体内で作れるビタミンDが不足している!?意識してビタミンDを摂取しよう
体を動かす栄養素は、三大栄養素と呼ばれる糖質、たんぱく質、脂質です。
三大栄養素はエネルギーの源となるのですが、これだけでは元気な体を維持することはできません。
摂取された三大栄養素の力を十分に発揮させるためには、ビタミンやミネラルがとても重要です。
中でも今回お伝えするビタミンDには、元気で丈夫な体をつくるのに欠かせません。
栄養素の正しい知識を身につけて、ビタミンDをきちんと摂取していきましょう。
目次
- ビタミンDとはどのような成分か
- 体に必要な栄養素
- 微量でも体にとっては大事な栄養素
- ビタミンDの働き
- 体を丈夫にする栄養素
- 健康を維持する栄養素
- ビタミンDは体内で作られる量だけでは足りない?
- 生活スタイルの変化によるビタミンD不足
- ビタミンDにもいくつか種類がある
- ビタミンDと日光浴の関係
- ビタミンDを上手に摂取しましょう
- ビタミンDを摂取するなら日光浴を
- カルシウムと一緒にビタミンDを摂取しよう
- ビタミンDを多く含む食品
- ビタミンDの摂り過ぎには注意が必要
- まとめ
ビタミンDとはどのような成分か
体に必要な栄養素
ビタミンは三大栄養素のようにエネルギー源となったり、直接的な体の構成成分となったりはしませんが、体の機能を正常に維持するためにはとても大切な栄養素で、私たちが健康で丈夫な体をつくるためには必須といわれています。
また、ビタミンは溶解性の違いで脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2種類に分類されます。
ビタミンDは、このうちの脂溶性ビタミンであり、水に溶けにくく、アルコールや油脂に溶ける性質を持っています。
脂溶性ビタミンにはビタミンDの他にも、いくつかの種類があります。※1、2、3
- 1915年発見 ビタミンA (化学名・別名 レチノール、β-カロテン)
- 1919年発見 ビタミンD (化学名・別名 カルシフェロール)
- 1922年発見 ビタミンE (化学名・別名 トコフェロール)
- 1935年発見 ビタミンK (化学名・別名 フィロキノン)
一方、水に溶けやすく油脂に溶けにくい性質を持つビタミンは水溶性ビタミンと呼ばれ、9種類あります。
水溶性ビタミンのうち8種類はビタミンB群と呼ばれ、下記の種類があります。
- 1911年発見 ビタミンB1(化学名・別名 チアミン)
- 1928年発見 ビタミンC (化学名・別名 アスコルビン酸)
- 1933年発見 パントテン酸 (化学名・別名 ビタミンB5)
- 1934年発見 ビタミンB6 (化学名・別名 ピリドキシン)
- 1935年発見 ビタミンB2 (化学名・別名 リボフラビン)
- 1936年発見 ビオチン (化学名・別名 ビタミンH)
- 1937年発見 ナイアシン (化学名・別名 ニコチン酸、ニコチン酸アミド)
- 1941年発見 葉酸 (化学名・別名 プテロイルグルタミン酸)
- 1948年発見 ビタミンB12 (化学名・別名 コバラミン)※1、2、3、4
微量でも体にとっては大事な栄養素
体に必要不可欠とされているビタミンは、脂溶性ビタミン4種類、水溶性ビタミン9種類の全部で13種類です。
これらは微量栄養素といわれ、いずれも必要量はごくわずかです。
しかし、これらのビタミンは必要量が少なくても、きちんと摂取する必要があります。
ビタミンの不足は、そのビタミン特有の体の不調を引き起こすことがあります。
例えば、現代の日本を始めとする先進国では、ビタミンDが日常的に摂取不足にあるといわれています。
ビタミンDの特徴を見てみると、化学名はカルシフェロールで、その性質は白色結晶で、熱や酸化に対して比較的安定した物質です。※1、2、3、4
では、ビタミンDの不足は、体にどのような影響を与えるのでしょうか。
