アスパラギン酸は体を作る栄養素!

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アスパラギン酸という栄養素の名前、耳にしたことのある方はどれくらいいるでしょうか。
この栄養素は、元気な体を作る上では欠かすことのできない、大切な栄養素です。
また、体を作るだけではなく、アスパラギン酸は体を動かすエネルギーにもなります。
アスパラギン酸は、どのような食品に含まれているのかを知り、不足しないようにしっかりと摂取していきましょう。

目次

  1. アスパラギン酸とは
    • アスパラギン酸はアミノ酸
    • アスパラガスから発見されたアスパラギン酸
  2. アスパラギン酸の働き
    • アスパラギン酸は体を作る
    • アスパラギン酸の健康パワーとは
  3. アスパラギン酸を上手に摂取しよう
    • アスパラギン酸を多く含む食品
    • アスパラギン酸は砂糖の200倍の甘さ?
  4. アスパラギン酸を摂取する時の注意
    • アスパラギン酸の1日の摂取量
    • アスパラギン酸を摂取する時の注意
  5. まとめ

アスパラギン酸とは

アスパラギン酸はアミノ酸

人が生きていくためには、食べ物から栄養を摂取していかなければいけません。
中でも糖質、脂質、たんぱく質は大量に摂取する必要があり、日々の食事で欠かすことのできない大切な栄養素であることから、三大栄養素と呼ばれています。※1、2、3
アスパラギン酸は、この三大栄養素である、たんぱく質を構成するアミノ酸の一種となります。
たんぱく質は、英語ではプロテインです。
語源は、ギリシャ語の第一のものです。※2

たんぱく質は、強固な結合力であるペプチド結合により、たくさんのアミノ酸同士がくっついたものです。
ペプチド結合はとても壊れにくい性質を持っているため、たんぱく質となったアスパラギン酸などのアミノ酸を分解するには、塩酸に溶かし、加圧窯で24~48時間煮なければいけません。※2 

アミノ酸は、アスパラギン酸を含め、全部で20種類あります。※1、2、3
これらのアミノ酸の種類や量、配列順序などにより、たんぱく質の形状や性質、働きなどが異なります。
たった20種類のアミノ酸から作り出されるたんぱく質は、約10万種類にもなり私たちの体を構成しています
アミノ酸だけで構成されたたんぱく質は、単純たんぱく質と呼ばれています。
糖やリン酸、色素などの成分も含まれたものは複合たんぱく質と呼ばれています。※2
自然界では、アミノ酸は数百も存在していますが、人に必要とされる成分は限られています。
アスパラギン酸は、非必須アミノ酸に分類され、体内において、糖質や脂質から作り出すことができるアミノ酸となります。※1、2、3
同じような非必須アミノ酸には、システインやグルタミン酸、アルギニンなど11種類があります。
また、アミノ酸の中には体の中で合成することができないものもあります。
これは、必須アミノ酸や不可欠アミノ酸といい、トリプトファン、イソロイシン、ロイシンなどの9種類があります。※1、2、3
アスパラギン酸は、体内で合成することができるため、摂取する必要ないと思われるかもしれませんが、アミノ酸は一つでも欠けてしまうと体内のバランスを崩してしまいます。
アスパラギン酸が体内で不足しないよう、食品からも摂取することが大切です。※2、3

アスパラガスから発見されたアスパラギン酸

アスパラギン酸は、アミノ酸の中でも、最初に発見された成分となります。※3、4
アミノ酸は、遊離の状態で自然界に存在しています。
そのため、アミノ酸の発見は、たんぱく質や植物などが加水分解されたものの中から、発見されました。
アスパラギン酸が発見されたのは1806年です。※3、4
フランスの科学者が、アスパラガスの芽の煮汁の中から、アミノ酸を結晶として取り出すことに成功しました。
この成分は、アスパラガスにちなみアスパラギン酸と名付けられました。
その後、1810年には尿結石の中から、別の種類のアミノ酸が発見されます。
アスパラギン酸を皮切りに、肉や羊毛といったいろいろなものからアミノ酸は次々と発見され、1930年には人間のたんぱく質を構成する全てのアミノ酸が見つけられました。※3、4
中でも1888年から1903年までの15年間には11種類が集中的に発見されたことから、この時代はアミノ酸の発見においては開花期ともいわれています。※4 

