小学校入学準備、1年前から取り組むポイント

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子供が幼稚園や保育園で年長さんと呼ばれるようになると、急に見えてくる小学校への道。

親は小学校入学を控えた子供たちと、どのようなことを準備していけば良いのでしょうか。

もちろん、必要な用具をそろえることも「入学準備」ではあります。

しかし、子供が明るく楽しく小学校に通えるようになるためには、親と子の生活の中で培うべきことがたくさんあります。

ここでは、小学校入学の1年前から始めたい「準備」についてお伝えします。

目次

  1. 小学校入学で大きく変わる、子供たちと親の生活
    • 保護者の「子供の自立を見守る姿勢」が重要
  2. 小学校入学前、これだけは整えておきたい生活習慣
    • 子供の自立心、社会性とは
    • 日常の生活の中で身に付けていくのがベスト
  3. 何事も「経験」すれば、子供は大きく成長する
    • 子供の経験値を高め、集団生活へ飛び込む準備を
    • 親が考える「悪いこと」と、子供が経験すべき「悪いこと」の違い
  4. 小学校入学は生活習慣やコミュニケーション能力から

小学校入学で大きく変わる、子供たちと親の生活

子供が小学校に入ると手が離れると思われがちですが、実は低学年の頃は幼稚園や保育園のときとは違う問題に直面し、さらに慌ただしくなります。
これが、ここ数年問題となっている「小1の壁」です。
今回は、これについて考えてみます。

 

・学童保育と保育園生活の違い

まずは、共働き世帯には切実な問題となる、学童保育と保育園生活の違いについてです。
共働き世帯が増えたことにより、地域によっては学童保育が足りず、子供たちが安心して過ごせる放課後の居場所が足りていません。
また、学童保育での預かり時間は6時半頃までであることが多く、保護者のお迎えが間に合わないこともあります。
こうした放課後の子供の居場所の確保が最初の壁となります。※1

 

・家庭での子供の時間の確保

次に、家庭での子供の時間の確保です。※1
小学生になると、当然宿題があります。
学童保育中には遊びに夢中で宿題が出来ないことはよくありますし、音読など必ず親のチェックがいるものもあります。
さらに、翌日の準備も子供が自分ですることになるため、親が準備をしていた頃よりも遥かに時間がかかります。
子供がやらなければならないことは急に増えますが、小学生になったからといって、急に効率よく動けるようにはなりません
帰宅から就寝までの時間、場合によっては早起きをするなどして、効率よく時間を使わなくてはなりません。

 

・遊びや体験から、勉強・学習の世界への変化
幼稚園や保育園は主に、遊びを中心とした活動や育成の場ですが、小学校は教育の場です。
そのため机に向かって行う学習の時間が圧倒的に増えます。(※2)
このカルチャーショックが、子供にとっての壁となるのです。 (※3)
成長とともに、子供もその変化に慣れてきますが、しばらくは親も授業内容に興味を持ち、取り組みを褒めながら応援してあげましょう。

 

・家庭に求めること

さらに、小学校からの「家庭に求めること」に対する壁があります。※1
例えば、保育園は両親共に働いていることが前提ですので、園からの要望には配慮がありました。
しかし、小学校はその前提がなく、子供の宿題、持ち物準備などについては、家庭でしっかりフォローすることが求められます
学校からの求めに対応することが、忙しい親にとっての壁になることがあります。
子供自身で宿題や持ち物の管理をできるよう、子供のペースに合わせ、なるべく早いうちから親子で取り組みを始めましょう。

保護者の「子供の自立を見守る姿勢」が重要

特に共働きの両親にとって、小1の壁は大きく、戸惑うことも多いでしょう。(※1)
やらなければならないことは多くなりますが、その目的は子供の健やかな成長、自立です。
目的を見失わず、子供に無理なく小1の壁を乗り越えるためには、何をすれば良いのでしょうか。

 

まずは、放課後を過ごす子供にとって家庭と同等に安心安全な場所を確保します。(※1)
学童保育を利用するなら、その環境にも関心を持ちましょう。
また、子供は、親が驚くほど急に成長することもあれば、場合によってはとても時間がかかることもあり、それは一人一人全く違います。
慌ただしい毎日の中で、つい翌日の準備などを親がやってしまいたくなりますが、できる限り、子供のペースで成長を見守りましょう

 

