強く元気な体をつくる!アスタキサンチンで本来の体の働きをサポートしよう
アスタキサンチンという成分が、近年話題になっています。
そしてもう一つ、注目を集めているのが、第7の栄養素ともいわれているフィトケミカルです。
たくさんのフィトケミカルにはそれぞれの働きがあり、またそれぞれが関係しあいながら私たちの体を元気にしてくれます。
そのフィトケミカルの仲間であるアスタキサンチンも、私たちの体を強く元気にしてくれる、うれしいパワーを持っています。
アスタキサンチンのパワーの秘密に迫ります。
目次
- アスタキサンチンとはどのような成分か
- アスタキサンチンの概要
- アスタキサンチンの歴史
- アスタキサンチンはフィトケミカル
- そもそもフィトケミカルとは何か?
- アスタキサンチンをつくり出すのは「藻」?
- アスタキサンチンを上手に摂るには
- アスタキサンチンを多く含む食材
- 食べ合わせによっては効果的?
- アスタキサンチン摂取 ここに注意!
- 食べ合わせ
- お薬との関係
- まとめ
アスタキサンチンとはどのような成分か
アスタキサンチンの概要
アスタキサンチンとはカロテノイドという色素成分の一種です。
カニやエビなどの甲殻類、タイやコイの表皮、サケ・マスの身などに含まれる、赤色を示す天然色素ですが、たとえばエビなどの食品中では、一般的にたんぱく質と結合しているため、必ずしも赤色の状態をしているとは限りません。
しかし、70℃以上に加熱すると、たんぱく質が変性してアスタキサンチンが遊離するため、本来のアスタキサンチンの色を示し、赤色の状態になります。
例えば、加熱前は黒っぽい色をしたエビが、加熱すると赤くなるという変化を見たことがあるかもしれませんが、その変化はまさにアスタキサンチンの状態によるものです。
アスタキサンチンは調理をしても赤色を留めているのが特徴です。
また、サケがマスと同じ白身の魚であることはよく知られていますが、あの身のサーモンピンクの色こそ、筋肉中にアスタキサンチンをためこんでいるための色味なのです。※1
反対にマグロやカツオなどの赤身の魚は生の状態では鮮やかな赤色ですが、調理をすると赤褐色になります。
これは、マグロやカツオなどの魚の赤色はアスタキサンチンではなく、別の成分由来による赤色であるために起こる変化です。※2
アスタキサンチンの歴史
アスタキサンチンは、1938年にノーベル化学賞を受賞したことでも知られている、ドイツの生化学者Richard Kuhnらによってロブスターから単離されました。
炭素数40の、赤橙色の色素です。
1980年代頃のアスタキサンチンには、養殖の魚類や家禽(肉や卵、羽毛などを利用する「鳥」の総称)の卵などの色味を、天然ものの色に近づけるための色揚げ剤としての用途がありました。
しかし、その頃の天然由来のアスタキサンチンの生産量はさほど多くなく、その後1990年代初頭になり、ヘマトコッカスと呼ばれる藻を使った、アスタキサンチン培養技術が開発され、大量培養が可能となりました。
これにより商業生産方法が確立され、アスタキサンチンについての研究が盛んになりました。
尚、大量培養が始まる前の時代、アスタキサンチン生産の原料になったのはオキアミですが、オキアミ1kgに含まれるアスタキサンチンの含有量は、わずか45~130mgでした。
しかし、ヘマトコッカス藻1kgには、10,000~80,000mgのアスタキサンチンが含まれていたといいますから、その差は歴然です。※3
※2 一般財団法人日本食品分析センター JFRL ニュース Vol.6 No.5 Feb.2018 /2019年9月27日閲覧
https://www.jfrl.or.jp/storage/file/news_vol6_no5.pdf
※3 公益社団法人日本油化学会 オレオサイエンス 第12巻第10号(2012)
緑藻ヘマトコッカスによるアスタキサンチンの生産とその利用 /2019年9月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/12/10/12_525/_pdf/-char/ja
※1 一般社団法人日本サプリメント協会著 NPO日本加齢協会監修 2017年6月第2刷発行 体の悩みを解決!ずっと健康に!サプリメント健康事典 株式会社集英社
アスタキサンチンはフィトケミカル
そもそもフィトケミカルとは何か?
