2億年も生き続けるイチョウ!実はすごいパワーが秘められていた!
春には新緑、秋には黄金色に輝く紅葉やイチョウ並木など、私たちの生活にちょっとした潤いを提供してくれる、イチョウの木。
イチョウは、日本や米国ではお茶やサプリメントとして扱われていますが、ドイツやオーストラリアなどでは、医薬品としても利用されています。
地球上に2億年も生き続け、長寿の象徴とされるイチョウのパワーに迫ります。
目次
- 生きた化石であるイチョウ、日本に来たのはいつ?
- イチョウが遂げてきた進化
- イチョウが日本に伝来したのはいつか
- 日本にやって来た「イチョウ」の知られざる歴史
- ギンナンとイチョウ、呼び方の違い
- 再び絶滅の危機にさらされたイチョウ、復活は日本の「出島」だった
- イチョウが持つ、すごい成分とは
- ギンナンに含まれる成分
- イチョウ葉に含まれる成分
- イチョウ葉成分の摂り方、アレコレ
- イチョウ葉エキスの基準値
- イチョウ葉はエキスでないと危険?
- 副作用に気を付ける飲み合わせ
- まとめ
生きた化石であるイチョウ、日本に来たのはいつ?
イチョウは、非常に原始的な植物であるといわれています。
その根拠は、2億年以上前の地層から、イチョウの仲間の化石が見つかっており、少なくともその頃には地球上で繁栄していた植物であったと推測されるためです。※1、2
イチョウが遂げてきた進化
イチョウの化石から分かっているのは、およそ2億年前には複数の種類のイチョウの仲間の植物が存在していたこと、葉の形が現在のものと良く似ているということです。
しかし、イチョウは氷河期に一度絶滅の危機にさらされます。
現在のイチョウは、氷河期を生き残ってきたもの。
そのため、イチョウ葉は「生きた化石」と呼ばれているのです。※3
みなさんもご存知のとおり、イチョウには雄株と雌株があります。
普通の植物は、一つの花の中におしべとめしべがありますよね?
このような植物を雌雄異株(あるいは雌雄別株)といいますが、同じ植物の中でも、草よりは樹木に多くみられます。
中でもイチョウは、ソテツと非常に近い種類であり、いずれも原始的な植物といわれています。
その理由は、植物の進化の過程にあります。
地球が誕生し、海の中から陸へ向かって植物が進化しました。
海と陸の境目で繁栄したのがコケ、そこからワラビやゼンマイなどのシダ植物が生まれました。
シダ植物から分かれて進化したのが、イチョウやソテツであり、2~3億年前から、その姿や成長の営みは変わっていません。
これが、イチョウが「原始的な植物」といわれるゆえんです。※3
イチョウが日本に伝来したのはいつか
イチョウの化石から分かっているのは、およそ2億年前には複数の種類のイチョウの仲間の植物が存在していたこと、葉の形が現在のものと良く似ているということです。
しかし、イチョウは氷河期に一度絶滅の危機にさらされます。
現在のイチョウは、氷河期を生き残ってきたもの。
そのため、イチョウ葉は「生きた化石」と呼ばれているのです。※3
みなさんもご存知のとおり、イチョウには雄株と雌株があります。
普通の植物は、一つの花の中におしべとめしべがありますよね?
