異常な眠気はストレスが原因?解消する方法はある?
夜にちゃんと寝ているのに、昼も眠くて仕方がない…。
朝、仕事に行って遅い時間に帰宅。
ただ疲れているから眠いのでしょうか?
いつも眠気に襲われているのは、慢性的な寝不足だけが原因ではないかもしれません。
働く大人達の眠気は、ストレスからくるもの!?
ストレスと眠気の関係と影響や、解消方法を紹介していきます。
目次
- ストレスと眠気の関係、脳の働きとは
- 異常に眠いのは、疲労のサイン
- ストレスによる眠気を解消する方法
- 目を閉じることで疲労の軽減
- お昼休みに「パワーナップ」
- カフェインを摂取する
- 女性特有の眠気
- 女性ホルモンによる眠気
- 生活スタイルの変化による影響も
- 妊娠中は眠気が増すことも
- ストレスによる眠気と合わせて出る症状と病院にいくタイミング
- まとめ
ストレスと眠気の関係、脳の働きとは
ストレスは元来、環境の変動に対する生命の適応的な反応のことを示します。
ストレスの原因はストレッサーと呼ばれ、そのストレッサーに応じて様々なストレス反応を引き起こします。
ストレスから身を守るための防御、ストレスによって引き起こされる食欲低下や、頭痛、胃腸の調子が悪い、睡眠障害などの反応のことをストレス反応といいます。
脳でも様々な経過をたどっています。
脳の視床下部、下垂体、副腎系を介した内分泌反応が起こっています。
ストレスを感じた時に最初に反応するのは、脳の中で本能的な生存の維持に深く関わっている視床下部という場所です。
視床下部では交感神経と副交感神経の自律神経系と、ホルモン系を合わせて生体バランスを維持しています。
視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンの分泌がされ、下垂体へ到達するとまた別の副腎皮質ホルモンが分泌されます。
この副腎皮質ホルモンは、ストレスホルモンと呼ばれており、ストレスを受けた時に負けないよう身体や心を守るために分泌されます。
ストレスに対し脳で起きる反応は、ストレスホルモンの分泌とともに、リラックスモードの副交感神経が優位な状態から、緊張モードの交感神経優位への状態に変化します。
副交感神経は、仕事から帰宅して休んでいる時や、休息してリラックスしている時に優位になり、消化器官の働きを促進させて、消化活動を活発にさせます。
ストレスを受けて交感神経や優位になると、アドレナリンが放出され血圧や心拍数の上昇、血液を豊富に送るとともに消化器官の運動は抑制されます。
ストレスから回避することで危機的状況が去ればまた休息し、と交感神経と副交感神経の2つの神経活動はこうしてバランスをとっているのです。
しかし強いストレスを受けた場合では、この自律神経系の切り替えがうまくいかなくなってしまいます。
交感神経が興奮した状態が続くと、身近な問題では肩こりや便秘、高血圧、筋緊張性頭痛の症状が多くみられます。
また交感神経と副交感神経の両方が興奮した場合が続けば、胃粘膜が減少すると同時に、胃酸の分泌が亢進されてしまい胃炎や、胃潰瘍を引き起こしやすくなります。
反対に強い失望感や抑うつ状態では交感神経と副交感神経の両方の働きが低下してしまうということが起きやすいといわれており、活力や意欲もないのにリラックスもできず、イライラしたり眠れなかったりということが起こってしまうのです。※1
※1 「ストレスと適応障害つらい時期を乗り越える技術」/著者:岡田尊司/株式会社幻冬舎/2013年5月発行/ 2019年8月26 日現在
異常に眠いのは、疲労のサイン
現代で働く人々のストレスは、脳の疲労に象徴的にあらわれています。
IT社会への変化によって、身体が働くことから、頭が働くことへ。
疲労はストレスや神経が疲れるなどの脳が集中的に疲れる「脳疲労」に変化してきています。
パソコンやスマホ操作の多い現代では、情報の入口は目です。
同じ器官から通される脳への刺激は、眼精疲労やドライアイといった目への影響だけではなく、脳が受ける刺激も遍在することに。
また肉体疲労では睡眠はとりやすくなりますが、脳疲労では脳の過活動で逆に睡眠の障害が起こってしまいます。※2
生活の中で緊張や不安、苛立ちなど様々な刺激を受けています。
ストレスは全て有害というわけではありません。
適度なものや一過性のものであれば、そのストレスによる心地の良い刺激となって自律神経が興奮し、仕事や勉強の能率もアップします。
しかし、刺激が度を過ぎていたり、ストレスに対抗できる力が弱まっていると適応しきれなくなり、ストレスは心や身体、日常行動にダメージを与えてしまいます。
【ストレスが原因の日常行動のダメージ】
心理的側面…抑うつ、緊張、イライラ、意欲の低下など
身体的側面…高血圧、胃潰瘍、食欲低下、不眠、肩こり、動悸、下痢、便秘など
行動的側面…過食、拒食、アルコール依存、作業効率の低下など
身体的側面に不眠が含まれているように、ストレスと睡眠障害は密接に関係しています。