近年、さまざまなメディアに登場するようになったフィトケミカルという言葉。
ファイトケミカルとも呼ばれる、比較的新しく認識されるようになった化学物質です。
なぜ新しいのかというと、フィトケミカルのことが分かって来たのが、1980年代以降になってからだったためです。
五大栄養素である糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルといった栄養素は、1950年までにすべて発見されていましたし、その後、第6の栄養素として食物繊維の概念が確立されたのは、1971年にイギリスの医師による仮説の提唱がきっかけでした。
それから10年以上が経過してから発見されたので、比較的新しく認識された化学物資なのです。
フィトケミカルはphyto-chemicalと書き、この「Phyto、フィト」がギリシャ語の「植物」を意味しています。
その正体は、色素や香り、アクなどの成分です。
フィトケミカルは、ビタミンやミネラルとは別の、人間の体内で重要な役割を持つ物質である、とされています。
食事を通じて私たち人間の体に入ると、体のバランスを整えたり、健康維持に関わる働きを担ったりしています。
元々は、植物自体が外敵や紫外線などの有害光線から身を守るためにつくり出している物質だと考えられていて、数千種類以上あることが分かっています。
名前の由来からもわかるように、特に野菜や果物、豆類などの植物性の食品に多く含まれていて、1つの食品の中にも数十~数百含まれています。※4
そんな数多くあるフィトケミカルの仲間であるアスタキサンチンは、カロテノイドという色素成分の一種です。
カロテノイドはさまざまな動植物に存在する脂溶性の色素成分で、キサントフィル類とカロテン類の2つの種類に分けられます。※2
アスタキサンチンはこのキサントフィル類に含まれ、他には赤ピーマンや赤トウガラシに多く含まれるカプサンチン、ホウレンソウやブロッコリーや卵黄に多く含まれるルテイン、海藻類に多く含まれるフコキサンチンなどがあります。※2
一方のカロテン類には、緑黄色野菜に多く含まれるα-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、トマトやスイカに多く含まれるリコピンがあります。色素成分だけあって、どの食品もはっきりした色をしていますね。
自然界でたくましく生きている動植物に含まれるフィトケミカルは、特徴的な色素でその身を守っています。
このはっきりした色(色素)のもつ働きは私たちの体にも、悪い環境下でもたくましく、強く元気に生きるという、良い状況をもたらしてくれるのです。※5
しかし、前述のように比較的新しく認識された成分であるため、さらなる利用法などさまざまな研究が進められています。
アスタキサンチンをつくり出すのは「藻」?
アスタキサンチンは、酵母や海洋性細菌などからもつくり出されています。※2
前述のヘマトコッカス藻は、単細胞性の緑藻の一種で、その名のとおり緑色をしています。
緑色をしたヘマトコッカス藻とアスタキサンチンの赤色は、どのように関連しているのでしょうか。
実は、ヘマトコッカス藻には、環境によってその形態を変化させるという特性があります。
良い環境にある時は緑色で、鞭毛(べんもう)と呼ばれる毛状の運動性器官を持ち、光合成を行いながら活発に分裂・増殖をしています。
しかし、強い光や乾燥といった環境下になると、鞭毛を失う、細胞壁が厚くなる、細胞の形を変えるなど、その状態を変化させます。
この時のヘマトコッカス藻はまだ緑色です。
しかし、ここからさらに栄養が不足してくると、袋状で、その内部に固体や液体を含んだ状態になり、細胞はいわば休眠状態となります。
すると、内部にアスタキサンチンを大量に貯めむようになります。※6
そして、厳しい環境から再び良好な環境に戻ると、休眠状態を解いて緑色の栄養細胞に戻り、再び増殖を始めることができます。
数年間休眠状態にあっても、栄養状態がよくなると再度分裂を開始するようですので、非常に強くて保存性がある藻です。※3
つまりヘマトコッカス藻は、厳しい環境下においても自分自身の身を強く元気にするフィトケミカル・カロテノイドとして、アスタキサンチンを利用しているのです。
※2 一般財団法人日本食品分析センター JFRL ニュース Vol.6 No.5 Feb.2018 /2019年9月27日閲覧
https://www.jfrl.or.jp/storage/file/news_vol6_no5.pdf
※3 公益社団法人日本油化学会 オレオサイエンス 第12巻第10号(2012)
緑藻ヘマトコッカスによるアスタキサンチンの生産とその利用 /2019年9月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/12/10/12_525/_pdf/-char/ja
※4 中嶋 洋子/蒲原 聖可(監修) 主婦の友社編 2017年10月発行 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 株式会社主婦の友社
