体の調子を整えるカリウムを上手に取り入れて「元気にはたらく細胞」を目指そう!

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ミネラル(無機質)のひとつであるカリウム。
その多くは私たちの細胞内に存在し、元気にはたらく細胞をつくるという役割を担っています。
体にとって必要な量はごくわずかですが、無くなってしまうと細胞の元気も無くなります。
カリウムのことを詳しく知って、体の中から健康を維持していきましょう。

目次

  1. カリウムとはどのような成分か
    • カリウムは五大栄養素の「ミネラル」のひとつ
    • ミネラルに秘められたパワー
  2. カリウムのはたらき
    • カリウムの代謝
    • 細胞でのカリウム
  3. カリウムの摂取量
    • カリウムの食事摂取基準
    • カリウムの摂り過ぎと摂取不足
  4. カリウムの上手な摂り方
    • カリウムを摂るコツ
    • カリウム摂取に注意が必要なケース
  5. まとめ

カリウムとはどのような成分か

カリウムは五大栄養素の「ミネラル」のひとつ

私たちの体は、とてもたくさんの元素からつくられています。
元素とは、特定の原子番号をもつ、原子によって構成される物質のことで、化学元素とも言われ、あらゆるものの元となる要素のことです。
人は、4つの元素(O:酸素、C:炭素、H:水素、N:窒素)で体全体の96%がつくられており、水分、たんぱく質、脂質、糖質で成り立っています。
では、残りの4%は何があるのでしょうか。
それは、Ca(カルシウム)やMg(マグネシウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(塩素)、Fe(鉄)などです。
これらの元素から私たちの体の中に存在するもの代表は水分で、全体の60%を占めます。
それ以外では、16%がたんぱく質、16~30%が脂質、0.5%が糖質、5%がミネラルや微量のビタミンがつくり出されています。※1、2、3
人は生命活動を営むために、食べ物の中にある栄養素を必要とし、そこからエネルギーを得たり、新しい細胞をつくり出したりしています。
栄養素としてもっとも重要なたんぱく質、脂質、糖質を合わせて三大栄養素と呼び、これにミネラルとビタミンを加えると、五大栄養素になります。
五大栄養素の中のミネラルは無機質ともいい、分かりやすく表現するなら「体の中にごくわずかに存在する物質でありながら、健康維持には欠かせない成分」となります。
実際には、前述のようなCa(カルシウム)やMg(マグネシウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(塩素)、Fe(鉄)などを、ミネラルといいます。※1、2、3
ミネラルは、私たちの体の中で作ることができないため、食物などから摂取する必要があります。
特に、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、そしてリンは多量ミネラルといい、同じミネラルの中でも比較的たくさんの量を必要とするため、栄養バランスの良い食事から摂り続けていく必要があります。

ミネラルに秘められたパワー

ミネラルには、人体に比較的多く存在する多量ミネラル(前述の5種類)と、ごくわずかに存在する微量ミネラルがあります。
健康を維持していくためには、ミネラルを摂取することが欠かせないのですが、逆に摂取し過ぎると体にとって良くないケースもあります。
ですから、ミネラルの摂取には少し注意が必要です。
たくさんあるミネラルのそれぞれに適切な摂取量を知り、過不足なく摂取することが大切なのです。
多量ミネラルのうち、Na、K、Ca、Mg、Pの5種類と、微量ミネラルのうちFe、Zn、Cu、Mn、I、Se、Cr、Moの8種類、計13種類に関しては厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準によって、摂取基準が示されています。
一方で、ミネラルには特定のミネラルとの間で、互いの効果を打ち消し合う作用(拮抗作用)があります
どれか一つをたくさん摂っても、健康な体を維持することは難しいのです。
ミネラルには、人が生きていく上でのさまざまな生理的な現象を調整するという働きがありますが、全てが解明されているわけではありません。
ミネラル個々の役割・働きがあり、一括りにすることはできないのです。※2、3

