知っているようで知らない?コエンザイムで生き生きとした毎日を!
コエンザイムは、美容液などにも使われている成分です。
もともと人の体の中にありますが、加齢とともに減少していくことが分かっています。
コエンザイムが減ってくると、体のあちこちに不調がみられるようになります。
生き生きした毎日のために、しっかりとコエンザイムを摂取していきましょう。
目次
- 今さら聞けない、コエンザイムってなに?
- コエンザイムの名前の由来
- 酵素とタンパク質
- 酵素の働き
- 酵素と補酵素
- コエンザイムの歴史アレコレ
- コエンザイムの発見
- コエンザイムQ10を工業化させたのは日本企業
- 加齢とともに減少するコエンザイム
- 体の中のコエンザイムQ10
- 生命維持・活動エネルギーを作り出す(ATP生産)
- 身体の錆びをふせぐ
- 酸化型と還元型の違い
- コエンザイムを多く含む食品、効果的な摂取方法とは?
- 食品からとりたいコエンザイムQ10
- コエンザイムを過剰に摂るとどうなるか
- 気を付けたい、薬との飲み合わせ
- まとめ
今さら聞けない、コエンザイムってなに?
コエンザイムの名前の由来
私たちの身体は、およそ60兆個の細胞からできており、その細胞のなかでエネルギーを作り出しているのが、ミトコンドリアです。
このミトコンドリア内に多量に存在し、エネルギーをつくる担い手として存在している物質が、コエンザイムQ10です。
コエンザイムQ10には、補酵素Q10、コエンザイムQ、ユビキノン、ビタミンQ10などの別名があります。
コエンザイムのコは「補」、エンザイムは「酵素」を意味します。
その名の通り、コエンザイムは補酵素とも呼ばれ、酵素を補助する役割を担っています。
コエンザイムQ10は、その化学構造がquinone(キノン)型であるため「コエンザイムQ」と表記され、この中に「イソプレソン」という化学構造が10個あるため、「コエンザイムQ10」となりました。
「イソプレン」は、生物の種類によってその数が決まっており、酵母で6個、大腸菌で8個、ラットで9個、人で10個です。
化学構造がそのまま名前になるなんて面白いと思いませんか?※1、2、3
酵素とタンパク質
酵素とは、様々なタンパク質から構成される、代謝をつかさどる物質です。
タンパク質は、私たちの身体を構成している大事な成分ですが、いったい私たちの身体のどこに存在しているのでしょうか。
例えば、筋肉はタンパク質からできていることがよく知られていますが、筋肉が伸びたり縮んだりできるのも、筋肉を構成するアクチン、Ⅱ型ミオシンと呼ばれる、2種類のタンパク質の働きによるものです。
しかし、タンパク質は筋肉だけではなく、髪の毛や爪、皮膚などの主な材料でもあります。
私たちの身体は、2万数千種類以上ともいわれる、さまざまな形をしたタンパク質により構成されているのです。※1、3
酵素の働き
酵素には、私たちの体の中で起こる代謝や消化など、いろいろな化学反応を促す働きがあります。
例えば「消化」。
炭水化物は腸でマルターゼなどの酵素により分解され、血管で吸収されるのですが、でんぷんだけはグルコースがたくさん結合しているため、まず口の中のアミラーゼという酵素でマルトースにまで分解され、腸で吸収されます。
肉や魚のタンパク質は、胃液に含まれるポリペプシンという酵素でポリペプチドになり、膵液や腸液でさらに分解され、アミノ酸になってから血管に吸収されます。
脂肪は、肝臓で作られるリパーゼという酵素により、脂肪酸とモノグリセリドに分けられてリンパ管で吸収されます。
脂肪だけは、水と油が混ざらないように、別のルートが用意されています。※4
酵素と補酵素
酵素の多くは単体で機能することができないため、サポートを必要とします。
このサポートを担う成分が「補酵素」なのです。
補酵素も、それ単体では機能することができません。
酵素も補酵素も、単体では代謝や消化といった反応を起こすことはできないため、切っても切れない関係にあるのです。※4
※2 BML コエンザイムQ10
http://uwb01.bml.co.jp/kensa/search/detail/3803509
2018年12月20日閲覧
※3 明治大学科学コミュニケーション研究所 疑似科学とされるものの科学性評定サイト コエンザイムQ10
http://www.sciencecomlabo.jp/healthy_food/CoQ10.html
2018年12月20日閲覧
※1 日本コエンザイムQ10協会編 2015年5月発行 コエンザイムQ10の基礎と応用 丸善プラネット
※4 前野 正夫 磯川 桂太郎著 2016年12月発行 はじめの1歩の生化学・分子生物学第3版 羊土社
コエンザイムの歴史アレコレ
私たちの体の中で、大切な役割を担っているコエンザイムですが、ここからはコエンザイムの歴史についてお伝えしていきます。
コエンザイムの発見