参考

※1 e-ヘルスネット アミノ酸(あみのさん) / 2020年12月25日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-001.html
※2 中村丁次監修 2020年3月発行 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版
http://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415327433/ 
※3 中嶋洋子・蒲原聖可監修 2017年10月発行 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 主婦の友社 
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784074258406
※4 化学と生物 Vol.11 No.1 アミノ酸の新しい分離法の試み / 2020年12月25日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/11/1/11_1_13/_pdf

アスパラギン酸の働き

アスパラギン酸は体を作る

アスパラギン酸の体内での働きは、体を作ることです。
肉や魚といった食べたものが人の体内へ送り込まれたとしても、これらの成分がそのまま体内で使えるというわけではありません
摂取された食べ物は、体内の酵素によって何度も繰り返し分解が行われることで、アミノ酸にまで分解されます。
その中にアスパラギン酸が存在していることになりますが、この形になって初めて、新しいたんぱく質合成などの材料として使われることになります。
つまり、私たちが摂取したたんぱく質は、一旦アミノ酸に分解されてから体内で吸収され、再びアミノ酸が連結し、たんぱく質となっているのです。※5、6

人間の全身のうち、約20%がたんぱく質となり、たんぱく質1gあたりで、およそ4kcalのエネルギーも作り出しています。※1、2
しかし、アミノ酸はどれか一つでも欠けてしまうとたんぱく質を合成することができなくなってしまいます
アスパラギン酸は体内で作り出すことができる成分ではありますが、健康のためにも体内で不足しないよう注意しましょう。
また、同じようにエネルギー源となる脂質と炭水化物には、体内に貯蔵庫のようなものがあります。
そのため、必要な量を体内で利用し、残った栄養素は脂肪として蓄えられるようになっています。※1、2
しかし、残念なことにたんぱく質には貯蔵庫はありません。
過剰に摂取されたたんぱく質は、体外に排泄されてしまうため、たんぱく質は一度に大量に食べても無駄になってしまうことがあります。
私たちの体の中でたんぱく質は、必要な量を合成し、過剰な分は分解して尿素となり、尿の中に排泄されています。
アミノ酸はたんぱく質を構成しますが、アミノ酸の一つであるアスパラギン酸は、多すぎても少なすぎても体にとっては良くありません。
適切な量を少しずつ、毎日摂取していくことが必要なのです。※1、2

アスパラギン酸の健康パワーとは

アスパラギン酸には、体を作る以外にも、体を元気にするという大きな役割があります。
私たちの体の中では、常に栄養素の分解や合成の仕組みが動いています。
その中の一つ、TCA回路と呼ばれる体の中でエネルギーを作り出す働きの中でも、アスパラギン酸は大切な役割を果たしています。
TCA回路の中でアスパラギン酸は、オキサロ酢酸と反応することで、クエン酸を作り出します。※3、5、6
このクエン酸もまた、元気の素として知られる成分です。
TCA回路でつくられたクエン酸はさらに数回の反応を繰り返し、再びオキサロ酢酸となります。
そして再びアスパラギン酸と反応し……ということを繰り返しながら、エネルギーを作り出します。※5、6

また、アスパラギン酸は人にとって有毒なアンモニアを無毒化し尿素を作りだす、尿路回路(オルニチン回路ともいう)でも利用されます。
体の中でつくられたアンモニアは、肝臓の細胞へ運ばれます。
アンモニアは、肝臓の細胞の中にあるミトコンドリアへと運ばれ、いくつかの反応によりシトルリンに変わります。
シトルリンはミトコンドリアから肝臓の細胞の中に出ますが、同じく肝臓の細胞の中にあるアスパラギン酸が、酵素とともにシトルリンに対して反応してアルギノコハク酸を作り出します。
アルギノコハク酸がさらに別の酵素と反応して、人の体に無毒な尿素を作り出します。
この回路で有毒なアンモニアから作り出された無毒な尿素は、尿の中へと排泄されます。※5、6

