中学は私立と公立どっちがいいの? 公立中高一貫校と私立中学の違い

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小学校までは公立でも、中学は私立にすべきかと悩む人も多いでしょう。
義務教育で学費も高いのに私立に入れる必要が果たしてあるのか、公立にも中高一貫校があるし、それで十分なのではないかなど、悩みのタネは尽きません。
この記事では、私立中学と公立中学、特に公立中高一貫校と私立中学校の違いに着目して、それぞれの特徴をご紹介します。

目次

  1. 私立と公立中学の入試方法の違いは?
    • そもそも、公立中高一貫校とは?
    • 私立中学校と公立中高一貫校の入試方法の違い
    • 併願受験は総合力アップのチャンスにも
  2. 公立は本当に学費が安い?
    • 授業料そのものの比較
    • 私立中学では通塾不要なこともある
    • 部活によっては公立でも高額な費用がかかることも
  3. 子供にあった環境選びを
    • 本当に重視すべきことは何かを見極める
    • 各学校の特色をしっかり確認する
  4. 中学受験は本人の希望も重要
    • 前向きな受験のためには、本人の納得感が必要
    • 学校説明会や文化祭の見学はできるだけ子供と一緒に
  5. まとめ

私立と公立中学の入試方法の違いは?

少し前までは中学受験というと、国立と私立の二択でしたが、最近では第三の選択肢として公立中高一貫校が話題に上ることも増えてきました。
中高一貫というと私立学校のイメージを持っている方も多いと思いますが、公立の中高一貫校は私立とどう違うのでしょうか?
まずは公立中高一貫校についての概要と、入試方法の違いについてご紹介します。

 

そもそも、公立中高一貫校とは?

公立の中高一貫制度は1999年に始まった、比較的歴史の浅い制度と言えます。
そのため、中学受験というと私立中学の受験を指すと思う方が多いですが、公立中高一貫校は近年私立中学校にも並ぶ注目を集めています。

公立中高一貫校の実質倍率は軒並み高く、都内では5倍以上の学校が多く、難関私立中学の倍率が3〜4倍程度であることを考えると、その人気ぶりがうかがえます。※1
その人気の背景には、通常の公立中学と同じ経済的な負担で、中高6年間を通した一貫したカリキュラムで高い水準の教育が受けられることがあります。

通常の公立中学の場合、高校入試のための受験勉強に多くの時間を割く必要がありますが、公立中高一貫校の場合は私立の中高一貫校と同様に、高校にそのまま進学できることも魅力です。
そのため、公立中高一貫校では特色あるカリキュラムを取り入れている場合も多く、そういった独自性に惹かれて進学を決める家庭も多くあります。

 

私立中学校と公立中高一貫校の入試方法の違い

私立中学校と公立中高一貫校では、入試方法にも違いがあります。
私立中学では、小学校の学習範囲にとどまらず、幅広く出題されることが一般的ですが、公立中高一貫校では、出題範囲は小学校の学習範囲に限られます。
そういうと公立中高一貫校の方が、難易度が低いと感じられるかもしれませんが、実は一概には比較できません。

というのも、公立中高一貫校では適性検査と呼ばれる入試方法が一般的で、これは文章やグラフ、イラストといった出題内容を正確に理解して、自分の持っている知識と組み合わせて考える必要があるからです。
これが、私立中学入試は「受験」というのに対し、公立中高一貫校の入試は「受検」と、同じ読み方ですが異なる漢字で表現されることがある理由です。
また、私立中学ではきちんと正解の決まった問題が多く、減点式で採点されることが一般的であるのに対し、公立中高一貫校の適性試験は、思考力を問ういわば「正解のない問題」が多く、加点式が多いです。
そのため、私立の特に難関校を受験する場合には小学校の授業だけで臨むことは難しいですが、普段から本を読んで感想文を書く習慣があるなど、考える訓練ができている子どもであれば、公立中高一貫校の入試は十分対応できそうです。

 

併願受験は総合力アップのチャンスにも

公立中高一貫校は、知識レベルは小学校の教科書の範囲で問題ありませんが、自分で物事を筋道立てて考える「論理力」を問う試験といえます。
では私立中学受験の場合は単に豊富な知識さえあれば合格できるのかというと、そんなことはありません。
特に難関校では、自分の持っている知識を応用して考える力を問う問題も多く、論理力自体は私立中学の受験でも必要とされる能力です。
私立中学校と公立中高一貫校の入試は全く違うからと、本当はギリギリまでどちらに進学するか迷っていても併願を諦めるという保護者の方も多いかと思います。
しかし実は、私立中学校も公立中高一貫校も、論理力を問う試験という意味では共通しています。

