パワーの秘密は臭いにあった?「にんにく」の知られざる効果とは

公開日:2019.12.12

疲労回復や滋養強壮効果があることで知られる「にんにく」。
その歴史は古く、古代エジプトではピラミッドを建築する労働者に、スタミナ源としてにんにくが支給されていたといいます。
現代でも健康食材として重宝されていますが、独特の臭いを気にして、にんにく料理を控えている人も少なくありません。
しかし、そのせいでにんにくを楽しめないのはもったいないことです。
ここでは、にんにくの知られざる魅力についてご紹介します。

目次

  1. 古代よりスタミナ食として愛されてきた「にんにく」
  2. にんにくの効果
    • 疲労回復・滋養強壮
    • 血行促進
    • 抗菌・殺菌作用
    • 健胃・整腸作用
  3. にんにくは健康維持に欠かせない栄養素
    • アリイン
    • アリシン
    • スコルジニン
    • アホエン
  4. にんにくに含まれている「アリシン」と「アイリン」とは
    • アリシンの抗菌作用は食中毒予防に
    • 加工方法によりアイリンは変化する
  5. にんにくの香り成分と臭いの原因
    • ①にんにくの香り成分とは
    • ②にんにくは傷つけることで初めて臭いが発生する
    • ③無臭にんにくは普通のにんにくと違うの?
  6. 食べ過ぎはNG!注意が必要なにんにくの食べ方
  7. にんにくを使ったおすすめの調理方法や簡単レシピ
    • おすすめ簡単レシピ
  8. まとめ

古代よりスタミナ食として愛されてきた「にんにく」

にんにくは学名をAllium sativum L.(アッリウム・サティウゥム)といい、ラテン語で「栽培」を意味するalllium を属名に持ちます。
人類の歴史に初めてにんにくが登場したのは、今をさかのぼること約6,000年前。
紀元前3,750年頃に造られたとされる古代エジプト王の墓から、にんにくの模型が9個発見されています。
また、紀元前1300年頃のエジプトの統治者ツタンカーメン王の墓からも乾燥したにんにく6個が見つかりました。
古代ギリシアの歴史家ヘロドトスは著書『エジプト史』の中で、ピラミッド上に刻まれた碑文の内容を紹介。
そこには「ピラミッド建設に従事した労働者たちは大量のにんにく、玉ねぎ、ラディッシュを食し、この3品を購入するために多額の銀貨が支払われていた」ことが記されていたといいます。
これは、にんにくがスタミナ食としていかに珍重されていたかを物語るエピソードです。
当時は食品というよりも薬草(ハーブ)として用いられていたようで、現存する最古の医学書『エベルス・パピルスThe Papyrus Evers)』では、にんにくについて22種類もの処方が紹介され、疲労や衰弱、神経系の病気への健康作用が記されています。
その後、ギリシア・ローマを経て地中海地方、さらにはヨーロッパ全土に広がり、食用や薬用として幅広く利用されました。
わが国には中国大陸、朝鮮半島を経由して4世紀頃に伝わったとされています。
古事記日本書紀にもにんにくに関する記述があり、当時から人々に親しまれる食材だったことが伺えます。※1 ※2

※1 湧永製薬 ニンニクを科学する『ニンニクの歴史・語源』/2019年1月27日現在
http://www.wakunaga.co.jp/garlic/history/index.html
※2 東京植物検疫協会 東京植検だより『東京港に輸入される植物類 (24) ニンニク』/2019年1月27日現在
http://www.tokyo-syokken.gr.jp/shokken_dayori/back_num/NO%20187.pdf

にんにくの効果

疲労回復・滋養強壮

にんにくといえば疲労回復・滋養強壮のイメージを持つ人も多いでしょう。
疲労回復に欠かせないのがビタミンB1です。
糖質の代謝に必要な酵素の働きを助けて、エネルギーを生み出すので、「疲労回復のビタミン」と呼ばれています。
ビタミンB1を含む水溶性ビタミンは、身体に貯めることが出来ないため、必要以上に摂取した分は尿などから体外へ排出されます。
ところが、にんにくに含まれる成分「アリシン」がビタミンB1と結びつくと、脂溶性の「アリチアミン」という物質に変わるのです。
このアリチアミンは体内でビタミンB1と同様の働きをしながら、吸収率はアップする優れもの。
疲れにくい体づくりをサポートしてくれます。
さらに、にんにくのもうひとつの主成分「スコルジニン」にも滋養強壮や疲労回復に役立つとされており、ホルモン系統を刺激して、精力を増強させる作用があります。
かつて仏教の戒律では、にんにくを食べると精がついて修行の妨げになるため、食用禁止とされていました。
まさに、天然の精力剤といえるでしょう。※3 ※4

