わたしたちの身体はアミノ酸でできている!

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わたしたちが生きていく上で欠かすことのできない栄養素のひとつでもあるアミノ酸。
アミノ酸は、わたしたちの体を作るタンパク質のもととなっているのですが、その他にもいろいろな働きで、わたしたちの体をサポートしてくれています。
では実際に、アミノ酸はどのような働きをし、どのようにわたしたちの生活を豊かにしてくれているのでしょうか。

目次

  1. アミノ酸とは
    • タンパク質をつくる20種類のアミノ酸
    • 体内で合成できないアミノ酸とは
    • タンパク質の「質」は、アミノ酸のバランスで決まる
  2. 元気な身体をつくる
    • アミノ酸が体内で吸収されるまで
    • アミノ酸はどんな働きをするの?
    • アミノ酸不足ってなに?
  3. アミノ酸の上手な摂り方
    • アミノ酸を多く含む食品
    • アミノ酸は1日にどれくらい摂取したらいい?
    • アミノ酸の過剰摂取に注意!
  4. まとめ

アミノ酸とは

まずはアミノ酸がどのような成分であるのか、その種類と機能面についてご紹介します。

タンパク質をつくる20種類のアミノ酸

アミノ酸とは、タンパク質を合成する有機化合物です。
その種類は20種類あり、これが1つでもかけると、タンパク質を上手く合成することができなくなります
人間の体を構成する物質のおよそ20%はアミノ酸で、この割合は水分の次に多いとされています。
かつては、アミノ酸から合成されたタンパク質が、人が動くためのエネルギー源だと考えられてきました。
しかし近年は、タンパク質を構成する最小単位であるアミノ酸を摂取することで、人が動くためのエネルギー源として、重要な役割をしていると考えられるようになり、注目され始めています。
尚、20種類のアミノ酸のうち、9種類を必須アミノ酸、11種類を非必須アミノ酸といいます。
必須アミノ酸とは、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジンと呼ばれる、9種類のアミノ酸です。
非必須アミノ酸には、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、チロシン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリンがあります。
では、必須アミノ酸と、非必須アミノ酸の違いは何でしょうか。※1、2、3

  • 必須アミノ酸:人体が必須とする栄養素であり、体内で作り出すことができないもの
  • 非必須アミノ酸:人体が必要とする栄養素だが、自分の体内で作りだすことが出来るため、食事から必要以上に摂取する必要はないもの

という違いがあります。「非必須アミノ酸」という名称でも、決して重要ではないということではありません。※1、2

体内で合成できないアミノ酸とは

前述のように、アミノ酸には「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」があります。
そのうち、必須アミノ酸は体内で合成することができず、非必須アミノ酸は体内で合成することが可能です。
必須アミノ酸は、それを含むタンパク質を摂ることによって、体内へ取り込むことになります。
普段の食生活がバランスの良いものであれば、不足することはほとんどないとされています。
必須アミノ酸を多く含む食品には、以下のようなものがあります。

  • イソロイシン: 子牛肉、鶏肉、牛乳、チーズ、サケ
  • ロイシン:牛肉、レバー、ハム、牛乳、プロセスチーズ
  • リジン:魚介類、肉類、レバー、卵、牛乳、大豆製品
  • メチオニン: 牛乳、牛肉、羊肉、レバー、全粒小麦
  • フェルアラニン: 肉類、魚介類、卵、大豆製品、チーズ、アーモンド、落花生
  • スレオニン: 卵や七面鳥、スキムミルクやゼラチン
  • トリプトファン: 牛乳、大豆製品、バナナ、種実、チーズ
  • バリン:子牛肉、レバー、プロセスチーズ
  • ヒスチジン:子牛肉、鶏肉、ハム、チェダーチーズ

