気分が落ち込んだ時は、セントジョーンズワートでホッと一息!
どんなに元気いっぱいの人でも、時には落ち込んだり、立ち止まってしまうことはあるものです。
そのような時には、セントジョーンズワートを利用したハーブティなどで、ホッと一息ついてみてはどうでしょう。
ハーブの持つ力は、決して強力で即効性のある魔法のようなものではありません。
しかし、ハーブは飲み続けると、体に負担をかけることなく、体が本来持っているさまざまな力を引き上げてくれるのです。
目次
- セントジョーンズワートとは
- セントジョーンズワートとは
- 日本在来のオトギリソウ
- セントジョーンズワートを含むハーブの基礎知識
- セントジョーンズワートはどれ?ハーブの種類
- 古くから世界中でハーブは使われていた
- セントジョーンズワートにはどんな健康パワーがあるの?
- 植物の生きる力
- ハーブのフィトケミカルの取り出し方
- セントジョーンズワートを上手に摂取するには
- セントジョーンズワートの選び方と保存方法
- セントジョーンズワートティの美味しい淹れ方
- セントジョーンズワートを摂取する時の注意
- まとめ
セントジョーンズワートとは
セントジョーンズワートとは
セントジョーンズワートの学名はHypericum perforatu、和名では西洋オトギリソウ、聖ヨハネ草と呼ばれています。
聖ヨハネの祭りの頃に花が咲き、いろいろな場所に飾られることからこのような名前がついたとも伝えられています。
セントジョーンズワートは、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」の6月の聖ヨハネ祭りの前夜の話の中で、魔除けのおまじないに使われるなどの逸話もある神秘的なハーブです。
また、別名ではヒペリコン、ヒペリカム、ハイペリカムなどとも呼ばれます。
オトギリソウ科オトギリソウ属に属し、高さ30㎝~60㎝ほどの多年草で、夏にはよい香りの黄色い花を咲かせるセントジョーンズワートは、古代ギリシアの時代から兵士を癒してきたといわれています。
また、セントジョーンズワートの原産地はヨーロッパからアジア西部、アフリカ北部とされていますが、日本在来のオトギリソウは、日本全土の山地と朝鮮半島から中国大陸にかけて広く自生しています。
夏至の頃に収穫されたセントジョーンズワートの花や茎葉は、健康パワーが最も強く8月~10月の果実の成熟する頃では全草を採取し、日干しにして乾燥させたものが用いられてきました。※1、2、3、4
日本在来のオトギリソウ
日本在来のオトギリソウは、セントジョーンズワートと同属の別種となります。
オトギリソウという不思議な名前には由来があり、中国の逸話から名づけられたといわれています。
昔、晴頼という鷹匠が、オトギリ草を使って鷹の傷を治していましたが、晴頼はそれを周囲には秘密にしていました。
ところが、鷹匠の弟はこの秘草のことを他人に話してしまいます。
鷹匠は弟が秘草を口外したことに怒り、弟を斬ってしまいます。
この時の血しぶきがオトギリソウの葉に黒い斑点となって残った、という伝説から「弟切草」と名付けられました。
近年では落ち込んだ気持ちに光を与え、元気な力を呼び起こすことから大きな関心を集め、サンシャインとも呼ばれています。
セントジョーンズワートが、体に与えるこのような影響のメカニズムにはさまざまな説があり、現在も研究が進んでいます。※1、2、3、4、5
※1 J-STAGE おとぎり草茶のヒト食後血糖上昇抑制作用と抗酸化能 / 2019年8月28日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/60/7/60_7_673/_pdf
※2 農研機構 オトギリソウ / 2019年8月28日閲覧
https://www.naro.affrc.go.jp/org/niah/disease_poisoning/plants/hypericum.html
※3 心と体に効くハーブ読本 あなたにぴったりの使い方が見つかる! 佐々木薫著 2010年11月第1刷発行 PHP研究所
※4 ココロとカラダに効く ハーブ便利帳 真木文絵、池上文雄 2017年11月第1刷発行 NHK出版