このような植物を雌雄異株(あるいは雌雄別株)といいますが、同じ植物の中でも、草よりは樹木に多くみられます。
中でもイチョウは、ソテツと非常に近い種類であり、いずれも原始的な植物といわれています。
その理由は、植物の進化の過程にあります。
地球が誕生し、海の中から陸へ向かって植物が進化しました。
海と陸の境目で繁栄したのがコケ、そこからワラビやゼンマイなどのシダ植物が生まれました。
シダ植物から分かれて進化したのが、イチョウやソテツであり、2~3億年前から、その姿や成長の営みは変わっていません。
これが、イチョウが「原始的な植物」といわれるゆえんです。※3
<イチョウが日本に伝来したのはいつか>
現在、世界各国でみられるイチョウは、すべて同じ品種、唯一の現存品種です。
イチョウは前述の通り、氷河期に一度、全滅の危機にさらされましたが、現在の中国大陸でわずか一種類だけが生き残ったといわれています。
これが日本を経て(詳細は後述)全世界に広まっていったため、世界各国でみられるイチョウには、一種類しかないのです。
では、イチョウが中国から日本へやってきたのは、いつ頃なのでしょうか。
これには、様々な説がありますが、「西暦何年にどこから来たか」を明記している書物は、今のところは見つかっていません。
しかし、いくつかのヒントはあります。
例えば、神奈川県の鶴岡八幡宮にあった「大イチョウ(2010年に倒伏)」は、「3代将軍源実朝を暗殺した公暁が隠れていた」として知られています。
この大イチョウは、樹齢1,000年ともいわれており、神奈川県の天然記念物に指定されていました。
この「樹齢1,000年」が正しいのであれば、少なくとも鎌倉時代よりも少し前には、日本に伝来していたことになります。
比較的最近まで、この説が有力視されていたため、イチョウは鎌倉時代には日本に伝来していたと考えられていました。
しかし、1220年頃に記されたとされる書物には、実朝の暗殺のことは書かれていますが、イチョウの記述はないのだそうです。
さらに、現在の技術を元に詳しくこの大イチョウの年輪などを調べると、樹齢はおよそ500年前後と推測されています。※2
では、日本にイチョウが伝来したのは、本当はいつ頃なのでしょうか。
日本で書かれた書物に、最初に「イチョウ」の文字が登場するのは、1400年代中盤(室町時代)に記された書物であるといわれています。
この時はまだ「いてう」と書かれていたそうです。
「ちょうちょう」を「てふてふ」と表記するのと、同じですね。
また、これより少し前、1300年代後半(鎌倉時代中盤~後半)に記され、後に復刻された書物には「井てふ」という表記があるそうです。
これらのことから、現在では「日本にイチョウが伝来したのは、鎌倉時代の中盤以降、室町時代の初期のころ」だと考えられています。※2
※1 イチョウの出現と日本への伝来
http://square.umin.ac.jp/mayanagi/paper02/ityo.htm
2018年12月閲覧
※2 イチョウの伝来は何時か… 古典資料からの考察… 堀輝 三
https://www.jstage.jst.go.jp/article/plmorphol1989/13/1/13_1_31/_article/-char/ja/
2018年12月閲覧
※3 長田 敏行著 2014年2月発行 イチョウの自然誌と文化史 裳華房
日本にやって来た「イチョウ」の知られざる歴史
ところで、「銀杏」と漢字で書かれた時、「イチョウ」と読みますか、「ギンナン」と読みますか。
ギンナンとイチョウ、呼び方の違い
中国国内で生き残ってきたイチョウは、西暦1000年頃には「果実(ギンナン)」として珍重され、「白実」や「鴨脚子」と表記していました。
ギンナンの見た目から「白実」、イチョウの葉を鴨の脚に見立ててその木になる実なので「鴨脚子」などと表記されていたといわれています。
また、この頃の中国では、「貢物」として献上するにあたり、銀杏の殻が「銀色の杏(あんず)に見えた」ことから、名称を「銀杏(ギンナン)」に改めたとも記されているそうです。※1、4、5
同じ「銀杏」でも、樹木や葉をさすなら「イチョウ」、実をさすなら「ギンナン」と読み分けるのが一般的です。
なぜ同じ漢字でも読み分けることになったのかは定かではありませんが、前述の通り、日本の古い書物には「銀杏」という漢字に「いてふ」などの仮名がふられていました。
この頃から、同じ漢字でも2通りの読み方を持っていたことになります。※2
再び絶滅の危機にさらされたイチョウ、復活は日本の「出島」だった
さて、中国から日本に渡ってきたとされるイチョウですが、再び「絶滅の危機」にさらされることとなります。
中国では、宋の時代には「ギンナンは果実」として珍重されていたのですが、1300年頃にはすでに「採取が容易」「珍しいものではなくなった」などの理由からか、それほど人から好まれるものではなくなっていたようです。
また、その頃にはギンナンを食べ過ぎること、生で食べること、子どもが食べることは「不可」とされる書物が出され、1300年代の後半には、「ギンナンには毒性がある」ことが分かったようです。※2
こういった背景があり、中国国内ではそれほど流通しなくなってしまったと推測できます。
