在
https://www.sukusuku.com/contents/qa/218307
※10 非認知能力を育てるには、いつから、どんなことをすればいい? | 子育てに役立つ情報満載【すくコム】 | NHKエデュケーショナル/2020年3月14日現在
https://www.sukusuku.com/contents/qa/218299
※11 発達がわかれば子どもが見える/監修 田中真介 編著 乳幼児保健研究会/ぎょうせい
※12 マシュマロ・テスト:成功する子・しない子/ウォルター・ ミシェル/早川書房
※13 3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題 | 文部科学省/2020年3月14日現在
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/gaiyou/attach/1286156.htm

非認知能力を鍛える遊び、具体例を解説

非認知能力を鍛える遊びは、特別なものではありません。
乳幼児向けの遊びの具体例をピックアップしてご紹介します。

 

ごっこ遊び

ごっこ遊びはたくさんのメリットが!その効果と種類

でも書かれているように、ごっこ遊びを通じて多くの非認知能力が鍛えられます。
創造性やコミュニケーション力、ルールを守る規範意識は、ごっこ遊びには必要不可欠な能力です。
鬼ごっこのような屋外でのごっこ遊びなら運動能力も鍛えられますね。

 

外遊び

公園の遊具で遊んだり友達とボールで遊んだりといった外遊びは、体力だけでなく非認知能力を鍛えることにも役立ちます
スポーツ庁の「体力・運動能力調査」では、幼児期に外遊びをたくさんした子の方が、小学校に入っても体力テストの得点は高いことが分かっています。※14
さらに、中高生では運動の習慣がある子の方が、達成意欲が高いことも示されています。※14
幼児期にたくさん外遊びをして運動習慣を身につけることは、非認知能力を高めることにもつながるといえそうです。

 

水遊び

水は子供のアイデア次第でいろいろな遊びができます。
自分で考えて自由に遊べるので、非認知能力を鍛えることにつながります。
どろんこ遊びでは、水とどろの量を試行錯誤したり、どろで道をつくったりすることで集中力が身につくという考えもあります。※7
外で遊ばずとも、家のお風呂で色水や水風船で遊ぶのも手軽にできる水遊び。
花で色水を作り布や紙を染めると、まるで実験のような体験になりますよね。
親子で楽しめるのではないでしょうか。

 

空き箱や洗濯ばさみで工作

ティッシュペーパーの空き箱やトイレットペーパーの芯、新聞などを使った工作も創造性や表現力につながります
空き箱であれば、好きなものを好きなだけ使わせてあげられますよね。
好きなようにやらせてあげることで、子供の創作意欲もわき、集中して自分主体で進められ、非認知能力が鍛えられるそうです。※7
洗濯ばさみをつなげたり、ペットボトルを何かに見立てて並べたり、トイレットペーパーの芯を使ったりすれば、経済的で親も助かりますよね。
子供一人で一から考えるのが難しい場合は、本や動画が参考になりますよ。

 

読み聞かせ

絵本の読み聞かせ♪ 赤ちゃんから始める効果と読み聞かせのコツ

でも紹介されている通り、読み聞かせは非認知能力によい影響を与えると考えられています。
子供は読み聞かせを通じて、想像力を働かせて創造性を高めたり、登場人物に共感したり道徳心を学んだりして、対人関係を認識していきます。
読み聞かせながら、子供と会話をすることも大切だそうです。※15
「なんでそうしたのかな?」というように物語について質問をしたり、「今日道で見たのと一緒だね」というように現実と結び付けたりすることで、子供は非認知能力を学んでいきます。
読み聞かせは、親子の絆を強める時間にもなります。
子供が小さいうちから、会話をしながら楽しく読み聞かせをしていれば、大きくなったときに読書が習慣化しているでしょう。
読書にはどんな効果がある?人生を豊かにする読書のススメでも解説されている通り、小中学生になっても読書は想像力を育む身近なアイテムです。
実際に体験していないことでも読書を通じて追体験でき、道徳心や倫理観、共感性や実行力、統率力などいろいろな非認知能力を養えます。

 

歌を通じた遊び

リトミック、その多様な効果とは?

に解説されているように、歌やリズム遊びは集中力や協調性も高めると言われています。
一緒に歌ったり、音に合わせて叩いたり、手遊びをしたりすると、音楽を聴いてリズムに合わせて体を動かしたりと脳の多くの回路を使っているそうです。※15
感情や創造性をつかさどる部分も反応していて、非認知能力を鍛えるにはもってこいの遊びです。

 

お手伝いもおススメ

国立青少年教育振興機構の調査では、お手伝いの体験が社会で生き抜く力を育てることが示されています。※16
お手伝いを通じて、子供は自分が親の役に立っているという自己有用感が育つそう。
大人を手伝うことは、大人に受け止めてもらえている・見守られているという安心感にも繋がります。
その結果、意欲や実行力に結び付くと考えられているのです。※16
小さい頃からお手伝いをしていると、中学になってもお手伝いをする子が多いことも分かっています。
幼児期からお手伝いを習慣化できるとよさそうですね。
小さなことから始めてみましょう。

 

自由時間も大切に

「この遊びがいいらしい…」と聞けば、その遊びへ誘導したくなりますよね。
ただ、子供にとっては「自由な時間」も大切なものです。※15
何もしない自由時間があれば、子供は自分でどう暇をつぶすか考えていませんか?
暇な時間こそ、創造性をはぐくむ貴重な時間とも考えられています。
「何して遊ぶ?」と子供に聞かれたら、空き箱や絵本などあらゆるものを出してあげて「どうぞ」と示してあげるだけでよいかもしれませんね。
自分からやろうとする気持ち、できたときの達成感が非認知能力に繋がります。※7

 

※7 非認知能力を育てる あそびのレシピ/大豆生田啓友, ‎大豆生田千夏/講談社
※14 平成29年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について/スポーツ庁/2020年3月14日現在
https://www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/10/09/1409885_5.pdf
※15 いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる最高の子育てベスト55 IQが上がり、心と体が強くなるすごい方法 /トレーシー・カチロー著/ダイヤモンド社
※16 子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究報告書/平成30年3月/国立青少年教育振興機構/2020年3月14日現在
http://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/117/File/00_report.pdf

まとめ

最近よく耳にする「非認知能力」は、過去にもいろいろな言葉で表されてきた概念です。
今までは「生きる力」「人間力」などと表現されてきた、点数で測ることができない能力のこと。
AIの時代に必要な力と言われることもあり、これからの社会に必要な力として学校教育や保育現場でも取り入れられつつあります。
親としては非認知能力を高める・鍛える方法に関心を持ちがちですが、実は何も特別なプログラムは必要ありません。
非認知能力を高めるためには「遊び」が重要だといろいろな研究結果で示されています。
家庭では「お手伝い」も子供の自己肯定感などによい影響を与えることが分かっています。
ただ、これらをやらないと非認知能力が育たないというものでもありません。
大切なのは、親子の信頼感です。
子供へのしつけと叱り方

の中で紹介されているように、子供にとって親に褒められることが何よりもうれしいものです。
褒められることで、成功体験を積み重ねて自立していくものです。
遊びでも何でも「子供を褒める」ことも忘れずに実践していきましょう。

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