夜なかなか寝付けない入眠困難、睡眠の途中で何回も目が覚めてしまう中途覚醒、朝早く目が覚めてしまう早朝覚醒や、日中に眠気がある場合もあります。
特殊な激しい運動をしない限り、日常に起こる疲労は自律神経の疲労といわれています。
仕事で行き詰まったり、人間関係に悩んだりと普段の暮らしの中で交感神経が高ぶる場面が多くあり、自律神経には大きな負担となっています。
このように負担が蓄積され脳疲労が溜まると、脳は休息を促すため眠気が出現するのです。
ストレスをゼロにすることはできませんから、ストレスと上手に付き合っていくことが大切です。
そのためには、過剰なストレスがかかっていることに早く気づき、自分にあった方法や知識を見つけて、ストレスや心の健康状態にきちんとケアをしてあげましょう。※3
※2「『脳疲労』社会ストレスケア病棟から見える現代日本」/著書:徳永雄一郎/株式会社講談社/ 2016年1月発行/2019年9月1日現在
※3 「眠れないあなたに 睡眠科による不眠の医療 」/著者:塩見利明/2011年7月発行/毎日新聞社/2019年9月1日現在
ストレスによる眠気を解消する方法
目を閉じることで疲労の軽減
脳疲労の回復には睡眠が最も重要です。
ですが仕事中にその場で眠るわけにはいきません。
そこで、誰でもすぐに実践できることは、座って1分程目を閉じることです。
可能であれば机に伏せてやってみましょう。
脳には五感を通して情報が伝達され、そのおよそ90%が目の視覚からの伝達です。
つまり目を閉じて視覚からの情報を遮断すると、脳への情報が90%程度は遮断できるということです。
そのため脳の情報処理にかかる負担が軽減でき、疲労から回復させる作用があります。
また、人は立っているだけでも緊張して交感神経に負担がかかっているため、座って伏せていると交感神経の働きを軽減することで、疲れを軽くすることができます。
お昼休みに「パワーナップ」
休憩中にスマートフォンの使用を続ける方も多いのではないでしょうか。
スマートフォンの操作では脳は交感神経優位にも関わらず、目に対しては副交感神経の刺激を出し、水晶体レンズを厚くして近くに焦点を集めなければならないため、自律神経が疲労してしまいます。
前述の目を閉じる時間を作るのに加えて、30分程度の仮眠(パワーナップ)をとりましょう。
これはアメリカのコーネル大学の社会心理学者ジェームス・マース教授によって「パワーナップ」と呼ばれ、一般的によく知られる疲労回復方法の1つです。
パワーナップは時間あたりの睡眠の効用が最大化するとされ、NASAが1990年代に研修結果を発表してからは、世界各国の航空会社や企業、学校でも多く実践されているものです。
お昼休みに睡眠をとる場合、食事の時間を考慮すると30分未満が限度だと思います。この30分未満の睡眠は疲労回復に有効だと言われています。
睡眠は、身体は眠っているのに脳は活動している「レム睡眠」と身体も脳も眠っている「ノンレム睡眠」があります。
30分以上の睡眠でノンレム睡眠へ移行するため、脳が眠りかけからすぐに抜け出せなくなってしまいますから、仮眠時間に気をつけながらパワーナップを取り入れてみましょう。
また仮眠の際に目覚ましのアラームをセットする時には、大きな音のアラームを鳴らさないようにしましょう。
睡眠中の大きな音は、動物にとって危険が差し迫るサインになりますので、一瞬で交感神経が優位になり緊張状態によって、脳疲労の引き金となってしまいます。
カフェインを摂取する
眠気覚ましにコーヒーやお茶などで、カフェインを摂取することもよく知られる方法です。カフェインには脳の中枢神経に対する覚醒作用があります。
カフェインは摂取して覚醒作用を発揮するまでに30分程度の時間がかかります。
これを利用して、仮眠の前にカフェインを摂取してこくことで、起きた時に覚醒作用が働いて目が覚めやすくなります。
眠気覚ましにコーヒーを飲むのであれば、仮眠の前に飲むのがオススメです。※4
※4 「すべての疲労は脳が原因3<仕事編>」 2017年9月発行/集英社/ 2019年8月29日現在
女性特有の眠気
生理前に強く眠気を感じた経験のある方も多いのではないでしょうか。
女性ホルモンの影響などによりあらわれる女性特有の眠気を3つご紹介します。
女性ホルモンによる眠気
睡眠に深く関わるのは前述しましたが、2つの自律神経です。
運動や緊張したときに働く交感神経と、リラックスしているときに働く副交感神経です。
自律神経をコントロールしているのは、脳の視床下部でここは女性ホルモン分泌を司る部分でもあります。
そのためホルモンバランスが乱れてしまうと、自律神経も影響を受け、睡眠トラブルにつながってしまうのです。
就寝中の発汗やのぼせでよく眠れない、寝つきが悪い、眠りが浅い、早く目が覚めてしまうなどは、更年期のよくみられる症状です。
これにより睡眠をとっていても睡眠の質が低下し、日中の眠気を引き起こします。
また月経前に眠気が強くなる原因は、月経前症候群(PMS)です。
