体を元気にするビタミンA、適度な摂取で明るく元気な毎日を!

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現代人はライフスタイルの変化により、栄養バランスのとれた和食から脂質過多の洋食へとシフトしつつあります。
それに伴い、食のマーケットは飽食であるにも関わらず個々の食事内容はだんだんと貧相なものに。
体内では、いろいろな栄養素がお互いに協力しながら働いているため、ビタミンAの過不足が起こると、体の機能は正常に動くことができなくなってしまいます。
ビタミンAを正しく理解し、過不足のない生活を目指しましょう。

目次

  1. ビタミンAとは
    • ビタミンAとは
    • ビタミンAにも種類がある?
  2. ビタミンAの健康パワー
    • 体を守るビタミンA
    • 敵と戦うビタミンA
  3. ビタミンAを美味しく摂取しよう
    • ビタミンAを多く含む食品
    • ビタミンAを美味しく摂取できる食材
  4. ビタミンAを摂取する時の注意
    • ビタミンAの1日の摂取量
    • ビタミンAを摂取する時の注意
  5. まとめ

ビタミンAとは

ビタミンAとは

ビタミンAを含むビタミンは、必要量はごく少量でも体にとって重要な役割を果たすことから、微量栄養素とも呼ばれています。
同じように生理機能を調整する人に不可欠なビタミンは全部で13種類あり、水溶性ビタミン脂溶性ビタミンに分ける事ができます。
それでは、ビタミンの種類を見てみましょう。

【水溶性ビタミン】
・ビタミンB1
・ビタミンB2
・ナイアシン
・パントテン酸
・ビタミンB6
・葉酸
・ビタミンB12
・ビオチン
・ビタミンC

【脂溶性ビタミン】
・ビタミンA
・ビタミンD
・ビタミンE
・ビタミンK

水溶性ビタミンの性質は水に溶けやすく熱に不安定なため、過剰な水洗いや長時間の過熱は避けた方がよいでしょう。
一方、脂溶性ビタミンはアルコールや油に溶けやすい性質があるため、ビタミンAも油に溶けやすいということになります。
また、ビタミンAは体内でほとんど合成することができないため、食事から摂取する必要があります。※1、2、3、4

ビタミンAにも種類がある?

ビタミンAは1915年に発見され、化学名はレチノールと名付けられました。
また、ビタミンAの仲間に分類される栄養素には、β-カロテンもあります。
レチノールは動物性食品に多く含まれ、β-カロテンは緑黄色野菜に多く含まれています。
β-カロテンは緑黄色野菜の色素成分で、体内で吸収される時には酵素によってビタミンAへと変換する性質があります。
β-カロテンの構造はビタミンAが2個結合した形をしていて、β-カロテン1分子からはビタミンA2分子が作られるのです。
β-カロテンのようにビタミンAに変換される物質はプロビタミンAと呼ばれ、α-カロテンクリプトキサンチンなどカロテノイドの一種です。
カロテノイドは自然界で700種類以上が知られ、β-カロテンを含めどのプロビタミンAも体を元気にする力を持っています。
カロテノイドは大きく分けるとカロテン類とキサントフィル類に分けることができ、β-カロテンはカロテン類に分類されます。
それではカロテン類の種類をみてみましょう

・β-カロテン:プロビタミンAの中でも最もビタミンAへの変換率が高く、食品中に多く含まれています。
・アスタキサンチン
・ルテイン
・α-カロテン
・γ-カロテン
・リコピン
・フコキサンチン

ビタミンAを耳にしたことがある方も多いと思いますが、実はβ-カロテンもビタミンAの仲間だったということは案外知られていないかもしれません。
ビタミンAを摂取する時には、是非β-カロテンも思い出し、調理の候補に入れてみましょう。※1、2、3、4、5

※1 厚生労働省 1-6 ビタミン / 2019年12月25日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042635.pdf
※5 e-ヘルスネット カロテノイド(かろてのいど) / 2019年12月25日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-007.html
※2 これは効く!食べて治す 最新栄養成分辞典 主婦の友社編 2017年10月第1刷発行 主婦の友社
※3 栄養の基本がわかる図解辞典 中村丁次監修 2017年2月発行 成美堂出版
※4 世界一やさしい!栄養素図鑑 牧野直子監修 2017年8月発行 新星出版社

