変身する栄養素β-カロテンは、元気な体を支えている!!

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カロテノイドという言葉を聞いたことがありますか?
カロテノイドは天然の動植物に存在する色素成分で、黄色や橙赤色、赤色などがあります。
カロテノイドの一種であるβ-カロテンは、体にとても良い力を持っています。
鮮やかな色が目印のβ-カロテンはどのような食品に含まれ、どのような健康パワーがあるのかを知り、毎日の健康に役立てましょう。
β-カロテンの持つ栄養素には、思っている以上の凄い力が隠されているのです。

目次

  1. β-カロテンとは
    • β-カロテンとは
  2. β-カロテンの健康パワーとは
    • β-カロテンはビタミンA?
    • β-カロテンの健康パワー
  3. β-カロテンを多く含む食品
    • 抜群のβ-カロテン含有量を誇るニンジン
    • 野菜の中でも栄養価はトップクラスのカボチャ
    • 実質的なβ-カロテン含有量No.1はモロヘイヤ
  4. β-カロテンを上手に摂取するには
    • β-カロテンを美味しく摂取しよう
    • β-カロテンを摂取する時の注意
  5. まとめ

β-カロテンとは

β-カロテンとは

β-カロテンは緑黄色野菜に多く含まれる栄養素です。
そもそも、野菜が緑黄色野菜になるのかどうかは、β-カロテンの含有量により決まっています。
厚生労働省の定めでは、原則として可食部100g当たりにβ-カロテンを600㎍以上含む野菜を緑黄食野菜としています。
緑黄色野菜でありながら、β-カロテンを基準値以下しか含んでいない野菜には、トマトやピーマン、さやいんげんなどがありますが、これは一度に食べる量が多いことや、食べる頻度が多いためカロテンの補給源となるとされ、緑黄色野菜と位置付けられています。
一方、タマネギやレンコン、白菜などβ-カロテンの含有量が少ない野菜は淡色野菜と呼ばれ、β-カロテンは少なくてもビタミンやミネラル、食物繊維を多く含んでいるため、私たちの健康を守るためにも必要な野菜とされています。
β-カロテンは、植物に含まれる黄色やオレンジ、赤色の色素成分で、カロテノイドの一種です。
カロテノイドは、その他にもアスタキサンチン、ルテイン、α-カロテン、γ-カロテン、リコピン、フコキサンチンなどがあり、その種類はじつに多く、自然界では750種類以上もあります。
しかし自然界には溢れているカロテノイドは、体内では生成することができないため、健康パワーを得るためには色とりどりの野菜や果物を食べる必要があります。※1、2、3、4
ところで、カロテンカロチン、どちらを耳にしたことがありますか?
とてもよく似た名前ですが、その違いはどこにあるのでしょうか。
実は、カロテンとカロチンは同じ栄養素を指示しています。
元々はカロチンと呼ばれていた栄養素なのですが、政府の発表した日本食品標準成分表(2000年版)の表記がカロテンに変わったことによりカロテンという名称が広がり、現在ではカロテンが多く使われるようになりました。※5

※1 J-STAGE カロテノイドとヒト / 2019年8月28日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/8/4/8_264/_pdf
※2 J-STAGE 野菜と果物の色に宿るチカラ 野菜や果物に含まれるカロテノイドと疾病の予防、改善 / 2019年8月28日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/141/5/141_256/_pdf
※3 野菜まるごと大図鑑 主婦の友編 2011年2月第1刷発行 主婦の友社
※4 NHK出版からだのための食材大全 NHK出版編 2018年11月第1刷発行 NHK出版
※5 世界一やさしい!栄養素図鑑 牧野直子監修 2017年8月発行 新星出版社

β-カロテンの健康パワーとは

β-カロテンはビタミンA?