1953年、英国リバープール大学のモートン博士らは、実験においてラットの中に「化合物A(substanceA)」を発見しました。
化合物Aはウマの胃や腸、豚の腸、ラットの肝臓、腎臓、肝臓、顎下腺に存在することを発表し、この物質は「広く生物界に存在する」という意味を持つ「ユビキタス」という単語から「ユビキノン」と名付けられました。
それから数年後の1957年4月18日、クレイン博士とその研究チームのわずか2ページの研究報告が、BBA(Biochimica et Biophysica Acta)誌に掲載されました。
この研究は、キノン体(のちのコエンザイム)がミトコンドリアの電子伝達系の重要な成分であることを明らかにするものでした。
やがて、クレイン博士はモートン博士の論文に気づき、モートン博士に手紙を送ります。
その後、手紙のやり取りは続き、両者の化合物は同じものか、あるいはよく似た類似化合物であるという結論に至りました。
そして1958年、アメリカのカール・フォルカース博士は、従来の化学分析に加え、そのころ実用化された核磁気共鳴を利用し、コエンザイムQ10の原子構造を解明しました。
その結果、モートン博士たちが発見した「ユビキノン」はクレイン博士たちが発見した「コエンザイムQ10」と同じ物質であることが分かったのです。
そこから、コエンザイムQ10についての研究は活発になっていきました。※5
コエンザイムQ10を工業化させたのは日本企業
長い年月をかけ、多くの科学者によって研究され、その姿が明らかになったコエンザイムQ10ですが、実は大量生産する技術を確立したのは日本の企業、日清製粉株式会社(現在の日清ファルマ株式会社、以下、日清ファルマ)でした。
日清ファルマは、1900年に創業(当時は日清製粉株式会社)、小麦から小麦粉を製造することを業とする企業です。
日清ファルマは創業当時、優れた機械による製粉の技術向上に尽力していました。
しかし、良質の小麦粉の製造は、機械の発達だけではなく、小麦や小麦粉の理化学的研究も重要と認識し、本社内に化学実験室を設置しました。
ここで我が国初めての小麦と小麦粉の化学的分析がスタートしたのです。
前述の通り、コエンザイムQ10は1958年に発見されましたが、発見された年には合成への挑戦が始まり、1964年には工業的製法の開発へと進んでいました。
日清ファルマは、小麦の化学分析から小麦胚芽の有効成分の研究へと発展、その後、ビタミンEの量産化に成功し、さらにはビタミンK1の量産化へとつながりました。
ここで得られた見識が、コエンザイムQ10の工業化へとつながったのです。※1
※5 J-STAGE コエンザイムQ研究の現状 : ビタミン類縁化合物に関する最近の研究 高橋 隆幸、岡本 正志、紀氏 健雄
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/78/12/78_KJ00003535242/_article/-char/ja/
2018年12月20日閲覧
※1 日本コエンザイムQ10協会編 2015年5月発行 コエンザイムQ10の基礎と応用 丸善プラネット
加齢とともに減少するコエンザイム
体の中のコエンザイムQ10
コエンザイムQ10の分泌量は、20代がピークであり、それ以降はどんどん分泌量が減少します。
コエンザイムQ10の量が減っているということは、エネルギーを生産する量も減っているということになります。
エネルギーの不足は、さまざまな細胞の機能の低下にもつながります。
つまり、健康を支える力が弱くなってきている状態ともいえるのです。
私たちの身体でコエンザイムQ10は主に2つの働きをしています。
それぞれの働きをみていきましょう。※6、7
生命維持・活動エネルギーを作り出す(ATP生産)
生命活動の基本は体内で作られるエネルギーです。
運動だけではなく、呼吸や心臓を動かすなど、人が生きていく上でのすべてのことにおいて、エネルギーは必要とされます。
このエネルギーの生産に大きく関わっている成分が、コエンザイムQ10です。
地球上のすべての生物はアデノシン三リン酸(ATP)を生命維持のエネルギー物質として利用しています。
私たちが食べたり飲んだりして得ている食品にふくまれているエネルギーも、いずれはATPの形で体内に蓄えられます。
ATPは、アデノシンという基本構造に、3つのリン酸が結合したもので、エネルギーを放出するときにリン酸1分子が離れます。
反対にエネルギーを貯蔵する時には離れたリン酸が再び結合します。
リン酸が結合すればエネルギーが貯蔵され、リン酸が離れればエネルギーが放出されるのです。
体内のATPは、蓄えられたエネルギーを放出したり、ふたたび蓄えたりと、充電式の電池のように機能しているなんて不思議ですね。※1、8
身体の錆びをふせぐ
りんご、バナナ、桃、じゃがいもにレタスなど、切ってからしばらくの間放置していると「色が変わってしまった!!」ということはありませんか?