※5 中村丁次監修 2017年2月発行 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版
※6 竹中裕行著 2017年8月初版発行 ミドリムシの仲間がつくる地球環境と健康 シアノバクテリア・緑藻・ユーグレナたちのパワー 株式会社成山堂書店
アスタキサンチンを上手に摂るには
アスタキサンチンを多く含む食材
アスタキサンチンは海洋生物に多く含まれているのは前述のとおりですが、実は甲殻類や魚類はその生物自身でアスタキサンチンを作り出すことはできません。
アスタキサンチンを自分自身でつくり出すことができる藻類、海洋性細菌、酵母などをエサとしますので、食物連鎖を通して体内へ取り込みます。
それが赤色成分として、体の中に残っていることなります。
具体的には、サケやイクラ、鯛、エビ、カニなどに多く含まれていますので、サケの身の色やイクラの赤い色はまさにアスタキサンチンの色なのです。※2
例えば、エビ(殻付き生)には5.4mg、イクラ(白鮭)には0.87㎎、銀鮭には0.97㎎のアスタキサンチンが含まれています(いずれも食品100gあたり)。
鮭にはいくつかの種類があり、上記の通り銀鮭は0.97㎎、白鮭は0.16㎎ですが、紅鮭は2.0㎎と、アスタキサンチンの量によって身の色も違うようです。※7
アスタキサンチンを多く含む食材は、生体の間は特徴的な赤色をしていないこともあります。
特に甲殻類の色は、青灰色と呼ばれるくすんだ色味です。
スーパーの食材売り場に並んでいるエビは、殻付きのものは基本的にくすんだグレーのような色をしていますが、加熱した後のエビは、丸くなり赤と白のシマシマ模様になっていますよね。
これは、加熱によるたんぱく質の変化によるものです。
甲殻類を加熱すると、もともとたんぱく質と結合していたアスタキサンチンが切り離され、アスタキサンチン本来の色(=赤色)になります。
つまり、たんぱく質と結合している間のアスタキサンチンは、本来の赤ではなく青っぽい色になっているのです。
しかし、たんぱく質は「ゆでる」「焼く」など高温で加熱すると、それ自体が変性しますので、アスタキサンチンとの結合を解除し、アスタキサンチンを開放します。
すると、アスタキサンチンは本来の赤色になります。
これが冒頭でも触れたような「加熱前は黒っぽい色をしたエビが、加熱すると赤くなるという変化」の仕組みです。
食べ合わせによっては効果的?
前述のように、アスタキサンチンはサケやキンメダイ、エビやカニ、いくらなどの赤い色の海洋生物に豊富に含まれています。
たとえば、キンメダイを食べるときには皮まで食べる、エビも殻ごと調理して食べるなども良いでしょう。
さらに、アスタキサンチンを含む食品には、大根おろしやレモンのしぼり汁を加えることでより効果的に摂取することができます。
これはビタミンCなどの水溶性ビタミンと、アスタキサンチンとの相乗効果で、私たちの体をより元気にし、その効果も持続するためだといわれています。※1
サケのムニエルにレモン汁をかけるというのは、とても理にかなった食べ方なのです。
では、アスタキサンチンを豊富に含むエビを、殻ごと使った簡単レシピをご紹介します。
【殻付きエビのガーリックシュリンプ】
- 殻付きエビの背ワタを取り、水気を拭き取る
- フライパンにオリーブオイルを熱し、みじん切りにしたにんにくを炒め、にんにくの香りが立って来たらエビを炒める
- エビの色が変わったら、レモン汁と酒を入れ、蒸し焼きにする
- エビに火が通ったら、醤油と追加のオリーブオイルを回し入れ、塩コショウで味を調える
- 器に盛って、お好みでみじん切りにしたパセリなどを添える
分量はお好みで良いですが、殻付きエビ200g程度に対し、レモン汁小さじ2、しょうゆ小さじ2程度を使うと良いでしょう。
殻付きエビの香ばしさと、にんにくの香り、ほんのりとしたレモンの酸味が食欲をそそります。※4
※2 一般財団法人日本食品分析センター JFRL ニュース Vol.6 No.5 Feb.2018 アスタキサンチンについて /2019年9月27日閲覧
https://www.jfrl.or.jp/storage/file/news_vol6_no5.pdf
※7 文部科学省 平成20年度新たな健康の維持増進に関わる食品成分等に対するニーズ調査 5.成果 第1章 機能性成分等新たな健康の維持増進に関わる成分の分析に対するニーズ /2019年9月27日閲覧
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/shiryo/attach/1287304.htm
※1 一般社団法人日本サプリメント協会著 NPO日本加齢協会監修 2017年6月第2刷発行 体の悩みを解決!ずっと健康に!サプリメント健康事典 株式会社集英社
※4 主婦の友社編 2017年10月発行 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 株式会社主婦の友社
アスタキサンチン摂取 ここに注意!
