ゴマに含まれる元気パワーのセサミンの秘密とは
人は、年齢とともに衰えていきますが、元気に年を重ねていけるなら、それはとても素敵なこと。
栄養バランスの良い食事と適度な運動、睡眠が、私たちの元気をつくります。
でも「バランスの良い食事が大切」と分かってはいるものの、365日きちんと続けていくことは、案外難しいかもしれません。
そんな時、私たちに元気をくれるのが、希少成分であるセサミン。
セサミンを効率よく摂取し、老いに負けない元気な体を保ちましょう。
目次
- セサミンを含む「ゴマ」とはどのような食材か
- ゴマの種類と成分
- ゴマの来歴
- ゴマの旬
- ゴマからしか得られない希少な栄養成分セサミン
- 開けゴマの由来
- ゴマにはセサミンがどれくらい含まれているか
- 注目をあびる健康パワー
- セサミンの健康パワー
- ゴマの有効成分
- ポリフェノールの一種でもある
- ゴマの食品利用
- セサミンを上手に摂るには
- 1日に必要な摂取量
- ゴマを使ったレシピ
- 水に溶けにくいからこそメリットがある
- ゴマのカロリーは高めなので摂りすぎに注意
- まとめ
セサミンを含む「ゴマ」とはどのような食材か
ゴマの種類と成分
セサミンという栄養成分を耳にしたことがある方は、結構いらっしゃるのではないでしょうか。
近年の健康ブームで脚光をあびているセサミンは、ゴマに含まれる成分です。
ゴマは英語でsesame(セサミ)、そのゴマに含まれるからセサミン、これは覚えやすいですよね。
はるか昔の元禄時代から、ゴマは健康パワーがあるともてはやされてきた食材です。
ゴマはゴマ科のゴマ属の一年生草本で、旬は初秋です。
果実は4室に分かれた蒴果であり、果実が割れる前に全草を抜き取り天日で乾燥させてから、割れて出てきた種子(これがゴマ)を集めます。
種子の外側の皮の色により、ゴマは白、黒、金と大きく3種類に分けることができます。
その見た目の色から黒ゴマ、白ゴマ、金ゴマといわれますが、世界には色や形、大きさなど、実にさまざまな種類があり、その数は約3,000種といわれています。※1
白、黒、金それぞれのゴマの特性をみてみましょう。※1
【白ゴマ】
アフリカや東南アジアなどの、温帯や亜熱帯地域を中心に、世界各地で生産されています。
黒ゴマと比べると脂質が多く、ゴマ油の原料としても使われます。
日本での主な産地は鹿児島県で、白ゴマは特に、西日本で好まれています。※1
【黒ゴマ】
中国や東南アジアで主に生産されます。
種皮の黒い色には、健康成分であるアントシアニンというポリフェノール色素や、不溶性食物繊維の一種であるリグニンが含まれています。
日本での主な産地は、鹿児島県と沖縄県です。※1
【金ゴマ】
黄ゴマや茶ゴマと呼ばれることもあり、脂質が高くコクのある味わいです。
香りも黒や白よりも抜きでて高く、その分、値段も高価です。
トルコ産が有名ですが、近年では日本国内での栽培も増え、茨城県、京都府、鹿児島県が主な産地です。※1
黒ゴマ、白ゴマ、金ゴマの栄養成分としては、脂質が40~55%、次いでたんぱく質が約20%、炭水化物が約20%弱となっています。
ゴマの脂質には、人体では合成できない必須脂肪酸であるリノール酸やオレイン酸が非常に多く含まれます。
その他にもセサミン、セサミノールなどのリグナン化合物、カルシウム、鉄などのミネラルを含んだとても栄養価の高い食品です。※2
ゴマの来歴
ゴマの原産地は野生種や変種の多い熱帯アフリカのスーダンや、その他のサバンナ植生地帯と推定されています。
約6,000年前から栽培が始まったとされ、米麦とならぶ歴史を持つ植物です。
シルクロードを通じて西域の胡から中国へ伝わったことから胡麻という名がつきましたが、日本には奈良時代に渡来して栽培が始まり、食用や灯火用などに用いられていました。
また、江戸時代の中期に刊行された本朝食鑑にはゴマの項が設けられ、五行説に基づいたゴマのパワーが記されていました。※2
現代でもゴマは油脂含有量が50%以上であり、圧搾法により搾油されています。
日本では強く加熱された搾油法である焙煎油が、特有のゴマ油香をもち、ゴマ油の特徴的なものとして利用されています。※3、4
ゴマの旬
