みなぎる健康パワーはα-リポ酸にお任せ!!

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α-リポ酸という言葉を耳にしたことがありますか?
普段からランニングやヨガ、スポーツジムに通うような、スポーツが身近な生活を送っている方には耳馴染みのある言葉かもしれませんが、一般には馴染みの薄い言葉ではないのでしょうか。
α-リポ酸は、元気な体を作っていく上でなくてはならい、大切な栄養素です。
私たちの体にあふれる元気を与えてくれる、α-リポ酸の働きに着目してみましょう。

目次

  1. α-リポ酸とは
    • α-リポ酸とは
    • α-リポ酸の働き
  2. α-リポ酸と糖質の代謝
    • 食べたものが栄養になるまで
    • 糖質の代謝
    • α-リポ酸の健康パワー
  3. α-リポ酸の健康パワーを上手に摂取するには
    • α-リポ酸を多く含む食品
    • ブロッコリーは冷凍すると栄養価は下がる?
    • ジャガイモには毒がある
  4. α-リポ酸を摂取する時の注意
    • α-リポ酸の1日の摂取量
    • 医薬品との相互作用
  5. まとめ

α-リポ酸とは

α-リポ酸とは

α-リポ酸はビタミン様物質です。
2004年6月には食品への使用が許可され、清涼飲料水を中心に加工食品への配合が進んでいます。
またビタミン様物質は、栄養素としてビタミンに似た働きをする有機化合物のことで、ごく微量であるにもかかわらず体内では重要な役割を担っています。
それではビタミン様物質の種類があるのか、見ていきましょう。

【ビタミン様物質】

  • α-リポ酸
  • フラボノイド
  • カルニチン
  • コエンザイムQ10
  • パラアミノ安息香酸

上記は、いくつかあるビタミン様物質の一部なのですが、中には体によい成分として耳にするものもあるのではないでしょうか。
パラアミノ安息香酸は聞き慣れないかもしれませんが、これは葉酸の構成成分です。
葉酸となれば、体によい成分として耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ビタミン様物質は生命維持のために必要な成分というよりも、体にとてもよい影響を及ぼし、私たちの健康を守ってくれる働きがあります。
今回はα-リポ酸に注目し、その素晴らしい健康パワーに迫りましょう。※1、2、3、4

α-リポ酸の働き

α-リポ酸は、脂質でできた膜に覆われており、水にも脂肪にも馴染むといった特異な物質です。
一般的に、脂溶性の物質であるコエンザイムQ10やビタミンEは主に細胞膜上で働き、水溶性のグルタチオン、ビタミンCは細胞内や血中で働きます。
しかし、α-リポ酸は細胞の内外どちらでも力を発揮します。
また、生体内ではα-リポ酸はミトコンドリアに存在し、ネットワーク系物質としても働いています。
ネットワーク系物質にはα-リポ酸の他に、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、グルタチオンなどがあります。
このネットワーク系物質とよばれる成分は、体内で毒性の高い酸素を捕まえると、自らも体に対して悪い影響を与える物質へと変化します。
しかし、α-リポ酸は自ら再生する力を持ち、例え自らが悪い成分に変化したとしても、自己還元再生機能により、元通りの状態に戻ろうとします。
ネットワーク系物質の中で、α-リポ酸とも関連があるのが、グルタチオンという成分です。
グルタチオンは、システイン、グルタミン酸、グリシンの3種のアミノ酸を元として、体内で合成される成分です。
α-リポ酸は、この体内のグルタチオンを増加させる働きもあります。※1、2、3、4

※2  J-STAGE ビタミン様物質、バイオフラボノイドの研究の現状と展望 / 2019年10月31日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/73/2/73_KJ00001703543/_pdf/-char/ja
※3  J-STAGE α-リポ酸の製造工程で生成する重合物の安全性と構造分析 / 2019年10月31日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi/48/5/48_5_125/_pdf/-char/ja
※1 健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 日本対応版<第6版> 一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic) 2019年7月第6版第1刷発行 同文書院
※4 サプリメント健康辞典 一般社団法人日本サプリメント協会著 2017年6月発行 集英社

α-リポ酸と糖質の代謝

食べたものが栄養になるまで

肉や魚を食べても、これらがそのまま人間の体を作る栄養素となるわけではありません。

食べた物を人間が吸収できる特有の形に作り替えていく営みは栄養とよばれています。

このように、食べた物を体内で取り込める形に変換していくのですが、α-リポ酸はこの中でも砂糖をはじめとした甘い物やご飯やイモのなどのでんぷんを変換していく働きに大きく関わっています。※4、7、8、9、10

糖質の代謝

私たちは、日々の生活や身体活動、生命の維持のために、食べ物を口から摂取することで、外から栄養を取り入れて、消化や吸収、排せつという流れを毎日繰り返しています。
食べ物として取り込まれた栄養は体の成分になるだけではなく、呼吸によって得られた酸素で形を変えたり、熱を発生させたりすることもあります。
また、他の成分を分解したり、それをエネルギーとして使ったり、場合によっては再び合成に利用されたりもします。
このような一連の反応は代謝とよばれ、私たちは代謝を繰り返すことで生きています。

