100点満点の完全食品である卵の魅力を知って、健康豊かに過ごそう!

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日本人が1年間に食べる卵の量をご存知でしょうか。
その量は約330個と言いますから、だいたい1日に1個は食べている計算です。
日本は、世界有数の「卵消費国」ともいわれています。
卵ほど、私たちの食生活に深く関わっている食品を、他にはなかなか思いつかないかもしれません。
卵に関する基本知識から、近年報告された新しいことまでをしっかり学んで、今日からの健康生活に役立てていきましょう。

目次

  1. 卵とは?
    • 日本人と卵
    • 形・構造・色のひみつ
    • 食材としての卵
  2. 卵には体に必要な成分がたくさん
    • 卵に含まれる栄養成分
    • 食材としての卵
  3. 卵で調子が悪くなることもある
    • 中身が見えないからこそ気を付けたい卵の鮮度
    • 卵とアレルギー
  4. 乳幼児に与える初めての卵
    • 離乳食でも卵は大活躍
  5. まとめ

卵とは?

日本人と卵

卵といえば私たちになじみ深いのはニワトリの卵ですよね。
ニワトリの種類はいろいろですが、これらはまとめて鶏卵(けいらん)と呼びます。
しかし日本で食べられている鳥の卵にはほかにもうずらあひるの卵があります。
うずら卵はそのサイズ感から、お弁当のおかずやあんかけの具材、揚げ物に使われていたり、あひる卵はピータンに加工されたものが有名です。
含まれている栄養も、親となる鳥によって違います。
中でもうずらの卵は小さいけれど栄養価が高く、特にビタミンB12が豊富で、その量は鶏卵の約5倍強含まれています。※1

形・構造・色のひみつ

卵特有の、まんまるの球形ではない卵形は、産卵の際に体内を通りやすくするため、球形から細くなったといわれています。
他にも、高いところから卵が転がってしまったときに、まんまるではそのまま転がってしまいますが、「卵形」であれば遠くまで転がらないという説もあります。※2
おなじみのあの単純な外観ですが、卵は大きく4つの構造からできています。
一番外側の卵殻(つまりカラ)、カラの内側にある薄皮(卵殻膜)、白身の卵白、黄身の卵黄です。
おおよそですが、卵白と卵黄、卵殻+卵殻膜の比率は、6:3:1となっています。

カラは卵の内部を保護する役割があり、気孔がたくさんある多孔質です。
気孔はヒヨコになる部分の胚の呼吸に必要な酸素を取り入れ、内部で発生した二酸化炭素(=炭酸ガス)を排出しています。
また、卵殻の表面はクチクラ層という薄い膜で覆われていて、触るとザラザラしています。
クチクラ層には、細菌などの微生物が侵入するのを防ぐ役割があります。※2、3

卵白はさらに3つに分かれます。
粘度の低い水様卵白(内側と外側の2種類)、粘度の高い濃厚卵白、卵黄を卵の真ん中に保つ働きをするカラザです。
カラザは、卵を割ったときに見える、卵黄に付着した白い紐状のものです。※2、3

卵黄は水分約50%と脂質とたんぱく質で出来ています。
卵黄のほぼ中央には加熱しても固まりにくいラテブラ、これらを包み込む卵黄膜で出来ています。
新鮮なものほど卵黄全体がこんもりと盛り上がっているのは、卵黄膜が強く張りがあるからです。※2、3

ところで、食品売り場などで見かける卵の殻の色には、白(白玉)と色付きのものがあり、色付きには褐色のもの(赤玉)と薄褐色(ピンク玉)のものがあります。※2、3
この殻の色の違いは、卵を産む鶏の品種の違いによるものです。
白玉は、明治時代にアメリカから入ってきたレグホーン種という卵用の品種で、1羽あたり年間300個の卵を産みます。
一方、赤玉やピンク玉は、古くから日本にいる地鶏ボリスブラウンという品種の鶏が産んだ卵です。
こちらの品種はレグホーン種より年間産卵数が少なく、飼料摂取量が多いことなどから、生産率が低くなるため、白玉に比べ高価な卵になります。
基本的には殻の色の違いによる栄養価の違いはほとんどありませんが、飼料に栄養成分を混ぜて強化したものはあります。※3、4

