美味しく飲んで美味しく食べる!ナイアシンを上手に摂って健康生活を送ろう!
私たちの体で作用している酵素は約2200種類といわれています。
その酵素の働きを助ける「補酵素」として約500種類の酵素の働きを助ける働きを持つのがナイアシンです。
ナイアシンは、わたし達が生きていく上で欠かせない栄養素なのですが、実はビタミンの一種って知っていましたか?
ビタミンのことを知って、ナイアシンが持つ大きなパワーに注目しましょう!
よく飲んでよく食べる人こそ必見です!
目次
- ナイアシンとはどのようなものか
- ナイアシンとは
- ビタミンの中のナイアシン
- ナイアシンが持つ役割とは
- 補酵素としての働き
- ナイアシンを効果的に摂るには
- ナイアシンの摂取基準
- ナイアシンの効果的な摂り方
- ナイアシンを摂る際の注意点
- ナイアシンの摂りすぎや不足が体に与える影響
- ナイアシンとお薬の相互関係
- まとめ
ナイアシンとはどのようなものか
ナイアシンとは
ナイアシンは、化学名でいうところのニコチン酸と、ニコチン酸アミドという2つの成分の総称で、1867年にドイツの化学者であるC.Huberが、タバコに含まれるニコチンを酸化することで得られたのが最初だといわれています。
タバコに含まれる有毒成分であるニコチンを、硝酸を使い酸化したため、ニコチン酸という名称が付けられました。
その後1937年に、アメリカの化学者であるC.A.Elvehjemらによって、ニコチン酸にビタミン活性があることが発見されました。
Elvehjemらは、ニコチン酸を使ってイヌの病気の研究を行い、ニコチン酸がアミド化された物質を発見し、これをニコチン酸アミドと名付けました。※1
(ただし名前は似ていますが、ナイアシンはタバコに含まれるニコチンとは別物ですのでご安心を)
ナイアシンは、水溶性ビタミンであるビタミンB群のひとつで、ビタミンB3としても知られています。
植物性食品ではニコチン酸、動物性食品ではニコチンアミドとして存在しているため、人間の体の中ではニコチンアミドの形で、特に肝臓に多く存在しています。
また、体内では必須アミノ酸であるトリプトファンからも生成されますが、トリプトファンからニコチン酸アミドに転換されるのは、およそ1/60であるとされています。※2
つまり、トリプトファン60㎎から転換されるナイアシンは1㎎です。
ビタミンの中のナイアシン
ところで、ナイアシンが属するビタミンとはどのような栄養素なのでしょうか。
私たちはたくさんの栄養を主に食事から摂取しています。
さまざまな栄養素のうち、特に、糖質、脂質、たんぱく質は三大栄養素と呼ばれ、私たちの体を構成し、体を動かすためのエネルギーにもなるなど、とても大切な栄養素です。
そして、体に吸収された三大栄養素がうまく働くための潤滑油としての役割を担っているのが、ビタミンやミネラルです。
これら2つの栄養素は、微量栄養素と呼ばれ、ごく少量であっても重要な役割を果たしています。
中でもビタミンは、三大栄養素の潤滑油としての役割のほか、元気な体や健康的な生活を維持することにも関与しています。
しかし、体の中で十分な量を作り出すことができないため、外からの摂取で補う必要があります。
私たちの体にとって必要なビタミンが十分に摂れなくなると、体はたちまち元気をなくし、健康的な生活ができなくなってしまうこともあるので、日ごろから適量の摂取を心がける必要があります。※3
ビタミンは、水には溶けにくくアルコールや油に溶けやすい性質を持つ「脂溶性ビタミン」と、水に溶けやすく油に溶けにくい性質を持つ「水溶性ビタミン」の2つに分けられます。
脂溶性ビタミンにはビタミンA、D、E、Kの4種類があり、肝臓に蓄積されます。
水溶性ビタミンにはビタミンB群(B1、B2、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、B12、ビオチン)とビタミンCの9種類があります。※3
※1 公益社団法人日本ビタミン学会 水に溶ける(水溶性)ビタミン (7)ナイアシン / 2019年8月28日閲覧
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/vsojkn/kaisetu/kaisetu-1.html?_rndstr_=1563940092601
※2 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)総論 ビタミン(水溶性ビタミン) / 2019年8月28日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000067134.pdf
※3 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 中嶋洋子・蒲原聖可(監修)主婦の友社(編) 2017年10月1刷発行 株式会社主婦の友社
ナイアシンが持つ役割とは
補酵素としての働き
糖質、脂質、たんぱく質の代謝のいろいろな場面で、その反応を進める物質が酵素です。
酵素は2000種以上あるといわれています、ナイアシンはそのうち500以上の補酵素となることが分かっています。※4、5
酵素とは、体の中で作られ、体の中での全ての化学反応の反応速度を早める働きを持つ物質のことです。
酵素自体は反応の前後で変化することはなく、何度でも繰り返して反応促進に関わることができます。
酵素の本体はたんぱく質なのですが、実はたんぱく質だけでできているものと、たんぱく質以外の低分子有機化合物が結合しているものがあります。
そうした酵素の中で、低分子有機化合物の部分を補酵素といいます。
