シトルリンは健やかな毎日をサポートしてくれるスーパーアミノ酸!!

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長年に渡り研究されてきたシトルリンは、平成19年に厚生労働省の通知により、ようやく日本でも食品として使用できるようになりました。
その力はともて素晴らしいもので、私たちの毎日の健康をサポートしてくれるものだったのです。
今まで知らなかったなんて勿体ない、このパワーに満ちあふれたシトルリンの秘密に迫ります。

目次

  1. シトルリンってなに?
    • シトルリンはアミノ酸?
    • アミノ酸は身体にとって重要な成分だった
    • アミノ酸の種類
    • 【遊離アミノ酸】
    • 合成後修飾アミノ酸
  2. スーパーアミノ酸と呼ばれるシトルリン
    • 体内を旅するシトルリン
    • シトルリンはなぜスーパーアミノ酸と呼ばれる?
  3. シトルリンを正しく摂ろう!
    • シトルリンは体内でも合成されている
    • シトルリンを多く含む食品
    • シトルリンの1日の摂取量と副作用
  4. まとめ

シトルリンってなに?

シトルリンはアミノ酸?

シトルリンとは、次のような特徴をもつアミノ酸です。

  • 1930年に、スイカの果汁から日本の研究者が発見した
  •  炭素、水素、窒素、酸素 の各元素が結合したもの
  • スイカの学名(ラテン語)がその語源
  • タンパク質を構成しないアミノ酸で、人の体のさまざまなところに存在している

シトルリンは、タンパク質を構成しないアミノ酸といわれていますが、こうしたタイプのアミノ酸のことを遊離アミノ酸と呼びます。
遊離アミノ酸は、血液や尿をはじめとする細胞中の全てに存在しており、私たちの身体を元気にするために大きな役割を担っています。

では、スイカの果汁から発見された遊離アミノ酸が、私たちの体でどのような働きをしているのか、まずは「アミノ酸」に関することから見ていきたいと思います。※1、2

アミノ酸は身体にとって重要な成分だった

タンパク質は複数のアミノ酸が規則的に結合していくことでつくり出されています。
自然界には、数百のアミノ酸が存在しています。
しかし、私たちの身体を構成しているアミノ酸はわずか20種類だけです。
この20種類のアミノ酸から、組み合わせや組み方を変えることによって、約10万種類のタンパク質を構成しているのです。
食べたものを消化し、呼吸をして体を動かすという、毎日当たり前におこなっていることはすべて、アミノ酸のおかげなのです。
私たちの身体の60%は水分でできており、その次に大きな体成分を占めるのがタンパク質で、その量はおよそ20%です。
つまり、身体の約20%はアミノ酸でできていることになります。
例えば、体重が50㎏の人で考えると、約10㎏ものアミノ酸で身体が構成されていることになるのです。
このタンパク質を構成するアミノ酸には、必須アミノ酸と非必須アミノ酸があります。
必須アミノ酸は、体内で合成することができないため、毎日の食事からとる必要があります。
一方の非必須アミノ酸は、体内でほかのアミノ酸から合成することができます。
「非必須アミノ酸」と書かれると、必要では無いアミノ酸のように見えますが、そうではありません。
アミノ酸としては体にとって必要なのですが、足りなければ自分の体の中で合成できる、というものです。※3、4

アミノ酸の種類

人体に必要なアミノ酸20種類のうち、必須アミノ酸は9種類、非必須アミノ酸は11種類あります。

必須アミノ酸

  • イソロイシン
  • ロイシン
  • リジン
  • メチオニン
  • フェニルアラニン
  • スレオニン
  • トリプトファン
  • バリン
  • ヒスチジン

非必須アミノ酸

  • アルギニン
  • アスパラギン酸
  • アスパラギン
  • システイン
  • チロシン
  • アラニン
  • グルタミン
  • グルタミン酸
  • グリシン
  • プロリン
  • セリン

 

