読書にはどんな効果がある?人生を豊かにする読書のススメ
子どもに読む力や考える力を身に付けさせるためには「読書が良い」と、なんとなく知っている人は多いと思いますが、具体的にどんな力がつくのか、ご存知でしょうか。
読書のメリットを理解できていれば、子どもに勧めるときにも熱意が伝わりますし、親子で一緒に取り組むこともしやすくなります。
そこで今回は、読書から得られるメリットについてご紹介します。
目次
- 読書で身に付く力①国語力・文章力
- 読書をする子としない子では、語彙力のつき方が全く違う
- 語彙力以外の文章技能も読書によって習得できる
- 懸念されるのは、子どもたちの「ことば力」の低下
- 読書で身に付く力②想像力
- 想像や空想によって実体験を補える
- 字面や行間から世界を作り上げられる
- なぜ、想像力が必要か
- 自分の枠を超えた体験で、人生が豊かになる
- 人生に読書を取り入れられる子にするには
- まずは、子どもが興味を持つジャンルから
- 本に触れる環境をつくり、親が背中を見せる
- まとめ
読書で身に付く力①国語力・文章力
広辞苑によれば、読書とは「書物を読むこと」と記されています。
書物=本は「ことば」によって成り立っているものなので、読書とは、ことばを読むことと言えます。
つまり、読書ではさまざまな「ことば」に関する力を養うことができるのです。
小さなお子さんへの絵本の読み聞かせについては、こちらの記事をご覧ください。
絵本の読み聞かせ♪ 赤ちゃんから始める効果と読み聞かせのコツ
読書をする子としない子では、語彙力のつき方が全く違う
読書をすることで養える「ことば」の力のひとつは、語彙力です。
本を読むことで語彙力がつくのは、小さな子どもを見るとよくわかります。
小さな子どもには、よく大人が絵本の読み聞かせをしますが、読み聞かせによって話を聞いている子どもが身に付けるのは、「ことば」です。
何度も同じ話を聞いているうちに、ストーリーや登場人物の特徴なども理解してきますが、最初に学習するのは、大人の口伝いに発せられる、本の中の「ことば」なのです。
また、読みやすい本は、よく知っている簡単なことばで書かれていることが多いのに対し、難しいことばがたくさん使われている文章の場合は、内容を理解するのが難しくなります。
これは、読んでいる文章に使われていることば(=語彙)をどれだけ知っているかということと、その文章の理解度は比例することを表しています。
アメリカのある読書科学の研究者によると、文章中に知らないことばやわからないことばがあっても、それが全体の15%程度であれば、それほど不自由なくその文章を読めるそうです。
多少わからない単語があっても、その前後の流れから、ことばの意味をなんとなく理解できるという体験をした人も多いのではないでしょうか。
この研究者の示すところによれば、子どもであれば、読書をすることによって20語に1語の割合で、文脈を頼りに知らないことばの意味を自然に習得することができるというのです。
このようにして、読書をする子どもは、未知のことばを意識しないまま習得し、どんどん語彙を増やしていけるのです。※1
語彙力以外の文章技能も読書によって習得できる
読書によって自然に身に付けられるのは、語彙力だけではありません。
語彙を習得するのと同じ原理で、文章に関する他の知識や技能についても養うことができると考えられます。
例えば、日頃の読書で、人称代名詞(わたし・あなた・かれらなど)や指示代名詞(これ・それ・あれ・どれなど)の使い方に慣れていると、登場人物の複雑な動きや起きた出来事、その場所などを適切に理解し、リアルに思い描くことができるようになります。
また、文章構成、助詞や接続詞の使い方、敬語の使い方などの文法や、詩の技法についても、読書を習慣的にすることで自然に身に付けていくことができるといいます。
頭で考えるのではなく、感覚的に身に付けば大きくなってからも文章を書くのに苦労しなくなるでしょう。
懸念されるのは、子どもたちの「ことば力」の低下
子どもたちの学力低下が叫ばれる中においても、国語力の低下はそんなに危惧するものではないと言われることがあります。
しかし、いわゆる「学校の勉強」以外の日常生活における、子どもたちの「ことば力」は確実に落ちているとされています。
学校の勉強によく出てくる漢字の書き取りや、ことわざの解釈は、真面目に勉強している子であれば、ある程度身に付けることができます。