β-カロテンは、体内でビタミンAへと変換され、健康維持に大きく関わる栄養素です
このように、体内でビタミンAに変換されるものをプロビタミンAとよび、カロテノイドではβ-カロテンの他にα-カロテン、γ-カロテン、β-クリプトキサンチンがあります。
β-カロテンは摂取した量がそのままビタミンAとなるわけではなく、ビタミンAが体内で少ない時だけビタミンAへと変換される優れものです。
積極的に緑黄色野菜を摂取して、元気一杯な毎日を送りましょう。※1、2、5
では、ビタミンAならどのような食品を思い浮かべますか?
ビタミンAをたっぷり含んだ食品にはウナギやギンダラなどがあります。
ウナギは昔から栄養豊富な魚とされ、食べると元気になるといわているのですが、元気パワーはビタミンAのおかげかもしれません。

β-カロテンの健康パワー

β-カロテンの健康パワーは、フィトケミカルです。
フィトケミカルは植物が持っている紫外線や有害物質、害虫から身を守る力を持つ成分で、香りや色素、辛み、苦みなどの成分が含まれています。
フィトケミカルの種類は数千種類にもなるといわれ、大きくわけるとポリフェノール群、カロテノイド群、硫黄化合物群、多糖類、香気成分などに分類され、私たちの健康を支える機能成分として注目されています。
フィトケミカルの自己防衛能力は人間にも有効で、人が体内に取り入れてしまった害をスカベンジャーと呼ばれる働きにより無害化する働きがあります。
これまで食品の機能として主に考えられていたのはエネルギーやビタミン、ミネラル源としての働きである栄養機能と、食べた時に感じる香りや味といった感覚機能でしたが、フィトケミカルのような生体調節機能は第3の機能として認められるようになってきました。
β-カロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変わったり、それだけで機能性成分として体を害から守ったりとじつによく働きます。
日本は平均寿命、健康寿命ともに世界でもトップクラスではありますが、健康長寿を支えている最大の要因は適量でバランスの摂れた食生活です。
では、万能な栄養素ともいえそうなβ-カロテンは、どのような食品に多く含まれているのでしょうか。
カロテノイドのカロテンはニンジンの英名であるキャロットからついたといわれるほどで、ニンジンは緑黄色野菜の中でも抜群のβ-カロテンの含有量を誇っています。※3、4、6、7、8、9
それでは、ニンジンやその他のβ-カロテンを多く含む食品をみてみましょう。

※6 e-ヘルスネット カロテノイド(かろてのいど) / 2019年8月28日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-007.html
※7 e-ヘルスネット 抗酸化物質(こうさんかぶっしつ) / 2019年8月28日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-009.html
※8 食品成分データベース / 2019年8月28日閲覧
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
※3 野菜まるごと大図鑑 主婦の友編 2011年2月第1刷発行 主婦の友社
※9 図解 食卓の薬効辞典 野菜・豆類・穀類50種 池上文雄著 2017年10月第1刷発行 農文協

β-カロテンを多く含む食品

抜群のβ-カロテン含有量を誇るニンジン

ニンジンの種類は西洋種と東洋種に分類されます。
一般的にスーパーなどに出回っているのは五寸ニンジンと呼ばれる西洋種で、根の長さが15㎝から20㎝前後、下に下がるほど細くなるという特徴があります。
現在では東洋種は金時ニンジンのみといわれ、その特徴は30㎝程度の細長い姿と、色素リコピンに由来する赤い色です。
金時ニンジンは甘味が強くおせち料理などに重宝されており、別名では木津ニンジンとよばれています。
ニンジンの国内総生産量は60万トンを超えており、1位は北海道で全体の30.3%を占めています。
また、ニンジンは暑いよりも涼しい気候を好むため、北海道ではニンジンを秋に、生産量2位の千葉県では冬に作られています。
ニンジンの旬は春と秋冬の2回あり、春ニンジンは瑞々しい風味と柔らかな歯ごたえが魅力です。
ニンジンの保存法は、水気を拭いて冬は紙袋などに入れて涼しい場所に保管し、夏はポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室に立てて保存するようにしましょう。
また、切ったニンジンはラップで包みポリ袋に入れて冷蔵し、3日程度で使い切りましょう。
泥付きのニンジンの場合であれば新聞紙に包み涼しい場所に置くのがよいでしょう。※3、4、9、10