補酵素のほとんどはビタミンB群からつくられていて、ナイアシンも補酵素として働きます。
補酵素はそれだけでの酵素活性はありませんが、酵素の働きを助けるという大事な役割があります。※4、5
私たちの体の中では、常にさまざまな化学反応が起こっています。
例えば、食事からの栄養素をエネルギーに変える反応や、体を形作るような反応も化学反応の一つです。
ナイアシンは、これらの化学反応の過程で必要とされる補酵素ですが、そのままの形で補酵素として働くのではなく、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide:NAD)や、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate:NADP)という物質に変化しながら、化学反応を後押しする働きを担っています。
NADは、食べ物に含まれる栄養素から、私たちが活動するために必要となるエネルギーをつくり出す反応に関与しています。
どれほど多くの糖質、脂質、たんぱく質を摂取しても、実際にそれをエネルギーに変える反応が起こらなければ、エネルギーを作りだすことはできず、私たちは健康で元気な生活を送ることができなくなります。
その過程において大切な働きをしているのが、ナイアシンが変化したNADなのです。※5
もう一方のNADPは、私たちの体の中で必要となる脂肪などをつくり出す化学反応に関わっています。
例えば、毎日のように新しく生まれ変わっている細胞。
細胞は細胞膜と呼ばれる膜で区切られており、この細胞膜の原料となるのが脂肪なのですが、食事から摂取した脂肪分がそのまま使われるわけではありません。
栄養素として取り込まれた脂肪が、細胞膜として適した形に変化する反応が必要です。
ここにも、ナイアシンの働きが必要とされます。※5
また、ナイアシンは、アルコールの分解という化学反応にも関与しています。
体内に吸収されたアルコールはその80%が肝臓に集まり、アルコールからアセトアルデヒドへ、さらにアセトアルデヒドから酢酸へと代謝され、やがて水と二酸化炭素となって体から排出されます。
この2つの反応を助ける補酵素として、ナイアシンが使われます。※5
※4 はじめの一歩の生化学・分子生物学 前野正夫・磯川桂太郎(著) 2018年2月第3版2刷発行 第3版 株式会社羊土社
※5 栄養科学シリーズ 新・栄養学総論 竹友浩之・桑波田雅士(編) 2017年4月第2刷発行 株式会社講談社
ナイアシンを効果的に摂るには
ナイアシンの摂取基準
それでは、私たち日本人は実際にどのくらいのナイアシンを摂取しているのでしょうか。
厚生労働省が定期的に行っている「国民健康・栄養調査」では、栄養素の摂取状況の中にナイアシンの摂取量についても記載されています。
これによると、日本人は1日平均、ナイアシン 14.4mgを摂取している(1歳~80歳以上までの平均値)と報告されています。※6
ではこの実際の摂取量、私たちの体にとって多いのでしょうか、少ないのでしょうか。
厚生労働省では、健康維持・増進に不可欠な栄養素の摂取量として「摂取基準」を決めています。
この摂取基準は5年ごとに見直しが行われており、現在有効とされているものは、日本人の食事摂取基準(2015 年版)(2015年4月~2020年3月まで)です。
これによると、ナイアシンの1人1日あたりの摂取基準は次のとおりです(身体レベル「普通」として算定されている、推奨量です)。
● 1~2歳:男=5 女=5
● 3~5歳:男=7 女=7
● 6~7歳:男=9 女=8
● 8~9歳:男=11 女=10
● 10~11歳:男=13 女=12
● 12~14歳:男=15 女=14
● 15~17歳:男=16 女=13
● 18~29歳:男=15 女=11
● 30~49歳:男=15 女=12
● 50~69歳:男=14 女=11
● 70歳以上:男=13 女=10
尚、単位はNE(ナイアシン当量+1/60トリプトファン)/日となっています。※7
これは少し分かりにくいのですが、ナイアシンはトリプトファンからも体の中で生成されていますので、純粋にナイアシンの量だけではないのです。
しかしトリプトファンの量が明確になっていない場合は、たんぱく質量のおよそ1%をトリプトファンとみなし、次のように計算できるようです。
ナイアシン当量(mg NE)=ナイアシン(mg)+たんぱく質量(g)×1000 (mg/g)×1/100 × 1/60
例えば、ナイアシン量が12㎎、たんぱく質量が50gの場合、上の式に当てはめると
12+50×1/100×1/60 = 12+(0.5×60%)=12.3 となり、1日のナイアシン摂取量は12.3となります。※8
ナイアシン量とたんぱく質量が分かれば、ナイアシン量+たんぱく質量の0.6%でおおよその摂取量が分かります。
ナイアシンの効果的な摂り方
ナイアシンは、かつお、さば、ぶりなどのよく知った魚や、肝臓などを含む肉、乾燥キノコ類などにも多く、動物性食品にも植物性食品にも多く含まれている栄養素です。
こうした食品には、たんぱく質も豊富に含まれている食品も多く、つまりトリプトファンが多く含まれているということになります。
一例を挙げてみます(数値は素材100g中のナイアシン量、カッコ内は素材100g中のナイアシン当量、単位はいずれも㎎)。
● かつお(春獲り生) 19.0(24.2)
● まさば(生) 11.7(15.5)
● ぶり(生) 9.5(13.7)
● ウシレバー(生) 13.5(18.4)
● ブタレバー(生) 14.0(18.9)