しかし、中高生くらいの子どもを持つ親たちは子どもとの会話の中で、勉強には出てこない「ことば」や「ことわざ」を子どもが知らないことが多く、驚くこともあるそうです。
日本語には、日本人の感性が生み出した個性豊かな表現がありますが、この20~30年間の生産第一主義がもたらした環境の変化により、自然や情感を基礎にした日本語の特性が揺らいでいることが、近年問題視されています。
流行りことばやカタカナ語を使うことが悪いとは言えませんが、さまざまな年代やジャンルの本に触れることによって、語彙力を増やし、豊かな表現を身に付けることができるでしょう。※2
※1:塚田泰彦 2014年『読む技術 成熟した読書人を目指して』創元社
※2:紀田純一郎 2005年『読書三到―新時代の「読む・引く・考える」松籟社
読書で身に付く力②想像力
読書は、国語力だけでなく豊かな想像力を養うことにもつながります。
人間は古くから、事実や現実を超えた世界を空想したり想像したりすることによって、知識の幅をひろげ、精神的にも物質的にも、より豊かな世界を作り上げてきましたが、小さい子どもにそのインスピレーションを与える手段のひとつが読書と言えるのです。
想像や空想によって実体験を補える
当然のことながら、人はこの世界で起こることのすべてを知ったり体験したりすることはできません。
しかし、本の世界で起こることを通して追体験ができれば、その状況や感情を想像することができるようになります。
例えば、本の中で悲惨な状況を目の当たりにし、その状況について想像をふくらませることで、「死」について恐怖を感じたり、辛い人たちの気持ちに寄り添ったりすることができるようになるのです。
インターネット全盛の時代であり、情報はIT機器から入手できると思われがちではありますが、年齢的にも技術的にもコンピューターを自在に扱えない子どもや高齢者にとって、直接的な体験を補う想像力を養ってくれるのは、やはり本=ことばということになります。※3
字面や行間から世界を作り上げられる
読書は、文字だけが並んだ字面を頼りに、いろいろと思考をめぐらせて文章を「意味化する過程」という点でも、想像力の構築に役立つと言えます。
字面から、リアルな状況や風景を思い浮かべるだけでなく、「行間を読む、行を越えて読む」ことをしながら、登場人物や著者の心情にも思いを馳せることができるのです。
そうして、そのページ全体から受け取った一つひとつの情報を統合することで、本の中の世界を自由に頭の中に作り上げることができるようになります。※1
なぜ、想像力が必要か
筑波大学の黒古一夫教授は、以前から危惧されていた若者の「共同、協同性」の喪失が近年顕著であることを憂慮し、その理由は、「ことば」のもつ二面性(=伝達機能と表現機能)のうち表現機能がないがしろにされ、想像力が低下した結果だと主張しています。
彼らが、世界で起こっている不幸な出来事を他人事としてしかとらえられなかったり、マニュアル通りにしか物事を進められなかったりするのは、「ことば」を発する人間の内部をいかに表現し、受け取るかということを学んでこなかったためだと考えられているのです。
人は、想像力を駆使することによって、世界に起こるさまざまな現象と向き合い、自律的な判断、行動、思考の指針とするものです。
他者との共生は、他人を思う想像力があってこそ成り立つものであり、一人では生きていけない人間にとって、想像力は必要不可欠のものと言えるでしょう。※3
※1:塚田泰彦 2014年『読む技術 成熟した読書人を目指して』創元社
※3:山本順一・二村健 監修/黒古一夫・山本順一 編著 2007年『読書と豊かな人間性』学文社
自分の枠を超えた体験で、人生が豊かになる
読書は、単に知識や情報を得られる手段であるだけでなく、人間形成の方法のひとつになるとも言われています。※1
読むことによって、本の中の世界が脳裏にひろがり、文字の連続にしか過ぎない文章が次第に何かを伝えるものとなり、読んだ人の心を動かすものへとなり得るからです。
本を読むということは、その本の世界を生きることです。
先ほども、人間はすべての物事を体験できるわけではないことに触れましたが、ひとりの人間が一生のうちでできること、行ける場所などは限られています。
しかし、本を介することによって、人は、自分以外の多くの人の人生を覗き見ることができます。