人間の身体は体温が下がると眠くなり、逆に上がると目が覚めるようにできています。
生理前はプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響で普段より体温が上がるため、体温が高い黄体期は寝つきが悪くなったりします。※5
生活スタイルの変化による影響も
人には就職や、結婚、妊娠出産、育児、転職、定年、介護など様々なライフイベントがあります。
ライフイベントには男女共通したものもありますが、男性に比べ女性の方が多く、その節目となる中でストレスが心身に影響を与え、女性特有のメンタルヘルス不全のきっかけともなります。
結婚を控えた人にみられるマリッジブルー。
本来、結婚はおめでたい、喜びに満ち溢れているものです。
ところがいざ現実のものとして直面したとき、結婚式の準備の煩わしさや、親族との関係、妻になることの責任など、新生活への不安や恐れなどから気持ちが落ち込んだ状態になり、不眠、過食、食欲不振といった症状が出たりします。
マリッジブルーによって睡眠トラブルは多くみられるようです。
妊娠中は眠気が増すことも
妊娠、出産は女性にしかできないライフイベントです。
妊娠初期にはプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響で、日中の眠気といった眠りづわりとも呼ばれる症状も多くみられます。※3
妊娠によってホルモン分泌が変化し、妊娠中期以降には、横向き寝で睡眠をとらざるを得ないといったことから、睡眠や覚醒のリズムが乱れやすくなってしまいます。
※3 「眠れないあなたに 睡眠科による不眠の医療」/2011年7月発行/毎日新聞社/
※5 「女性のからだ ちょっとした不調をなくす本」/ 2019年2月発行/ぴあ株式会社/
ストレスによる眠気と合わせて出る症状と病院にいくタイミング
早寝早起きを心がけているけれど、なぜか疲れが取れていない、日中眠気があるという方は睡眠中もチェックをしてみましょう。
いびきをかいていて、睡眠の質を悪くしているかもしれません。
自律神経の働きで睡眠中でもしっかりと呼吸をしています。
そのため眠っていても自律神経には負荷が掛かっていて、いびきをかいて眠っていると更に負荷が掛かります。
気道が狭くなったままで呼吸するのは、脳への酸素供給を維持しようと、血圧や心拍数を上げることになり、自律神経の負担になってしまいます。
また、いびきをかくことに加えて、睡眠中に低呼吸と無呼吸を繰り返す「睡眠時無呼吸症候群」では、眠っている間に疲れがとれるどころか、逆に疲れを蓄積させてしまいます。
呼吸、心拍、血圧、血液循環といった機能を、自律神経がフル回転で調整しているので、寝ているよりも、目を閉じて運動しているような状況です。※4
翌朝には、頭痛をそして日中は耐え難い眠気や、倦怠感をきたすのが特徴です。
睡眠時無呼吸症候群と病院で診断された場合には、治療法もあるので睡眠中のいびきや、無呼吸を指摘されたことがあるひとは、専門の医療機関に相談することがいいでしょう。※5
ナルコレプシーという過眠症の一つがあります。
別名、居眠り病ともいわれており、目覚めた時は爽快なのですが、突然耐えられない睡魔に襲われ1日に何度も居眠りを繰り返してしまうのがこの疾患の特徴です。
それは授業中や、重要な会議、集中力を必要とする作業、デート中、所構わず、自分の意思にではどうすることもできない猛烈な眠気が襲い、眠り込んでしまいます。
急な眠気が頻回に起きてしまうようであれば、こちらも専門の医療機関で治療が可能なので考えてみましょう。※4
自律神経の乱れによって、しっかり寝ても眠いなど眠気を引き起こすこともあります。
自律神経失調症の症状は多岐にわたります。
めまいや、偏頭痛、便秘、下痢、動悸、微熱、イライラしたり、感情の起伏が激しくなる、不安感や憂鬱など、心身の不調があります。
こちらも医療機関での相談することをお勧めします。
「眠れないあなたに 睡眠科による不眠の医療 」/著者:塩見利明/2011年7月発行/毎日新聞社/2019年9月5日現在
※4 「すべての疲労は脳が原因3<仕事編>」 2017年9月発行/集英社/ 2019年9月6日現在
まとめ
ストレスからくる身体の不調は様々ですが、今回のように睡眠にも大きな影響を与えています。
眠気が襲うたびに、怠けているなど自己嫌悪に陥ってしまうこともありますよね。
眠気があるのも疲れていますよと、身体からのサインです。
サインを流してしまわずに、心身の休息をとること、またストレスを軽減できるようなリラックス方法を大切にしてきましょう。
- 杉村 友希
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准看護師免許
人工透析で2年間、美容クリニックで半年勤務、その後、内科・皮膚科・美容皮膚科・形成外科・婦人科・乳腺科などの総合しているクリニックで現場主任を務める。
現在は、透析のクリニックに勤務しながら、現場で培った経験を元に、美容ライター業も行っている。