※1 e-ヘルスネット ビタミン / 2019年6月27日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/keywords/vitamin
※2 栄養の基本がわかる図解辞典 中村 丁次 (監修) 2017年2月発行 成美堂出版
※3 ビタミンD革命 日光の恵みビタミンDの力 ソラム・カルサ著 2010年12月 初版1刷発行 バベルプレス
※4 病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンD1の実力 斎藤糧三 2017年8月第1
刷発行 講談社
ビタミンDの働き
体を丈夫にする栄養素
そもそもビタミンは、健康に必要不可欠であるものの、体内では作ることができない物質と定義されています。
しかし実際のところ私たちの体では、日光を浴びることで皮下にてコレステロールからビタミンDを合成することができるため、厳密にはビタミンD=ビタミンでは無いという考え方もあります。
ビタミンDの体内での働きは実にさまざまで、その中の一つとしてカルシウムとリンの吸収を促進するというものがあります。
これが、元気で丈夫な体をつくる、という働きです。
丈夫な体をつくるとされるカルシウムですが、たくさん摂ってもその吸収率は10~15%と、あまり良くはありません。
しかし、ビタミンDが体内で働きかけることにより、カルシウムの吸収を行うための環境が整うため、カルシウムの吸収率は30~40%までアップするとされています。※1、3、4、5
健康を維持する栄養素
もう一つのビタミンDの働きとして、細胞の成長と分化を助けるというものがあります。
体の組織を作る大部分の細胞には、ビタミンDをキャッチするアンテナである受容体があります。
ビタミンDはそれぞれの細胞の受容体に結合すると、その細胞の成長と分化をコントロールします。
具体的には、次のような働きです。
細胞が分化するときには、遺伝子がキレイにコピーされていく必要がありますが、ビタミンDはこの「遺伝子のコピー」がキレイに行われるように働く、といわれています。
例えば、何らかの原因で遺伝子が傷ついてしまうと、キレイにコピーされなくなり、元の正常な細胞とは違う遺伝情報をもった細胞ができてしまいます。
しかしここで、十分な量のビタミンDが異常を来した細胞の受容体に結合すると、この細胞の増殖を抑えるという力を発揮します。
この他にもビタミンDは、筋肉をつくり出したり、神経を通じて脳と身体のあらゆる部位とのメッセージを伝えたり、白血球をつくり出してその力を発揮しやすくするなど、私たちの体にとって大事な働きを持っていることが分かっています。
ビタミンDは私たちの体で大きな役割を果たし、毎日の健康に貢献してくれているのです。
健康を支えてくれるビタミンDは日光で作られることから、日光ホルモンという別名もあり、もともと日光を浴びて生活をしている人類には、体内に豊富にビタミンDがあるものだと考えられていました。
しかし、なぜか現代ではビタミンDが不足しているといわれるようになりました。
その原因はどこにあり、どのような改善方法があるのでしょうか。※1、3、4、5
※1 厚生労働省 e-ヘルスネット ビタミン / 2019年6月27日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/keywords/vitamin
※5 厚生労働省 「統合医療」情報発信サイト ビタミンD / 2019年6月27日閲覧
http://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/10.html
※3 ビタミンD革命 日光の恵みビタミンDの力 ソラム・カルサ著 2010年12月 初版1刷発行 バベルプレス
※4 病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンD1の実力 斎藤糧三 2017年8月第1刷発行 講談社
ビタミンDは体内で作られる量だけでは足りない?