このように、必須アミノ酸は、肉類、魚介類、乳製品などに多く含まれています。※3.4

タンパク質の「質」は、アミノ酸のバランスで決まる

アミノ酸のバランスは、タンパク質の質を決めるといわれています。
タンパク質の質を評価する指標として、「アミノ酸スコア」と呼ばれるものがありますが、これは理想のアミノ酸組成に対して、それぞれの食品の必須アミノ酸の充足度を表したものです。
このスコアのうち100以下のものを制限アミノ酸と呼び、最も低いものを第一制限アミノ酸と呼びます。
近年、食材に含まれるアミノ酸の働きは、最も低いアミノ酸のレベルに制限されてしまうことが分かってきました
例えば、タコやアサリといった魚介類ではバリンが、白米や小麦粉ではリジンが第一制限アミノ酸です。
これらの食材だけをどれだけ多く摂っても、第一制限アミノ酸の影響を受けてしまい、他のアミノ酸が上手く働くことができません。
つまり、アミノ酸スコアを良好にし、良質なタンパク質を作るためには、それぞれのアミノ酸を含む食材を、バランスよく組み合わせた食事を摂ることが必要です。

また、主な食品のアミノ酸スコアを見ていくと、肉類、魚類、鶏卵が最もアミノ酸スコアが良く、続いて大豆製品、貝類となっています。
さらに、人が良質なタンパク質をつくり出す、理想的な必須アミノ酸の組成は以下のようになります。

  • イソロイシン190㎎/gN
  • ロイシン390㎎/gN
  • リジン330㎎/gN
  • メチオニン・シスチン160㎎/gN
  • フェルアラニン・チロシン290㎎/gN
  • スレオニン290㎎/gN
  • トリプトファン50㎎/gN
  • バリン260㎎/gN
  • ヒスチジン110㎎/gN

尚、単位の「㎎/gN」とは、チッソ1gあたりに何㎎のアミノ酸が含まれるか、というものです。※3、4、5

※1  e-ヘルスネット アミノ酸/2018年12月27日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-001.html
※2 J-STAGE 必須アミノ酸、非必須アミノ酸 その二つをわけるもの 小田 裕昭/2018年12月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/60/3/60_3_137/_pdf/-char/ja
※3 落合 敏 著 2014年10月発行 新しい実践栄養学 主婦の友インフォス情報社
※4 中村 丁次 監修 2015年7月発行 栄養の基本がわかる図解辞典 成美堂出版
※5 大谷 勝 著 小林 寛道 監修 2006年12月発行 なぜ効くのか・何に効くのか アミノエビデンス 現代書林

元気な身体をつくる

アミノ酸は元気な体を作るために必要不可欠な栄養素ですが、アミノ酸はどのように体内で吸収され、どのような働きをするのでしょうか。
具体的に見ていきましょう。

アミノ酸が体内で吸収されるまで

まずは、私たちが体内に取り込んだアミノ酸が、吸収されていく過程についてです。
例えば、体重70kgの人を基準に考えると、体内にあるタンパク質10kgあたりにつき、体内で合成されるタンパク質は250~300g程度です。
約30~80gは、尿や便になって体外に排泄され、余剰なアミノ酸は保存されるか、タンパク質を合成するために再利用されています。※6

体内に摂りこまれた食材は、さまざまな消化酵素の影響を受けつつ空腸まで達すると、初めて「アミノ酸」にまで分解されます。
その後、小腸上皮粘膜より吸収され、血流に乗って肝臓へと運ばれます。
肝臓に到達すると、約2,000種の酵素が、瞬時に500種ほどの化学反応を起こし、肝細胞1個につき1分間に60~100万個のタンパク質を生産します。
ここで、アミノ酸は新しいタンパク質の合成に利用され、体内で活躍するというサイクルを繰り返していきます。※7

アミノ酸はどんな働きをするの?