アミノ酸は、種類によって体が必要とする量が違います。
アミノ酸の充足度を示す指標に、アミノ酸スコアというものがあります。
体が必要とする必須アミノ酸の量をすべて満たしているとき、アミノ酸スコアは100となります。
また、上記の9種類の必須アミノ酸の中で、1番含有量の少ない必須アミノ酸を第一制限アミノ酸とよびます。
仮に、何かしらの食物に含まれるアミノ酸の量を比較したとき、ほかの必須アミノ酸が必要量に足りていたとしても、第一制限アミノ酸の含有量の分までしか、体の中で何らかの作用を起こすことができません。
つまり、一つの食品をたくさん食べれば良い、ということでは無いのです。
一つの食品からは第一制限アミノ酸の含有量の分までしか、タンパク質の合成には使わないためです。
とはいえ、不足分は他の食品から補うことが可能です。
このようにして、タンパク質の栄養価はアミノ酸のスコアから測ることができます。※4、5、6

では、その他のアミノ酸をご紹介します。

【遊離アミノ酸】

  • シトルリン
  • オルニチン
  • GABA

合成後修飾アミノ酸

  • ヒドロキシプロリン

アミノ酸は、広く私たちの生活でも活用されています。
例えば、美味しい食べ物を食べた時の「おいしい」を感じる五感は味覚と呼ばれていますね。
じつは、アミノ酸は食べ物の「味」にも関係しています。
アミノ酸の持つ味には、甘味、酸味、苦味、うま味があります。
この「うま味」を代表するものといえば、「だし」ですね。
「だし」のおいしさを科学的に解明したのは、日本人科学者の池田菊苗博士です。
池田博士は、何度も試行と失敗を重ねながら、グルタミン酸が昆布のうま味成分であることを突き止めました。
このうま味は、日本だけではなく世界的にも「UMAMI」として、その地位を確立してきています。※4.

※1 J-STAGE シトルリンの代謝と薬効 林 登志雄
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/46/7/46_7_460/_pdf/-char/ja
2019年1月13日閲覧
※2 Natural Medicines Comprehensive Database L-CITRULLINE
http://naturaldatabase.therapeuticresearch.com/nd/Search.aspx?cs=&s=ND&pt=100&id=1245&ds=&name=Citrulline+(L-CITRULLINE)&searchid=63514735
2019年1月13日閲覧
※3 落合 敏著 2014年10月発行 新しい実践栄養学 主婦の友インフォス情報社
※4 櫻庭 雅文著 2004年2月 アミノ酸の科学 その効果を検証する 講談社
※5 前野 正夫 磯川 桂太郎著 2016年12月発行 はじめの1歩の生化学・分子生物学第3版 羊土社
※6 ナヴディープS.チャンデル著 2017年9月発行 代謝ナビゲーション ミトコンドリアを中心とする代謝ネットワーク メディカル・サイエンス・インターナショナル

スーパーアミノ酸と呼ばれるシトルリン

体内を旅するシトルリン

前述の通り、シトルリンは遊離アミノ酸ですので、基本的には人の体の中でタンパク質を構成するために使われることはありません。
その理由は、人の遺伝子の中に「タンパク質の合成にシトルリンを使う」という遺伝情報が無いためだ、とされています。
では、食事を介して私たちの体の中に摂りこまれたシトルリンは、まったく不要な栄養素なのでしょうか。
体の中に摂りこまれたアミノ酸とタンパク質の間には、分かりやすくいえば、次のような相互的な関係があります。

 

  1. 摂りこまれたアミノ酸は、必要に応じて人の体を構成するタンパク質になる
  2. 摂りこまれたタンパク質は、一旦アミノ酸に分解され、組み替える形で新しく人の体に必要なタンパク質になる