生活スタイルの変化によるビタミンD不足
現代では、紫外線は悪者扱いをされることが多く、日光を避ける人が多くなりました。
その結果、日焼け予防対策を日常的に行う人が増え、血液中のビタミンD濃度が、欠乏状態になってしまうことがわかりました。
また、近年では健康やダイエットなどのブームで野菜は意識して摂取する人は増えていますが、残念ながら野菜には基本的にビタミンDは含まれていません。
健康的だとおもわれがちなベジタリアンの食生活では、ビタミンDはむしろ欠乏しやすい栄養素となってしまうため、注意が必要なのです。
特に昭和40年以降に生まれた人は食生活の変化に伴い、それ以前に生まれた人に比べビタミンDを含む食品を口にする機会が少なくなりました。
そのため現代では、ビタミンDは不足しやすい状況にあると考えられています。※3、4、6
ビタミンDにもいくつか種類がある
私たちの全身の細胞に働きかけ、丈夫な強い体にしてくれているビタミンDには、いくつか種類があります。
人間の体には、ビタミンDの原料となる7-デヒドロコレステロールと呼ばれる物質が広く分布しています。これは血液中にあるコレステロールから合成されたもので、日光を浴びることでビタミンDの前駆体である、プロビタミンD(プレビタミンD)に変化します。
さらにこの変化したプロビタミンD(プレビタミンD)は、体温によって容易にビタミンDへと変化します。
そもそもビタミンDにはD2からD7までの6種類があるのですが、D1はD2が他の不純物と混じりあったものであったことが分かり、現在は欠番となっています。
このビタミンDの6種類のうち、人にとって重要となるものはD2とD3です。
ビタミンD2は植物由来のビタミンDで、エルゴカルシフェロールといいます。
ビタミンD3はコレカルシフェロールといわれています。
ビタミンD2とビタミンD3は構造のみが異なる同族体で、両者の分子量はほぼ等しく、体内では同等の生理効力を現します。
体内で合成されたビタミンDも食べ物から取り入れたビタミンDも、区別されることなく体内で利用され、全身で活用されています。※4、5
ビタミンDと日光浴の関係
体内でビタミンDを合成するためにもっとも手軽な方法は、屋外で日光を浴びることです。
ビタミンDを作る働きがあるのはUVBと呼ばれる紫外線です。
季節や緯度などにより日光浴の時間は異なりますが、1日20分ほどの日光浴で健康維持に必要なビタミンDを作ることができるとされています。
しかし冬季の札幌は晴天の日が少なく日光浴でビタミンDを作ることは困難とされたり、逆に真夏の沖縄で何の予防もせずに長時間日光を浴びてしまうと皮膚が焼けてしまったり、地域や季節により誤差があります。
さらに、紫外線への感受性には個人差があり、日焼けをしすぎて色黒になるとビタミンDが作られにくくなることもあるため注意が必要です。※4
※5 厚生労働省 「統合医療」情報発信サイト ビタミンD / 2019年6月27日閲覧
http://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/10.html
※6 日本ビタミン学会 日本人の成人におけるビタミンD 摂取量は足りているか -国民健康・栄養調査からわかること- / 2019年6月27日閲覧
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/vsojkn/journal/89-9-2.pdf
※3 ビタミンD革命 日光の恵みビタミンDの力 ソラム・カルサ著 2010年12月 初版1刷発行 バベルプレス
※4 病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンD1の実力 斎藤糧三 2017年8月第1
刷発行 講談社
ビタミンDを上手に摂取しましょう
ビタミンDを摂取するなら日光浴を
それでは、不足しがちなビタミンDを効率的に摂取し、毎日の元気を手に入れるために、ビタミンDの効率的な摂取方法をご紹介します。
まずは日光浴です。※5
日光浴をする時は、顔面と手の甲に加え、両腕と膝から下を露出すると表面積が増えるため、ビタミンDを得られやすくなります。
半袖でも過ごせる時期は、男性では半袖半ズボン、女性ではノースリーブとスカートがお勧めです。
もちろん、海やプールで水着になることも、十分な日光を浴びる一つの方法です。
カルシウムと一緒にビタミンDを摂取しよう
しかし、日焼け止めや衣服で日光を避けている方は、食品などからビタミンDを摂取していく必要があります。※5
また、60歳を超えるころになると、日光浴をしても十分にビタミンDが生成されなくなってきますので、若い頃以上に食品などからビタミンDを摂取する必要があります。