血行促進

ニンニクの主成分アリシンには、血管を拡張し、血行を促進する働きがあります
また、ニンニクに豊富に含まれているビタミンEも抹消血管を拡張する働きがあるビタミンです。
にんにくを毎日の食卓に取り入れることで、血の巡りが良くなり、手足の冷えを緩和する効果が期待できます。

抗菌・殺菌作用

にんにくは抗菌・殺菌作用があることでも知られています。
ペスト(黒死病)が大流行した18世紀のヨーロッパでは、4人の盗賊が病気で亡くなった人から物を盗む際に、薬草を調合したビネガーを体に振りかけて感染を防ぎました。
この「4人の泥棒のビネガー」と呼ばれる薬草酢の主成分がにんにくだったのです。
馬刺しやカツオのたたきを食べるときに、すりおろしたにんにくを添えるのは、食中毒を防ぐためにも理にかなった調理法といえます。 ※4 ※5

健胃・整腸作用

にんにくの主成分アリシンが胃腸の動きを促進し、ぜん動運動を活発にする効果が期待されます。
また、胃液の分泌を促し、胃腸の調子を整えることから、食欲不振の方にもよい効果があるでしょう。
ただし、食べ過ぎると逆に下痢や腹痛の原因になるので注意してください。※4 ※5

※3 大塚製薬 ビタミン&ミネラル Q&A『ビタミンB1』/2019年1月27日現在
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/vitamins-and-minerals/vitamin-b1/
※4 日本薬局協励会『ニンニク』/2019年1月27日現在
http://www.kyorei.com/open/about_ll/img/LL177.pdf
※5 武政三男 『80のスパイス辞典』 2001年6月、フレグランスジャーナル社 P35〜36

にんにくは健康維持に欠かせない栄養素

にんにくには、たんぱく質や糖質、ビタミンB1・B6、ナイアシン(B3)、ビタミンC、カルシウム、カリウム、リン、食物繊維など、私たちの健康に欠かせないさまざまな栄養が豊富に含まれています。
さらに、栄養効果のある成分として次のものが挙げられます。

アリイン

無味無臭で硫黄を含むアミノ酸の一種。
抗菌作用があります。

アリシン

アリインが酵素アリナーゼと反応して生成される硫黄化合物。
強い臭気を放つ。
抗菌作用のほか、疲労回復や血液サラサラ効果があります。

スコルジニン

にんにくに含まれる物質と糖が結合してできる成分。
無臭で、疲労回復や滋養強壮効果があります。
ネズミを泳がせる実験では、スコルジニンと投与したネズミは、そうでないネズミに比べて長く泳ぐことができたといいます。

アホエン

アリシンが加熱されることで生じる物質です。
抗酸化、抗血栓作用があります。※4 ※6 ※7
このように、にんにくは、抗酸化作用を持つ成分「アイリン」が複数の成分「アリシン」や「アホエン」に変化していくのが特徴です。
次章で、さらに詳しくご紹介します。

 

にんにくに含まれている「アリシン」と「アイリン」とは

アリシンの抗菌作用は食中毒予防に

にんにくのほとんどの効果・効能は、独特のツンとした臭い成分「アリシン」によるものです。
「アリシン」はアミノ酸の一種である「アリイン」が変化した物質で、最初からにんにくに含まれているわけではありません。
前章でもご紹介している通り、「アリイン」はもともと無味無臭の成分ですが、刻んだりつぶしたりすると、にんにく中の酵素アミラーゼが作用して「アリシン」に変わり、強烈な臭いを発生させるのです。
「アリイン」自体にも抗菌作用など、さまざまな健康効果があるものの、やはり「アリシン」に変化してからのほうがパワーがアップするとされています。 
この「アリシン」の持つ強力な抗菌・殺菌作用により効果を発揮するのが、食中毒予防です。
アリシンは加熱するとさまざまな物質に変化してしまいますが、加熱調理をしても、ある程度の食中毒予防効果が期待できます。
しかし、生のにんにくに比べると効力が落ちる可能性があることは否めません。
食中毒予防の効果を最大限に引き出したいのであれば、生にんにくをすりおろしたり、みじん切りにしたりして利用することをおすすめします。
ただし、抗菌・殺菌効果が強力な分、胃への刺激も強くなるので注意が必要です。
空腹時に食べるのは避けて、ほかの食材と一緒に取り入れましょう。 ※4 ※6 ※7

