老後資金の目安はいくら?老後の生活費の平均は?

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住宅資金、教育資金と並んで、人生の三大資金の一つと言われる老後資金。
2000万円ともいわれる老後資金、実際に自分の場合の目安はいくらなのか、気になりませんか。
ここでは平均的な生活費の現状や目安をチェックしながら、50代からでも始められる老後資金の準備方法をFPが解説します。

目次

  1. 老後の生活費の平均額
    • 65歳以上の1ヶ月の生活費は平均22万円
    • ゆとりある生活費には約35万円
  2. 老後資金は、いくら必要?
    • 独身(シングル)の不足額は約400万円?!
    • 夫婦でゆとりある生活を望むなら3900万円不足?!
  3. 老後に必要なそのほかの費用の目安
    • 老後生活費の内訳
    • 医療費
    • 住宅にかかる費用(修繕など)
    • 冠婚葬祭など交際費
  4. 老後資金の準備は、まずはこの2つから
    • 資産の整理
    • 将来の年金額を知る
  5. 老後資金が足りない!50代からの老後資金
    • 50代でも始められる制度
  6. まとめ

老後の生活費の平均額

人生100年時代とも言われる中、豊かなセカンドライフを送りたいと考える方も多いでしょう。
そのためには、公的年金だけでは心もとないのが現実です。
老後に備えた貯蓄が欠かせません。
まずは、老後の生活費がどのくらいかかるのかをおさえておきましょう。

 

65歳以上の1ヶ月の生活費は平均22万円

生命保険文化センターの調査によると、老後、夫婦2人の世帯で必要最低限の生活費は約22.1万円です。※1
これに対して、夫婦2人の標準的な公的年金などの受取額は約22万円。(2021年12月現在)※2
あくまで平均的な数字ですが、この数字だけを見ると不足分はないようにも思われます。
ただし、これは必要最低限の生活費の場合です。

 

ゆとりある生活費には約35万円

充実したセカンドライフを送るには、22万円では足りない可能性もあります。
同調査によると、ゆとりある老後生活に必要な金額は月約35万円です。※1
標準的な公的年金の受取額から算出すると、1か月でおよそ13万円が不足してしまいます。
これらの不足部分を補うためには、貯蓄を切り崩していかなければなりません。

また、リタイアしたからと言って急に生活レベルを下げるのは難しいもの。
今の生活水準を維持するためにも、老後資金の備えはなくてはならないのです。

 

※1生活保障に関する調査|調査活動|公益財団法人 生命保険文化センター/2021年12月21日現在
https://www.jili.or.jp/research/report/chousa10th.html
※2 令和3年4月分からの年金額等について|日本年金機構 /2021年12月21日現在
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2021/202104/202104nenkingaku.html

老後資金は、いくら必要?

日本人の平均余命は年々延びています。
65歳時点の平均余命(あと何年生きるか)は男性で約20年、女性で約24年と言われています。※3
人生100年は、他人事ではありません。
人生100年時代の社会問題として、「老後資金2000万円問題」がよくメディアに取り上げられていますよね。
「老後資金2000万円問題」とは、公的年金を除き、老後の生活資金が2000万円不足するという金融庁の試算によるものです。※4
2000万円という数字は、夫婦で95歳まで生きると仮定した場合の試算です。※4
65歳から30年間の合計赤字額から算出されています。※4
30年で2000万円ですから、この場合の1か月の不足額は5.5万円です。

2000万円が、どの世帯も必ずしも当てはまるというわけではありません。
老後のライフスタイルも様々ですので、この金額はあくまで目安です。
独身か夫婦かでも、必要な資金は異なります。

 

独身(シングル)の不足額は約400万円?!

総務省の家計調査報告によると、独身世帯の公的年金の受給額は月額約12万円です。※5
一方、平均支出はおよそ13.3万円。※5
1か月あたり約1.3万円の赤字で、年間の不足額に換算すると約15.6万円です。
仮に、65歳から90歳まで25年間続いた場合、合計で約390万円が不足します。


あくまで平均値ですので、住環境(持ち家か賃貸マンションか)などにより不足額は異なるでしょう。
賃貸であれば、これ以上に不足する可能性もあります。

シングルだからと言って夫婦世帯に比べ生活費が半分になるわけではありません。
そう簡単にはいかないのが現実です。

 

夫婦でゆとりある生活を望むなら3900万円不足?!