特に、私立中学の受験を目指しているお子さんであれば、すでに知識は十分ありますので、あとはその知識の使い方を学びさえすれば、公立中高一貫校の入試にも十分に対応できるでしょう。

 

また、公立中高一貫校の受検対策を通して論理力を磨けば、その後の大学入試にもつながる総合力をつけることができるでしょう。
逆に公立中高一貫校一本で考えているという場合でも、それまでに鍛えてきた論理力は私立中学受験でも、十分武器となります。
考える力のある子どもは、知識の吸収も早いものです。
視野を広げて私立中学受験にも目を向けてみると、私学の意外な利点に気付くかもしれません。
「うちの子には無理だから」と諦める前に、フラットな視点で両者を比較する価値があるのではないでしょうか。

※1:湘南ゼミナール 受験情報 公立中高一貫校受検情報 「表4 公立中高一貫校の受検倍率」/2019年2月13日現在
https://www.shozemi.com/jyukenjoho/ikkan/pdf/ikkan_table2.pdf

公立は本当に学費が安い?

子育て費用、実際にかかる費用は?無理のない貯め方は?

の記事でご紹介している通り、子育ての費用は1人あたり2000万円、3000万円と言われています。

そんな中、公立中高一貫校の魅力は、何と言っても学費の安さです。
普通の公立中学と変わらない授業料で、一般的な公立校よりも充実した教育を受けられるというのが人気の理由ですが、実際、私立中学に進学した場合とどのくらい違うのでしょうか?
授業料そのものだけではなく、塾代や、部活にかかる費用なども含めて考えてみましょう。

 

授業料そのものの比較

もちろん地域や学校によって差はありますが、公立中高一貫校の授業料は年間25~30万円なのに対し、一般的な私立中学の授業料は年間100万程度です。
また、私立中学校の授業料は公立よりも幅が大きく、高額な中学ですと年間150万円ほどかかる場合もあります。※2
このように、授業料そのものだけで比較すると、やはり私立よりも公立中高一貫校の方が圧倒的に安いことがわかります。
しかし、入学してから卒業までにかかる費用は授業料だけではありませんので、他の出費も含めて総合的に判断しましょう。

 

私立中学では通塾不要なこともある

授業料の次に大きな負担となるのが、塾や家庭教師など、学校外での教育費です。
他の公立中学・高校と比べて教育水準が高いとはいえ、公立中高一貫校ではやはり難関大学を目指す子どもの多くは塾に通っているという現状があります。

それに対して私立中学の中には、授業後の学習に力を入れている学校も多く、学校が塾のような役割を果たしてくれる場合もあります

そうなると、授業料では軍配があがる公立中高一貫校ですが、塾に通わせたり家庭教師をつけたりすると、結局教育費は膨れ上がってしまう恐れがあります。
特に、しっかり一人一人を指導してくれる個別指導塾や家庭教師は月謝が高く、個別指導型の塾の授業料は週に1回1科目だけの通塾で、月1万以上します※3

特定の科目だけ塾に通って補強するというのであれば現実的ですが、成績がふるわず全科目塾が必要…なんてことになると、経済的負担ももちろんですが、子ども自身にとっても負担となります。

そのため、一概に公立中高一貫校だから教育費は安いとは言えない場合があり、すべてが学校内で済んでしまう私立中学を選ぶことが結果的に賢い選択だったといえるケースもあるかもしれません。

 

部活によっては公立でも高額な費用がかかることも

公立中高一貫校でも、お子さんが選んだ部活によっては予想外の出費が生じる可能性もあります。
例えば、吹奏楽部では、楽器の値段は中高生の使うものでも数十万円することも珍しくありません。
学校の楽器でできなくもないですが、お子さんが一生懸命演奏する姿を見てしまうと、やはり自分の楽器を買ってあげたいと思うのが親心です。
そうなるともはや1年の授業料分が吹き飛ぶような出費になります。
道具が高額ではない部活でも、遠方の学校との交流試合や合宿など、出費がかさむ部活は意外と多いものです。

※2:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」/2019年2月13日現在
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/22/1399308_3.pdf

※3:城南コベッツ 塾の選び方ガイド 「個別指導塾、料金は高い?安い? 費用相場を見てみよう」/2019年2月13日現在
http://www.covez.jp/guide/002.html