その後、日本にも「果実」として伝来しました。
そのうちの一部から「木」になるものが出て、日本全国へ広がっていったと考えられています。
日本の気候は、イチョウにとっては心地よかったのかもしれません。
やがて、日本は「鎖国」の時代を迎えます。
「鎖国」は、日本が海外の情報を得ることが難しいのと同様、海外も日本の情報を得ることが難しい時代でした。
ただ一つ、長崎県の出島を中心とした地域は、オランダを中心としたヨーロッパとの交易ルートが残されていました。
そんな時代背景の中、出島にオランダ人医師、ケンペルが滞在していました。
ケンペルは、わずか12年ほどの滞在期間のうち、江戸への参勤を2度務めたといわれています。
この道中で見かけたイチョウは、オランダ人であるケンペルにとって、非常に物珍しく感じられたのでしょう。
ケンペルは出島での滞在期間を終え、母国へ帰る際に、イチョウの実「ギンナン」を持ち帰ったといわれています。
その時、ケンペルは自身が記した書物に、「ギンナン」の呼び名を「Ginkgo(ギンコ)」と記述したため、イチョウの学名は「Ginkgo biloba」になりました。
イチョウはその後、ヨーロッパの気候とマッチしたためか、ヨーロッパ全土へと広がっていきました。※3
現在では、日本、中国、ヨーロッパをはじめとする世界各地に、イチョウは存在しています。
※1 イチョウの出現と日本への伝来
http://square.umin.ac.jp/mayanagi/paper02/ityo.htm
2018年12月閲覧
※2 イチョウの伝来は何時か… 古典資料からの考察… 堀輝 三
https://www.jstage.jst.go.jp/article/plmorphol1989/13/1/13_1_31/_article/-char/ja/
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※4 本邦の野生菊の新産地 北村四郎 https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/5/4/5_KJ00002594380/_pdf
2018年12月閲覧
※3 長田 敏行著 2014年2月発行 イチョウの自然誌と文化史 裳華房
※5 田中 平三監修代表 2009年9月発行 サプリメント・健康食品の「効き目」と「安全性」 同文書院
イチョウが持つ、すごい成分とは
イチョウからの栄養成分を体内に取り込むためには、大きく分けて「ギンナン」と「イチョウ葉」があります。
この2つは、同じ樹木から派生するものですが、それぞれに含有されている成分には違いがあります。
ギンナンに含まれる成分
日本には、ギンナンを食べる習慣がありますが、世界中でギンナンを食べるのは、日本、中国、朝鮮半島だけのようです。
イチョウは雌雄別株であり、実を付けるのは雌株。
ギンナンの収穫時期になると、イチョウ雌株の周囲には、独特の臭いがありますよね。
ギンナン自体は薄い緑色をしていますが、その周りには白くて固い「中種皮」があります。
さらにその外側に、オレンジ色のやわらかい「外種皮」があり、これがあの独特の臭いを発しています。
ギンナンは、成人が少量を食べる分には、ギンナンアレルギーが無い限り、それほど強い毒性はありません。※6
しかし、古くは1300年代の中国においても語られていたように、生で食べる場合や、小児が食べる場合には、強い毒性を発揮してしまい、最悪の場合は昏睡から死に至ることもあります。
この原因は、最近になって、ギンナンの中に含まれている「アンチビタミンB6」という成分によるものであることが分かりました。
アンチビタミンB6は、体内でビタミンB6の働きを阻害するため、結果的に「ビタミンB6欠乏症」という状態になり、さまざまな症状を引き起こします。
ギンナンによる中毒は、もちろん個人差はありますが、成人なら40~300個、小児なら7個~150個で、中毒を起こします。
ただし、アンチビタミンB6は熱に弱いため、しっかりと加熱し、適量を食べるようにしましょう。※7
イチョウ葉に含まれる成分
イチョウ葉には、フラボノイド類やテルペン類、ビロバライド類とよばれる成分が含まれています。
フラボノイド類は「ポリフェノール」の一つで、フラボノイド類の中には
● ブルーベリーなどに含まれるアントシアニン類
● 緑茶などに含まれるカテキン類
● 大豆などにふくまれるイソフラボン類
などがあります。
一方のテルペン類は、植物の精油成分に含まれるもので、特有の香りや苦みがあります。
イチョウ葉の苦みは、このテルペン類によって生じています。
テルペン類およびビロバライド類は、イチョウに特徴的な成分であり、現在のところは他の植物からは見つかっていません。
ところで「テルペン」という名前はあまり知られてはいませんが、「ギンコライド」という名称はいかがでしょうか。※7
フラボノイド類とテルペン(ギンコライド)類などを含むイチョウ葉エキスには、次のような作用があるといわれています。
●細胞の活動によって生じる「体の錆び」を取り除く
●脳でのグルコースの消費を促し、脳代謝を改善する
