ブルーベリーとアントシアニンの秘密に迫る!
ブルーベリーは、欧州では伝統的なハーブとして使用されています。
また一部の国と地域では、医薬品としても取り入れられています。
ここでは、ブルーベリーに含まれる成分「アントシアニン」を中心に、その特徴と摂り方についてみていきます。
実はブルーベリーの持つ力は、とてもすごいのです。
目次
- ブルーベリーの雑学
- ブルーベリーの原産地
- ブルーベリー、日本へ
- ブルーベリーの品種
- ブルーベリーの栄養素って?
- ブルーベリーは生食がおすすめ
- ブルーベリーの栄養素
- アントシアニンの働き
- 品種によって働きに差があるの?
- ビルベリーのヒミツ
- 体に優しいブルーベリー、でも過剰摂取には要注意?
- アントシアニンの上手な摂り方
- まとめ
ブルーベリーの雑学
ブルーベリーの原産地
ブルーベリーはどこの国で生まれたかご存知でしょうか。
ブルーベリーは元々、北米が原産で、古くからアメリカの原住民が食していたといわれています。
ところが、19世紀中頃から、アメリカ大陸には軍隊が入るようになり、果実が「支給」されるようになり、野生種から栽培される樹木へと変わっていったようです。
現在でも「北米原産の野生種」は残っており、「ワイルドブルーベリー」として流通しています。
ブルーベリーが実を付けているところを見たことがある方はお分かりかもしれませんが、ブルーベリーは大人の背丈よりも少し高いくらいまで成長します。
春には白い花が咲き、夏には青い実を付け、秋には紅葉することから、庭木として楽しむ人もいるくらいです。
一方、前述の「ワイルドブルーベリー」は、地面を這うように地下茎で広がるのだとか。
実を付けるのも2年に1度。
人工的に苗を植えることができないため、管理が難しく、生産量も多くはありません。
そんなブルーベリーですが、現在は北米や日本だけではなく、ヨーロッパや世界各地に広がっています。
それでもやはり、生産量としては北米大陸がダントツです。※1、2、3
ブルーベリー、日本へ
ブルーベリーが最初に日本に入ってきたのは、1950年代の事。
当時の農林省の試験場にて、アメリカからブルーベリーを導入しました。
それから農業系の大学などでの研究が進み、1960年代後半頃から、日本国内での栽培が始まり、1980年代頃から一般的にも広まったといわれています。
ブルーベリーは比較的涼しい気候と酸性の土を好みますが、現在では北海道から九州地方まで、全国的に栽培されています。
中でも初期の頃から栽培を始めた長野県が、国内最大の収穫地域です。※1
ブルーベリーの品種
ブルーベリーには、たくさんの品種があります。
アメリカの農務省がスノキ属に分類した39種の植物のうち、およそ20種の通称に「ブルーベリー」という単語が含まれており、現在でも毎年のように新種が誕生しているのだそうです。
その中でも特に有名、かつ経済上も重要な意味をもつ品種として、以下の3つの品種をご紹介します。
・ハイブッシュブルーベリー
日本では、北海道から東北、長野県などで栽培される、寒冷地向けの品種です。
6月~7月に旬を迎えます。現在でこの中からさらに、多くの種類に分けられています。
樹の高さは1~2m程度で、粒は大きめなのが特徴です。
・ラビットアイブルーベリー
日本では、西日本や九州での栽培が適している、温暖地向けの品種です。
強く、育てやすいといわる品種であり、6月~7月に旬を迎えます。
樹の高さは1.5~3mくらい、成熟前の果実がピンク色になるという特徴があります。
・ ローブッシュブルーベリー
北米大陸から北欧まで広く分布する野生種です。7月~8月頃に旬を迎えます。
樹の高さは15~40㎝程度。
果実は小粒で、濃い青紫色をしています。
「ワイルドブルーベリー」と呼ばれるのは、この種類です。
日本での収穫量は、長野県がもっとも多いのですが、これは長野県の土地や気候だけではなく、日本で最初にハイブッシュブルーベリーの生産がスタートした(1981年から)ことも関係あるかもしれません。※1、2、3
その他の地域としては、やはり茨城や群馬などの北関東が多いようです。
ところで東京都は全国2位の生産量を誇りますが、これも日本で最初に「ラビットアイブルーベリー」の栽培がスタートしたのが東京都小平市だから、という理由があるかもしれません。
実は、長野県で「ハイブッシュブルーベリー」の栽培が始まるよりも数年早く、東京都での栽培がスタートしているのです。
現在では、八王子市、町田市、練馬区などでの栽培が盛んなようです。※2、3、4、5
※1 一般社団法人 日本ブルーベリー協会 /2018年12月閲覧
http://japanblueberry.com/info/area.html
※2 ブルーベリーの品種の変遷と最近の研究動向 園学研.(Hort. Res. (Japan)) 13 (3):185-191.2014.doi:10.2503/hrj.13.185 /2018年12月閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hrj/13/3/13_185/_pdf
※3 わかさ生活 わかさの秘密 成分名ブルーベリー /2018年12月閲覧
http://www.wakasanohimitsu.jp/seibun/blueberry/
※4 e-stat(統計局) 平成26年産特産果樹生産動態等調査 /2018年12月閲覧
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001173724
※5 FAOSTAT 2014 /2018年12月閲覧
http://www.fao.org/3/a-i3590e.pdf
ブルーベリーの栄養素って?
