パントテン酸を上手に付き合い、心の安らぎと元気で健康な毎日を!

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近年、パントテン酸という成分の名前を、目や耳にすることが増えているのではないでしょうか。
パントテン酸はかつて、少し違う名前で呼ばれていましたが、体に欠かせない、とても大切な栄養素の1つです。
言い慣れないと舌をかみそうなパントテン酸という名称は、実は「どこにでもある酸」という意味の言葉が語源になっています。
私たちにとって、元気や力の源ともなるパントテン酸、その秘められたパワーに迫ります。

目次

  1. パントテン酸とは
    • パントテン酸とは
    • 水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの違い
  2. パントテン酸の働き
    • エネルギーを作り出すパントテン酸
    • パントテン酸が体内で不足すると
  3. パントテン酸を多く含む食品
    • パントテン酸を多く含む食品
    • パントテン酸が不足することもある?
  4. パントテン酸を上手に摂取するには
    • パントテン酸を美味しく摂取しよう
    • パントテン酸を摂取する時の注意
  5. まとめ

パントテン酸とは

パントテン酸とは

パントテン酸はビタミンの1種で、ギリシャ語の「どこからでも」を語源としています。※1
この「どこからでも」は「いたるところに存在する酸」という意味で、その言葉通り動植食品だけではなく、植物食品にもパントテン酸は含まれています。※2
またパントテン酸は発見された順番から、ビタミンB5とも呼ばれています。※3

パントテン酸の発見は、1901年にまで遡ります。
当時、酵母の成長を促進する物質として発見された成分は、発見以来およそ40年間に渡り研究者がいろいろな角度から研究を続けてきました。
そんな中、1939年に皮膚炎を起こしたニワトリにはある成分が不足していることから、皮膚炎に何らかの影響を及ぼしていると考えられました。
後にこの成分は、1933年に酵母Saccharomyces cerevisiaeの生育因子群ビオスとして発見され、パントテン酸(Pantothenicacid)と呼ばれていたものと同じ成分であることがわかりました。※2

ではここで、パントテン酸の仲間であるビタミンにについて、見ていきましょう。
ビタミンはラテン語の「VITA」が語源で「生命」を意味し、パントテン酸を含め全部で13種類あります。
まず、ビタミンは溶解性の違いから水溶性・脂溶性の二つに分けることができます。※4
そしてそれぞれのビタミンには、化学名や別名もあります。

 

【水溶性ビタミン】

  • ビタミンB1/化学名チアミン
  • ビタミンB2/化学名リボフラビン
  • ナイアシン/化学名ニコチン酸、ニコチンアミド
  • ビタミンB6/化学名ピリドキシン
  • 葉酸/プテロイルグルタミン酸
  • ビタミンB12/コバラミン
  • ビオチン/ビタミンH
  • パントテン酸/ビタミンB5
  • ビタミンC/アスコルビン酸
  • ※水溶性ビタミンの9種のうち、ビタミンCを除いた8種はビタミンB群と呼ばれています。

 

【脂溶性ビタミン】

  • ビタミンA/化学名レチノール、β-カロテン
  • ビタミンD/化学名カルシフェロール
  • ビタミンE/化学名トコフェロール
  • ビタミンK/化学名フィロキノン※1、2、3、4

同じ「ビタミン」でも、さまざまな名称があることが分かります。

 

水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの違い

水溶性と脂溶性の二つに分けらえたビタミンにはどのような違いがあるのでしょうか。

 

【水溶性ビタミン】
パンテトン酸を含む水溶性ビタミンは水に溶けやすく、油脂には溶けにくいといった性質を持っています。
そのため、水溶性ビタミンは血液などの体液に溶け込んでいて、余分なものは尿として排出されるため、体内で水溶性ビタミンの量が多くなり過ぎることはあまりないと考えられています。
このように水溶性ビタミンは定期的に体内から排出されるため、貯蓄はできません。
ですので、水溶性ビタミンは毎食、食べ物から一定量を摂取し補っていく必要があります。※4、5

 