ビタミンAの健康パワー

体を守るビタミンA

ビタミンAの健康パワーはたくさんあります。
まず一つ目にあげられるのは、体全体を外敵から守る働きです。
体内ではいろいろな場所でバリアを張り、外敵が侵入しないよう門番として働く機能があります。
このようなバリア機能のおかげで、体は丈夫になり、外敵と戦う力をさらに高めていけます。

また、ビタミンAは色素ロドプシンの主成分となっています。
この成分は、光を感じるために必要な物質です。
ロドプシンは暗いところでも、わずかな光に反応します。
例えば、映画館のような暗い場所へ明るい場所から急に入ると、慣れるまでは真っ暗に感じてしまうことはありませんか。
暗がりに入り、徐々に見えるようになる反応は暗順応といい、この働きにロドプシンが大きく関与しています。
また、逆に暗いところから明るいところへ出ると眩しいと感じます。
これは暗い場所でロドプシンが増えた状態から、明るい場所に出て一気に光が多く入ることでロドプシンが過剰反応を起こしているからです。
映画館やトンネルなどで暗さになかなか慣れることができないような時は、ビタミンAが不足しているのかもしれません。※2、3、4、6、7

敵と戦うビタミンA

では、体内でビタミンAへと変換されるβ-カロテンの健康パワーを見ていきます。

私たちは日々、呼吸を繰り返して生きています。
このようにして取り入れられた酸素は、生命活動の過程で一部がとても力の強い物質となり、体を構成するたんぱく質や脂質を傷つけてしまいます。
傷つけられた部分は健康を失い、時には大きな病の原因となることもあります。
体内には、もともとこの物質を消去する機能が備わっているのですが、この機能は年齢とともに低下します。
β-カロテンの持つ健康パワーには、この物質と戦う働きがあることが分かり、近年は特に注目を集めています。
さまざまな食品に含まれるビタミンAをしっかりと摂取し、体内を傷つけようとする物質を消去する機能を補ってあげましょう。※2、3、4、6、7

※6 e-ヘルスネット 活性酸素と酸化ストレス / 2019年12月25日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html
※2 これは効く!食べて治す 最新栄養成分辞典 主婦の友社編 2017年10月第1刷発行 主婦の友社
※3 栄養の基本がわかる図解辞典 中村丁次監修 2017年2月発行 成美堂出版
※4 世界一やさしい!栄養素図鑑 牧野直子監修 2017年8月発行 新星出版社
※7 体の悩みを解決!ずっと健康に!サプリメント健康辞典 一般社団法人 日本サプリメント協会監修2017年6月第2刷発行 集英社

ビタミンAを美味しく摂取しよう

ビタミンAを多く含む食品

ビタミンAとβ-カロテン、それぞれの含有量と目安量を合わせてみてみましょう。

【ビタミンAを多く含む食品/可食部100gあたり】
・鶏レバー:14,000㎍/焼き鳥1串30gで4,200㎍
・豚レバー:13,000㎍/レバニラ炒め1人前70gで9,100㎍
・あんこう(肝):8,300㎍/1切れ50gで4,150㎍
・ギンダラ:1,500㎍/1切れ100gで1,500㎍
・うなぎの蒲焼:1,500㎍/1串80gで1,200㎍

【β-カロテンを多く含む食品/可食部100gあたり】
・モロヘイヤ:10,000㎍/1袋80gで8,000㎍
・西洋カボチャ:3,900㎍/煮物1人前130gで5,070㎍
・にんじん:6,900㎍/中1本180gで12,420㎍
・春菊:4,500㎍/1束200gで9,000㎍
・あしたば:5,300㎍/1束150gで7,950㎍