※5 メディカルハーブの辞典 主要100種の基本データ 改定新版 林真一郎編 2016年10月初版発行 東京堂出版
セントジョーンズワートを含むハーブの基礎知識
セントジョーンズワートはどれ?ハーブの種類
耳にしたことがあるという方は多いと思いますが、ハーブには主に次の3つの種類があります。
【フレッシュハーブ】
生のハーブで、爽やかな香りと美しい色合いが特徴です。
ハーブは生命力が強いため、園芸の初心者でも比較的育てやすく、手間もそれほどかかりません。
自分で育てたハーブを収穫して食することで、豊かな香りや風味を存分に味わうことができます。
フレッシュハーブはドライハーブと比べて水分量が多いため、ドライハーブと同量の成分を取り出そうとした場合には4倍位の量が必要だといわれています。
主な利用法はお茶やサラダ、オイル、薬味などです。
尚、セントジョーンズワートのフレッシュハーブは、主にお茶として利用できます。
【ドライハーブ】
ハーブを収穫後、冷風に当ててすぐに乾燥させたものです。
ドライハーブの特徴はフレッシュハーブと異なり、季節に関係なく年間を通して手に入ることと、成分が濃くいことです。
しかし、ドライハーブにも賞味期限があります。
なるべくまとめ買いではなく、必要な分だけを購入するようにし、賞味期限や製造年月日を確認してフレッシュなものを使うようにしましょう。
主な利用法はお茶やチンキ、オイル、蒸気吸入などです。
尚、セントジョーンズワートのドライハーブは、主にお茶として利用できます。
【精油】
ハーブの花や葉、茎、根、果実、果皮、種子などに含まれる成分を抽出したものです。
植物の健康パワーを高濃度に含んだ発揮性の芳香物質で、植物によって香りや成分がなります。
また油やアルコールには溶けやすいのですが、水には溶けにくいといった性質を持っています。
長期保存が可能で、主にアロマテラピーとして利用されます。※3、4、6、7
尚、セントジョーンズワートの精油もあります。
古くから世界中でハーブは使われていた
ハーブというと日本にはあまり縁のないもののように思われますが、実は日本にも独自のハーブ文化があり、これは現代でも受け継がれています。
例えば日本人が好きな緑茶や、健康茶として知られるカキの葉茶、ハトムギ茶などは、栄養豊富なハーブティです。
また端午の節句に入る菖蒲湯や、冬至に入る柚子湯などはハーバルバスの一種といえるでしょう。
このように日本でもハーブはいろいろな場面で活用され、私たちの生活に密着しています。
同じように世界中でもハーブはその土地の気候や食生活、生活習慣などに合わせて、それぞれのスタイルで人と関わりを持っています。
南米では高地で肉中心の生活を送るため、ビタミンやミネラルが豊富なマテ茶が栄養補給として生活に欠かせないものとされています。
人が植物を活用する歴史は、はるか紀元前からのことになります。
紀元前1700年ごろの古代エジプト時代に書かれた、ハピルスの文書には、最も古いハーブの記録が残っているといわれています。
さらに紀元前1000年ごろにはインドの伝統医学であるアーユルヴェーダについての書物リグ・ヴェーダに、約1000種類もの植物が紹介されています。
紀元前400年ごろになると、医学の祖と呼ばれる古代ギリシアの医師であるヒポクラテスが、ハーブティや芳香浴をヒポクラテス全集にあらわしています。※3、4、6、7
※6 J-STAGE ハーブ・アロマテラピーの視点から、かおり思考の変遷をたどる / 2019年8月28日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/46/6/46_398/_pdf/-char/ja
※7 J-STAGE ハーブの日常生活への利用-特にハーブティについて / 2019年8月28日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/49/5/49_333/_pdf/-char/ja
※3 心と体に効くハーブ読本 あなたにぴったりの使い方が見つかる! 佐々木薫著 2010年11月第1刷発行 PHP研究所
※4 ココロとカラダに効く ハーブ便利帳 真木文絵、池上文雄 2017年11月第1刷発行 NHK出版
セントジョーンズワートにはどんな健康パワーがあるの?