夫婦世帯の場合、公的年金の標準的な受取額は月約22万円です。(2021年12月現在)※2
前章でもご紹介の通り、夫婦でゆとりあるセカンドライフを送るには1か月に35万円が目安です。※1
1か月に約13万円が不足します。
65歳から25年間の不足額は、約3900万円
退職金を見込んだとしても、いずれは貯蓄を取り崩さなければ生活が成り立たないかもしれません。


独身の標準的な生活であれば、老後の不足金額は、約390万円。
一方夫婦世帯でゆとりある生活を望むなら。不足額は約3900万円。
10倍もの差があることから分かるように、家族構成や希望するライフスタイルによって、必要な老後資金は大きく異なります

次章では、老後にかかる生活費をもう少し詳しくご紹介します。

 

※1生活保障に関する調査/公益財団法人 生命保険文化センター/2021年12月21日現在
https://www.jili.or.jp/research/report/chousa10th.html
※2 令和3年4月分からの年金額等について|日本年金機構 /2021年12月21日現在
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2021/202104/202104nenkingaku.html
※3厚生労働省/簡易生命表(令和2年) /2021年12月21日現在
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life20/dl/life18-02.pdf
※4金融庁/金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」/2021年12月21日現在
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
※5家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)2総世帯及び単身世帯の家計収支 /総務省/2021年12月21日現在
http://www.stat.go.jp/data/kakei/2020np/gaikyo/pdf/gk02.pdf

老後に必要なそのほかの費用の目安

老後資金の準備にあたり、これから何にどれくらい費用が必要となるか気になりませんか。
退職後にどんな費用がかかるのか、またセカンドライフに向けて見直すべきポイントなどをご紹介します。

 

老後生活費の内訳

2020年の家計調査年報から、老後の生活費の主な内訳を見てみましょう。

【65歳以上無職世帯の家計収支2020年】

夫婦二人 独身
食費 65,804円 36,581円
住居費 14,518円 12,392円
水道光熱費 19,845円 12,957円
保健医療費 16,057円 8,246円
交通・通信費 26,795円 12,002円
その他(雑費・交際費等) 46,853円 29,549円
税金・社会保険料等 31,160円 11,541円
※5家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)2総世帯及び単身世帯の家計収支 より作成

生活費のうち約3割を食費が、約2割を雑費や交際費が占めています。
これらの出費は、50代とあまり変わりありません。
老後になり増えるのが、医療費です。
さらに住居費も、実際の負担が大きいケースもあります。
1か月にすると1.5万円程度の出費ではあるものの、リフォームなどにまとまった金額が必要な場合も多いです。

 

医療費

老後は医療費の負担割合が減るため、医療費はかからないと思っている方もいるかもしれませんね。
ただ実際には、医療費は老後の方がかかります。
2020年の家計調査によると、現役の家族世帯の1か月の保険医療費は13,150円。※6
一方65歳以上の夫婦世帯の医療費は、16,057円です。※5
医療費は、老後の方が増加していることが分かります。
少なくとも今よりも医療費がかかると、心づもりしておいた方がよさそうです。

 

住宅にかかる費用(修繕など)

住宅ローンを完済したからといって、老後は家にお金がかからないわけではありません。
築年数が経ち、老後はリフォームが必要になる時期でもあります。
国土交通省の調査によると、リフォーム資金の平均額は約231万円です。※7
修繕のほか、退職後には子どもが巣立った後の住まいのリフォームを考える方もいるでしょう。
修繕やリフォームにはまとまった資金が必要です。
老後資金の一部として準備しておくと安心です。

 

冠婚葬祭など交際費

子どもが独立しても、子どもや孫のためにはお金を出してあげたいと考える方も多いでしょう。
結婚資金の援助や孫が誕生した際のお祝い金、また弔事の費用なども、まとまったお金が必要になります。
どれくらいの金額を援助したいか、弔事にはどれくらいかけるかなど、一度見積もっておくとより老後資金がより明確になるはずです。

 

※5家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)2総世帯及び単身世帯の家計収支 /総務省/2021年12月21日現在
http://www.stat.go.jp/data/kakei/2020np/gaikyo/pdf/gk02.pdf
※6 家 計 調 査 報 告 家計収支編2020年(令和2年)平均結果の概要/総務省/2021年12月21日現在
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2020.pdf
※7 平成29年度住宅市場動向調査報告書/国土交通省住宅局/2021年12月21日現在
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000126.html

老後資金の準備は、まずはこの2つから

老後資金を準備しよう!と思っても何から始めていいか分からない方も多いかもしれませんね。
老後資金を準備する前に整理しておきたいのが、「資産の整理」と「将来の年金額」です。

 

資産の整理

今あらためて、ご自身がどのくらいの資産を持っているかは把握していますか?
単なる預貯金だけではなく、保険の積立額の合計や投資商品など自分の「資産表」を作成しておきましょう。

資産表の作成で重要なのが、プラスの資産だけでなく住宅ローンなど負債額もつける点です。
今の自分の資産状況を把握することで、今後どのくらい貯めればよいかが分かりやすくなります。

 