そして、小学校での様子を知るには、子供の話をたくさん聞くことです。
小学校での生活が気になると、つい質問ばかりしてしまいがちですが、なるべく子供が自発的に話してくれるよう聞き役になり、話しの内容に共感や関心を示しながらコミュニケーションをとりましょう。

小学生になったからといって、急に自立できる子供はいません。(※4)
まずは一人で家まで帰って来られること、次は自分からプリントや連絡事項を親に伝えられること、次に自ら宿題に取り組めること、そして翌日の準備をすべて自分でできることなど、段階的に親の管理から離れることをイメージし、慌てずに自立を促すようにします。

※1 保育園を考える親の会 編著 2015年3月20日発行 「小1のカベ」に勝つ 実務教育出版
※2 文部科学省 幼児期の教育と小学校教育の接続について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/070/gijigaiyou/__icsFiles/afieldfile/2010/06/11/1293215_3.pdf
※3 東京都教育委員会 小1問題・中1ギャップの予防・解決のための「教員加配にかかわる効果検証」に関する調査 最終報告書 第1章 これまでの経緯
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2013/04/DATA/60n4p201.pdf
※4 板倉弘幸 編著 2009年3月発行 ベテラン教師のアドバイス:親がする小学校入学までの準備ポイント 明治図書

小学校入学前、これだけは整えておきたい生活習慣

子供の自立心、社会性とは

子供の自立心や社会性は、小学校生活を送る中で、子供自身が身に付けて行かなければならないものです。
そのために入学前に身につけておきたい生活習慣を5つご紹介します。

 

1つ目は、小学校では「自分のことは自分でやる」というルールを理解することです。※4
幼稚園・保育園のように、身の回りのことを先生に手伝ってはもらえません。
トイレで用を足す、靴を左右間違えずに履く、自分の席に座る、指示されたものを机から取り出すなど、一人でするべきことを入学後に慌てて教えるより、入学前から一つひとつお手本を示しながら教えます。

 

2つ目は、あいさつと返事ができるようにすることです。※4
明るくはっきりとしたあいさつは相手に好感を与え、コミュニケーションを円滑にする基本となります。
自主的にあいさつができるよう、普段から家庭内でもあいさつを省略しないこと、外では親が積極的に人にあいさつをする姿を見せるようにしましょう。
また、あいさつと同様に、返事も大切です。
元気な返事は好感が持たれるだけでなく、「はい」と返事をすることで、子供自身が話しを聞く気持ちになります。
普段の生活の中で、できるだけ子供の名前を呼び、返事ができたら「いい返事だね」と褒めましょう。
そして「お母さん」と呼ばれたら、必ず子供の方を向いて、「はい」と返事をしてあげてください。

 

3つ目は、約束や決まり事を守れるようになることです。※4
小学校生活では、いくつもの約束や決まりごとがあります。
子供たちにとっては窮屈に感じることもあるでしょう。
しかし、集団生活には必ずルールがあり、楽しく学校生活を送るためにも守らなければなりません。
例えば時間のルールです。
登校時間やそれぞれの授業の開始時間、提出物の期限など、「いつまでにやらなければならないこと」がとても多くなります。
時間への意識や、期限に対する責任感は、急には芽生えません。
家庭でも、食事の時間、登園時間、就寝時間などを子供自身が意識するように促し、その経験を積み重ねることが大切です。

 

4つ目は、ワガママを抑えられる、我慢ができるようにすることです。※4
我慢ができないと集団生活では必ずトラブルになります。
日常生活の中では、何でも許してしまうのではなく、必要な制限を設けましょう。
制限やルールに対して「なぜダメなのか」「どうすれば良いのか」を示し、その制限の中で子供が我慢するだけでなく、自分なりの楽しみを見つけられるように導くことが重要です。

 

5つ目は意外ですが、和式トイレの利用、排便後の処理などができるようにすることです
入学して、思いがけない落とし穴となるのが和式トイレです。※4
小学校にも洋式トイレが増えていますが、和式の学校もありますし、校外へ出かければ和式トイレしかない施設もあります。
和式トイレに慣れていないと、やり方を知らない、知っていても上手く使えない、何となく怖いなど、トイレに対する負の感情を抱いてしまい、排泄行為が自立できなくなります。※1
すると、排泄を我慢してしまい、外へ出たがらなくなってしまうこともあります。
また、排便後の処理も自分でできるようにしておきます。※4
ここに不安があると、学校での排便を避けてしまうようになります。※5
毎朝、家で排便を済ませる習慣も大切ですが、学校でも問題なくできるよう、家で練習しておきましょう。 