という関係です。
この中で、摂りこまれたけれどタンパク質合成には使われないアミノ酸が、遊離アミノ酸です。
遊離アミノ酸は、自分の出番が来るまで血管を流れていたり、細胞の中に取りこまれていたりします。
食事を介して体内に摂りこまれたシトルリンも、出番がくるまでは血流にのって全身を回っていることになります。
では、シトルリンの出番とは何でしょうか。
その出番のうちの一つが、尿素回路(またはオルギニン回路)とよばれる反応が起こるときです。※1、2、5、6
人の体内では、食事からの栄養素を体内で使える形に作り変えています。
そこでできたエネルギーを使って、体を動かしたり、脳を働かせて何かを考えるなど、さまざまな働きに使われています。
こうした過程の中で作り出されてしまう化学物質の一つに、アンモニアがあります。
アンモニア自体は人体にとって有害な物質ですので、これを無害化する必要があります。
そこで必要となるのが、アンモニアを人体には無害な尿素に作り変える、尿素回路(オルニチン回路)と呼ばれる反応回路です。
これは、肝臓の門脈近くにある肝細胞で行われています。


血流にのって流れてくるアンモニアを、複数の反応を経て尿素に作り変えています。
まず1段階目として、尿素回路(オルニチン回路)に入ったアンモニアは、カルバモイルリン酸と呼ばれる物質に変換されます。
2段階目では、カルバモイルリン酸が、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼという非常に名前の長い酵素と反応し、オルニチンを利用しながら、シトルリンを合成します。
3段階目としてシトルリンは、アルギニノ琥珀酸シンターゼという酵素と反応し、アスパラギン酸とともにアルギニノ琥珀酸を合成します。
4段階目として、アルギニノ琥珀酸がアルギニノ琥珀酸リアーゼという酵素と反応し、アルギニンとフマル酸になります。
そして5段階目として、アルギニンがアルギナーゼという酵素と反応して、尿素とオルニチンへと変わります。
ここでつくられたオルニチンは、再び2段階目で利用されることになります。
この反応の中で、シトルリンも合成されているのですが、何らかの理由で上手く反応が進まなくなると、有毒のアンモニアから無毒の尿素へという反応が、途切れてしまうことになります。
それを補填するためにも、シトルリンはある程度、体の中に取りこんでおく必要があるのです。※1、3、5、6

シトルリンはなぜスーパーアミノ酸と呼ばれる?

シトルリンは、アルギニンというアミノ酸と強い関係があることが分かっています
アルギニンが代謝される過程にはNO回路というものがあります。
これはアルギニンが酵素と反応して、NO(一酸化窒素)とシトルリンを作り出す回路です。
しかしシトルリンもまた、いくつかの反応を経て、アルギニンを作り出します。
ここで生じるNOは、血管を元気にするといわれており、近年注目が集まっています。
また、シトルリンを意識して摂ると、なぜかアルギニンを意識して摂ったときよりも、アルギニンの血中濃度が高くなるのだそうです。
そして、アルギニンの働きを活性化させ、より多くのNOを作り出すことになります。
その結果、血液中のNOの量が増え、体の調子を整えてくれるようになります。
また、アルギニン自体は筋肉のタンパク質を構成するアミノ酸ですので、シトルリンはその反応も助けていることになります。
さらに、ヨーロッパなどで行われている研究では、シトルリンとリンゴ酸の化合物が、運動により筋肉などに生じる乳酸やアンモニアなどの物質の除去をスピードアップさせたといわれています。
これらの理由から、シトルリンは「スーパーアミノ酸」とよばれているのです。※1、5、6

※1 J-STAGE シトルリンの代謝と薬効 林 登志雄
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/46/7/46_7_460/_pdf/-char/ja
2019年1月13日閲覧
※2 Natural Medicines Comprehensive Database L-CITRULLINE
http://naturaldatabase.therapeuticresearch.com/nd/Search.aspx?cs=&s=ND&pt=100&id=1245&ds=&name=Citrulline+(L-CITRULLINE)&searchid=63514735
2019年1月13日閲覧
※3 落合 敏著 2014年10月発行 新しい実践栄養学 主婦の友インフォス情報社
※5 前野 正夫 磯川 桂太郎著 2016年12月発行 はじめの1歩の生化学・分子生物学第3版 羊土社
※6 ナヴディープS.チャンデル著 2017年9月発行 代謝ナビゲーション ミトコンドリアを中心とする代謝ネットワーク メディカル・サイエンス・インターナショナル

シトルリンを正しく摂ろう!