【脂溶性ビタミン】
脂溶性ビタミンは文字通り、水に溶けにくく、アルコールや油脂に溶けやすい性質があります。
また主に脂肪組織や肝臓に貯蔵されるため、摂りすぎると過剰により体調を崩す心配があります。
脂溶性ビタミンが過剰になると、体にいろいろな不調が起こることが報告されていますが、通常の食事においては摂りすぎになる心配はありません。
食事以外で大量に脂溶性ビタミンを摂取しようとした時は、注意が必要となります。※4、5

ビタミンは、たんぱく質、脂質、糖質といった3大栄養素とは異なり、エネルギー源や体の構成成分にはなりませんが、体の機能を正しく維持するためには欠かすことのできない栄養素です。
また、エネルギー産生栄養素に比べると、体に必要な量はごく微量です。
しかし体内ではビタミンはほとんど合成することができない有機化合物であるため、いろいろな食品から摂取する必要があります。※4、5、6

※2 J-STAGE パントテン酸-発見とその栄養特性- / 2019年9月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/79/11/79_KJ00004407303/_pdf/-char/ja
※5 厚労省 ビタミン(びたみん)/2019年9月27日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html
※1 ビタミン・ミネラルの安全性 (第3版) ジョン・ハズコック(著) 2014年9月 初版第1刷発行 日本ビタミン学会
※3 健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 日本対応版<第6版> 一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic) 2019年7月第6版第1刷発行 同文書院
※4 栄養の基本がわかる図解辞典 中村 丁次監修 2015年7月発行 成美堂出版
※6 NHK出版からだのための食材大全 NHK出版編 2018年11月第1刷発行 NHK出版

パントテン酸の働き

エネルギーを作り出すパントテン酸

パントテン酸はパント酸がβ-アラニンと結合した「アミド」です。
「アミド」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、これはアミノ酸の仲間といえます。
アミノ酸はたくさん結合するとたんぱく質になりますが、結合する数が少ないものはアミドと呼ばれます。

アミドの一つであるパントテン酸は、コエンザイムAという補酵素の構成成分として、体内で多くのエネルギー生産に関わる中心的なサポート役として貢献しています。
コエンザイムA(CoA)は、糖質、脂質、たんぱく質の3大栄養素からエネルギーが作り出される時に、140種類以上もの酵素の補酵素として働く成分です。
少し難しいですが、パントテン酸が脂肪酸と結合すると、アセチルCoAやアシルCoAを生成し、エネルギーを生み出す反応などに関わります。
つまり、パントテン酸は体内でエネルギーを作り出すためには必要不可欠な成分ということになります。
また、私たちの体は元気が失われてくると、副腎皮質ホルモンとよばれる成分を分泌し、元気を取り戻せるように対処しようと働きます。
この時に副腎皮質ホルモンの産出を促進するのが、パントテン酸なのです。

ところで、水溶性ビタミンは、ビタミンB群とビタミンCに分類されているのですが、ビタミンB群はなぜ「群」としてひとくくりにされているのでしょうか。
ビタミンの研究が始まった頃に、牛乳中の成長促進因子には現在のビタミンAにあたる、脂溶性A因子水溶性B因子があると考えられていました。
この水溶性B因子が現在のビタミンB群となるのですが、現在はビタミンB1 やビタミンB2などと呼ばれる各成分が、当時は共通の性質を持っていることから単一物質と考えられていたため、B群としてまとめられたのです。
ビタミンB群の共通点は体内でのエネルギー反応などを促す補酵素として働くことです。
そのため、パントテン酸は同じ仲間であるナイアシンや、葉酸、ビタミンB1、ビタミンB2などと、協力しながら働く成分といえます。※1、6、2、7

 