さらに、アスパラギン酸には体内へ情報を伝達する原料の役割もあるため、体内では欠かすことのできない大切な栄養素となります。※3
毎日を元気に過ごすためにも、しっかりとアスパラギン酸を摂取するようにしましょう。

参考

※1 e-ヘルスネット アミノ酸(あみのさん) / 2020年12月25日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-001.html
※2 中村丁次監修 2020年3月発行 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版
http://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415327433/ 
※3 中嶋洋子・蒲原聖可監修 2017年10月発行 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 主婦の友社 
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784074258406
※5 前野正夫・磯川桂太郎(著) 2018年2月発行 はじめの一歩の生化学・分子生物学 第3版 羊土社
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758120722/
※6 木戸康博・桑波田雅士・中坊幸弘(編) 2015年1月発行 栄養科学シリーズNEXT基礎栄養学 第3版 講談社サイエンティフィク
https://www.kspub.co.jp/book/series/S020.html

アスパラギン酸を上手に摂取しよう

アスパラギン酸を多く含む食品

体の健康を保ってくれるアスパラギン酸は、どのような食品に多く含まれているのでしょうか。
アスパラギン酸が体内で不足しないためにも、アスパラギン酸を多く含む食品を知っておきましょう。※3

【アスパラギン酸を多く含む食品】※3、7

  • 大豆100g/4400mg(大匙1では572mg)
  • きなこ100g/4700mg
  • 高野豆腐100g/6400mg(1個20gでは1280mg)
  • しらす干し100g/3500mg(大匙1では175mg)
  • 牛乳100g/250mg(コップ1杯200gでは500mg)
  • 豚肉ロース100g/1800mg
  • 牛肉リブロース100g/870mg
  • 大豆もやし100g/890mg

この他にもアスパラギン酸は、鮭やサバなどの魚類にも多く含まれています。
たとえば、塩鮭は100g中2200 mg、塩サバ100g中2500 mgのアスパラギン酸が含まれています。

たんぱく質というと、肉や魚、卵といった動物性のものが頭に浮かぶ人が多いと思います。
しかし、たんぱく質は動物性のもの以外に、植物性の食品に含まれている植物性たんぱく質があります。
アスパラギン酸が発見されたアスパラガス(100g中430 mg)や、ブロッコリー(100g中390 mg)などにも含まれていますので、これらの食材を毎日の食事に取り入れ、バランスのとれた食生活を送りましょう。※2、3、7

アスパラギン酸は砂糖の200倍の甘さ?

アスパラギン酸と、必須アミノ酸の一つであるフェニルアラニンがペプチド結合して、メチルエステルで装飾されると、アステルバームという甘味料が作り出されます。
これは1965年にアメリカの製薬会社、G.Dサール社によって開発されたものです。
とはいえ、アステルバームは最初から甘味料として研究されていたわけでありません。
G.Dサール社では、医薬品を開発する目的で、これらの物質を調査研究していました。
この時、研究員が薬を包む紙をとろうと、指を舐めたのです。※8 
その指はとても甘く、研究員は指にアステルバームが付着していたことに気が付きました。
たまたま指に付いたアステルバームを舐めてしまったことから発見されたアステルバームは、砂糖に似た甘さを持ち、1981年にはアメリカで甘味料として使用が許可されることとなりました。※8 

アスパラギン酸から作られたアステルバームは、砂糖と同じカロリーとなりますが、甘味は砂糖の約200倍の強さを持っています。
つまり、実際の使用量は、砂糖の200分の1でも十分に甘味を感じる、ということになりますから、カロリーを摂取したくないという方には強い味方となります。※8
甘味の性質は、サッカリンなど、その他の高甘味度甘味料とは異なり、クセがなく爽やかでスッキリとした味わいだといわれています。
また、後味もないため、砂糖にとても近い自然な甘味料となっています。※8