食材としての卵

卵が一般家庭に普及したのは、生産量と価格が安定した戦後のことです。
実は、卵を産む鶏が朝鮮から日本に伝来したのは弥生時代と言われています。
しかし当時は、仏教の戒律の下での政治が行われた時代で、生き物を殺すことや肉食が禁じられ、主に鑑賞用として輸入されました。
時代は下り、ポルトガルとの交易が始まると、卵を使った料理やお菓子が紹介され、豊臣秀吉もカステラやてんぷらを食したという記録が残っています。
江戸時代になると、卵料理専門の料理本が人気になり、明治に入ると商業的採卵養鶏場が登場します。
このころ、オムレツをオムライスにアレンジして大人気になったようです。※5

では、さまざまな料理やお菓子などに重宝される卵の性質を見てみましょう。

  • 熱凝固性:一定以上の熱を加えると固まる性質
    →この性質を利用した例として、卵焼きやプリンなどがあります。
    →卵白は58℃~80℃にかけ凝固しますが、卵黄は65℃~70℃で凝固します。
    →食品例は卵焼きやプリン、卵白と卵黄の凝固温度差を利用したのが温泉卵です。
  • 乳化性:水と油を均質に混ぜ合わせる性質
    →食品例は、マヨネーズやアイスクリームなどです。
  • 起泡性:撹拌することで空気が混ざり、卵白表面たんぱく質が空気変性する
    →食品例は、スポンジケーキ、マシュマロなどです。
  • 希釈性:液体によって濃度を自在に薄める性質
    →食品例は、茶わん蒸し、玉子豆腐などです。
  • 流動性:食材の間を流れて移動する性質
    →食品例は、ハンバーグのつなぎ、フライの衣などです。※3、4、6

※1 文部科学省 食品成分データベース(食品を検索して結果を利用) / 2019年9月27日閲覧
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
※2 農林水産省 特集1たまごのチカラ(2) / 2019年9月27日閲覧
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1809/spe1_02.html
※5 農林水産省 特集1たまごのチカラ(1) / 2019年9月27日閲覧
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1809/spe1_01.html
※6 農林水産省 特集1たまごのチカラ(5) / 2019年9月27日閲覧
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1809/spe1_05.html
※3 高木伸一著 2013年7月初版発行 たまご大事典 株式会社工学社
※4 2018年10月発行 ニュートン別冊 食品の科学知識第3版 科学的に正しい「食」の知識を身につけよう! 株式会社ニュートンプレス

卵には体に必要な成分がたくさん

卵に含まれる栄養成分

卵は完全栄養食品と呼ばれることもあるほど、栄養成分が優れた食品です。
私たちが生命を維持するために必要とする五大栄養素、そのほとんどが含まれています。

それぞれの栄養素は、次のように働きます。

  • 炭水化物はエネルギーになる
  • 脂質は体の熱やエネルギーになる
  • たんぱく質は筋肉などの体を作る
  • ビタミンは体の働きを維持したり整えたりする
  • ミネラルは骨や歯をつくり、ビタミン同様に体の働きを維持調整する

さらに5つの栄養素にはそれぞれいくつもの成分があり、卵にも多くの成分が含まれています。
特にビタミンとミネラルは1gと微量ではありますが、そこにはとても大事な成分が豊富に含まれています。
卵に含まれるビタミンには、ビタミンA、D、E、K、B群、葉酸、パントテン酸などがあります。
また、卵に含まれるミネラルとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛などがあります。

残念ながら、ビタミンCと食物繊維は、卵には含まれていません。※2、3
しかし、全く含まれていない成分が2つあるとはいえ、その他の成分はほぼ全て網羅していて、卵だけでこれだけの栄養成分を摂取できるというのは、まさに完全栄養食品ということができます。※3