日常の生活の中で身に付けていくのがベスト

次に、日常生活の中で事前に浸透させておきたい意識や理解について、ポイントを3つご紹介します。

 

1つ目は、小学校には色々な人がいると伝えておくことです。※5
多くの場合、幼稚園・保育園よりも、小学校の方が規模は大きくなり、さまざまな性格や背景を持つ子供が集まります。
中には、子供にとって驚くような言動をする子もいるでしょう。
日頃から色々な人とコミュニケーションをとる機会を作り、自分と違う言動をする子、違う価値観を持つ子への対応に慣れておくことです。

 

2つ目は、子供は「学校と保護者のメッセンジャー」になると理解させることです。※5
幼稚園・保育園とは違い、小学校ではプリントをランドセルから出して親に渡すのも、先生に提出するのも子供の役目です。
ノートや口頭で伝えるべきこともあるでしょう。
子供自身、自分が学校と親を繋いでいるという意識がなければ、双方に必要な情報が届かなくなってしまいます。
幼稚園・保育園での生活の中でも、子供自身がプリントや持ち帰ったものをカバンから取り出し、確認する練習をしておきましょう。

 

3つ目は、ひらがなの読み書きを入学前にマスターしておくことです。※4※5
「ひらがなは小学校で習うので、入学前に覚える必要がない」という考えもありますが、実際は、覚えておいた方が良いようです。
ひらがなを覚えていないと、1年生からはカタカナや漢字も学習しなければならず、授業の内容がなかなか入って来なくなり、学習についていくことがとても大変になります。
子供が1年生の授業をスムーズに楽しく受けられるようにするためにも、ひらがなの読み書きはマスターしておいた方がいいでしょう。

 

ひらがなを覚えるのにベストな年齢は4~5歳です。

その他、ひらがなの教え方や、覚えるコツは、こちらの記事でご紹介しています。

ひらがなは何歳からどう教えるべき?ベストなタイミングと教え方はコレ!

 

これらのポイントは、一朝一夕で身に付くものではありませんし、身に付けていくスピードには個人差があります。※4
親が「どうしてできないの!」という態度になれば、子供は覚えようという気持ちにはなりません。
子供のペースを見ながら、子供自身が一つひとつを身に付けていけるよう、客観的に見守る態度で接していきましょう

※1 保育園を考える親の会 編著 2015年3月20日発行 「小1のカベ」に勝つ 実務教育出版
※4 板倉弘幸 編著 2009年3月発行 ベテラン教師のアドバイス:親がする小学校入学までの準備ポイント 明治図書
※5 立石美津子 著 2016年2月発行 小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと 中経出版

何事も「経験」すれば、子供は大きく成長する

子供の経験値を高め、集団生活へ飛び込む準備を

ここでは、特に小学校入学前に経験させておきたいことを、4つご紹介します。

 

1つ目は、自然体験や飼育、栽培体験などを通じて、知識や考える力、生きる力を育んでおくことです。※4
自然体験には、キャンプやサイクリング、登山や星空観察などがあります。
自然の中で五感を働かせて過ごし、土や木に触れ、生命の誕生や終わりに遭遇することで、命を大切にする心を育みます。

 

2つ目は、日本の伝統的な季節の行事にふれておくことです。※4※6
幼稚園や保育園でも、季節の行事を楽しむ活動はあるでしょう。
幼児期は単純にそれを楽しんでいますが、伝統や行事に対する理解が深まれば、日本の歴史や文化に興味をもつきっかけになります。
これは、探求心を育むだけではなく、物を大切にする心や、いわゆる「おもてなし」の心を育てることにつながります。

 

3つ目は、自分に与えられた「役割」を理解することです。※4※5
小学校では、係や委員、給食当番や掃除当番、先生からの頼まれごとなど、様々な役割を担う場面があります。
自分の役割を果たすことは責任感を養い、それを達成することは自信に繋がります。
家庭でもお手伝いという形で子供に役割を持たせ、「手伝ってくれてありがとう」「やってくれたら助かる」という言葉で感謝を伝えましょう。
役割をこなすことで「自分は役に立つ」という自信を持たせます。

 

