ストレスからくる過食をやめたい!原因を知り悪循環に陥る前に対策を

公開日:

嫌なことや不安なことがあると、イライラのストレスを解消するために「やけ食い」をした経験はありませんか?
過食をしてしまう原因として、ストレスは見逃せないものです。
今回は、なぜストレスで過食してしまうのか、その原因とやめる方法を解説します。

目次

  1. なぜ食べすぎる?ストレスで過食になる原因と対策
    • 食欲をコントロールしているものは?
    • ストレスと食欲の関係
    • ストレスからくる過食との付き合い方
  2. 過食を抑えるカギとなる「ストレスコーピング」とは
    • コーピングとは
    • 過食を防ぐコーピングリスト
    • コーピングリストの作り方
  3. ストレスの過食対策に!気を付けたい生活習慣
    • 体内時計を整える
    • 食事は1日3回
    • 睡眠時間を一定に
    • 嗜好品はほどほどに
    • 運動を行う、ただしやりすぎない
  4. 仕事のストレスが原因の過食には「マインドフルネス瞑想」も
    • 仕事でストレスを感じる原因
    • 仕事のストレスにはマインドフルネス瞑想も
  5. まとめ

なぜ食べすぎる?ストレスで過食になる原因と対策

食欲をコントロールしているものは?

普段、お腹が空いたら食事をとり、満腹になったら食事をやめますよね。
これは、「レプチン」と「グレリン」というホルモンによるものです。
脂肪細胞から分泌される「レプチン」というホルモンと、胃から分泌される「グレリン」というホルモンが、脳の視床下部へ伝わります。
そして、食欲を抑える神経「満腹中枢」と、食欲を高める神経「摂食中枢」が働き、食欲をコントロールしているのです。
食欲とホルモンの関係については、
食欲の鍵を握る「レプチン」とは?ホルモンを知って食欲をコントロールしよう

こちらの記事をご参照ください。

 

ストレスと食欲の関係

ストレスを受けたとき、なぜ過食行動が起きてしまうのでしょうか?
ストレスと食欲の関係は、どちらも脳の働きが関係しています。
コルチゾールとドーパミンという2つのホルモンの分泌との関係を見てみましょう。


・コルチゾールとの関係性
ストレスを感じた時に、そのストレス情報は、自律神経やホルモンの分泌、情報伝達に関わる視床下部へ伝わり、次に副腎へと伝わります。
副腎は、「副腎皮質ホルモン」というストレスに抵抗するホルモンを分泌します。
「副腎皮質ホルモン」はコルチゾールや、アドレナリン、ノルアドレナリンといったホルモンの総称です。
強いストレスが続くと、コルチゾールというホルモンの分泌が過剰になります
これによって食欲を抑えているホルモンである「レプチン」の分泌が低下してしまい正常に満腹中枢を刺激することができなくなります。※1※2

 

・ドーパミンとセロトニンの関係性
ストレスを感じることで、脳の大脳辺縁系が興奮し、ドーパミンというホルモンが過剰に分泌されます。
このドーパミンは摂食中枢を刺激し、食欲を盛んにさせてしまいます
結果、過食行動に走らせてしまうのです。※3※4
このドーパミンが過剰分泌されることによって、セロトニンといわれる脳内伝達物質の分泌が低下してしまいます。
セロトニンには、精神を安定させたり、食欲を抑制したりする働きがあります。
セロトニンは、食事をとることで脳に糖分が辿り着くと分泌されます。
さらに、食事によって血糖値が上昇すると、インスリンが分泌され、脳内のセロトニンが増えます。
糖分には抑うつ感を和らげる作用があるといわれているので、ストレスからくる心の揺らぎを解消しようとして、食べ続けてしまうのです。
ドーパミンとセロトニンとストレスの関連性については
ストレスと食べ物の関係を知って、体と心を健康に!