永い歴史を持ち、香り豊かな食用油としても親しまれている、ゴマの旬は秋です。
世界中でもっとも生産量が多いのは中国やインドで、中国では8~9月、インドでは9~11月ごろが収穫期です。※1、3
ゴマは一年草木であり、およそ90日で収穫できるようになります。
春の終わりごろに種をまくと、秋になる頃には1本の草木の下の方から熟し始め、収穫できるようになります。
しかし熟しきってしまうと果実が割れてしまい、収穫できなくなります。
ゴマの収穫時期に幅があるのは、1本の草木でも熟すタイミングにズレが生じているためです。※3
※1 農林水産省 消費者相談 ゴマについて、黒ゴマ、白ゴマなど種類がありますが、何が違うのでしょうか。特性と、栄養成分上違いなどを教えて下さい。/2019年6月27日閲覧
http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1610/01.html
※3 J-STAGE ゴマの食品化学/2019年6月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1962/35/8/35_8_552/_pdf/-char/ja
※2 図解食卓の薬効辞典 野菜・豆類・穀類50種 2017年10月 池上文雄 農山漁村文化協会
※4 これは効く!食べて治す 最新栄養成分辞典 中嶋 洋子 (監修) 2017年9月 第1刷発行 主婦の友社
ゴマからしか得られない希少な栄養成分セサミン
開けゴマの由来
開けゴマと唱えるお話をご存知でしょうか。
お話を知らなくても、この呪文を知っている人は多いかもしれません。
開けゴマはアリババと40人の盗賊に出てくる言葉で、洞窟に隠された宝物への道を開く扉の前で使われたセリフです。
この話が作られた時代、ゴマは油を搾るための重要な作物として、中近東地域で広く栽培されていました。
この頃から、ゴマは貴重な財源としても重用されていたのです。
ゴマは成熟後に乾燥されると、種子の詰まった莢(さや)が割れ、中の種がはじけ出ます。
開けゴマは、このようにパッと勢いよく開く様子をあわらした当時からの慣用句だったともいわれています。
ゴマという言葉は盗賊の宝物を連想させ、「開けゴマ」と唱えることで宝物へと続く道が開けることから、ゴマはとても大切な物として扱われてきたことが分かります。※2、3
ゴマにはセサミンがどれくらい含まれているか
古くから利用価値の高い物として栽培されてきたゴマには、希少な栄養成分が含まれています。
ゴマに最も多く含まれているリグナンがセサミンです。
リグナンとは、植物の茎や根、種子に含まれる化合物のことでその代表がゴマリグナンです。
このゴマリグナンはさらに、セサミン、セサモール、セサミノール、セサモリノール、セサモリン、ピノレジノールなどに分かれます。
ゴマに含まれるセサミンは、ゴマの全体の約1%程度を占めています。※4、5
注目をあびる健康パワー
私たちの体は穀物や野菜、魚、肉などの食べたものからできています。
まさに「いただきます」という言葉の通り、食べ物の命を丸ごといただきながら、たんぱく質で体をつくり、炭水化物や脂質をエネルギーとして体を動かしています。
また、ビタミンやミネラル、食物繊維は体の調子を整え、元気で丈夫な体を作るためにも、とても大切な栄養素です。
食卓にあがる温かな食事をいただくことは、お腹を満たすだけではなく、元気な体をつくるためにも大切な時間なのです。
食卓にあがる植物は、紫外線や有害物質、害虫などから身を守り、次世代につながる多くの種などを作り出しています。
セサミンの持つ健康のパワーは、まさに外敵などから身を守るために作り出したと考えられる成分で、フィトケミカルと呼ばれるものです。
フィトはギリシャ語で植物を、ケミカルは化学物質を意味しています。
フィトケミカルはビタミンのような栄養素ではありませんが、健康維持や病気の予防に何らかの役割がある機能性成分で、第7番目の栄養素として注目されています。※2
※3 J-STAGE ゴマの食品化学/2019年6月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1962/35/8/35_8_552/_pdf/-char/ja