●血液の凝固に必要な「血小板」を活性化させる因子を抑制する
●神経を保護する
イチョウ葉に含まれる成分は、複数の有効成分の働きにより、様々な「体にとって良い働き」をしてくれているのです。※7、8、9
例えば、季節の変わり目に体調を整える、若々しさを維持するなどです。
特にイチョウ葉に含まれるフラボノイド類とテルペン(ギンコライド)類は、2つの成分の相互作用により、より強いパワーを発揮すると考えられています。
ところで、イチョウ葉や外種皮には、「ギンコール酸」という成分も含まれています。
ギンコール酸は、外種皮に多く含まれ、皮膚に直接ふれるとアレルギー性皮膚炎を起こすことが多い成分です。
ギンコール酸は、イチョウ葉に含まれる量としては、フラボノイド類よりもずっと少ないのですが、イチョウ葉からエキスを抽出する際には、このギンコール酸を除去する必要があります。
イチョウ葉が「エキス」として利用されているのは、このためです。※6
※6 国民生活センター イチョウ葉食品の安全性~アレルギー物質とその他の特有成分について考える~
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20021125.pdf
2018年12月閲覧
※7 「生きた化石」イチョウに含まれる特有成分とその生理活性 和田啓爾, 佐々木啓子
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/40/5/40_5_300/_pdf
2018年12月閲覧
※8 林 真一郎編 2016年10月発行 メディカルハーブの辞典 東京堂出版
※9 エイドリアン・フー・バーマン 著 橋詰 直考 監訳 2008年1月発行 エビデンスに基づくハーブ&サプリメント辞典 南江堂
イチョウ葉成分の摂り方、アレコレ
イチョウ葉は、ドイツ、フランス、スイス、イタリア、オーストリア等の多くの国では、医薬品として販売されていますが、アメリカでは「サプリメント」、日本では「食品」として扱われています。※6
アメリカ国内では、人気のあるハーブであり、少し古いデータではありますが、今から20年ほど前の1998年には、アメリカ国内で年間1億4千ドルほどの売上がありました。※10
イチョウ葉エキスの基準値
イチョウ葉エキスを医薬品として扱っているドイツでは、1日の摂取量をコントロールするために、「医薬品用イチョウ葉エキスの規格」があります。
有効成分のうち、フラボノイドは20~27%、テルペノイド(ギンコライド)は5~7%、ギンコール酸は5ppm以下に決められています。
イチョウ葉はエキスでないと危険?
日本で流通する「イチョウ葉」には
- イチョウ葉からエキスを抽出して、錠剤やカプセル、液体にしたもの
- イチョウ葉を粉砕して、カプセルや粉末にしたもの
- イチョウ葉を茶葉として加工したもの
があります。
過去に、国民生活センターが行った調査によると、イチョウ葉エキスを抽出したものには、ギンコール酸がごくわずかしかありませんでした。
一方で、イチョウ葉を粉砕したものでは、ギンコール酸が16000ppmも含まれているものがありました。
イチョウ葉そのものに含まれるギンコール酸は、およそ17000ppmですから、粉砕して商品化するまでの過程で、ギンコール酸の除去が行われていない可能性があります。
また、イチョウ葉を茶葉として加工したものでは、ギンコール酸の含有量が少なかったのですが、お茶の入れ方(水から煮出す)によっては、ギンコール酸が含まれていることが分かりました。※6
副作用に気を付ける飲み合わせ
イチョウ葉は、エキスで摂る分には、比較的安全で、副作用も少ないといわれています。
しかし、服用することでアレルギーを引き起こすことがあります。
また、イチョウ葉エキスに含まれる成分から、抗血栓薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、糖尿病治療薬などと、併用することはできません。
少しでも心配ごとがある方は、主治医に相談しましょう。※10
※6 国民生活センター イチョウ葉食品の安全性~アレルギー物質とその他の特有成分について考える~
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20021125.pdf
2018年12月閲覧
※10 キャサリン・E.ウルブリヒト, イーサン・M.バッシュ編 渡邊 昌日本語監修 2014年12月発行 ハーブ&サプリメント NATURAL STANDARDによる有効性評価 産調出版株式会社
まとめ
2億年以上昔から、地球に存在していたといわれるイチョウは、1900年代半ばには、その栄養素が注目され、さまざまな研究が行われてきました。
イチョウ並木やギンナンなど、四季を通じて私たちを楽しませてくれるイチョウ。
古くから愛され続けるイチョウから、少しだけパワーを分けてもらいながら、栄養を補給し健康を維持する、そんな生活を楽しんでみてはいかがでしょうか?
- 岡部 美由紀
-
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート) 他