植物の生きる力
私たちの元気な力を呼び起こすとされるセントジョーンズワートは、光合成により自ら栄養分を作り出す「植物」です。
地に根を生やし、何が起ころうともその場所から動くことはなくじっと耐えてその場に留まり続けるため、紫外線や害虫などから身を守るフィトケミカルと呼ばれる、対処能力を備えるようになったセントジョーンズワートの力は、人間の健康にもとてもよい働きがあります。
この対処能力は植物の持つ苦味や渋みなどで、種類も多くリコピンやサポニン、クエン酸といったものがあります。※8、9、10、11
ハーブのフィトケミカルの取り出し方
- 水で抽出
- 油で抽出
- アルコールで抽出
- 酢で抽出
- ハチミツで抽出
- 粉末で直接取り込む
- 上記で発揮させて取り込む
ハーブの楽しみ方で最もポピュラーなのはハーブティです。
しかし、ハーブティ以外にもフィトケミカルを取り出す方法はたくさんあります。
1. 水で抽出
フレッシュハーブやドライハーブに湯を注ぎ、蓋をして3分程度で成分が抽出されます。
ハーブティなどがこの方法で、美味しく手軽にハーブの力を摂取する事ができます。
2. 油で抽出
ハーブを植物油に浸し、脂に溶ける脂溶性の成分を植物油に溶出させます。
保存は冷暗所で3ヶ月を目安に使い切るようにしましょう。
この抽出油にミツロウを加えると軟膏を作ることもできます。
3. アルコールで注意
水に溶けにくい成分がアルコールに溶けだすため、水での抽出よりも多様な成分を含んでいます。
アルコールの作用があるため保存期間も1年位あるのも大きなメリットです。
また、アルコールにはウォッカやホワイトリカーなどを使うと、飲用することも可能です。
4. 酢で抽出
ハーブの香りを移したビネガーのことです。
生のハーブを使う場合では、水分が混ざるとカビが生えやすくなるため水気をしっかりと拭き取ってから使うようにしましょう。
ドレッシングの他にも、飲料として水や炭酸水で薄めて飲むこともできます。
5. ハチミツで抽出
ハチミツの中にハーブを浸し、成分を抽出したハーブハニーです。
ハーブをお茶パックに詰めてハチミツと共に湯煎にかけ、冷めたらお茶パックを取り出し冷暗所で保管します。
6. 粉末で直接取り込む
フード用のミルにドライハーブを入れて細かく粉砕すると、ハーブパウダーができます。
ハーブを丸ごと利用できるのが大きなメリットで、そのまま食べたり食事に振りかけるといった食用だけではなく、クレイやヨーグルトなどの「パック」の基剤に加えることもできます。
7. 蒸気で発揮させて取り込む
アロマライトやディフィーザーを使い成分を発揮させる芳香浴や、洗面器などに湯を張り精油を垂らし立ち昇る蒸気を吸入する蒸気吸入です。※4、8、9
※10 J-STAGE 食と健康-発症メカニズムから見た食による癌予防への展望- / 2019年8月28日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsr/24/2/24_115/_pdf/-char/ja
※11 J-STAGE ファンクショナル・フードファクター・データベースと食品の安全性 / 2019年8月28日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/2/2/2_2_101/_pdf
※4 ココロとカラダに効く ハーブ便利帳 真木文絵、池上文雄 2017年11月第1刷発行 NHK出版
※8 野菜まるごと大図鑑 主婦の友編 2011年2月第1刷発行 主婦の友社
※9 図解 食卓の薬効辞典 野菜・豆類・穀類50種 池上文雄著 2017年10月第1刷発行 農文協
セントジョーンズワートを上手に摂取するには
セントジョーンズワートの選び方と保存方法
ハーブにはたくさんの種類がありますが、その用途はとても広く料理以外にもポプリ、クラフトなどにも使用されています。
そのためハーブの中には雑貨として輸入や販売されているものもあり、これは食用としての食品検査を通っていないので注意が必要です。
ハーブを選ぶ際には、ハーバルバスや浸出油、コスメに使う場合でも直接肌に触れるため食用のハーブを使うようにしましょう。
店頭でフレッシュハーブを購入する場合には瑞々しい色をした鮮度の高いものを選び、自分で育てたハーブを使う場合には若くて柔らかい花や葉を中心に、使用する時に必要な分だけを摘み取るようにしましょう。
ドライハーブの場合は、カビや湿気からハーブを守るため、パッケージが脱酸素加工されていたり、乾燥材が入っているものを選ぶと安心です。