アミノ酸はタンパク質を合成するだけではなく、体中のさまざまな物質を作り出しています。
例えば、ホルモンや生理活性物質、脳からの情報を伝える物質、遺伝情報物質などです。

現在、アミノ酸が最も注目されているのが、スポーツの世界です。
アスリートたちのこのスポーツパフォーマンスや、体のコンディションを維持し、より元気な体を作り出すためには、日々のトレーニングだけではなく、栄養管理も大切です。
その中でも、近年特に注目されているのが、アミノ酸です。
アスリートたちは、より良いコンディションで本番当日を迎えるべく、良質なアミノ酸を摂取しています
これはスポーツ選手に限らず、さまざまな目的で運動を継続している人たちにとっても、必要なことです。
さらに医療の分野でも、手術前や手術後の栄養管理として、アミノ酸が使われることがあります。
手術前後にアミノ酸を使用することにより、患者さんの元気な体を維持したというのです。
アミノ酸は、激しいスポーツをするアスリートだけではなく、手術などにより元気が無くなってしまうであろう患者さんでも、その体を元気にしてくれる栄養素であるといえるでしょう。※5、6

アミノ酸不足ってなに?

前述のように、バランスの良い食生活を続けていれば、毎日の食事の中でアミノ酸が不足するということは考えにくく、アミノ酸不足に陥ることは、結果として少ないといわれています。
しかし、無理なダイエットなど、敢えてアミノ酸を含む食材を食べない生活が続けば、当然ながら「アミノ酸不足」に陥ることもあります
特に必須アミノ酸は、体内で合成することが出来ませんので、毎日継続的に、何かしらの方法で摂取していく必要があります。※3、4

もしもアミノ酸不足が起こってしまうと、私たちの体はどうなるのでしょうか。
まず、良質なタンパク質を、体の中で合成することが出来なくなります。
「それならば、タンパク質そのものを多く摂れば良い」と考えるかもしれません。
しかし、アミノ酸が摂れる食材は、同時にタンパク質も摂れる食材であることが多いです。
そのため、「食事からアミノ酸を摂ることが不十分」な状況であれば、当然ながら「タンパク質そのものを十分に摂ることも出来ない」可能性があります。
タンパク質は、私たちの体のさまざまなところで、必要に応じて形を変えながら、体全体を構成している物質ですから、これらが全体的に減少していくことになります。
また、動物を使ったある研究によると、動物に「特定の必須アミノ酸不足」の状態を作り出すことで、全体的な食事摂取量も減少する、という結果が出ています。
この理由としては、アミノ酸は体の中で「食事量をコントロールする」という役割も担っていることから、アミノ酸が不足することによって「もっと食事を食べなさい」という情報が上手く伝わらなくなることが原因ではないか、と考えられているようです。
もしも「食事摂取量が減る」ことになれば、当然ながら運動量も減少し、活動量も減少します。
すなわち、健康的な生活からは遠ざかってしまうことが、容易に想像できます。
健康的な生活を維持するためには、アミノ酸は不足してはならない栄養素なのです。※5、8、9

※7 公益社団法人日本食肉消費総合センター よくある質問 タンパク質はどのように消化・吸収される?/2018年12月27日閲覧
http://www.jmi.or.jp/qanda/bunrui4/q_063.html
※8 名古屋大学 Press Release 分岐鎖アミノ酸の不足は筋原線維タンパク質の低下を招く/2018年12月27日閲覧
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20170113_agr.pdf
※9 J-STAGE 脳による食物摂取の認知とアミノ酸校正維持の仕組みに関する研究 鳥居 邦夫/2018年12月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/67/2/67_65/_pdf
※3 落合 敏著 2014年10月発行 新しい実践栄養学 主婦の友インフォス情報社
※4 中村 丁次監修 2015年7月発行 栄養の基本がわかる図解辞典 成美堂出版
※5 大谷 勝著 2006年12月発行 なぜ効くのか・何に効くのか アミノエビデンス 現代書林
※6 櫻庭 雅文 2004年2月発行 アミノ酸の科学 その効果を検証する 講談社