またビタミンAの吸収率はどのような食べ方でも約90%と高いのですが、β-カロテンの吸収率は10~60%と低くなっています。
しかし、β-カロテンからビタミンAを摂取するには、ちょっとした工夫で吸収率を高めることができます。
それは、油と一緒に摂取することです。
ビタミンAは熱にも強い性質があり熱を加えても栄養価に大きな損失はありません。
加熱するなら油炒め、生で食べるならマヨネーズやドレッシングといった油を含んだ調味料をかけるようにしましょう。
しかし、油はたくさん使うとカロリーが高くなってしまいます。
油を利用する時には、新鮮な油を適量使うようにし、カロリーオーバーしないように注意をしましょう。※1、2、3、4

ビタミンAを美味しく摂取できる食材

レバーにはビタミンAがたっぷりと含まれていますが、独特の風味や食感、臭みから苦手だという人も多い食品です。
しかし栄養価が高いレバーは、継続的に摂取したい食品の1つです。
臭みをとって美味しく食べる方法をご紹介しましょう。
まず、レバーの臭みの原因は血の塊です。
この血の塊をしっかりと包丁の先で取り除き、丁寧に水洗いを行いましょう。
その後、一口大に切り、ボウルに入れ、ひたひたに牛乳を注ぎ、30分以上置きます。
後は取り出して、水分をふき取り調理します。
この少しの手間でレバーは驚くほど臭みが取れるので、レバニラや焼き鳥、レバーペーストなどに利用してみましょう。

次はβ-カロテン含有量トップクラスのにんじんを使ったレシピをご紹介します。

【にんじん卵いため】
材料(2人分)/ニンジン150g、卵1個、ごま油小匙2、万能ねぎ少々、A(砂糖小匙1、塩、醤油少々)

1.にんじんは皮を剥いて3~5㎝の千切りにする
2.ボウルに卵を溶きほぐす
3.フライパンにごま油を熱し、1を炒めて火が通ったらAを加える
4.溶き卵を入れて混ぜ、炒り卵になるまで炒める
5.器に盛り、小口切りにした万能ねぎを散らす※2、8

味付けはお好みですが、砂糖と塩の代わりに、鶏ガラスープの素などでも美味しくできます。

※1 厚生労働省 1-6 ビタミン / 2019年12月25日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042635.pdf
※2 これは効く!食べて治す 最新栄養成分辞典 主婦の友社編 2017年10月第1刷発行 主婦の友社
※3 栄養の基本がわかる図解辞典 中村丁次監修 2017年2月発行 成美堂出版
※4 世界一やさしい!栄養素図鑑 牧野直子監修 2017年8月発行 新星出版社
※8 NHK出版からだのための食材大全 池上文雄・加藤光敏・河野博・三浦理代・山本謙治監修 2018年11月第1刷発行 NHK出版

ビタミンAを摂取する時の注意

ビタミンAの1日の摂取量

元気の源であるビタミンAの1日の摂取量を見ていきます。
厚生労働省が公表している栄養素の指標は、摂取不足の回避・過剰摂取による健康障害の回避・生活習慣病の予防3つの目的から5つの指標となる推定平均必要量・推奨量・目安量・目標量・耐容上限量を示しています。
推奨量は1日の必要量を満たす量ですが、耐容上限量は健康に害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限で、この量を超えると健康に害を与えるリスクが高まるとされています。
それでは、ビタミンAの年齢ごと男女別の推奨量と耐容上限量をご紹介します。

【ビタミンAの食事摂取基準(μg RAE/日)※1】推奨量/耐容上限量の順で記載

・男性
1~2歳:400/600
3~5歳:500/700
6~7歳:450/900
8~9歳:500/1,200
10~11歳:600/1,500
12~14歳:800/2,100
15~17歳:900/2,600
18~29歳:850/2,700
30~49歳:900/2,700
50~69歳:850/2,700
70歳以上:800/2,700

・女性
1~2歳:350/600
3~5歳:400/700
6~7歳:400/900
8~9歳:500/1,200
10~11歳:600/1,500
12~14歳:700/2,100
15~17歳:650/2,600
18~29歳:650/2,700
30~49歳:700/2,700
50~69歳:700/2,700
70歳以上:650/2,700