では、卵の部位による栄養成分の違いを見ていきましょう。
まずは、生卵における卵黄と卵白の栄養素の違いです。

●卵黄可食部100gあたり:エネルギー(カロリー)387kcal、水分48.2g、炭水化物0.1g、脂質33.5g、たんぱく質16.5g、灰分1.7g※1
●卵白可食部100gあたり:エネルギー(カロリー)47kcal、水分88.4g、炭水化物0.4、脂質 微量、たんぱく質10.5g、灰分0.7g。

卵黄に比べ卵白の方が、水分量が多く、カロリーや栄養成分量も控えめで、脂質に至っては最小記載量に達していないほどの量しか検出されていません。※1

次に生卵とゆで卵の違いですが、結論から言うと、カロリーにも栄養成分にもほとんど違いはありません。
ゆで卵可食部100gあたり、エネルギー(カロリー)151kcal、水分75.8g、炭水化物0.4g、脂質10.0g、たんぱく質12.9g、灰分1.0gです。※1

食材としての卵

前述の通り、卵は非常に栄養価が高い食品です。
特にたんぱく質は、健康な体づくりには欠かせない重要な栄養素であり、そのたんぱく質を構成しているのはアミノ酸です。
アミノ酸そのものは自然界に500種類ほどあるといわれていますが、そのうち20種類のアミノ酸で、私たちのたんぱく質は構成されています。
20種類のアミノ酸の中には、私たちの体の中で十分な量が産生できない、食物から摂取する必要がある9種類の必須アミノ酸があります。
もしもこのアミノ酸をきちんと摂ることができなかったら、たんぱく質を作り出すことができず、体つくりに影響し健康に生活することが適わなくなるのです。
さらに、必須アミノ酸バランスよく含んでいるのが、卵です。
必須アミノ酸がどのようなバランスで含まれているかを数値で示したものをアミノ酸スコアといい、この数値が大きいほど良いバランスであることを表しています。
もちろん卵はアミノ酸スコア100の食品です。※3

ところで、子どもの頃から「卵は1日に1個まで(しか食べてはいけない)」と聞かされてきた方もいるかもしれません。
これは、卵に含まれるコレステロールの摂取量に関係しています。
コレステロールは体の中でも産生される脂質で、その量は体重50㎏の方で600~650㎎/日くらいです。
食事等で経口摂取されたコレステロールのうち、40~60%が吸収されますが、その量は体内産生のコレステロールの1/3~1/7程度の量にすぎません。
さらに体の中の仕組みとして、体内でつくり出されるコレステロールの量と、外からの摂取によるコレステロールの量は、バランスをとり一定に保たれています
こうしたことから、食事で摂取したコレステロールが直接、体に何らかの影響を与えているわけではないことが分かってきました。※7

日本では、厚生労働省が「日本人の食事摂取基準(2015年版)」において、卵の食べすぎが体に悪影響を及ぼすという理由による、従来の摂取制限を撤廃しています。※2
つまり、卵は1日1個までしか食べてはいけないというわけではないのです。

但し、摂取コレステロール量に制限がある方などはこの限りではありません。
心配のある方・不安のある方は、主治医に相談してみてください。

※1 文部科学省 食品成分データベース(食品を検索して結果を利用) / 2019年9月27日閲覧
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
※2 農林水産省 特集1たまごのチカラ(2) / 2019年9月27日閲覧
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1809/spe1_02.html
※7 厚生労働省 2-7.食事性コレステロール 2-7-2.生活習慣病の発症予防 2-7-2-1.目標量の設定 / 2019年9月27日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042631.pdf
※3 高木伸一著 2013年7月初版発行 たまご大事典 株式会社工学社 

卵で調子が悪くなることもある

中身が見えないからこそ気を付けたい卵の鮮度

卵には多くの栄養素が含まれています。
だからこそ気を付けたいのが、保存と賞味期限です。
栄養素が豊富で嬉しいのは、私たち人間だけではなく、それを好都合とするのは細菌も同じです。
卵は培養試験の培地に利用されるほど、細菌にとっては望ましい環境なのです。※3
食品衛生法により、1999年11月1日から「カラ付きたまごにも賞味期限の表示が義務付けられました。
生でおいしく食べられる期間は、産卵日から21日以内と決められています。
ただし、それは10℃以下で保管されていて、殻が割れたりしていないことが前提です。※8
一旦殻を割ってしまうと、栄養価が高いだけに、細菌の住処になってしまいますので気を付けましょう。※2
なお、賞味期限は、生でおいしく食べられる期限を示しています。
賞味期限を数日過ぎた程度であれば、75℃以上で1分以上の加熱調理をすることで、安全においしく食べることができるといわれています。
一度加熱したものはすぐに食べきるようにしましょう。※8