日本でのアステルバームの使用は、1983年に許可されました。
発売以来、日本では市場開拓と技術開発によって価格が抑えられ、消費量は拡大しました。
清涼飲料や乳製品、菓子など、広い分野でアステルバームは広がっています。※8
アステルバームが、ここまで大きな広がりをみせたのは、安全性の確認がきちんと行われた製品であることも大きく関連しています。
繰り返し行われた入念な安全検査は多岐にわたり、国連でもその安全性は確認されることとなりました。
また、日本の厚生労働省においてもアステルバームの安全性は十分に審議され、確認されています。※8

※2 中村丁次監修 2020年3月発行 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版
http://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415327433/ 
※3 中嶋洋子・蒲原聖可監修 2017年10月発行 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 主婦の友社 
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784074258406
※7 文部科学省 食品成分データベース / 2020年12月25日閲覧
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
※8 日本醸造協会誌 第86巻 第3号 中村圭寛 ダイエット甘味料アスパルテーム / 2020年12月25日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/86/3/86_3_200/_pdf/-char/ja

アスパラギン酸を摂取する時の注意

アスパラギン酸の1日の摂取量

厚生労働省では、健康を維持・増進するために必要な各栄養素の摂取量を定めています。
しかしこの中に、たんぱく質という大きなくくりはありますが、アスパラギン酸はありません。
では、アスパラギン酸が体内で不足しないようにするために、1日どのくらい摂取したらよいのでしょうか。
非必須アミノ酸であるアスパラギン酸は体内でも合成されますが、その量には個人差があり、さらに年齢と共に減少していきます。※2、3、9、10
アスパラギン酸を摂取する時には、アスパラギン酸を多く含む成分であるたんぱく質の摂取量に注意するようにしましょう。※2、3、9、10

たんぱく質は、体重によっても必要量は異なるのですが、成人男女1kgあたりでは約1.1~1.2gが必要量とされています。※2、3、
とはいえ、たんぱく質過剰になってエネルギーを摂り続けることも、体にとっては良くありません。
1日に必要なエネルギーは、年齢や活動量などにより大きく異なるため、まずは自分にあった摂取エネルギーを知ることから始めましょう。※2、3、9、10
摂取エネルギーの計算方法にはいろいろあり、厚生労働省などのホームページでも見ることができるようになっています。
計算方法を知っておくと、生活環境や体重などに変化があった時にも、摂取エネルギーの変化に気づくことができます。
この機会に、自分にあったエネルギーの適量を知っておくようにしましょう。※2、3

アスパラギン酸を摂取する時の注意

アスパラギン酸は体にとって必要な成分ですが、特定の疾患では、アスパラギン酸分解酵素が投与されることがあります。
持病のある方や、医師から処方されたお薬を飲んでいる方は、アスパラギン酸を摂取する時にはかかりつけ医に相談するようにしましょう。※3、11
また、たんぱく質を多く含む食品はカロリーが高いものが多いだけではなく、同じたんぱく質ばかり摂取していると、特定の栄養素を過剰に摂取してしまう可能性もあります。
アスパラギン酸は確かに体には必要な栄養素ではありますが、健康のためにも必要以上に摂取してしまわないよう注意しましょう。※3

※2 中村丁次監修 2020年3月発行 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版
http://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415327433/ 
※3 中嶋洋子・蒲原聖可監修 2017年10月発行 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 主婦の友社 
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784074258406
※9 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 / 2020年12月25日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
※10 厚生労働省 「食事バランスガイド」で実践 毎日の食生活チェックブック / 2020年12月25日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/pdf/eiyou-syokuji8.pdf
※11 日本医師会/日本歯科医師会/日本薬剤師会総監修  2019年7月発行 健康食品・サプリ[成分]のすべて<第6版>~ナチュラルメディシン・データベース日本対応版 同文書院
https://www.dobun.co.jp/shop/tkxcgi/shop/goods_detail.cgi?GoodsID=00000386

まとめ

体を作る成分であるたんぱく質は、いろいろな成分が結合してできています。
その中でも、元気な体を維持してくれるアスパラギン酸は、体内には欠かすことのできない大切な栄養素です。
毎日を楽しく、そして元気に過ごすためにもアスパラギン酸が含まれた食品を、しっかりと摂取していきましょう。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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