加工方法によりアイリンは変化する

このように、加工の仕方によって含有成分の種類や量、作用が異なるのが、にんにくの面白いところです。

  • 生にんにくを乾燥させて粉末にしたガーリックパウダー
  • 生にんにくを低温の植物油に漬け込んだガーリックオイル
  • 時間をかけて成分を変化させた熟成にんにく

など、用途に合わせていろいろな加工品が作られています。※6
この中でも、ガーリックオイルは、生にんにくを低温の植物油に漬け込むことで抗酸化作用のある「アホエン」という物質が生成された加工品となります。
ちなみにブームとなっている「黒にんにく」とは、生にんにくを一定の温度で管理し、不要な水分を取り除き、じっくり時間をかけて発酵させたものです。
熟成が進むと、白かったにんにくが真っ黒に変わっていくことから、その名がつけられました。
甘酸っぱく、ドライフルーツのようなねっとりした食感で、いわゆるにんにく臭がないのが特徴です。
生にんにくに比べて、S-アリルシステインやポリフェノールなどが何倍も含まれており、高い抗酸化力があるとされています。※7

※6 湧永製薬 ニンニクを科学する『ニンニクの科学』/2019年1月27日現在

http://www.wakunaga.co.jp/garlic/chemistry/index.html
※7 協同組合青森県黒にんにく協会『黒にんにくとは?』/2019年1月27日現在
http://www.96229jp.com/bg/index.html

にんにくの香り成分と臭いの原因

①にんにくの香り成分とは

にんにくの香り成分は、アリインと酵素アリナーゼの化学反応によって生成されたアリシンがさらに化学変化を起こしたものです。
複数の香り成分が混じり合うことで、独特の臭いが発生する原因となります。
・ジアリルジスルフィド(DADS)
アリシンが分解することで生じる有機硫黄化合物です。
にんにく特有の刺激臭を放つ成分のひとつで、生ゴミの腐ったような臭いといわれています。
・アリルメルカプタン
にんにくなどのネギ科植物にみられる硫黄化合物の一種です。
にんにくの香り成分の中でも、かなり強い悪臭として感じられます。
・アリルメチルスルフィド(AMS)
アリシンが体内でさらに分解されると、アリルメチルスルフィド(AMS)という物質に変わります。
この物質こそが、しつこいにんにく臭の原因となる成分です。
ほかの硫黄化合物は比較的早い段階で代謝されますが、AMSは体内に長く留まる傾向があり、いつまでも不快な臭いが残ってしまいます。
・硫化水素
揮発性硫黄化合物のひとつで、卵の腐った臭いと表現されます。
・アンモニア
アリシンが体内で分解される過程で発生する、ツンとした刺激臭です。
・ピルビン酸
にんにくに多く含まれる酸の一種です。
酸っぱい臭いの元となります。 ※4 ※6 ※8

②にんにくは傷つけることで初めて臭いが発生する

にんにくは傷つけなければほとんど臭いません。
にんにくの組織に刺激を与えることで、初めて臭いが発生します。
アリインをアリシンに変化させる酵素アリナーゼは熱に弱い性質があるため、よく加熱処理して食べれば、にんにくの臭いは弱まります
ただし、体内でアリシンに変化し、臭いを放つこともあります。 ※4

③無臭にんにくは普通のにんにくと違うの?