※1 サプリメント健康事典 体の悩みを解決!ずっと元気に! 一般社団法人 日本サプリメント協会 (著), NPO日本抗加齢協会 (監修)  2015年12月発行 一般社団法人日本サプリメント協会
※2 はじめの一歩の生化学・分子生物学 第3版 前野正夫・磯川桂太郎(著) 2016年11月発行 株式会社羊土社
※3 栄養科学シリーズNEXT 新・栄養学総論 友竹浩之・桑波田雅士(編) 2016年11月発行  株式会社講談社 

カリウムのはたらき

カリウムの代謝

では、カリウムとは体の中のどこにある物質なのでしょうか。
カリウムは、細胞内液というところに多く含まれるミネラルです。
細胞とは英語でCell(セル)といい、目には見えない小さな部屋(=細胞)がたくさん集まって、組織や体をつくります。
セルという名前に、聞き覚えのある人もいるかもしれません。
パソコンで表計算をする時に使うアプリケーションでは、一つひとつのマス目をセルと呼びます。
実はこの2つ、同じ言葉が語源になっています。
ラテン語で「小部屋」や「小さな区画」を意味するCellaです。
小部屋である細胞は細胞膜と呼ばれる壁で囲まれ、その中は水で満たされています。
カリウムは、細胞の中を満たす水(=細胞内液)に含まれており、水の量を調整したり、状態を整えたりする働きがあります。
また、体全体を動かすためにも、必要とされるミネラルなのです。※3
さて、私たちは食物を食べることで栄養素を摂取しています。
しかし、摂取され、元気な体をつくり出す栄養素は、代謝と呼ばれる生命現象によって絶えず消費されていきます。
そして私たちは、消費された栄養素の補充を繰り返しています。
食べたものからエネルギーをつくり出し、細胞をつくり直す生命活動が、代謝なのです。
代謝には、物質を合成して体をつくるための同化と、物質を分解してエネルギーをつくる異化があります。
同化と異化の繰り返しが代謝です。
例えば、一見すると変化が無いような骨にも代謝は起こっていて、骨のミネラルは1年間で20~30%が生まれ変わっているといわれます。※3、4、5、6

細胞でのカリウム

先述の通り、ミネラルには拮抗作用と呼ばれる、特定のミネラルの効果を打ち消し合うという働きがありますが、主にカリウムと拮抗するのはナトリウムです。
カリウムは細胞の内側にありますが、細胞の外液に多く存在するのがナトリウムで、お互いにバランスを取りながら元気な細胞を維持しています。
つまり、何らかの原因でカリウムが不足すると、ナトリウムを調節する働きに影響を与えることになります。※3、5、6、7
カリウムはさまざまな食品に豊富に含まれているため、通常の食事で不足することは考えにくい栄養素です。
しかし、体調を崩す、あるいは水分が極端に少なくなるような場合は、カリウム不足になってしまうことがあります。
反対にカリウムを多く摂取しても尿から排泄されるように調節されるため、過剰になることも考えにくい栄養素です。
ただし、何らかの原因でカリウム量を調整する機能が悪くなると、体の中のカリウムの量が過剰になることがあります。
いずれの場合もカリウム本来の機能が働かなくなり、細胞の元気がなくなってしまうことがあります。※3、5、6、7

※4 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」報告書 Ⅱ各論 ミネラル(多量ミネラル)/ 2019年7月29日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114400.pdf
※5 厚生労働省 e-ヘルスネット カリウム / 2019年7月29日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-005.html
※3 栄養科学シリーズNEXT 新・栄養学総論 友竹浩之・桑波田雅士(編) 2016年11月発行  株式会社講談社 
※6 栄養の基礎がわかる図解事典 中村丁次(監修) 2015年4月発刊 成美堂出版
※7 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 中嶋 洋子 (監修) 2017年9月発行 株式会社主婦の友社