いつまでも元気で丈夫な体を維持するためにも、年齢とともにビタミンDをより多く摂取するよう心掛け、十分な日光浴をするようにしましょう。
さらにカルシウムと一緒に摂ることで、健康で丈夫な体づくりができるようになります。※4、7、8
厚生労働省の定めたビタミンDの食事摂取基準は、成人が1日あたり5.5µgとされています。
これは高齢者も同じで、若い頃に比べて日光を浴びなくなったと感じる方は特に、ビタミンDを多く含む食品を摂取するように心がけましょう。
尚、妊婦では7.0?g、授乳婦では8.0?gと、より多い摂取量が推奨されています。※9
ビタミンDを多く含む食品
ビタミンDを多く含む食品は、青魚や卵黄、乳製品やキノコ類です。
特にビタミンD2はキノコ類に、ビタミンD3はイワシやサバなどの魚類(青魚)とバターや卵黄に多く含まれます。
ビタミンDは脂溶性のため、動物性食品のほうが効率よく吸収されるのですが、キノコ類などでも油を使用する炒め物や揚げ物にすれば吸収率を上げることができます。
また、ビタミンDはカルシウムと一緒に摂取することでお互いの吸収率がアップするため、セットで摂取する習慣をつけるとよいでしょう。
しかし、ビタミンDが多いといっても、魚やキノコを毎日食べ続けることはなかなか難しいものです。
また、毎日お天気が約束されているわけでもないため、日光浴で十分なビタミンD量を確保することも無理があるのではないでしょうか。
こんな場合には、日々の足りないビタミンDを、ビタミンDが添加された食品などから補うことも一つの方法です。
日本では、ビタミンDを多く含むように調整された卵や、カルシウムとともにビタミンDが添加された牛乳などがあります。
しかし、これらの食品にアレルギーがあったり、短時間でも日焼けをすることが難しかったりする場合は、より効果的なビタミンDの摂取方法を知っておく必要があります。
お住まいの地域の保健師や栄養士、主治医などに、効果的なビタミンDの摂取方法を相談してみるのも良いでしょう。
ビタミンDの摂り過ぎには注意が必要
日常的な食事以外からビタミンDを大量に摂取しようとすると、場合によってはビタミンDの過剰摂取になる可能性があります。
ビタミンDとカルシウムは一緒に添加されていることも多いため、カルシウム過剰になる可能性もありますので、摂り過ぎには注意しましょう。
また、お薬の飲み合わせにも、十分に注意するものがあります。
例えば、利尿薬の中には体内のカルシウム量を増加させるものがあり、大量のビタミンDと一緒に摂取すると、体内でカルシウムが過剰になってしまいます。
さらにいくつかの心臓のお薬にも、ビタミンDの摂り過ぎによる影響が出てくるものがあります。
普段からお薬を服用されている方は、食事の内容にも気を付ける必要があります。
もし、ビタミンDの摂取を日常的な食事以外にも頼るならば、今飲んでいるお薬との飲み合わせに問題がないか、主治医に確認をとるようにしましょう。※4、5、7、8
※5 厚生労働省 「統合医療」情報発信サイト ビタミンD / 2019年6月27日閲覧
http://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/10.html
※9 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版) 脂溶性ビタミン / 2019年6月27日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042635.pdf
※4 病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンD1の実力 斎藤糧三 2017年8月第1刷発行 講談社
※7 これは効く!食べて治す最新栄養成分辞典 中嶋洋子 蒲原聖可(監修) 2017年10月 第1刷発行 主婦の友社
※8 健康食品サプリメント 医薬品との相互作用辞典 日本医師会・日本薬剤師会・日本歯科医師会総監修 2017年8月初版発行 同文書院
まとめ
もともと人類は、魚を食べ、日光を浴びて生活をしていたため、体内には豊富なビタミンDがありました。
しかし現代では、魚よりも肉食が好まれる傾向にあり、さらには紫外線を恐れるあまり日光を避け、ビタミンDが不足してしまうようになりました。
私たちの体を形作り、より健康を維持していくために、意識してビタミンDを摂るようにしましょう。
- 岡部 美由紀
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看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート) 他