セントジョーンズワートは、鮮度をできるだけ保つため正しく保存することが大切です。
ドライハーブでは開封後は密閉容器に保存し、日光の当たらない冷暗所に保管します。
湿気もハーブにはよくないので、高温多湿となる夏場は冷蔵庫で保存した方がよいでしょう。
フレッシュハーブが余った場合にはコップに水を入れて挿しておくか、水で濡らしたキッチンペーパーで包み密閉できる袋にいれて冷蔵庫で保存し、早めに使い切るようにしましょう。
セントジョーンズワートティの美味しい淹れ方
それでは、ドライハーブを使ったセントジョーンズワートティの美味しい淹れ方とチンキの作り方をご紹介します。※3、4
【セントジョーンズワートティ】
- ティポットはあらかじめ温めておき、ティーカップ1杯分に対しティスプーン山盛り1杯を目安にセントジョーンズワートを入れます。
- 沸騰したてのお湯を注ぎ必ず蓋をして3~5分蒸らします。
- カップはあらかじめ温めておき、注ぐ前にティポットを軽く回して濃さを均一にして、ハーブがカップに入らないように茶漉しを使って注ぎます。
【セントジョーンズワートチンキ】
- 熱湯消毒した容器にセントジョーンズワート4gを入れ、アルコールを80ml注ぎます。
- 蓋をしっかりと閉め、軽く容器を振ってハーブとアルコールをなじませます。
- 冷暗所に容器を置き1日2回容器を揺すりならが2週間、成分を抽出します。
- 2週間経過したら茶漉しでハーブを取り出します。
- 保存容器に移しラベルを貼って冷暗所で保管します。
セントジョーンズワートを摂取する時の注意
セントジョーンズワートの力は穏やかなものですので、1回だけではなく、飲み続けることが大切です。
しかし、体質や体調によっては使用に注意が必要な場合があります。
妊娠中や授乳中、病気の治療でお薬を服用している場合などには、セントジョーンズワートを使用する前にかかりつけの医師に相談をするようにしましょう。
特に、抗HIV薬や強心薬、免疫抑制薬、気管支拡張薬、血液凝固防止薬、経口避妊薬などの中には、セントジョーンズワーと一緒に摂ると薬の効果が変わってしまう可能性があるお薬があるため、厚生労働省からも併用には注意する旨の文書が公表されています。
また、セントジョーンズワートの成分は紫外線に反応するため、色白な方は特に外出時には日焼け止めなどを利用するようにしましょう。※12、13、14、15
※12 厚生労働省 健康食品に正しい利用法 / 2019年8月28日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf2019年8月28日閲覧
※13 厚生労働省 セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)と医薬品の相互作用について / 2019年8月28日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1205/h0510-1_15.html
※14 厚生労働省 健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて / 2019年8月28日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/pamph_healthfood.pdf
※3 心と体に効くハーブ読本 あなたにぴったりの使い方が見つかる! 佐々木薫著 2010年11月第1刷発行 PHP研究所
※4 ココロとカラダに効く ハーブ便利帳 真木文絵、池上文雄 2017年11月第1刷発行 NHK出版
※15 健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 日本対応版<第6版> 一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic) 2019年7月第6版第1刷発行 同文書院
まとめ
私たち人間は、植物の恵みと寄り添いながら暮らしてきました。
昔からの日常生活、衣食住の中でも植物は欠かせない存在で、それは今でもなお受け継がれています。
セントジョーンズワートが持つ、穏やかで豊かな健康を支える力を利用し、ハーブのある生活を楽しんでみてはいかがでしょうか。
- 岡部 美由紀
-
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート) 他