パントテン酸が体内で不足すると

では、パントテン酸が体内で不足してしまうと、どのようなことがおこるのでしょうか。
まず、体内でのパントテン酸が不足すると、摂取した脂質や糖質、たんぱく質をエネルギーに変えるという働きが滞ってしまうことになります。※7
食事をたくさん食べたとしても、それを分解してエネルギーに変える反応が起こらければ、脂肪やグリコーゲンとなり体に蓄積されていきます。
しかし、余分な脂肪やグリコーゲンが過剰に体に蓄積してしまうと、体にさまざまな影響を与え、健康な体からは遠ざかってしまうことになります。
また、パントテン酸不足によりホルモンの生成や分泌が低下してしまうと、体は元気を取り戻すことが難しくなりますし、体内に侵入した異物などと戦う力までも低下してしまいます。
さらにパントテン酸は、体にとって良い働きをするコレステロールであるHDLコレステロールを増やす働きもあるため、不足してしまうとHDLコレステロールを増やす働きも低下してしまうことになります。※4、7

※2 J-STAGE パントテン酸-発見とその栄養特性- / 2019年9月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/79/11/79_KJ00004407303/_pdf/-char/ja
※7  J-STAGE パントテン酸とメタボリックシンドローム / 2019年9月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/46/6/46_6_400/_pdf/-char/ja
※1 ビタミン・ミネラルの安全性 (第3版) ジョン・ハズコック(著) 2014年9月 初版第1刷発行 日本ビタミン学会
※4 栄養の基本がわかる図解辞典 中村 丁次監修 2015年7月発行 成美堂出版
※6 NHK出版からだのための食材大全 NHK出版編 2018年11月第1刷発行 NHK出版
※7 これは効く!食べて治す 最新栄養成分辞典 主婦の友社編 2017年10月発行 主婦の友社

パントテン酸を多く含む食品

パントテン酸を多く含む食品

それでは、私たちはどのような食材からパントテン酸を摂取すれば良いのでしょうか。
パントテン酸をたくさん含んでいる食品をみてみましょう。

【パントテン酸を多く含む食品】
・肉
鶏レバー50gに対し5.05㎎
豚レバー50gに対し3.60㎎
牛レバー50gに対し3.20㎎
鶏ささ身50gに対し1.54㎎

・魚介
子持ちガレイ1切れ(100g)に対し2.41㎎
タラコ1/2腹(40g)に対し1.84㎎
ニジマス1尾(100g)に対し1.63㎎
ウナギのかば焼き1串(100g)に対し1.29㎎

・その他
納豆1パック(40g)に対し1.44㎎
アボカド1/2個(70g)に対し1.16㎎

このようにパントテン酸は日常的に口にする食品に含まれているため、通常であればパントテン酸は不足することは考えにくいとされています。※4、6

 

パントテン酸が不足することもある?

前述のように、パントテン酸は日常的に口にする可能性が高い食品にふくまれていますし、私たちの体の中で腸内細菌によってもパントテン酸は合成されているため、普通の食生活では欠乏してしまうことは少ないとされています。
しかし、現代では20代の若者を中心に、朝食の欠食が増えています。
このような食生活では栄養バランスが崩れてしまい、標準体重を大きく逸脱してしまうこともあります。
例えば、標準体重を大きく下回る状態は極度の栄養不足に陥っている状態であり、結果的にパントテン酸も不足しています。
すると、体調不良となり、元の体に戻るにも時間がかかります。
元気で健康な体に戻るまでには、数年の年月が必要になるともいわれています。
極端な食事の制限は行わないようにし、パントテン酸不足に陥らないよう注意しましょう。
また、普段からコーヒーやアルコールを大量に摂取する人は、パントテン酸を消耗しやすいと言われます。
さらに、抗生物質を服用する機会が多い人も、体内でのパントテン酸の供給が行われなくなるため、意識してパントテン酸が多い食事を摂るなど、栄養バランスを考えた食事をするようにしましょう。※7、8

※8  J-STAGE パントテン酸欠乏症について(第4報) / 2019年9月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1949/17/6/17_6_405/_pdf/-char/ja
※4 栄養の基本がわかる図解辞典 中村 丁次監修 2015年7月発行 成美堂出版
※6 NHK出版からだのための食材大全 NHK出版編 2018年11月第1刷発行 NHK出版
※7 これは効く!食べて治す 最新栄養成分辞典 主婦の友社編 2017年10月発行 主婦の友社