カリウムの摂取量

カリウムの食事摂取基準

カリウムも含め、特定の栄養素が不足すると、健康な体を維持できなくなります。
しかし、たくさん摂れば摂るほど良い、というわけではありません。
大切にしたいのは、バランスよく適度に摂取するということなのです。
日本には現在、日本人の食事摂取基準があり、ここでは健康維持・増進に不可欠な栄養素の摂取量が示されています。
具体的には、減らすべき栄養素としてコレステロール、ナトリウム(食塩)があり、増やすべき栄養素として食物繊維、n-3系脂肪酸、そしてカルシウムがあります。

 

ところで、日本人の食事摂取基準には栄養素摂取に関して5種類の指標が設定されています。
1.推定平均必要量:特定の集団を対象として測定された必要量から推定された必要量の平均値
2.推奨量:特定の集団に属する人々のほとんどが、1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
3.目安量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんどが、1や2を設定するのに十分な科学的根拠が得られない場合、良好な健康状態を維持するのに十分な量
4.目標量: 現在の日本人が生活習慣病の一次予防のために当面の目標とすべき摂取量
5.耐用上限量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんどが、健康障害を起こすリスクがないとされる最大限の摂取量
このうち、カリウムには目安量目標量が設定されています。

 

尚、耐用上限量はカリウムには設定されていませんが、ビタミンとミネラルには設けられているものもあります。
設定量を一時的に超えてしまうと直ちに健康被害を受けるということではありませんが、食事以外、健康食品などからの過剰摂取には注意が必要な栄養素といえます。
では、カリウムの目安量と目標量は、どのように決まったのでしょうか。
まずは目安量ですが、これは2010年、2011年の国民健康・栄養調査の結果などを根拠として、日本人が健康的な生活を送るために必要なカリウム量として決められました。
カリウムの目安量は、成人男性が1日2,500mg、成人女性が1日2,000mgです。
また目標量については、2012年に世界保健機構(WHO)から提案された、成人を対象としたカリウム摂取量1日3,000mg以上が、そのまま日本成人男性の目標量(女性は2,600㎎以上)になっています。※4、7、8

カリウムの摂り過ぎと摂取不足

では、カリウムの代謝をみていきましょう。
食事から摂取されたカリウムは小腸で吸収され、不要となったカリウムは汗になったり、便や尿とともに排泄されたりします。
カリウムの摂取量と排泄量はほぼ同じ量になっており、体の中のカリウム濃度は適切に維持されているのです。
しかし、何らかの理由でその仕組みが上手く働かなくなると、カリウムをうまく体外に排出することができなくなり、体の中でカリウムが増えすぎてしまうため、さまざまな不調が起こります。
一方、カリウムはたくさんの食品に含まれているため、通常の食事で足りなくなることはあまり考えられません。
しかし、カリウムは尿や便からも排泄されるため、何らかの原因によって排泄量が増えてしまうことがあります。
すると今度は、体の中でカリウムが少なすぎる状態になり、元気な体、健康な体を維持することが難しくなります。※7、8
大切なのは、肉や魚だけとか、米やパンなどの主食だけを食べるのではなく、野菜や果物、イモ類や豆類などを、バランス良く食べることです
これが、元気な体、健康な体をつくる一番のポイントなのです。※4、5、8

※4 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」報告書 Ⅱ各論 ミネラル(多量ミネラル) / 2019年7月29日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114400.pdf
※5 厚生労働省 e-ヘルスネット カリウム / 2019年7月29日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-005.html
※7 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 中嶋 洋子 (監修) 2017年9月発行 株式会社主婦の友社
※8 栄養科学シリーズNEXT 基礎栄養学 木戸康博・中坊幸弘(編) 2003年11月発刊 株式会社講談社