※5 J-STAGE セサミンの代謝及び医薬品との相互作用/2019年6月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/138/3/138_17-00191-4/_pdf/-char/ja
※2 図解食卓の薬効辞典 野菜・豆類・穀類50種 2017年10月 池上文雄 農山漁村文化協会
※4 これは効く!食べて治す 最新栄養成分辞典 中嶋 洋子 (監修) 2017年9月 第1刷発行 主婦の友社
セサミンの健康パワー
ゴマの有効成分
ゴマの有効成分であるセサミンが注目されるのは、その健康パワーにあります。
自然界で己を守るために身に付けた力であるフィトケミカルは、数千種類にも上るといわれています。
大きく分けると次のようになります。
硫黄化合物
- アリシン:ニンニク、ニラ、タマネギなど
- アリルイソチオシアネート:ダイコン、カラシナ、ワサビなど
- スルフォラファン:ブロッコリー、スプラウト、キャベツ、カリフラワー、ダイコンなど
多糖類
- イヌリン:ゴボウ、チコリ、タマネギなど
- β-グルカン:キノコ類など
- フコダイン:海藻類など
香気成分
- リモネン:ミカンなどの柑橘類の皮
- メントール:ミントなどのハーブ類
フラボノイド系ポリフェノール
- アントシアニン:ナス、赤ジソ、梅干し、黒豆、小豆、ブドウ、ベリー類など
- イソフラボン;大豆、大豆製品など
- ルテオリン:赤ジソなど
- ヘスペリジン:ウンシュウミカン、ハッサクの果皮など
- ケルセチン:タマネギなど
- カテキン:緑茶、紅茶など
フェノール系ポリフェノール
- クルクミン:ショウガ、マスタード、ターメリックなど
- クロロゲン酸:コーヒーなど
- ショウガオール:ショウガ
- セサミン:ゴマ
- ロスマリン酸:ローズマリー、赤シソなど
カロテノイド/カロテン類
- β-カロテン:ニンジン、カボチャ、ホウレンソウなど
- リコピン:トマト、スイカ、アンズなど
カロテノイド/キサントフィル類
- カプサンチン:トウガラシ、ピーマンなど
- β-クリプトキサンチン:ウンシュウミカン、ポンカンなど
- ルテイン:ホウレンソウなどの緑黄色野菜、卵黄など※2
ポリフェノールの一種でもある
セサミンはフィトケミカルの中でもフェノール系ポリフェノールに分類されます。
ポリフェノールは複数の水酸基を持つ化合物の総称で強い健康パワーを持っています。
人が呼吸により取り込んだ酸素は体を動かすため燃焼するのですが、その過程で不安定な分子構造を持つ物質であるフリーラジカルとなると、健康を脅かすようになります。
ポリフェノールはこのフリーラジカルを封じ込めて無害化する能力を持ち、私たちの健康を守ってくれます。※4
ゴマの食品利用
このように健康パワーを持つセサミンは、食品事業においても、大豆や茶と並ぶ研究素材として扱われてきました。※6
ゴマ油の他にも、伝統的なゴマ種子の食品としての利用は実に様々なものがあります。
- 炒りゴマ
- 皮むきゴマ
- ゴマ豆腐
- 練りゴマ
- ゴマダレ
ゴマは香味をつける香辛料的な副材料としても使われることもあり、優れた栄養価からも高く評価されています。
では、健康的にゴマの栄養を摂るコツを見てみましょう。※3
※3 J-STAGE ゴマの食品化学/2019年6月27日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1962/35/8/35_8_552/_pdf/-char/ja
※6 農林水産省 医食農連携と地場産農産物の活用/2019年6月27日閲覧
http://www.maff.go.jp/tokai/kikaku/tokaijikyu/pdf/isyokunourenkei.pdf
※2 図解食卓の薬効辞典 野菜・豆類・穀類50種 2017年10月 池上文雄 農山漁村文化協会
※4 これは効く!食べて治す 最新栄養成分辞典 中嶋 洋子 (監修) 2017年9月 第1刷発行 主婦の友社
セサミンを上手に摂るには
1日に必要な摂取量