子供にあった環境選びを

義務教育なので試験を受けずに進学することもできる小学校や中学校をわざわざ受験することは、「親のエゴ」と揶揄されることも少なくはありません。
たしかに、まだ10歳程度の子どもが「自分の意思で受験したい」と言ったとしても、そこには親の意思が強く介入していることは間違いありません。
しかしこれは、まだ濃密に関わったことのある大人がまだ両親と先生だけという経験の浅さによるものですので、親がそれを後ろめたく思ったり、恥じたりする必要はありません。

 

本当に重視すべきことは何かを見極める

中学受験(受検)をするとなると、どうしても気になるのが周りの目やインターネットなどの評判です。
しかし、自分が「子供に受験させたい」と思う理由は一体何故なのでしょうか?
それは間違いなく、子どものためを思ってのことでしょう。
しかし周りの雑音に惑わされて「少しでも偏差値の高い中学に」という目的のすり替えが起こってしまう場合があります。
そんなときは、少し立ち止まって本当に大事なこと、つまりお子さん自身の今後について冷静に考えてみてください。
情報があふれている現代、自分の価値観を貫くというのは簡単そうでいてなかなか難しいものです。
子どものことを第一に考えて、何がベストかを探っていくことが大切です。

 

各学校の特色をしっかり確認する

昔はいい大学に入って大企業に入ることが成功だと見なされていましたが、価値観が多様化した現代では、さまざまなキャリアパスが想定されます。
そのため、教育の現場でも、どんな状況でも柔軟に対応できる「人間力」を育む教育方針の学校が増えてきています。
実際、勉強だけでなく部活動や他の課外活動などをバランスよく取り入れた中学校が人気を集めています。
海外志向が強い中学や、理科に力を入れている学校など、特に私立ではそれぞれの中学にそれぞれ違った特色があります。
学校は塾とは違って、総合的な学びの場です。
カリキュラムの編成や学校案内などをみると、その学校の「育てたい人間像」がわかりますので、その理念に共感できるかどうかを、受験の前にしっかり確認する必要があるでしょう。

 

中学受験は本人の希望も重要

中学受験をするのはまだ小学6年生の子どもですので、中学受験ではついつい親が先走りがちになりますが、本人の希望も大切です。

 

前向きな受験のためには、本人の納得感が必要

子ども自身が受験に納得していないまま勉強をしても成果は上がりにくいですし、何より中学に通うのは子ども自身ですので、本人が「この学校に行きたい」と思うことが大事です。
もしかしたら、「友達がみんな公立の中学に行くから僕もそこがいい」など、大人からみると無邪気すぎる理由で受験を拒むかもしれません。
頭ごなしに否定してしまいたくなるかもしれませんが、子どもにとって親の言葉は、想像以上に影響力があります。

そんなときにも、お子さんがなぜそう思うのかを、しっかり聞いてあげてください。
内気な子であれば、本当は新しい環境に興味はあるけれど馴染めないのではないかと心配しているのかもしれませんし、単純に仲のいい友達との別れが辛いのかもしれません。

不安な気持ちを聞いてもらうことで、気持ちの切り替えができ、親の話にも耳を傾けてくれるようになるのではないでしょうか。

まだ小学生とはいえ、相手ももう立派に感情を持った人間です。
自分自身の気持ちがないがしろにされていると感じると、前向きな気持ちにはなれないものです。
十分に親子で話をして、納得感を持って受験に臨んでもらうようにしましょう。

 

学校説明会や文化祭の見学はできるだけ子供と一緒に

最近は学校のパンフレットを取り寄せるまでもなく、インターネットで多くの情報を得ることができますが、実際に足を運んでみることは依然として大事です。
ホームページやパンフレットだけからでは伝わってこない雰囲気や、実際の生徒の様子なども自分の目で確認できるからです。
保護者にとっては「この学校で学ぶ我が子」を想像することができますし、お子さんにとっても、小学校とは違う新たな生活に想いを馳せて、勉強のモチベーションアップにつながるでしょう。
学校説明会や文化祭の見学など、実際に学校を見学できる機会があればできるだけお子さんと一緒に参加して、学校選びの参考にすると良いでしょう。

 

まとめ

中学校選びは、のちの高校受験や大学受験、ひいては就職にも関わる第一歩です。
公立と私立はそれぞれに良さがあるため、迷われる保護者の方も多いでしょう。
しかし公立・私立にかかわらず、どの学校もそれぞれ違った特色があります。
候補となる学校の学風や特色と、お子さんの個性をしっかり見極めて、保護者だけでなく子ども自身も納得した学校選びができるといいですね。

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