将来の年金額を知る

前章でも、年金の標準額や平均額をもとに生活費や収入の目安をご紹介しました。
ただ実際には、平均額と同額を受け取れるわけではありません。
将来自分がいくら受取れるのか、今の時点で知っておきましょう。
自分の将来の年金額がもっとも詳しくわかるのは「ねんきん定期便」です。
50歳以降の「ねんきん定期便」はより詳しく、将来受け取れる予定の年金額が具体的に記載されています。
老後資金の準備を始めるにあたり、より詳細な年金額を知っておくとライフプランが立てやすくなるはずです。
もし手元に「ねんきん定期便」がない場合には、「ねんきんネット」というサイト上で確認することができます。
老後資金の柱となる年金について、しっかりと把握しておきたいですね。

 

老後資金が足りない!50代からの老後資金

50代になり、これから貯めるのは手遅れと感じている方もいるかもしれませんね。
視野も広がり、貯蓄に関しても落ち着いたスタンスで貯めていけるのが50代です。
65歳を超えても仕事に就いている方は年々増えており、仮に50歳から準備をし始めるなら、65歳まで15年間も時間的な余裕があります。
時間を味方につけながら、預金以外の方法もうまく取り入れれば老後資金を準備できます。

 

50代でも始められる制度

預金以外に老後資金の準備に役立つのが、「iDeCo(イデコ)」と「つみたてNISA」の2つの制度です。
どちらも共通していえるのが、運用しながら「こつこつ」貯めていくタイプであるということ。
さらに「iDeCo(イデコ)」も「つみたてNISA」も、どちらも税制面での優遇があります。
それぞれのポイントを簡単にまとめてみました。

 

【iDeCo(イデコ)】
iDeCoは私的年金とも呼ばれ、正式名称は「個人型確定拠出年金」といいます。
3つの特徴があります。

 

1つ目は税制面です。
iDeCo(イデコ)で拠出する掛金は、全額所得控除の対象となります。※8

2つ目は、積み立てて出た運用益が非課税となる点です。※8

通常、普通預金のわずかな利息に対しても、約20%の税金がかかります(2021年12月現在)。
iDeCo(イデコ)であれば、投資信託などで得られた利益が非課税で受取ることができます。
3つ目の特徴としては、一部の例外を除き60歳までは引き出せない点です。※8
「老後資金として手を付けないお金」と割り切り、確実に貯めていけるのがメリットです。

 

【つみたてNISA 】
NISAには、一般NISAとつみたてNISAの2種類があるのをご存じですか?
一般NISAとつみたてNISAでは投資対象や年間の非課税投資枠・非課税期間に違いがあります。
一般NISAが年間最大120万円までの投資枠があるのに対し、つみたてNISAの場合は年間で最大40万円です。※9
しかし非課税の期間は一般NISAが5年であるのに対し、つみたてNISAの場合は20年と非課税の期間が長いのが特徴です。※9
非課税期間が長いことから、長期的な目線で運用することが可能なため老後資金の運用には向いている制度と言えます。

 

・iDeCo(イデコ)とつみたてNISAの違い
iDeCo(イデコ)との主な違いは3点です。
1つは手数料です。※9
iDeCo(イデコ)は加入時や運用期間中に管理手数料がかかりますが、つみたてNISAの場合は加入時などにコストはかかりません。
2つ目に、税制面です。
iDeCo(イデコ)は積立資金が所得控除の対象です。※8
つみたてNISAの場合、積み立てたお金は所得控除にはなりません。
3つ目は、選べる金融商品の違いです。
つみたてNISAは、つみたてNISA専用商品の中から選ばなければなりません。※9
一方iDeCoは、保険は定期預貯金、海外債券など幅広い種類の中から商品を選べます。※8

これらの制度を活用するにあたり、掛金を家計から捻出しなければなりません。
家計簿をつけるなどして家計を可視化し、節約を習慣化しておくと老後の生活にも役立ちます。

 

※8 iDeCoのイイコト|iDeCoってなに?|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】 /2021年12月21日現在
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/good.html
※9 金融庁|つみたてNISAの概要/2021年12月21日現在
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html

まとめ

老後資金は、住宅資金、教育資金と並んで人生の三大資金と言われています。
残念ながら、ゆとりあるセカンドライフを送るためには公的年金だけでは賄えません。
自分で老後資金への備えが必要です。
準備を始める前にやっておきたいのが「資産の整理整頓」です。
今保有している預貯金や保険・投資商品などがどのくらいあるか一度整理してみてください。
住宅ローンの負債なども合わせて、自分の「資産表」を作っておくと、必要な老後資金の目安にもなります。
かつての高金利時代のように預貯金でお金を殖やすのは期待できません。
iDeCo(イデコ)やつみたてNISAなど預金以外の方法も活用しながら、効率よく老後資金を準備しましょう。

 

監修者
中村
名古屋大学経済学部卒業後、金融機関にてファイナンシャルプランナーとして勤務。
大手企業役員から主婦まで幅広い顧客を担当。
出産を機に独立後、同世代ママ向けの個別相談や節約術を交えたマネー講座を主宰。
「心を育む」をモットーにヨガ講師、無添加おやつ講師としても活躍中。
二児の母。三重県伊勢市出身。
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