これは、切った表面が酸素に触れたことで、錆びて(=酸化して)しまったことが原因です。
これは人間にも当てはまることで、身体の中の細胞も、年齢を重ねるごとに酸化が進み、錆びていきます。
酸化の原因は、細胞の活動により作られる「活性酸素」によるものですが、私たちが酸素を利用して生きている以上、避けられないことなのです。
しかし、この活性酸素を取り除き、身体を錆びから守ってくれる物質が、コエンザイムQ10です。
コエンザイムQ10にはベンゾキノン型とよばれる「酸化型」と、ヒドロキノン型と呼ばれる「還元型」があります。
ヒドロキノン型といわれてもピンとこないと思いますが、「還元型コエンザイムQ10」という名称になると、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
では、酸化型と還元型の違いとはどこにあるのでしょう。※1、9
酸化型と還元型の違い
雌のマウスを2つのグループに分け、酸化型コエンザイムQ10と還元型コエンザイムQ10を添加したエサを、それぞれのグループのマウスに与え、変化を調べるという研究が行われました。
酸化型、還元型のいずれのコエンザイムQ10を摂取しても、コエンザイムQ10の肝臓への集積が顕著に現れました。
特に還元型を摂取したマウスの方が多く集積され、酸化型と還元型では体内への吸収に違いがあることが分かりました。
実は、人間の体内で生成されて、使用されるコエンザイムQ10の多くは、還元型コエンザイムQ10なのです。
ですので、酸化型のコエンザイムQ10を摂取した場合には、還元型コエンザイムQ10に変換をした方が、効率が良いのです。
還元型コエンザイムQ10は変換が不要なため、そのまま体内で働くことができます。
一方の酸化型は体内への吸収時には還元型への変換が期待でき、化学的に安定していて製剤化に優れているというメリットがあります。
今後、酸化型ならびに還元型コエンザイムQ10の科学的実証がえられ、メカニズムの解明が進むことで人への安全性や適切な処方が進んでいくことが期待されています。※1
※6 J-STAGE コエンザイムQ10 菅野 直之
https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/59/2/59_63/_article/-char/ja/
2018年12月20日閲覧
※8 Anders Kalén et al,Lipids July 1989, Volume 24, Issue 7, pp 579–584
https://link.springer.com/article/10.1007%2FBF02535072
(但し有料)
2018年12月20日閲覧
※9 J-STAGE 活性酸素と抗酸化物質の化学 中村 成夫
https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/9/3/9_164/_pdf
2018年12月20日閲覧
※1 日本コエンザイムQ10協会編 2015年5月発行 コエンザイムQ10の基礎と応用 丸善プラネット
※7 蒲原 聖可著 2010年3月発行 サプリメント辞典第3版 平凡社
コエンザイムを多く含む食品、効果的な摂取方法とは?