セサミンの健康パワーは人気があるのですが、厚生労働省の定めた日本人の食事摂取基準では、1日の目標摂取量は特に決められていません。
厚労省などで定められている栄養素は人体に必要不可欠なものであるため、より健康であるために摂取した方がよいものについては、摂取量を定めてはいないようなのです。
フィトケミカルは従来の栄養素のように、摂取量が少ないからといって病気や欠乏症など、すぐさま健康に被害を与えるわけではありません。
しかし、たんぱく質や脂質、炭水化物のようにエネルギー源にならなくても、より健康になるためには必要とされている成分です。
ゴマからフィトケミカルの効果を得るのであれば1日に約10g、大さじ1杯程度を摂るようにするとよいでしょう。※4
では、ゴマを使ったレシピをご紹介します。
ゴマを使ったレシピ
(ホウレンソウのゴマ和え)
材料2人分
- ホウレンソウ・・150g
- すり白ゴマ 大さじ4
- 砂糖 大さじ1.5
- 醤油 大さじ1.5
- だし 大さじ1
作り方
- ホウレンソウは3㎝の長さに切る。
- たっぷりの湯に塩を入れ、ホウレンソウを茹でる。
- ホウレンソウを水にとって冷まし、水気をしっかりと切る。
- ボウルにその他の材料を合わせ、ホウレンソウと和える。
ホウレンソウのゴマ和えは、小松菜など好みの青菜を使っても美味しく作ることができます。※4
水に溶けにくいからこそメリットがある
ゴマをどんどん食べることでセサミンを体にたくさん吸収することができ、薬のような副作用の心配もありません。
ゴマの成分は脂溶性であり、体の奥にまで届き全身の健康に役立っています。
中でもセサミンが活躍するとされているのが、肝臓です。
肝臓は元々、神経などが無いことから沈黙の臓器といわれ、かなりのダメージを受けないと弱っていることに気付かない臓器です。
しかし、ゴマをたくさん摂ることで、セサミンを肝臓に届けることができます。
セサミンは肝臓の働きを助けるパワーも持っています。※8
ゴマのカロリーは高めなので摂りすぎに注意
一方で、ゴマは半分が脂質であるため、健康効果を高めようと過剰摂取するとカロリーオーバーとなる可能性があります。
また、ゴマは調理して使うことが多いため、調理法によってはカロリーだけではなく脂質も摂りすぎてしまう可能性もあります。
また、毎日大さじ1杯程度のゴマの摂取は簡単そうに思えても、これを毎日続けるのは、意外と大変かもしれません。
一つのメニューからだけではなく、主菜、副菜で違う調理法でゴマを使う、あるいは朝昼夕のうちのいずれかでゴマを使うなど、摂取の方法も工夫してみると良いでしょう。
セサミンはゴマから抽出された成分なため、アレルギーが無い限りは安心して摂取することができるのですが、何事にもほどほどというものがあります。
健康に良いからとまとめて過剰に摂取するような行為は、かえって体を虐めることになります。
また、セサミンを食事にプラスしてセサミンを摂る場合には、やはり過剰摂取には十分注意し、普段からお薬などを服用されている方は、主治医にセサミンについて相談をしてみるのも良いでしょう。
お薬の種類によっては、お薬の効果を強めたり弱めたりすることがありますので、確認したうえで、セサミンを上手に活用していきましょう。※2、4
※8 総合南東北病院 肝臓の働きを良くして体調を整える
http://www.minamitohoku.or.jp/kenkokanri/200808/kanzo.htm
2019年6月27日閲覧
※2 図解食卓の薬効辞典 野菜・豆類・穀類50種 2017年10月 池上文雄 農山漁村文化協会
※4 これは効く!食べて治す 最新栄養成分辞典 中嶋 洋子 (監修) 2017年9月 第1刷発行 主婦の友社
まとめ
ゴマ1粒にごくわずかしか含まれていない希少成分であるセサミンには、元気をサポートしてくれる大きな力があります。
毎日少しずつ、ゴマを使った料理を食べることで、いつまでも元気な体を目指しましょう。
ポイントは、毎日少しずつ食べること。
セサミンの元気パワーを少しずつ、長く摂り入れていきましょう。
- 岡部 美由紀
-
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート) 他