4つ目は、コミュニケーション力を育むことです。※4
これは、子供が小学校での人間関係を築くために、とてもよい経験となります。
地域行事への参加などで自分の住んでいる土地に多くの顔見知りや友達を作ることができれば、小学校生活の登下校や放課後の遊びでの安全につながるとともに、縦の人間関係を経験することができます。※1
親も積極的に関わり、お手本を見せてあげるとよいでしょう。

親が考える「悪いこと」と、子供が経験すべき「悪いこと」の違い

必要な経験は「良いこと」「楽しいこと」だけとは限りません。
例えば、友達とふざけていて物にぶつかる、公園で無茶な遊びをして転ぶなど、子供にはよくある行動です。

 

しかし、子供がケガをしないようにと、親が止めていませんか?※5
子供は、自分の痛みを知れば、他人の痛みにも優しくできるようになります
よほどの危険が無い限り、このような「悪いこと」は見守る姿勢をとりましょう。

 

また、多くの子供たちが集団生活をすれば、意見の違いや言い争いは、必ず起こります。※4
自分の意見を、相手へ強引に伝えようとすると、ケンカが起こるのです。
暴力を使わなければ、これも悪いこととは言い切れません。
意見が違う相手と歩み寄るためにはとことんまで話合うこと、そのときは暴力に訴えてはならないことを、予めしっかりと教えておく必要があります

そして、ケンカをしたら「しっかり謝ること」「仲直りすること」も教えてください。

 

また、親と子の接し方によっては、子供が力に訴えてくることもあります。
例えば、力の加減が分からない子供は、甘えたいという要求が満たされていないといわれます。※4
このような場合、家庭では、十分なスキンシップを取ることをお勧めします
また、暴力的な子供は、自分の気持ちに従って行動するため、相手のことまで考えが至らないことが多いようです。
単純に「ダメよ」といっても、子供は理解しません。
この場合、子供とママがお互いにぬいぐるみなどを持って、自分以外の存在になりきる遊び方をすると良いでしょう。
遊んでいる途中で、ママはいつもの子供の様子を真似て、少し乱暴なところを見せます。
これを繰り返すと、子供は「相手の存在や気持ちを考えること」を学べるようになります。

このように、体の痛みやケンカによる心の痛みを学べば、「いじめ」がいけないということを理解できる子供になります。

 

そもそもいじめとは何か、なぜいけないことなのかをきちんと話しておきましょう。※1
・集団で仲間はずれや無視をすること
・いじめを見過ごすこと分かっていて見過ごすことは、いじめをすることと同罪
・冷やかすこと
・暴力を振るうこと
というように、具体的に示してあげると、理解しやすくなります。

 

いじめに関する絵本を読んで聞かせ、親子で話し合うこともよいでしょう。

また、自分の子供が「いじめに合っていないか」を把握することも、親のやるべきことです。
普段から学校の様子を聞くようにしていれば、いつもに比べて表情が暗い、学校のことを話したがらない、食欲がないなどの変化があった場合に、早く気づくことができます。
幼稚園・保育園での出来事を聞く習慣をつけ、その日あったことや感じたことを、子供から親に上手に伝えられるようにしておきましょう

 

子供の喧嘩について、くわしい内容はこちらの記事でご紹介しています。

子供の喧嘩、決して悪い事ばかりでは無い?!

 

※1 保育園を考える親の会 編著 2015年3月20日発行 「小1のカベ」に勝つ 実務教育出版
※4 板倉弘幸 編著 2009年3月発行 ベテラン教師のアドバイス:親がする小学校入学までの準備ポイント 明治図書
※5 立石美津子 著 2016年2月発行 小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと 中経出版
※6 東京都教育委員会 日本の伝統・文化理解教育の推進 
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/school/document/tradition_and_culture/files/traditional_culture/dentoubunka.pdf

小学校入学は生活習慣やコミュニケーション能力から

小学校入学までの準備には、たくさんの事柄があります。

ひらがなが読み書きできるようになることも必要ですが、それ以上に挨拶ができる、人の話を最後まで聞く、お友だちと仲良く遊べるなど、生活習慣やコミュニケーション能力を身に付けておくことが必要です。

いずれも、日々の生活での工夫や、ちょっとしたイベントへの参加からでも身に付けられますので、少しずつ、始めてみましょう。

 

そして、小学生になったら次は勉強が待っています。

小学校の低学年ではどれくらいの勉強が必要なのでしょうか。

勉強のポイントと、親のサポート方法について、こちらの記事でご紹介しています!

小学1年生!勉強はどのくらいさせるべき?小学生の力を伸ばす勉強法とは

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