野菜の中でも栄養価はトップクラスのカボチャ

ニンジン同様、β-カロテンを多く含む食材にはカボチャがあります。
カボチャが日本へと渡来してきたのは16世紀ごろ。
中南米原産のカボチャが、備後に漂着したポルトガル船によってもたらされたことが起源とされています。
カボチャの種類は主に日本カボチャと西洋カボチャ、ペポカボチャの3種類に分けられます。
日本カボチャは水分が多くネットリとした食感で、西洋カボチャはホクッとした食感で甘味が強いです。
ペポカボチャは細長く小型物が多く、黄色やオレンジ色、緑色など色も柄もさまざまで観賞用としても人気が高いです。
カボチャの国内総生産量は20万トンを超え、北海道が全体の約半分の生産量を誇っています。
昔から冬至にカボチャを食べると風邪をひかないといわれているように、その栄養価は野菜の中でもトップクラスです。
カボチャは実よりも皮やワタにβ-カロテンが多く含まれ、意外に思われるかもしれませんがワタの甘味が一番強くなります。
つまり、普段は捨ててしまうカボチャの皮はキンピラニに、ワタはミキサーにかけてポタージュなど調理法を工夫し、ムダなく味わいましょう
カボチャの保存法は、丸ごとなら新聞紙に包んで風通しのよい場所に置き、カットしたものは種とワタを取り除きラップをして冷蔵庫の野菜室へ保存しましょう。
※3、4、9、11

実質的なβ-カロテン含有量No.1はモロヘイヤ

モロヘイヤは栄養価の高さから野菜の王様ともいわれます。
β-カロテンを多く含む野菜のランキングではモロヘイヤはシソに次いで第2位。
しかし、モロヘイヤはシソに比べ一度に食べる量が多いため実質的なβ-カロテンの含有量No.1の野菜といえるでしょう。※8
β-カロテンの含有量は、ほうれん草の約2倍、小松菜の約3倍、ブロッコリーの約12倍の量といわれています。
中近東原産とされ、クレオパトラが愛した野菜といわれるモロヘイヤは、栄養価の高さから脚光を浴び、現在では日本でも広く栽培されています。※3、4、9

※8 食品成分データベース / 2019年8月28日閲覧
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
※10 農林水産省 にんじん生産量上位について / 2019年8月28日閲覧
http://www.maff.go.jp/j/kids/crops/carrot/farm.html
※11 農林水産省 かぼちゃ生産量上位について / 2019年8月28日閲覧
http://www.maff.go.jp/j/kids/crops/pumpkin/farm.html
※3 野菜まるごと大図鑑 主婦の友編 2011年2月第1刷発行 主婦の友社
※4 NHK出版からだのための食材大全 NHK出版編 2018年11月第1刷発行 NHK出版
※9 図解 食卓の薬効辞典 野菜・豆類・穀類50種 池上文雄著 2017年10月第1刷発行 農文協

β-カロテンを上手に摂取するには

β-カロテンを美味しく摂取しよう

β-カロテンの1日の摂取量は、正確には決められていません。
しかし、β-カロテンにはビタミンAの供給源としての役割があることから、β-カロテンの摂取不足はビタミンA不足に繋がると考えられています。
そのため厚生労働省では野菜の目標摂取量を1日350gとし、このうち約120gは緑黄色野菜から摂取する事が望ましいとしています。
ニンジンでは、約50g(約1/4本)を食べると、成人の1日に必要なβ-カロテンが補えると考えられています。
単純に計算すると、西洋かぼちゃ(生)でおよそ100g、モロヘイヤの生なら30g程度、モロヘイヤのゆでたものなら50g程度で、ニンジン50gと同等のβ-カロテンを補うことができます。※8
それでは、保存もできるβ-カロテンたっぷりのニンジンや、β-カロテン含有量トップクラスのモロヘイヤを使ったレシピをご紹介します。