アミノ酸の上手な摂り方

では、アミノ酸を効率よく摂取していくには、どのような摂り方をしていけばよいのでしょうか。

アミノ酸を多く含む食品

アミノ酸を多く含む食品は、主に肉、魚介類です。
肉は牛肉(サーロイン)、豚肉(ロース)、鶏肉(むね肉)、魚類ではアジやサケなどに、多くのアミノ酸が含まれています。
これらの食品の次に多くアミノ酸が含まれているのが大豆であり、続いてアサリ、タコ、ピーマン、じゃがいも、精白米、小麦となります。
他にも牛乳やプロセスチーズ、チェダーチーズ、スキムミルクといった乳製品、鶏卵、バナナ、アーモンドや落花生にも多く含まれます。
肉の加工品である「ハム」も同様です。
しかし、1つの食品にすべての種類のアミノ酸がバランスよく含まれているというわけではなく、食品によっては一部のアミノ酸だけ含まれている量が極端に少ないということもあります
そのため、一種類の食品を集中して摂るのではなく、「バランスのよい食事」を続けることが、上手なアミノ酸摂取につながります。※3、4

アミノ酸は1日にどれくらい摂取したらいい?

2007年にWHO/FAO/UNUから報告された「成人の必須アミノ酸の推定平均必要量」を見ると、1日の必須アミノ酸摂取推奨量は、体重1㎏あたり184㎎でした。
アミノ酸はタンパク質を構成する物質であり、個々のアミノ酸量がその評価の基準となることから、アミノ酸の必要量を正確に判断することは重要であるとされています。
しかし、先ほど提示した必須アミノ酸の総量を満たしたとしても、アミノ酸にはそれぞれ種類があります。
その種類をすべて満たしていないと「アミノ酸の摂取量を満たした」とは言い難いため、注意が必要です。
また、年齢や体格、生活習慣や飲酒、喫煙歴、身体活動量、個人の持つ要素によって、必要なアミノ酸量はそれぞれ微妙に異なるということも考慮する必要があります。
特に激しい運動を行う人や手術を行った直後の人は、体力の維持・回復のためにアミノ酸が多く消費されてしまうため、必要摂取量が多くなります。
さらに、調理法によっても食品のアミノ酸含有量は異なってきます。
また、必須アミノ酸の種類によっては、ビタミンB群と一緒に摂ると良いものや、運動直後に摂ると良いものなど、摂り方にも色々あります。
通常の食事に加えてサプリメントを摂取する場合には1日の必要量を優に超えてしまう可能性が高いため、サプリメントを摂った日には食事の内容に特に気を配る必要があるでしょう。※5、10.

アミノ酸の過剰摂取に注意!

アミノ酸は、摂りすぎにも注意が必要です。
いくつかのアミノ酸は、摂りすぎることによって体の不調を招く恐れがあります。
このことからも、特定のアミノ酸のみを積極的に摂取するのではなく、バランスよく摂取することが推奨されるのです。
サプリメントを利用すると特に、過剰摂取が懸念されることがあります。
各サプリメントの用法用量を守って、正しい量を服用するように心がけましょう。※3、4、10

※10 J-STAGE たんぱく質・アミノ酸の食事摂取基準 木戸 康博、小林 ゆき子/2018年12月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/25/3/25_3_773/_pdf
※3 落合 敏著 2014年10月発行 新しい実践栄養学 主婦の友インフォス情報社
※4 中村 丁次監修 2015年7月発行 栄養の基本がわかる図解辞典 成美堂出版
※5 大谷 勝著 2006年12月発行 なぜ効くのか・何に効くのか アミノエビデンス 現代書林

まとめ

食材によって、それぞれのアミノ酸バランスは異なります。
20種類のアミノ酸をバランスよく、過不足が無いようさまざまな食材を組み合わせることが大切です。
しかし、時間に追われる現代では、食事の度に食品とアミノ酸の関係を考えながら食事を摂るのは、なかなか難しいものです。
そこで例えば、朝は1杯の牛乳、昼が肉なら夜は魚、大豆製品を副菜にするなど、毎日少しずつ違う食材を選ぶことを心がけてみてはいかがでしょうか。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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