卵とアレルギー

はじめて卵を口にするのは、離乳食のタイミングでしょう。
乳幼児期は、摂取した食物がアレルゲン性を持ったまま吸収され、食物アレルギーを起こしやすい時期です。
それは、消化能力の面でも、腸管での病原体を排除する機能の面でも、未熟なためです。
また、離乳食の時期は食物アレルギーの症状が起こりやすいだけでなく、新たな食物アレルギーが成立しやすい時期でもあります。
食物アレルギーの頻度が低いもの、選択肢の多い食品から始めていくなど、離乳食の進め方に工夫していくとよいでしょう。
離乳食での卵食は、卵黄から始めていきましょう。
主要なアレルゲンは卵白に含まれていますから、卵白ができるだけ混ざらないように卵黄を取り出して使用します。
鉄分やビタミンDといった、乳幼児期にしっかり摂取しておきたい栄養素は、卵黄に多くふくまれています。
むしろこれらの成分は、卵白には含まれていませんので、栄養価の面でも卵黄からの方が推奨されます。
但し、不安な点や既往症などがある場合などは、主治医に相談、指示を仰ぐようにしましょう。※9

※2 農林水産省 特集1たまごのチカラ(2) / 2019年9月27日閲覧
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1809/spe1_02.html
※8 農林水産省 特集1たまごのチカラ(4) / 2019年9月27日閲覧
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1809/spe1_04.html
※3 高木伸一著 2013年7月初版発行 たまご大事典 株式会社工学社 
※9 伊藤節子著 2014年11月初版第1刷 抗原量に基づいて「食べること」を目指す 食物アレルギー児のための食事と治療レシピ 株式会社診断と治療社

乳幼児に与える初めての卵

離乳食でも卵は大活躍

前述のように、卵を離乳食に使う場合は、卵黄から始めていきます。
固ゆで卵の卵黄が利用しやすいでしょう。

まず、卵を水からカラのまま12分間ほど加熱し、固ゆで卵が茹で上がったら、冷水で冷やし殻を剥きます。
そして、すぐに卵白から卵黄を取り出すことがポイントです(理由は後述します)。
取り出した卵黄はスプーンの背などで潰します。
潰した卵黄をお粥やスープにすこしずつ混ぜ、与えていきましょう。
最初は1口から始め、問題無さそうであれば徐々に卵の量を増やしていきます。

なお、すぐに卵白から卵黄を取り出すのは、卵アレルギーとの関係です。
茹で上がった卵(ゆで卵)をそのまま放置すると、時間の経過とともに、アレルゲンでもあるオボムコイドというたんぱく質が、水分と一緒に卵黄の方へと移動します。
これは、オボムコイドが水溶性たんぱく質だからです。
ゆで上がってから1時間放置した卵のオボムコイド量は、アレルギーの重症例であればアナフィラキシーショックになってしまうほどの量ですので、素早く取り出すことが大切です。

また、卵白を始める際には、卵黄のみ(卵白完全除去・卵黄膜除去)から、卵黄および微量の卵白(卵黄膜周囲の卵白)、そして全卵(全卵量は調節)へと進めていきましょう。※9

※9 伊藤節子著 2014年11月初版第1刷 抗原量に基づいて「食べること」を目指す 食物アレルギー児のための食事と治療レシピ 株式会社診断と治療社 

まとめ

私たち日本人の毎日の食卓に欠かせない食材である、卵。
構造や栄養素の秘密について改めて詳しく知ることで、日々の食事や調理への意識も高くなったのではないでしょうか。
卵は、主菜にも副菜にも使える、万能な食材です。
健康な生活を続けるために、これからも食生活の中に卵を上手に取り入れていきましょう。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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