ブルーベリーは生食がおすすめ
ブルーベリーは、農林水産省が「貯蔵性に劣る果実」に分類し、一般消費者に対して「生で購入後は早期の消費を推奨している」のだそうです。
その理由としては
・果肉が軟らかく、果皮の強度が低いこと
・主な収穫期(6月~9月)が高温多湿の時期であること
・収穫時に果実に直接触れるため、過剰な物理的ストレスを与えること
などです。
ブルーベリーは手摘みが一番優しい収穫法なのですが、作付面積が広い場合や、樹木の高さが数メートルになってしまう場合など、機械による収穫も行われます。
その場合、果肉の硬さが2~3割程度、柔らかくなってしまうため、やはり収穫後は早めに食べた方が良いようです。※2
ブルーベリーの栄養素
さて、ブルーベリーには、どのような栄養素が含まれているのでしょうか。
有名なところでは、ポリフェノールの一種である「アントシアニン」があります。
これは、ブルーベリー特有の「濃い青」を示す、色素の役割もはたしています。
その他にもさまざまな成分が含まれていますが、「日本食品標準成分表2015年版(以下、成分表)」によると、ブルーベリー100g中、水分86g、炭水化物13g、食物繊維3.3gが含まれていますが、脂質はおよそ0.1gしか含まれておらず、コレステロールは0gです。
ビタミン類については、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB1・B2、葉酸などが、ミネラルについてはカリウム、カルシウム、マグネシウムなどが比較的多く含まれています。
ブルーベリーは皮ごと食べることが出来るため、廃棄率は0%です。
皮と実との間にある栄養素も、余すところなく摂ることができます。※6
ブルーベリーが成熟すると「濃い青」の実になりますが、1つの枝の中でも、果実の成熟度はまちまちなのだそうです。
しかし成熟すると1粒のブルーベリーの中に含まれる「アントシアニン」の量は一気に増え、皮が「濃い青」になります。
アントシアニンは、この「濃い青」になった皮の部分に多く含まれているため、生でブルーベリーを食べるときには、皮まで食べることをおすすめします。※2
さて、ブルーベリーに含まれる「アントシアニン」は、ポリフェノールの一種で、ほとんどの植物に含まれており、その種類は5,000種類以上あると言われています。
日本茶に含まれる「カテキン」も、ポリフェノールの一種です。※7、8、9
アントシアニンの働き
では、ブルーベリーに多く含まれるアントシアニンの働きは、どのようなものでしょうか。
人の体は、糖類などからエネルギーを作り出すために、1つひとつの細胞も「呼吸」をしています。
血液から酸素を取り込んでいるのです。
そこで細胞は、自らが生きるためのエネルギーを作り出しますが、その結果、細胞には疲労(=活性酸素)がたまります。
この疲労を細胞から取り除く働きをしているのがビタミンCですが、ポリフェノールには、細胞から取り除いた疲労を抱え込んでしまったビタミンCを、再び元に戻す作用があるといわれています。
アントシアニンもポリフェノールの一種ですから、人の体を再び元気にする働きがあります。※7、8
※2 伴 琢也 ブルーベリーの品種の変遷と最近の研究動向 園学研.(Hort. Res. (Japan)) 13 (3):185-191.2014.doi: 10.2503/hrj.13.185 /2018年12月閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hrj/13/3/13_185/_pdf
※6 文部科学省 食品成分データベース ブルーベリー /2018年12月閲覧
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07124_6&MODE=0
※9 健康食品の安全性・有効性情報 ブルーベリー /2018年12月閲覧
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail65.html
※7 一般社団法人日本サプリメント協会著 2017年6月発行 サプリメント健康辞典 集英社
※8 木戸康博/桑波田雅士/中坊幸弘・編 2017年2月発行 栄養科学シリーズNEXT 基礎栄養学第3版 講談社
品種によって働きに差があるの?
ブルーベリーにはたくさんの品種があることは前述の通りですが、ブルーベリーと称される果物の中には、「ビルベリー」と呼ばれるものがあります。
ビルベリーは、北米やヨーロッパが原産で、砂地や森林でみられる、低めの樹木です。
ブルーベリーはツツジ科の青い実のなる植物を総称していますが、品種としてはその中でも大きく2つに分かれており、ビルベリーは野生種に近い品種といえます。
ビルベリーの実は、ブルーベリーよりも黒に近い「濃い青」をしており、ブルーベリーが1つの枝に複数の実を付けるのとは違い、1つか2つの実を付けます。
ブルーベリーの果肉そのものが薄い緑であるのに対し、ビルベリーの果肉は赤。
生の実を食べると、唇や指などが赤く染まるほどです。
国によっては、子どもに歯磨き習慣をつけるために使用しているところもあるそうです。※7、9
ビルベリーのヒミツ
ビルベリーはブルーベリーと同様、アントシアニンを多く含んでいますが、その量はなんと5倍!