読書をすることによって、本の中で著者や登場人物が体験していること、行っている場所、考えていることを疑似体験することができるのです。
そうした体験が、本来一人では得られない知識や経験の幅をひろげることになります。
人は、人生を歩む上で知らない道には進めないものです。
例えば、「プロ野球選手」という職業の存在を知らなければ「なりたい」と思うこともないでしょう。
夢を抱けるのは、そこに知識があるからです。
知識の幅をひろげることは、それだけ選択肢の幅をひろげることにつながるのです。
知識の幅をひろげるには、本は絶好のツールのひとつと言えます。
多くの本を読み、知らなかったことを知っていくことで人生の選択肢がひろがり、人生が豊かなものになっていくでしょう。
※1:塚田泰彦 2014年『読む技術 成熟した読書人を目指して』創元社
人生に読書を取り入れられる子にするには
このように、人生を豊かにするのが読書なので、自分の子どもに読書をさせたいと考える方も多いでしょう。
最近は、読書をしない子どもが多いと言われますが、読書をするのも習慣です。小さい頃から大人がサポートして習慣を身に付けさせてあげれば、その子は自然と読書に親しむ生活を送るようになるでしょう。
では、子どもに読書の楽しさを感じてもらい、習慣にさせていくには、どのようなサポートし、どのような本から薦めていけば良いのでしょうか。
まずは、子どもが興味を持つジャンルから
子どもを「読書嫌い」にさせないためには、本人が読みたいものを読ませる、面白いと思うものを読むように促すのが一番です。
どんな読書家にも最初の一冊があり、その一冊に巡りあえたから本を好きになれたはずです。特に、子どもの性格や、声掛けの時期によっては反抗心が強いことがあり、押し付けで読ませた本を「面白い」と感じさせるのは難しいことです。
最初は、「活字なら何でもOK」くらいのスタンスで構え、本人が読みたいもの、面白いと感じるものを読ませてあげるようにしましょう。※4
ただ、実際には子ども自身が、自分から「読みたい」と思う本を的確に探すことは簡単ではありません。
いきなり書店や図書館に行って、本棚に並ぶ無数の本の中から、好きな本を選ぶのは難しいでしょう。
そうした場合は、学校図書館の司書や書店員など、本の世界に詳しい人に相談してみるのもひとつです。
本当に小さい子であれば、親が一緒に付き添いながら、そうした人に相談したり、自分でしっかり話ができる年齢であれば、詳しい人に聞くよう促してあげたりしましょう。
また、図書館や書店がおすすめしているものの中から選んだり、本を紹介しているブックガイドを活用したりするのもおすすめです。
いくつかのおすすめの中から、興味を持てるものを選ばせるようにすると良いでしょう。※5
本に触れる環境をつくり、親が背中を見せる
広島大学教授である山崎博敏氏の研究によれば、小学校2年生までに、「図鑑をそろえてくれた」「参考書をそろえてくれた」「絵本をよく読んでくれた」「図書館や美術館に連れて行ってくれた」といった経験をしている子が、小学校高学年や中学生になっても、「時間を見つけて物語や小説を読んでいる」ようです。
また、「家の人が文学作品や小説を読む」場合や、「家に本がたくさんある」場合に、子どもも家庭で読書をする習慣を持っていることも発表されています。
つまり、幼少期の体験や家庭環境が、家庭での読書習慣に関係していると考えられるのです。
普段から身近に本があれば、それだけ本に触れることが習慣になりやすいですし、親が面白そうに本を読んでいれば、子どもも本に興味を持つのは自然の流れです。
子どもに読書をさせたいなら、家に本を揃え、大人が面白そうに読書をしてその背中を見せるのが、効果的と言えるでしょう。※6
※4:豊﨑由美 2009年『勝てる読書』河出書房新社
※5:東京学校図書館スタンプラリー実行委員会 2017年 『学校図書館の司書が選ぶ小中高生におすすめの本300』ペリカン社
※6:山崎博敏 2008年『学力を高める「朝の読書」』メディアパル
まとめ
活字離れ、読書離れが進んでいると言われる現代ですが、このように読書には多くのメリットがあります。
まずは、子どもに読み聞かせたり、読むのをサポートしてあげたり、一緒に読書習慣を身に付けるところから始めてみてはいかがですか?
親子で良い本を探すのも、楽しい時間になるはずです。