シトルリンは体内でも合成されている

前述のように、シトルリンはアルギニンとの相互的な関係において、体内で合成されています。
また、アンモニアを尿素に変えていく過程の中でも、オルニチンから合成されていることになります。
尿素回路の中で合成されるシトルリンは、またすぐに違う物質へと姿を変えてしまいますが、尿素回路の反応の過程の中では、なくてはならない物質です。
さらに、シトルリンは、ごく一部のタンパク質と結合することがあります。
少しややこしいのですが、タンパク質と結合するシトルリンをシトルリン残基とよび、シトルリン残基と結合したタンパク質は、シトルリン化したタンパク質と呼ばれます。
このシトルリン残基と呼ばれる、タンパク質と結合しやすい状態になったシトルリンは、体内のアルギニンから生成されたものです。
このように、体内のいくつかの反応により、シトルリンが合成されていることになります。※3、5

シトルリンを多く含む食品

シトルリンは元々、スイカの果汁から発見された物質ですので、スイカにはより多くのシトルリンが含まれています。
その他には以下のような食品が、シトルリンを多く含んでいます。
スイカに含まれる量と、比較してみましょう。
(食品名:100gあたりのシトルリン含有量/シトルリン800㎎を摂るのに必要な食材の目安)

  • スイカ:180mg /7分の1個
  • メロン:50mg /1.3個
  • キュウリ:9.6mg/56.5本
  • ニガウリ:16mg/24.4本
  • クコの実:34mg/2.3kg
  • ニンニク:3.9mg/290個

なぜ「シトルリン800㎎」としているのかは後述しますが、この中で、ある程度の量を摂ろうと思うと、スイカですよね。
きゅうり56本は1日で摂るには無理がありますし、メロンを毎日1.3個食べるのも無理がありそうです。
また、ニンニクを290個も食べると、自分だけではなく周りの人にもリスクになりそうです。
しかしスイカは1年中食べることが難しい食品でもあります。
スイカが手に入りにくい時期はどうすれば良いでしょうか。
やはり、他の食材などから、毎日少しずつでも摂っていく必要があります。※3、5、7

シトルリンの1日の摂取量と副作用

実は、シトルリンの1日の摂取量は、公式には決められていません
いくつかの研究により、これだけのシトルリンを使用するとさまざまな効果がある、という結果が出ているようですが、今のところ「これ以上は体調不良のリスクがある」あるいは「これくらい摂らないと体調を維持できない」という、明確な答えは見つかっていません
一方、協和発酵バイオ株式会社が運営する、シトルリンに関する正確で有用な情報を目的とした「シトルリン研究会」では、1日の推奨摂取量を800㎎としています。
また、シトルリンは、スーパーアミノ酸と呼ばれる物質ではありますが、いくつかのお薬との飲み合わせには注意が必要です。
例えば、シトルリンとアルギニンの相互関係の中で生じるNO(一酸化窒素)は、血管の働きに関係しているといわれているため、これらと同じ作用を持つお薬と一緒に摂ると、お薬の効果を強めてしまう可能性があります。
また、シトルリンがスイカに多いからといって、スイカを大量に食べてしまうと、体内で起こるさまざまな反応がかえって進み過ぎてしまう可能性がある、という指摘もあります。※3、5

※7 文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)について
http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365295.htm
2019年1月13日閲覧
※3 落合 敏著 2014年10月発行 新しい実践栄養学 主婦の友インフォス情報社
※5 前野 正夫 磯川 桂太郎著 2016年12月発行 はじめの1歩の生化学・分子生物学第3版 羊土社

まとめ

私たちの食卓にはたくさんの料理が並び、食事以外でも多くの食品を食する機会が増えていますが、栄養バランスはどうでしょうか。
例えば、シトルリンはスイカに多く含まれますが、夏はスイカからこれを補うことは可能かもしれません。
しかしそれ以外の季節でも、シトルリンなど体にとって必要な栄養素を、きちんとバランス良く摂れているでしょうか。
私たちの元気をつくる食事や栄養のバランスを見直し、輝く毎日を送りましょう。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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