こちらの記事で詳しくご紹介しています。

 

ストレスからくる過食との付き合い方

脳の働きにより、ストレスが過食につながります。
過食の状態になることで、さらにストレスをためてしまい、悪循環に陥ってしまうこともあるでしょう。
ストレスから過食をしてしまう時には、

  • ストレスで過食をしてしまい自己嫌悪感を覚える
  • 食欲に負けて食べてしまった時に自分は弱くてダメだと思う

このように考えてしまう方も多いのではないでしょうか。


こう考えてしまうとストレスの悪循環です。
その弱さも自分らしいことだと前向きに考え、自己を認めることが、過食を続けないための第一歩です。
食べてしまったということを他人の責任に転嫁できたら、食べてしまった自分にストレスを感じることはありません。
さらに、食べること以外のストレス解消法を持っておくことで過食を抑えることができるでしょう。
最近では、コーピングと呼ばれるストレスへの対処法が注目されています。
次章で詳しくご紹介します。

※1「コルチゾール」/ヤクルト中央研究所/2019年9月15日現在
https://institute.yakult.co.jp/dictionary/word_3807.php 
※2「過食」/e-ヘルスネット/厚生労働省/2019年9月15日現在
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-015.html 
※3「摂食制御の神経回路」/脳科学辞典/2019年9月15日現在
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E6%91%82%E9%A3%9F%E5%88%B6%E5%BE%A1%E3%81%AE%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E5%9B%9E%E8%B7%AF 
※4「ドパミン」/e-ヘルスネット/厚生労働省/2019年9月15日現在
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-047.html 
※5「よくわかる心のセルフケア ストレス・不安・うつに負けない」/監修者:貝谷久宣 /株式会社主婦の友社/2019年4月

過食を抑えるカギとなる「ストレスコーピング」とは

ストレスが原因の過食は、コーピングスキルが未熟であるとも言われます。
コーピング(対処)とは、ストレス状況をうまく扱うための認知的・行動的な努力をすることです。
食べること以外で、上手にストレスをコーピングする方法が見つかれば、過食を抑えることに繋がります。
まずは、コーピングについて見てみましょう。

 

コーピングとは

コーピングはいくつかの種類に分けられます。


1.    問題焦点型
ストレスの原因に対して、自分の努力や周囲の協力を得て根本から解決しようとすることです。
解決できない場合に、ストレスの要因(人など)を避けるような回避行動も含みます。
2.    情動焦点型
解決方法がない場合に怒りや不満、悲しみなどの感情を表出する感情発散型と、誰とも話さずに心の中に抑圧する感情抑圧型があります。
3.    認知的再評価型
ストレスの原因に対して、見方や発想を変えたり、距離を置いたりするなど認知の仕方を前向きに変えることです。
ポジティブシンキングともいわれています。
4.    社会的支援検索型
自助努力だけでなく周囲にアドバイスを求めたり、信頼できる人に話したりすることで問題を一人で抱えないことで楽になり心理的安定を得ることです。
5.    気晴らし型
運動や趣味などのいわゆるストレス解消法により気分転換やリフレッシュを図ることです。※7
ストレスによる過食は、食べることでストレスを解消するというコーピング(対処)を積極的に行なっている結果というわけです。

では、過食を抑えるにはどうしたらよいか、続いてご紹介します。

 

過食を防ぐコーピングリスト

過食防止のためには、食べること以外のコーピングを作ることが大切です。
自分でできるなるべく多くのコーピングを書き出し、コーピングリストを作成しておきます。
このリストを実践することで、食べることでコーピングしなくなります。
豊富なアクションを用意しておけば、様々なストレスをその時々に見合ったコーピングをすることができるようになります。

 

コーピングリストの作り方

作成するコーピングリストは、のちに自分のためになることにしましょう。
例えば、ストレスを感じたらお酒を飲むというコーピングだと、自分にも身体にもためになりませんよね。
普段の暮らしの中で取り入れやすいものとしては「気晴らしコーピング」です。
自分がワクワクすることの中から、趣味に熱中する・旅行に行く・マッサージやネイルをする・カラオケに行く・読書をするなど、食べること以外の行動をあげてみましょう。
自分にとって有利になる、ローコスト、健康的、負担の少ない行動的コーピングをリストに入れると良いでしょう。

 

また「大丈夫」と自分に声を掛ける「気にしない」と言い聞かせるなどの、気持ちの切り替えや励ますといった認知的コーピングもリストに入れましょう。
ストレス解消の仕方を誤ってしまうと、また別のストレスにつながってしまったり、将来病気につながってしまったりする場合もあります。
日々の行動に変化をつけて、賢くストレスの対処をしましょう。