食品からとりたいコエンザイムQ10
コエンザイムQ10は体内にもともと存在していますが、加齢とともに減少するため、食品類から摂取することが必要です。
では、私たちはどのような食材から、コエンザイムを摂取していけば良いのでしょうか。
例えば、コエンザイムQ10を多く含む食品には、肉類・魚類・野菜・ナッツ類などがあります。
魚類の中ではサバやイワシ、イカなどが、コエンザイムが比較的豊富な食材です。
いくつかの例を挙げてみましょう。※6、10
【食品別 総コエンザイムQ10 量((mg/100gあたり湿重量※)】
- 牛肉(サーロイン):約3㎎
- 豚肉(サーロイン):約1.4㎎
- 鶏肉(心臓):約12㎎
- サバ:約4.3㎎
- イワシ:約6.4㎎
- イカ:約2.4㎎
- 大豆油:約9.2㎎
- 菜種油:約7.3㎎
- ゴマ油:約3.2㎎
※湿重量:生の状態での重さのこと
植物油のコエンザイムQ10量も比較的高いのですが、毎日の植物油の摂取量は多くないため、そこから得られるコエンザイムQ10の量は、肉類と比べると少なくなってしまいます。※1、10
日本人の食生活では、コエンザイムQ10の1 日の摂取量の 40% は肉類からだといわれています。
しかし、肉類の摂取量そのものも、加齢とともに減少していきます。
コエンザイムQ10が加齢とともに体内で減っていくなか、食品からの摂取量も減少していることが、研究者たちの間での懸念事項となっています。
更に、近年はイワシの漁獲量が激減し、食卓にあがる回数が減ってきています。
イワシは、「イワシ魚粉」として産卵鶏の餌に使われていますが、価格の高騰により「餌」としてつかわれにくくなったため、鶏卵のコエンザイムQ10の含有量も数十年前の半分以下にまで減少しているといわれています。
知らず知らずのうちに、毎日の食事からのコエンザイムQ10の摂取量は、低下しているのです。
このような背景により、近年ではコエンザイムQ10を付加した食品も作られるようになってきました。
ところで、コエンザイムQ10の「一日の推奨摂取量」というのは、実は決まっていません。
コエンザイムQ10 は、食事からでは1日あたりおよそ5㎎程度の摂取量しか期待できず、コエンザイムQ10 を含む食事を積極的に摂ったとしても、そのほとんどが酸化型であり、体の中で十分な働きをするかどうかが分かりにくいのです。
一方、日本で流通しているサプリメントでは、1日のコエンザイムQ10 の摂取目安量は、60㎎~100㎎程度のものが多いようです。※1
コエンザイムを過剰に摂るとどうなるか
コエンザイムQ10の重篤な副作用の報告はほとんどありません。
副作用の症状として挙げるならば、下痢、めまい、疲労、インフルエンザの様な症状、頭痛、胸やけ、嘔吐、胃の不調などがあります。
気を付けたい、薬との飲み合わせ
身体にとって良い効果を発揮してくれるコエンザイムQ10ですが、病気などで薬を常用されている方は注意が必要なこともあります。
例えば、高コレステロール血症の薬を服用していると体内のコエンザイムQ10が減少することが知られており、このような場合は、コエンザイムQ10をサプリメントなどで補給する方が好ましいといされています。
また、血液を固まりにくくするワーファリンは、コエンザイムQ10がその作用を弱めることが分かっています。
他にも、糖尿病または低血糖の方、血糖値に作用する薬物やハーブ、サプリメントを摂取している方は、コエンザイムQ10の使用に注意が必要です。
医師より薬を処方されている方は、コエンザイムQ10だけではなく、薬の飲み合わせなどには気を配る必要があります。
場合によっては薬の効き目を弱めたり、反対に強めてしまったりと思わぬ事態に陥ることもあります。
小さなことでも心配があれば、必ず医師と相談の上で取り入れるようにしましょう。※7、11
※6 J-STAGE コエンザイムQ10 菅野 直之
https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/59/2/59_63/_article/-char/ja/
2018年12月20日閲覧
※10 J-STAGE 食事から摂りたい還元型コエンザイム Q10 藤井 健志
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/63/4/63_205/_pdf
2018年12月20日閲覧
※1 日本コエンザイムQ10協会編 2015年5月発行 コエンザイムQ10の基礎と応用 丸善プラネット
※7 蒲原 聖可著 2010年3月発行 サプリメント辞典第3版 平凡社
※11 キャサリン・E.ウルブリヒト, イーサン・M.バッシュ編 渡邊 昌日本語監修 2014年12月発行 ハーブ&サプリメント NATURAL STANDARDによる有効性評価 産調出版株式会社
まとめ
栄養とは自然界から摂取したさまざまな物質を人間特有の細胞に作り変え、成長や生命維持に役立てる営みのことです。
摂取した肉がそのまま人間の筋肉になるわけではありません。
肉を消化・吸収によって体内に取り込み、分解や合成することで成長や生活活動に必要な成分に変換させるのです。
そのために必要なのが、コエンザイムQ10 と呼ばれる補酵素です。
元気に必要な成分、コエンザイムQ10を、しっかり体の中へ摂り入れていきましょう。
- 岡部 美由紀
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看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート) 他