α-リポ酸は体内において、エネルギーを作り出すのに重要な役割を果たしている成分であり、糖代謝と呼ばれる反応においてその力を発揮します。
体に摂り込まれた糖分は、一時的に体の中に保管されますが、必要に応じてエネルギーへと変換されて利用されます。
この代謝を糖新生といいますが、α-リポ酸はこの糖新生の過程で補酵素として働いています。
分かりやすくいうと、食事で取り入れられた炭水化物や糖分が分解された後、他の器官で利用されるエネルギーを生産する働きに、α-リポ酸が関わっているという事です。
それでは、普段私たちが食べたり飲んだりした栄養はどのようにエネルギーへと変換されているのでしょうか。
当たり前のように食事をするだけで、栄養素は体を作り、エネルギーとなり日々の生活を送れるようになっています。
健康な毎日を送るためには、食べた物が体を作り、食べたもので健康を維持していくという一連のサイクルを、今一度見直してみましょう。※1、4、5、6

食事として摂取するご飯やパン、麺類、イモ類、果物やハチミツといったものは糖質と呼ばれる成分が含まれています
ではα-リポ酸が大きな役割を果たす糖質の代謝について詳しく見ていきます。
食事として摂取する糖質であるでんぷんなどの複雑な多糖類は、グルコースなどの単糖類に分解され、吸収されます。
また、私たちが体を動かしたり、生命を維持したりするために必要なエネルギーを得るためには、1分子のグルコースを2分子のピルビン酸に分解する必要があります。
この過程は解糖系とよばれ、解糖系の最終産物からグルコースを生合成する過程を糖新生系といいます。
しかし、家電製品の動きが年々悪くなるのと同じように、人間の体も年を重ねる毎に体内でのα-リポ酸の合成量は減少してしまうのです。
年を重ねるほど、3食の食事でしっかりとα-リポ酸を摂取していくことが大切です。※4、7、8、9、10

α-リポ酸の健康パワー

α-リポ酸を摂取することで得られる健康パワーは、元気な体へと導くものです。
糖代謝によって作られたエネルギーには、体内が傷つくのを防ぐのはもちろん、ビタミンCやビタミンEなどの体内濃度を元に戻そうする働きもあります。
これらのビタミンは人に不可欠のビタミンとされているもので、私たちの体をいつまでも若々しく元気にしてくれるものです。
体の中から健康を守るα-リポ酸は、その他の栄養素の力まで引き出してくれる、まさに万能の栄養素なのです。※4、7、8、9、10

※8  e-ヘルスネット 栄養・食生活/栄養素と食品成分 / 2019年10月31日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary-summaries/e-nutrient
※1 健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 日本対応版<第6版> 一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic) 2019年7月第6版第1刷発行 同文書院
※4 サプリメント健康辞典 一般社団法人日本サプリメント協会著 2017年6月発行 集英社
※5 今なぜエネルギー代謝か―生活習慣病予防のために 細谷憲政編著 平成12年5月初版第1刷発行 第一出版株式会社
※6 病気がみえるvol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第4版 医療情報科学研究所(編集) 平成27年5月第4版第2刷発行 株式会社メディックメディア
※7 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 主婦の友社編集 2017年10月第1刷発行  株式会社主婦の友社
※9 栄養科学シリーズNEXT基礎栄養学第3版 木戸康博、桑波田雅士、中坊幸弘編 2017年2月第3刷発行 株式会社講談
※10 はじめの一歩の生化学・分子生物学第3版 前野正夫、磯川桂太郎著 2018年2月第2版第2刷発行 株式会社羊土社

α-リポ酸の健康パワーを上手に摂取するには

α-リポ酸を多く含む食品

それでは、α-リポ酸を多く含む食品と、その特徴をみてみましょう。
まず、α-リポ酸を比較的多く含む食品には次のようなものがあります。

  • ジャガイモ
  • ブロッコリー
  • ほうれん草
  • トマト
  • 牛、豚の肝臓や心臓、腎臓

α-リポ酸はイモや緑黄色野菜、動物由来食品に含まれているのですが、その量は決して多くはありません。
植物性よりも動物由来の食品の方が多いとされていますが、それでも1㎏あたり1㎎程度といわれています。
また、α-リポ酸は巣串クセのある動物性食品に含まれていることが多く、特に肝臓(レバー)は独特の風味と食感をもつため、苦手な方も多いでしょう。
このレバーの臭みの原因は血の塊です。
レバーについている血の塊は丁寧に取り除きしっかりと水洗いをし、牛乳につけるなどの方法で臭みをとれば、美味しく食べられるようになります。
料理は少しの手間をかけることで臭みやクセをグッと抑えることができます。
レバーもしっかりと下処理を行えば、レバニラやレバーペーストとして美味しく栄養を摂取することができます。※4、7、11、12

ブロッコリーは冷凍すると栄養価は下がる?