食べ合わせ
栄養バランスを考慮するならば、1種類だけに偏って摂取するよりは、数種類を組み合わせる方が体には良いでしょう。
しかし、アスタキサンチンを含むカロテノイドの仲間は、吸収過程で互いに影響を与え合います。
ニンジンやトマトに含まれる、β-カロテン、カンタキサンチン、ルテイン、リコピンなどは、その相互作用として、アスタキサンチンの吸収を抑えてしまう可能性があります。※1
カロテノイドの仲間はさまざまな野菜に含まれていますので、レシピや食べ合わせには、ちょっとした工夫が必要かもしれません。
例えば、エビからアスタキサンチンを摂るなら、トマト煮にするよりも、前述のガーリックシュリンプのような形の方が、アスタキサンチンを効果的に摂取できそうです。
通常、食品からアスタキサンチンを摂取する場合は安全と考えられており、1日あたりの摂取許容量の設定もありません。
ここ数年間で行われた研究により、1日あたり6㎎または12㎎摂取すると良いのではないかという結果も出ているようです。
しかし、実際の食品での含有量から考えると、殻付きのエビなら120g~240g、紅鮭なら300g~600g食べる必要があります。
アスタキサンチンを大量に含むヘマトコッカス藻を食べることは現実的ではありませんので、食品から十分に摂るのは、難しいのかもしれません。
但し、食品以外からの摂取で高用量に摂り入れると、胃痛を起こすおそれがあります。※7
また、妊婦中や授乳中の場合も、食品以外からアスタキサンチンを敢えて多く摂ることは避けた方が良いでしょう。※1
お薬との関係
お薬の中には、肝臓で代謝されるものがあります。
アスタキサンチンは、肝臓でのお薬の代謝を促進してしまうことがあるため、お薬の効果を弱める可能性があります。
お薬はそもそも、日常的な食生活をしていることを前提として処方されるものですから、こうしたお薬を服用中の方は、主治医に相談の上、アスタキサンチンの摂取方法やその量などについて、検討するのが良いでしょう。※8
※8 J-STAGE Effects of astaxanthin-rich Haematococcus pluvialis extract on cognitive function: a randomised, double-blind, placebo-controlled study /2019年9月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn/51/2/51_D-11-00017/_article
※1 一般社団法人日本サプリメント協会著 NPO日本加齢協会監修 2017年6月第2刷発行 体の悩みを解決!ずっと健康に!サプリメント健康事典 株式会社集英社
※9 日本医師会/日本歯科医師会/日本薬剤師会総編集 2019年7月第6版第1刷発行 健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 日本対応版〈第6版〉株式会社同文書院
まとめ
アスタキサンチンは、藻や海洋性微生物から魚介類へ、そして私たちの体にも食物連鎖の一環として摂り込まれてきます。
過酷な生活環境でいきる、藻などの植物や魚介類を守るアスタキサンチン。
私たちも藻や魚介類からの力を上手にとり入れ、強くて元気な体をつくっていきましょう!
- 岡部 美由紀
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看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート) 他