そのため、アントシアニンの効果を活かすためのサプリメントや、医薬品の原料として使用している国もあります。
では、なぜビルベリーの「アントシアニン」は、ブルーベリーの5倍にもなるのでしょうか。
ビルベリーは、苗を管理する「栽培種」とは違い、「野生種」に近い種類です。
特に北欧産のビルベリーにアントシアニンの含有量が多いといわれていますが、これは北欧の「白夜」と関係があります。
北欧では、ビルベリーの収穫時期である夏に、白夜の時期があります。
ブルーベリーの類は、成熟するころに太陽の光をたくさん浴びることで、果実の中にあるアントシアニンの量がふえていきます。
ビルベリーも同様に、白夜によって一日中太陽の光を浴びることで、一気にアントシアニンの含有量が増えていくのです。
ビルベリーにはアントシアニンの他にも、フラボノイド、ケルセチン、エピカテキン、タンニンなどのポリフェノールや、亜鉛やマンガンといったミネラル成分が、多く含まれています。
葉にはフラボノイド、ケルセチンなどの成分が含まれています。
人の体にとって、亜鉛は生きるために必要な「酵素」の材料になり、マンガンは生殖機能に欠かせないミネラルです。
これらの成分を多く含むビルベリーは、見た目とは裏腹にとても果肉が柔らかいため、ジャムやジュースなどに加工されることが多いようです。
※7、9
※9 健康食品の安全性・有効性情報 ブルーベリー / 2018年12月閲覧
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail65.html
※7 一般社団法人日本サプリメント協会著 2017年6月発行 サプリメント健康辞典 集英社
体に優しいブルーベリー、でも過剰摂取には要注意?
現在のところ、各栄養素の摂取量の基準を示した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」にも、アントシアニンの摂取量・目安量の記載はありませんので、「1日あたりのアントシアニンの推奨摂取量は定められていない」と考えてよいでしょう。
過去に、体に対しての有効性があったと報告されたのは、生のブルーベリーで考えた場合、両手いっぱいになるほどの量です。※7
アントシアニンの上手な摂り方
アントシアニンは水に溶けやすい性質で、体内で吸収されやすいといわれていますが、即効性がある反面、効果が長時間持続しない成分です。
アントシアニンは、一度にたくさん摂取するよりも、こまめに摂る方がよいでしょう。
大事なのは、食のバランスであり、一度に食べる量ではないということです。
アントシアニンはルテイン、イチョウ葉、ビタミンA、ビタミンCなどと一緒に摂ると効果的といわれています。
食品からアントシアニンを含むポリフェノールを摂る場合は、ブルーベリーの他にもナスや紫芋、黒ゴマ、紫キャベツ、赤玉ねぎ、紅芋、小豆、ブドウ、リンゴ、イチゴにも含まれていますので、これらを併せて摂ると良いかもしれません。
尚、ナスの青紫色は「ナスニン」というアントシアニンの仲間です。
ちょっとかわいい名称ですよね。
ナスニンはナスの皮に多く含まれているので、皮ごと食べると効果的です。
しかし、健康に良いからといって過剰に摂取をすると、害になることがあります。
ブルーベリーの中でも「ビルベリー」については、大量摂取することで胃が委縮し、胃痛を生じる可能性があるとの報告があります。
また、ブルーベリーのサプリメントはアントシアニンが凝縮されて含まれるため、併用には注意が必要な薬剤があります。
例えば、抗凝固薬や抗血栓薬などは、ブルーベリー(ビルベリー)との相性が悪いといわれています。
これらの薬を普段から服用している人は、サプリメントを試す前に、主治医に相談してみましょう。※7、9、10
※9 健康食品の安全性・有効性情報 ブルーベリー / 2018年12月閲覧
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail65.html
※10 Natural Medicines / 2018年12月閲覧:http://naturaldatabase.therapeuticresearch.com/nd/Search.aspx?cs=&s=ND&pt=9&Product=Bilberry&btnSearch.x=0&btnSearch.y=0&AspxAutoDetectCookieSupport=1
※7 一般社団法人日本サプリメント協会著 2017年6月発行 サプリメント健康辞典 集英社
まとめ
日本はWHO(世界保健機関)の健康寿命および平均寿命の世界ランキングで、トップを走り続けています。
その他のランキングの上位国には、日本食と栄養的に共通部分のある地中海食生活や、和食の影響を受けた国が多く見られます。
栄養バランスのよい毎日の食事は、健康寿命を伸ばす鍵となっているのです。
1日に必要な栄養素は、食品群や料理群などで意外と簡単にチェックすることができます。
自分の適量と必要な栄養素を知り、確実に摂取できる生活を心がけましょう。
毎日の健康のため、アントシアニンを含むブルーベリーなどを、積極的に摂ることを楽しんでみてはいかがでしょうか。
サプリメントは日常の食事では補えなかった栄養を補助するためのもの。
しっかりと食生活や環境を整えて、ブルーベリーを積極的に摂取していきましょう。
- 岡部 美由紀
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看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート) 他