パントテン酸を上手に摂取するには

パントテン酸を美味しく摂取しよう

パントテン酸を多く含む食品の中でも、牛や豚、鶏などのレバーは特に含有量が多いのですが、独特の風味と臭み、食感があるため苦手な人も多いようです。
しかし、パントテン酸をより多く含んだこの食品を摂取しないのは、勿体ないことです。
しっかりと臭みをとって、レバニラや焼き鳥、レバーペーストなどいろいろな調理に挑戦してみてください。

では、それぞれのレバーの特徴をご紹介します。

・牛レバー
成牛よりも子牛のレバーが、上質で美味しいとされています。
パントテン酸の他にビタミンB12、ビタミンEが豊富に含まれています。

・豚レバー
牛レバーと同様に子豚のレバーの方が上質で美味しいとされています。
また、牛や鶏のレバーに比べたんぱく質の含有量が多く、加工品としてよく利用されています。

・鶏レバー
低カロリーでありながら、ビタミンB1、葉酸が豊富に含まれています。
牛や豚に比べると臭みが少ないため食べやすくなっています。※6

では、続いてレバーの臭みの取り方をご紹介しましょう。
きちんと下処理を行えば、どのレバーも美味しく頂くことができます。
下処理といえばどこか面倒なイメージがありますが、レバーの下処理は意外と簡単です。

方法はいくつかありますが、一番よく知られているのは「牛乳に漬ける方法」です。
レバーを一口大に切り、ボウルにいれ牛乳をひたひたに注ぎます。
そのままレバーを30分以上漬け置き、取り出す時は水分を拭いて調理を行います。
鶏レバーは臭みが少ないため、一口大に切り、洗った後は牛乳ではなく塩水に漬け置いてもよいでしょう。※6

下処理を怠り、他の味でごまかして煮たり、焼いたりすると他の食材にまで臭みが移ってしまいます。
丁寧に下処理を行い、しっかりと臭みを取り除きましょう。
レバーの臭みの原因は血の塊ですから、レバーについている血の塊を丁寧に包丁の先で取り除くようにし、しっかりと水洗いを行いましょう。

パントテン酸を摂取する時の注意

元気な体を維持するために不可欠とされているパントテン酸は、1日どれくらい摂取すればよいのでしょうか。
パントテン酸は脂溶性ビタミンであるため、食品からであれば過剰に摂りすぎても過剰症の心配はありません。
しかし、厚生労働省では栄養素について、「摂取不足の回避」、「過剰摂取による健康障害の回避」、「生活習慣病の予防」の3つの目的のために「推定平均必要量」「推奨量」「目安量」「目標量」「耐容上限量」といった5つの指標を設けています。
栄養素によって設定されている指標はさまざまなのですが、パントテン酸の1日の食摂取基準は18歳以上の男性では5㎎、18~49歳の女性では4㎎、50歳以上の女性では5㎎とされています。
また妊婦や授乳中の方は年齢に関係なく1日5㎎とされています。※9、10
パントテン酸と医薬品との相互関係はまだ明らかにされていませんので、持病がある方や日常的に服用されているお薬がある方はかかりつけの医師に相談するようにしましょう。※4、11

※9 厚生労働省 5.2.7.パントテン酸 / 2019年9月27日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4v.pdf
※10 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」策定検討会報告書 / 2019年9月27日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf
※4 栄養の基本がわかる図解辞典 中村 丁次監修 2015年7月発行 成美堂出版
※6 NHK出版からだのための食材大全 NHK出版編 2018年11月第1刷発行 NHK出版
※11 健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 日本対応版<第6版> 一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic) 2019年7月第6版第1刷発行 同文書院

まとめ

パントテン酸はいろいろな食品に含まれており、日頃から栄養バランスの良い食生活を送っていれば、パントテン酸が不足することは考えにくいといわれています。
しかし、何かと忙しい現代ではパントテン酸やいろいろなビタミン、ミネラルが不足しがちに。
美味しく楽しく栄養バランスを整え、健康寿命を延ばしていきましょう。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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