※7個人での対応(セルフケア)/公益社団法人日本看護協会/2019年9月15日現在
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/safety/mental/kojin/index.html

ストレスの過食対策に!気を付けたい生活習慣

ストレスが原因の過食対策には、ストレスに強い身体を作ることが大切です。
ストレスから心のバランスも崩れているときもあるでしょう。
そんな時は、寝付けない・朝起きられない・昼夜逆転してしまうなど、生活が不規則になりがちです。
不規則な生活が続くと、心身の回復が上手にできずに悪循環に陥ってしまいます。
そうならないために、規則正しい生活習慣を身につけることが重要です。
規則正しい生活習慣とは、食べる・寝るなど身体のリズムが取れている状態です。
食生活を見直して生活リズムを整える、心の健康のために趣味や気晴らしを持ち、楽しむ、これらを実現するためのアクションをご紹介します。

 

体内時計を整える

体内時計という言葉を聞いたことがあると思います。
体内時計は身体のなかにあり、日々の営みをコントロールしています。
毎日同じころに眠くなり、一定時間眠ると目が覚め、朝昼晩と同じころにお腹が空くのも、この体内時計のリズムに従い身体の機能が働いているおかげです。
体内時計には「主時計」と「末梢時計」があり、主時計は脳に、末梢時計は全身の細胞にあります。
「主時計」と「末梢時計」は、同調することでリズムが正しく刻まれます。
主時計は光の信号によって、また末梢時計は食事によって上がる血糖値の上昇の信号でリセットされ、1日のリズムを刻んでいます。
体内時計のリズムを乱さないために、起床時間や食事の時間はできるだけ一定にした生活をすることで回復にもつながります。

 

食事は1日3回

末梢時計を調節する信号は食事です。
食事を規則正しくとることでリズムが整います。
特に朝食が大切で、起床後1時間以内に食事をとることで末梢時計はリセットされます。
さらに、主時計と抹消時計が同調し、1日の生活リズムが作りやすくなります。
ストレスに強くなる食生活については
ストレスと食べ物の関係を知って、体と心を健康に!

こちらの記事で詳しくご紹介しています。

 

睡眠時間を一定に

早く就寝すること以上に「早く起きる」ことが大切です。
毎朝決まった時間に起き、太陽の光を浴びることで、光の信号によって主時計がリセットされます。
部屋にあまり日が差さない場合は、室内照明をつけて明るさを取り入れる方法もあります。

 

嗜好品はほどほどに

アルコールや、タバコ、コーヒーなどの嗜好品には一時的に気分を高めたり不安感を消してくれたりする場合があります。
しかし、その作用は数時間ほどで途切れてしまうため、これらに依存しやすくなってしまうのです。
気が紛れるならば…と嗜好品の摂取を見過ごしてしまいがちですが、依存性のあるものはストレスに対しマイナスになります。

 

運動を行う、ただしやりすぎない

ストレスでバランスが乱れていると、何かをするのも億劫で活動量が低下することがあります。
運動は、全身にある末梢時計を調節することに繋がります。
さらに、昼間、明るいところで過ごすことによってセロトニンの分泌が活発になります。
終わった時に普通に呼吸ができ、苦しくなく笑顔で居られる程度を目安に、運動をしましょう。
翌日まで疲労を残さない程度の軽いものでも、継続することで十分に効果を発揮します。
無理をしないようにしましょう。※5※8

※5「よくわかる心のセルフケア ストレス・不安・うつに負けない」/監修者:貝谷久宣/株式会社主婦の友社/2019年4月
※8「拒食症と過食症の治し方」/著書:切池信夫/株式会社講談社/2016年6月発行

仕事のストレスが原因の過食には「マインドフルネス瞑想」も

人が身近にストレスを感じる場面として、最も多いのが仕事によるストレスです。

自分の業務を遂行するために常に気を張っていたり、上司の機嫌を伺ったり、誰もが一度は仕事でのストレスを抱えたことがあるのではないでしょうか。

 

仕事でストレスを感じる原因

ストレスの大半は「〜しなければならない」「〜するべき」と理解しながらも、その通りに物事が進まなかったときに起こります。
さらに、思い描いていた通りに物事を進められなかった時に、「自分が打たれ弱いせいだ」などと自己を否定するのが、ストレスに直撃される最大の原因です。
しかし、「自分に負けてしまった」という自責の念に駆られるときのストレスは、自分の思い込みだったりします。