よくスーパーなどで、にんにくの臭いを消した「無臭にんにく」なるものを見かけることがありますが、普通のにんにくと効果や効能は変わらないのでしょうか。
無臭にんにくとは「ジャンボリーキ」という西洋ネギの一種で、にんにくとは別物です
その形がにんにくによく似ていることから無臭にんにくと呼ばれるようになりました。
無臭にんにくの場合、臭いの元となるアリシンの含有量が、従来のにんにくに比べて60分の1程度といわれています。
そのため、にんにくの持つスタミナ効果はあまり期待できないでしょう。
その代わり、無臭にんにくには「サポニン」という成分を豊富に含んでおり、アルコールやコレステロールの吸収を抑える効果が期待できます。※9

※4 日本薬局協励会『ニンニク』/2019年1月27日現在http://www.kyorei.com/open/about_ll/img/LL177.pdf
※6 湧永製薬 ニンニクを科学する『ニンニクの科学』/2019年1月27日現在
http://www.wakunaga.co.jp/garlic/chemistry/index.html
※7 協同組合青森県黒にんにく協会『黒にんにくとは?』/2019年1月27日現在
http://www.96229jp.com/bg/index.html
※8 グリコ健康科学研究所 研究実験&アーカイブ『講習の種類と原因物質』/2019年1月27日現在
https://www.glico.co.jp/laboratory/health_science/mouth/mouth01_2.html
※9 J-STAGE 日本食品科学工学会誌第55巻11号 内田あゆみほか 『ジャンボリーキが病態モデルラットへの血糖値および肝機能に及ぼす影響について』/2019年1月27日現在
http://www.wadaman-s.com/products/goma/doc/jumboleek.pdf

食べ過ぎはNG!注意が必要なにんにくの食べ方

さまざまな健康効果を持つにんにくですが、パワーが強いだけに、一度にたくさん食べ過ぎると胃の粘膜を刺激して、胃痛や腹痛、下痢や便秘を引き起こすことがあります。
特に生のにんにくは刺激が強いので注意が必要です。
生にんにくの場合、1日1片。
加熱したにんにくの場合は、1日3〜4片程度に留めましょう。
にんにくを弱火の油でじっくり炒めることで、臭いも抑えられるのでおすすめです。
にんにくを調理する際、素手で長時間触っていると、かぶれたり赤く腫れたりすることがあります。
皮膚が敏感な人はビニール手袋などをはめて作業すると安心です。 ※4

※4 日本薬局協励会『ニンニク』/2019年1月27日現在
http://www.kyorei.com/open/about_ll/img/LL177.pdf

にんにくを使ったおすすめの調理方法や簡単レシピ

にんにくは、炒め物でも煮物でも、和食から中華、洋食まで、いろいろな料理に応用できるのが魅力です。
にんにくを調理する際は、いきなり高温の油に投入するのはNG。
火力が強すぎるとせっかくの栄養が損なわれてしまいます。
まず、フライパンや鍋にオイルとにんにくを入れ、弱火でじっくり炒めて、旨味をオイルにしっかり移しましょう。
にんにくと相性の良い食材が豚肉です。
豚肉はB1が豊富なので、にんにくと組み合わせることで疲労回復効果がアップします。

おすすめ簡単レシピ

豚肉のネギ塩にんにく炒め

 

材料> 2人分
豚バラ肉 150g
にんにく(みじん切り)小さじ1
ごま油 大さじ1
万能ネギ 適量
塩・こしょう 適量
レモン汁 少々


作り方

  1. 豚肉は食べやすい大きさに切る
  2. フライパンにごま油とにんにくを入れ、弱火で炒める
  3. 豚肉を入れてさっと炒める
  4. 豚肉に火が通ったら、塩・こしょう、レモン汁で味付け
  5. 小口切りにした万能ネギを加え、一混ぜしたら完成 ※4※10

まとめ

にんにくは昔から栄養の宝庫として親しまれてきました。
にんにく料理の香りは人々の食欲をそそりますが、気になるのがいつまでも口の中に残る強烈な臭いです。
食べたあとの臭いを気にして、にんにくを敬遠している人も少なくありません。
独特の臭いは、にんにくを傷つけることで発生するアリシンと呼ばれる成分によるものです。
アリシンは熱に弱いため、加熱することで臭いを軽減できます。
ただし、加工法、調理法によって成分が変化してしまうため、休日前は生にんにくを使うなど時と場合によって調理法を工夫するといいでしょう。
にんにくのパワーを取り入れて、健康的な体を手に入れましょう。

ライター
杉村
准看護師免許
人工透析で2年間、美容クリニックで半年勤務、その後、内科・皮膚科・美容皮膚科・形成外科・婦人科・乳腺科などの総合しているクリニックで現場主任を務める。
現在は、透析のクリニックに勤務しながら、現場で培った経験を元に、美容ライター業も行っている。
公開日:2019.12.12
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