この他、生たらこ49.5(54.2)、乾燥まいたけ64.1(68.9)など、驚異的な含有量のものもありますが、これらを1日に100g食べることは考えにくいため、上記のような魚や肉類などからのナイアシン摂取を目指すと良いでしょう。※9
目安としては、18歳以上の男性ならブタレバー100gを使ったレバニラ炒めや、18歳以上の女性なら生のまさば100gを使ったさばの塩焼きなどを食べると、1日のナイアシン必要量を摂取することができます。
他にも緑黄色野菜や牛乳、紅茶やコーヒーにも含まれていますので、これらも上手く組み合わせながら、1日のナイアシン必要量を摂取していきましょう。※3
ナイアシンは水溶性ビタミンで、特にお湯に溶け出しやすい性質があります。
調理の際は煮汁に7割程度のナイアシンがふくまれていますから、煮汁も一緒に食べられるようなものにすると無駄なく摂取することができます。※3
また、熱や酸には安定していますが、アルカリ性になるとやや不安定になるので、一緒に調理するものに注意するとよいでしょう。※5
※6 厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査 第1部 栄養素等摂取状況調査の結果 / 2019年8月28日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/content/000451759.pdf
※7 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)概要 ナイアシンの食事摂取基準(mgNE/日) / 2019年8月28日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
※8 日本食品分析センター 関連資料(ナイアシン当量) / 2019年8月28日閲覧
https://www.jfrl.or.jp/storage/file/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%B3%E5%BD%93%E9%87%8F.pdf
※9 文部科学省 食品成分データベース / 2019年8月28日閲覧
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
※5 栄養科学シリーズ 新・栄養学総論 竹友浩之・桑波田雅士(編) 2017年4月第2刷発行 株式会社講談社
※3 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 中嶋洋子・蒲原聖可(監修)主婦の友社(編) 2017年10月1刷発行 株式会社主婦の友社
ナイアシンを摂る際の注意点
ナイアシンの摂りすぎや不足が体に与える影響
ナイアシンは食事からの摂取であれば摂り過ぎることは考えにくい栄養素です。
実際、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015年版)では摂取推奨量が決められていますが、それに対する耐用上限量(これ以上摂ると危険な量)は、推奨量の10倍以上です。
少しくらいは多くなっても、問題となることは少ないでしょう。
しかし、食事以外から多量に摂取してしまうと、さまざまな体の不調をきたす可能性もあります。※5
逆に、ナイアシンが不足するとさまざまな体の不調がみられるようになります。
ナイアシンの働きとしては、前述の通り体の中でのさまざまな化学反応を後押しするというものがあります。
ナイアシンが不足したからといって、これらの反応が全く起こらなくなるわけではありません。
しかし、いくつかの化学反応の中では、ナイアシンが無いと次のステップに進めないものもあるのです。
すると、体の中では本来起こっている化学反応が、上手く進まなくなってくることがあります。
特に影響が出やすいとされるのが、細胞の新陳代謝が早い部位や、日常生活の中で傷ついた細胞が生まれ変わろうとする部位です。
エネルギーをつくり出す反応でもナイアシンは必要とされますので、ナイアシン不足はエネルギー不足にもつながります。※3、5
ナイアシンとお薬の相互関係
ナイアシンが影響を及ぼすお薬として、HMG-COA還元酵素阻害薬というものがあります。
ややこしい名前ですが、これは高コレステロール血症の方が服用するお薬です。
ご自身が服用するお薬との影響があるかどうか少しでも心配な方は、主治医に相談してください。※10
※10 厚生労働省 健康食品の正しい利用法 / 2019年8月28日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf
※5 栄養科学シリーズ 新・栄養学総論 竹友浩之・桑波田雅士(編) 2017年4月第2刷発行 株式会社講談社
※3 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 中嶋洋子・蒲原聖可(監修)主婦の友社(編) 2017年10月1刷発行 株式会社主婦の友社
まとめ
水溶性ビタミンの仲間のナイアシン。
体内でのさまざまな作用に関わる酵素の働きを助け、私たちが健やかな生活を送るのに欠かせない大切な栄養素です。
その特性をよく理解すれば、より効率よく摂り入れることができるでしょう。
ナイアシンを過不足なく上手に摂取し、健康な生活を送りましょう。
- 岡部 美由紀
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看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート) 他