 

仕事のストレスにはマインドフルネス瞑想も

そんな仕事のストレスへの対処法として、マインドフルネス瞑想がおすすめです。
マインドフルネス瞑想で、仕事のストレスをやり過ごすことができれば、過食を抑えられるかもしれません。


・マインドフルネスとは
東洋の仏教の思想と、西洋の心理学を統合し開発された精神療法「マインドフルネス瞑想」があります。
マインドフルネス瞑想とは「気づくこと」を意味しています。
気づく対象は、今自分が生きていることの瞬間の現実です。
その現実を正しいや間違い、〜すべきや、すべきでない、良い、悪いという評価を加えず「あるがまま」に感じ取り、受け入れていくのがマインドフルネス瞑想の考え方です。
こういった考えをベースにして、瞑想を行うマインドフルネス瞑想は、うつ病や不安症の効果をあげる第三世代の認知療法として米国で盛んに行われています。
自分の思考や感情に巻き込まれずに、客観的に観察するというマインドフルネス瞑想は、認知行動療法と瞑想療法と深い関連性があるとされています。

 

・マインドフルネス瞑想の呼吸法
マインドフルネス瞑想では呼吸が基本です。
その呼吸に意識をおいて行うのが呼吸瞑想法です。
やり方は簡単です。
体の力を抜き背筋を伸ばして椅子に腰をかけるか、床に座り、目を軽く閉じます。
呼吸は腹式呼吸で、鼻から吸って、吐くをゆったりと行います。
意識的にコントロールせず、自然な呼吸を続けます。
意識は呼吸に集中するようにします。
集中していても雑念が出てくるかもしれませんが、雑念は誰にでも出るものなので、悪いこと、瞑想ができていないということではありません。
マインドフルネス瞑想で大切なのは、雑念をあちこちと彷徨わせず、意識的にしっかり気づくことです。
雑念が出てきたら、自分の中から振り払い、またゆっくりと呼吸に意識を戻します。

 

・マインドフルネス瞑想のポイント
雑念に気づき、振り払い、また意識を呼吸に戻し集中することが重要なポイントです。
これは自分を取り戻す訓練になります。
この訓練が身につくと、ストレスを感じてイライラしたり、不安になったりすることが起こっても、本来の自分に戻って気持ちを落ち着かせることができるようになります。
これによって、集中とリラックスがコントロールできるようになり、ストレスを感じやすい場面でもストレスの軽減を図ることができます。


仕事には「やるべきこと」があります。
大きな目標を達成するプロセスがあるにしても、「いまやるべきこと」があるはず。
その「いま」に集中し、小さな目標を遂行していきます
不満な状況があってもそれにとらわれて衝動的な行動をとらず、目標に集中します。
今やるべきことを上手に選択し、クリアしていくことで大きな目標に繋げるというのが、マインドフルネスを生かすための考え方です。
自分の感情や思考をコントロールできるようになると、ストレスに上手く対処できるようになり、過食を抑えられるでしょう。※5

 

※5「よくわかる心のセルフケア ストレス・不安・うつに負けない」/監修者:貝谷久宣 /株式会社主婦の友社/2019年4月/2019年9月15日現在

まとめ

忙しく働き、無意識にどんどんと不規則になってしまっている生活が、ストレスの根本でもあります。
結果、外からのストレス刺激に弱くなってしまっているのです。
なかなか時間が取れないという人も多いですが、自分にあったストレス解消法を多く持ち、ストレスの悪循環を断ち切ることが大切です。
規則正しい生活を意識的に行うことも大切ですが、徹底してやりすぎるのも休まらずかえってストレスになってしまうでしょう。
無理なく、気持ちよく感じられる生活を送り、ストレスに強い心身のバランスをとれるようにしていきたいですね。

ライター
杉村
准看護師免許
人工透析で2年間、美容クリニックで半年勤務、その後、内科・皮膚科・美容皮膚科・形成外科・婦人科・乳腺科などの総合しているクリニックで現場主任を務める。
現在は、透析のクリニックに勤務しながら、現場で培った経験を元に、美容ライター業も行っている。
公開日:
上へ