カリウムの上手な摂り方

カリウムを摂るコツ

カリウムは植物性食品から動物性食品まで、多くの食品に含まれている栄養素です。
健康な人であれば、通常の食事で十分な量のカリウムを摂取し、また、排泄量とのバランスも取れているものですから、不足や過剰をあまり気にすることはありません。※5
ただ、一つだけ気にしておきたいことがあります。
それは、カリウムと拮抗作用がある、ナトリウムとの関係です。
日本は欧米諸国に比べて、食事でのナトリウム(塩分)摂取が多い食生活を送っています。
ナトリウムの摂取量が多いということは、ナトリウムの排泄を促すカリウムの摂取を多くする必要があるということです。
例えば、カリウムを多く含む食品には次のようなものが挙げられます(一食あたりの量に含まれるカリウム量)。※6、7


【野菜・果物類】
たけのこ(100g) 520mg
アボカド(70g) 504mg
ほうれん草(60g) 414mg
小松菜(80g) 400mg
バナナ(100g) 360mg

 

【イモ類】
里イモ(80g) 512mg
サツマイモ(100g) 480mg

 

【豆類】
大豆(30g) 570mg
いんげん豆(30g) 450mg

 

【海藻類】
刻み昆布(10g) 820mg
干しひじき(10g) 640mg
ただし、カリウムは水溶性のため、茹でたり、煮たりすることで3割程度が失われてしまい湯の中に溶けだしてしまいます。
煮汁ごと食べられる、みそ汁やスープなどにすることで無駄なく摂取できます。※6、7

カリウム摂取に注意が必要なケース

前述の通り、カリウムを無駄なく摂取するためには、煮汁ごと食べることができるスープやみそ汁がお勧めですが、その理由はゆで汁や煮汁にカリウムが溶け出してしまうことにあります。
しかし逆にこの性質を生かせば、カリウムを摂り過ぎないコツに応用し、カリウムを意図的に除去することができます。
このような工夫が必要とされるのは、カリウムの摂取を控えることが必要とされる人です。
茹でる湯の量を食材の2.5~5倍量にし、目安として葉物で3~5分ほどで46%減、根菜であれば10~15分ほどで20~50%減のカリウム量にすることができるとされています。
さらに、茹でても除去しにくい食材には豆類、いも類、トウモロコシ、カボチャなどがあります。
これらは断面を大きくするような食材の切り方をし、水にさらすと効果的ですが、茹でるほどの除去率ではありません。
いずれにしても、茹でた後の湯や水にさらした後の水はよく切ることが大切です。※9
カリウムは多くの食品に含まれていますが、含有量が比較的少ないものとしては次のようなものがあります(100gあたりのカリウム量)。


緑豆もやし(69mg)
カイワレ大根(99mg)
玉ねぎ(150mg)
ピーマン(190mg)
キャベツ(200mg)
白ネギ(200mg)
トマト(210mg)※9

 

カリウムは、普通の食生活を送っていれば、さほど気にすることなく、栄養素が持っている特性でその体内量が調節されます。
しかし、医師から処方されたお薬の中には、体の中のカリウムの量に変化をもたらすものがあります。
場合によっては、食事からのカリウム量の過剰または不足により、体調不良を招く可能性もあります
少しでも気になることがある場合は、かかりつけ医に相談し、適切な指導を受けましょう。

※5 厚生労働省 e-ヘルスネット カリウム / 2019年7月29日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-005.html
※9 東邦大学 栄養素の名は ~カリウム制限と高カリウム血症予防のために~ / 2019年7月29日閲覧
https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/ohashi/neph/patient/tjoimi0000000aor-att/tjoimi0000000b91.pdf
※6 栄養の基礎がわかる図解事典 中村丁次(監修) 2015年4月発刊 成美堂出版
※7 これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典 中嶋 洋子 (監修) 2017年9月第1刷発行 株式会社主婦の友社

まとめ

私たちの体に必要なカリウムの量はごくわずかですが、多過ぎても少なすぎても、健康な体は維持できません。
日ごろからナトリウム(塩分)の摂り過ぎに注意することはもちろんですが、ちょっと塩分を摂り過ぎたと感じた時は、カリウムのことを思い出してみてください。
きっと、より健康的に年齢を重ねていけるのではないでしょうか。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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