α-リポ酸を多く含むブロッコリーは、日本では1980年代に入ってから本格的に栽培が開始された、意外と新しい野菜です。
冷凍されたものもよく見かけますが、冷凍ブロッコリーは収穫後すぐに冷凍食品工場に運ばれ湯通し後、-30~40℃で急速に冷凍されるため、鮮度は高いままの状態となっています。
そのため、栄養価も高く手軽に利用しやすい食品の一つです。※11

ジャガイモには毒がある

α-リポ酸を多く含むもう一つの野菜は、ジャガイモです。
冷蔵で保存されたジャガイモは「炒める・焼く・揚げる」といった調理法により、体に害のある成分(アクリルアミド)が生成されるため、「茹でる・煮る・蒸す」といった調理が安心です。
ところで、ジャガイモの芽や緑色のジャガイモに毒素があることはご存知でしょうか。
太陽光線が当たるとジャガイモから芽がでたり、皮が緑色に変わることがあるのですが、この部分には天然毒素であるソラニンやチャコニンが多く含まれています。※11
私たちの生活に馴染み深い食物だからこそ、安全に食べるようにしたいですよね。

※12  厚生労働省 α-リポ酸に関するQ&A / 2019年10月31日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/alipoic-qa.html
※4 サプリメント健康辞典 一般社団法人日本サプリメント協会著 2017年6月発行 集英社
※7 主婦の友社(編集) 2017年10月第1刷発行 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 株式会社主婦の友社
※11 NHK出版からだのための食材大全 NHK出版編 2018年11月第1刷発行 NHK出版

α-リポ酸を摂取する時の注意

α-リポ酸の1日の摂取量

それでは元気パワーの詰まったα-リポ酸は1日どのくらい摂取すればよいのでしょうか。
食べ物からα-リポ酸を摂取する場合、過剰症の心配は少なく、ほとんどの人に安全とされています。
しかし、体によいからといってα-リポ酸の摂取を意識しすぎた偏った食生活を続けてしまうと、他の栄養素の過不足やカロリーオーバーなども心配です。
α-リポ酸を摂取する時にも、全体の食事のバランスを考え栄養に偏りが出ないように心がけましょう。
また、アルコールが好きな方は、アルコールの過剰摂取により体内でチアミン(ビタミンB1)が減少する傾向があります。
このような状態で前述したような食品以外の方法で多くのα-リポ酸を摂取すると、深刻な健康被害を引き起こす恐れがあるといわれています。
α-リポ酸を摂取する際のアルコールは適度な量にとどめ、チアミンも意識的に摂取するように心がけましょう。

また、妊娠中や授乳中の方のα-リポ酸利用は安全性のデータが現在では不十分なようです。
普通の食事から摂取する分には問題ありませんが、安全性を考慮し、妊娠中の方や授乳中の方の積極的なα-リポ酸の摂取は避けるようにしましょう。
上記の事に留意しながらα-リポ酸を摂取することも重要ですが、万が一体調に変化があった場合にはすぐに摂取を中止、医療機関へ相談するようにしましょう。
近年では、健康ブームの高まりから食品以外から手軽に栄養素を補えるようになりました。
しかし、本来でなら健康を考えるのであれば、適度に手を加え調理された日々の食品から栄養を補っていくことが、体のためには必要です。
「天然・自然の素材」という言葉を過大評価するのではなく、本当に自分に必要な栄養素をきちんと知り、毎日の健康に役立てていきましょう。
※4、7、13

医薬品との相互作用

健康によい成分をたっぷりと含んでいるα-リポ酸ですが、日頃から医師に処方されたお薬を飲んでいる方は注意が必要です。
例えば、糖尿病治療薬を服用されている方は、α-リポ酸を併用すると血糖値が過度に低下する恐れがあります。
またその他にもα-リポ酸を摂取することで特定の抗悪性腫瘍薬や、甲状腺ホルモン製剤の効果を弱める恐れもあります。
このような事から、持病のある方やお薬を服用中の方は、α-リポ酸を摂取する前に医師に確認をとるようにすると安心でしょう。

また、ハーブの中など中にも状腺ホルモンの作用を低下させるものや血糖値を低下させるもの、血糖値を上昇させるものがあります。
これらのものとα-リポ酸を併用して摂取すると作用が増強されることや、相殺されてしまうことがあるため注意が必要です。※4、7

※13 J-STAGE サプリメントに関する適正な情報マネージメント
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdi/12/3/12_3_126/_pdf
※4 サプリメント健康辞典 一般社団法人日本サプリメント協会著 2017年6月発行 集英社
※7 健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 日本対応版<第6版> 一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic) 2019年7月第6版第1刷発行 同文書院

まとめ

α-リポ酸は、ビタミンと似た様な働きがありますが、体内で合成されるため、ビタミンとは少し違う「ビタミン様物質」と呼ばれています。
体内で合成されるとはいえ、元気な体を維持するためには、毎日少しずつ追加してあげることも大切です。
α-リポ酸を上手に摂りながら、健康な毎日を目指しましょう。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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