※1(μg RAE/日):レチノール活性当量と読みます。これは、=レチノール(μg)+β─カロテン(μg)×1/12+α─カロテン(μg)×1/24+β-クリプトキサンチン(μg)×1/24+その他のプロビタミン A カロテノイド(μg)×1/24 という、プロビタミンの仲間からどれくらいのビタミンAが作られるかという数式に当てはめることで求められます。

具体的には、銀ダラ1切れ(100g)やウナギのかば焼きを毎日食べると推奨量以上耐用上限未満ですが、他のビタミンAを多く含む食材を追加すると耐用上限を超える可能性があります。
動物性食品に含まれるレチノールは摂りすぎると体に蓄積されるため、体調不良を起こすこともあります。
ビタミンAの1日の耐容上限量を、超えないよう注意しましょう。

一方、β-カロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変わるため、過剰に摂取してもビタミンAの過剰摂取となることはほぼありません。
つまり、β-カロテンを多く含む緑黄色野菜は、日常の食事にどんどん取り入れたい食品です。
また、ビタミンAの不足は体の元気をなくしてしまう原因となります。
ビタミンAは過不足ないよう摂取し、毎日の元気を維持していきましょう。※1、3、7、9

ビタミンAを摂取する時の注意

妊娠後期のビタミンAの1日の摂取量は、推奨量にプラス80μg RAE/日、授乳婦ではプラス45μg RAE/日となっています。
しかし、推奨量を超えての摂取に、安全性は認められていません。
特に妊娠初期の3ヶ月間は先天性異常を引き起こす危険性があるとされているため、どのような摂取源であってもビタミンAの総摂取量を気にする必要があるとされています。
とはいえ、体に蓄積されるレチノールを多く含む食品を連日食べ続けることは少ないでしょう。
例えば毎日レバーの焼き鳥を1本食べ続けることは過剰摂取へと繋がりますが、土用の丑の日にウナギを食べる程度では全く問題はありません。
ビタミンAの過不足を意識しながら、栄養バランスのとれた食事と適度な運動で元気な赤ちゃんを迎えましょう。
ビタミンAと医薬品との相互作用にも注意が必要です。
多量のビタミンAは血液凝固抑制剤であるワルファリンと同じ働きをするため、併用した場合には、紫斑や出血のリスクが高まる恐れがあります。
また、いくつかの種類の肝臓の医薬品と併用した場合には、肝障害のリスクが高まる恐れがあります。
さらに、テトラサイクリン系抗菌薬とビタミンAの併用では、頭蓋内圧亢進といわれる重篤な副作用のリスクもあります。
その他にも特定の皮膚科用薬にはビタミンAの作用があり、ビタミンA製剤とこのような皮膚科用薬を併用した際にはビタミンAの副作用が増強する恐れがあります。
日頃から医師から処方されお薬を服用されている方や、持病がある方、心配のある方は、ビタミンAを積極的に摂取する前に、医師に確認をとるようにしましょう。※1、7、9、10、11、12

※1 厚生労働省 1-6 ビタミン / 2019年12月25日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042635.pdf
※9 厚生労働省 日本人の食事摂取基準 / 2019年12月25日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
※3 栄養の基本がわかる図解辞典 中村丁次監修 2017年2月発行 成美堂出版
※7 体の悩みを解決!ずっと健康に!サプリメント健康辞典 一般社団法人 日本サプリメント協会監修2017年6月第2刷発行 集英社
※10  NUTRI-FACTS ビタミンA//レチノール 推奨摂取量 / 2019年12月25日閲覧
https://www.nutri-facts.org/ja_JP/nutrients/vitamins/a/intake-recommendations.html
※11 健康食品・サプリ医薬品との相互作用辞典 日本医師会・日本薬剤師会・日本歯科医師会総監修2017年8月初版発行 同文書院
※12 健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 日本対応版<第6版> 一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic) 2019年7月第6版第1刷発行 同文書院

まとめ

体を元気にしてくれるビタミンAは、ちょっとしたコツで体への吸収率を高めることができます。
しかしビタミンAは、過剰に摂取しすぎても不足しても体には良いことがありません。
自分の適量を知り、毎日きちんとビタミンAを体内に補ってあげて、元気一杯な毎日を送りましょう。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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