【ニンジンのグラッセ】
ニンジンの調理法に迷ったら、グラッセにして保存しましょう。
肉料理のつけ合わせだけではなく、刻んで卵と炒める、お弁当のおかずの1品など使いまわす、などができます。
時間のある時にまとめて作っておいても、残さずに使い切れる便利なレシピです。
また、ニンジンのβ-カロテンは色の濃い部分、つまり皮に近いところに豊富に含まれています。
是非、ニンジンはきれいに洗って皮を剥かずにそのまま使ってみて下さい。
1.ニンジン2本を5㎜の輪切りにして鍋に入れ、バター2g、砂糖大匙1、塩小匙1/2、かぶるくらいの水を注ぐ。
2.鍋を中火にかけ、鍋を時々揺すりながらニンジンが柔らかくなるまで煮る。
3.汁ごと密封容器に入れ冷めたら冷蔵庫に入れ5日程度を目安に食べきる。

 

【モロヘイヤとツナのサラダ】
栄養成分をしっかりと摂取するため、茹でた葉を細かく刻んでかき混ぜ粘りを出すことがポイントです。
栄養価が流れ出ないよう、熱湯で茹でるときや冷水にさらす時間は短時間にしましょう。
モロヘイヤは臭みや苦味がほとんどないため、醤油や酢など日本の調味料ともよく馴染みます。
葉の先端まで張りや艶があり、緑色が鮮やかなものが新鮮です。

1.モロヘイヤは葉を摘んで熱湯に入れてさっと茹で、冷水にとり冷まし、水気を絞りざく切りにする。
2.ツナの汁気を軽く切り、1.に加え粒マスタード大匙1/2、醤油1/2、出汁大匙1、ごま油小匙1を加えて混ぜる。※3、4、11

β-カロテンを摂取する時の注意

刻むとぬめりの現れるモロヘイヤは粘液多糖類の食物繊維なのですが、体に嬉しい働きがたくさんあります。
基本的にβ-カロテンは過剰に摂取してもビタミンAには必要以上に変換されないため過剰症の心配はありません。
しかし、食品とはいえβ-カロテンを長期にわたり過剰に摂取した場合、皮膚の色が黄色やオレンジ色になる可能性などがあるため注意が必要です。
健康に良いからと1つのもの大量に摂取してしまえば、かえって栄養のバランスが崩れ、体に大きな負担をかけることもあるので、何事においても適量を大切にしましょう。
また、β-カロテンの摂取は医薬品との相互作用もあり、血清コレステロール値を下げる医薬品の作用が減弱する可能性などが指摘されています。
日頃からお薬を服用されている方は、β-カロテンだけではなくその他の成分でも、食事以外のものから栄養素を摂取する際には医師の確認をとるようにしましょう。※3、4、12

※11 e-ヘルスネット 緑黄色野菜(りょくおうしょくやさい) / 2019年8月28日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-037.html
※8 食品成分データベース / 2019年8月28日閲覧
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
※3 野菜まるごと大図鑑 主婦の友編 2011年2月第1刷発行 主婦の友社
※4 NHK出版からだのための食材大全 NHK出版編 2018年11月第1刷発行 NHK出版
※12 健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 日本対応版<第6版> 一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic) 2019年7月第6版第1刷発行 同文書院

まとめ

青い地球の大自然は、β-カロテンやビタミンなどさまざまな栄養素を含んだ動植物を育んでいます。
品種改良が進み、野菜や肉などは本来の味や香りが弱くなってしまったものが多くある反面、食べやすさや栄養価を高めたものもあります。
それぞれの野菜が持つ力を見直し、β-カロテンの効率的な摂り方や、β-カロテンをたくさん含む食材の美味しい食べ方を知り、元気な体を作りましょう。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
公開日:
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